• 作成日 : 2025年2月20日

塗装業に許認可は不要?開業の流れや建築業許可が必要な金額・条件を解説

塗装業を開業する際には、必要な資格や許可はありません。そのため、誰でも始めることが可能です。ただし、クライアントの信頼を得たいのであれば塗装技能士や有機溶剤作業主任者など資格を取得するとよいでしょう。

本記事では、塗装業に許認可が必要なのか、開業の流れや建築業許可が必要な金額・条件について解説します。

塗装業に許認可は不要?

塗装業とは塗装工事を請け負う業者のことです。塗料や塗材を工作物に塗り付けたり、吹き付けたり、貼り付けたりする工事一般を実践する業者を指します。

国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」によると、塗装業の主な業務として、以下のようなものが挙げられています。

  • 屋根塗装
  • 外壁塗装
  • コーキング補修

塗装業を開業するにあたっては、特別に必要な資格や許可はありません。そのため、誰でも塗装業を始められます。

塗装業で信頼を得るための資格

開業にあたって必要な資格や許可はありませんが、クライアントの信頼を得たいのであれば、資格の取得がおすすめです。おすすめ資格としては、以下のようなものが挙げられます。

塗装技能士塗装に関する国家資格

1~3級に分かれており、3級は初心者でも受験可能

1・2級は実務経験が必要

石綿作業主任者アスベストを含む建材を安全に処理できることの証明となる資格

外壁塗装工事ではアスベスト事前調査が必要なため、取得がおすすめ

足場の組立て等作業主任者高さ5メートル以上の足場の組立て・解体・変更を行う際に必要な資格

講習を修了すれば取得が可能

受講には3年以上の実務経験が必要

有機溶剤作業主任者有機溶剤を取り扱う際の責任者としての資格

2日間の講習を受け、修了試験に合格すると取得できる

受講資格はない

危険物取扱者乙第4種引火性のある溶剤系塗料を大量に保管する際に必要な資格

受験資格はない

建設業許可請負金額が500万円以上を超える場合に必要

大規模工事を受注したい場合は取得がおすすめ

個人事業主として塗装業を開業する流れや申請方法

個人事業主として塗装業を開業する流れについて解説します。主な手順は、以下のとおりです。

  1. 資格と許可を取得する
  2. 開業資金を調達する
  3. 開業手続きを行う

個人事業主の場合は、以下の手続きが必要です。

事業を開始してから1ヶ月以内に開業届を税務署へ提出しましょう。用紙は国税庁の公式サイトからダウンロード可能です。

開業届と一緒に、「所得税の青色申告承認申請書」も提出するようにしましょう。青色申告をすると、節税効果があります。

個人事業主で開業する方法については、以下の記事が参考を参考にしてください。

塗装業の会社を設立するための流れや申請方法

塗装業の会社を設立するための流れについて解説します。法人として会社を設立する場合は、以下の手続きが必要です。

あわせて、以下の書類の提出も行います。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 法人設立届出書(地方税) など

会社設立の流れ・作り方の詳細は、以下の記事をご参照ください。

塗装業の法人設立に必要な資金

塗装業の法人設立に必要な資金は、300万円程度といわれています。開業初期の運転資金などもあわせて考慮するのであれば、500万円以上あると安心です。

塗装業の開業にあたっては、道具を一式揃えたり、塗料を置くスペースを借りたりする必要があります。また、事務所を構えることもあるでしょう。

さらに、塗装業では仕事をしてすぐにお金が手に入らないこともある点には注意が必要です。塗装業では、支払いが2〜3ヶ月後というケースも多々あります。

その間も従業員にお金を払ったり、光熱費などを払ったり、道具を買い足したりする必要があるため、ある程度の資金がなければ開業は難しいといえるでしょう。

塗装業で建築業許可が必要な工事とは?

塗装業で建築業許可が必要な工事について解説します。建設業許可とは、建設業を行うために必要な許可です。

建設業許可は、以下の建設工事に該当する場合に必要となります。

  • 500万円以上の工事を請け負う場合
  • 建築一式工事の場合は、木造住宅以外の工事で1,500万円以上、または木造住宅で延べ床面積が150平方メートル以上の工事の場合

もし許可を得ずに500万円以上の工事を請け負った場合、建設業法違反となって罰金刑や懲役が科せられてしまうため注意してください。

500万円以上の塗装工事を請け負う場合

500万円以上の塗装工事を請け負う場合には、塗装工事の建設業許可を取得する必要があります。なお、500万円には、消費税材料費は請負金額に含まれます。

公共工事や大型案件の場合

建設業許可は業種を問わず、以下の2つに分類されます。

  • 一般建設業許可
  • 特定建設業許可

特定建設業許可は、請負金額が高額な場合や大規模な工事などに必要な許可です。たとえば、公共工事や大規模な土木工事、大型ビルの建築などが該当します。

塗装業の建築業許可を取得する条件

塗装業の建築業許可を取得する条件について解説します。建築業許可を取得する条件は、以下の6つです。

  • 500万円以上の資本金
  • 5年以上経営経験のある管理責任者がいる
  • 専任技術者がいる
  • 社会保険に加入している
  • 誠実性がある
  • 欠格要件に該当しない

500万円以上の資本金

建築業許可を取得する条件として、建設業に必要な一定の資本金を有しているかどうか問われます。許可の要件としては、直前の事業年度における決算書で以下の条件のどちらかを満たす必要があります。

  • 貸借対照表の純資産の部の合計額が500万円以上である
  • 500万円以上の金額が記された残高証明書を取得できる

5年以上経営経験のある管理責任者がいる

建築業許可を取得するためには、5年以上経営経験のある管理責任者を経営幹部として置いておく必要があります。経営幹部とは、個人事業の場合には事業主本人、法人企業の場合には取締役が該当者です。

具体的には、以下の3項目のいずれかに当てはまる者と定められています。

  • 許可を受けようとする建設業において、経営業務の管理責任者として5年以上の経験を有する
  • 許可を受けようとする建設業において、経営業務管理責任者に準ずる地位にあり、以下のいずれかの経験を有する
    1. 経営業務の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づいて執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験
    2. 6年以上経営業務を補佐した経験
  • 許可を受けようとする建設業以外の建設業において、以下のいずれかの経験を6年以上有している
    1. 経営業務の管理責任者としての経験
    2. 経営業務管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づいて、執行役員等として建設業の経営業務を総合的に管理した経験

管理責任者が退任して後任がいない場合、許可を取り消されてしまうため注意してください。

専任技術者がいる

建築業許可を取得する条件として、専任技術者の設置が挙げられます。建設業許可を受けたい建設工事ごとに1人以上の専任技術者が必要です。また、営業所ごとに専任者を設置する必要があるため、営業所に常勤している人間である必要もあります。

仮に専任技術者だったものが退職して責任者が不在になった場合は、建設業許可が取り消されてしまうため注意しましょう。そのため、必要要件を満たした技術者が複数いることが理想です。

資格については許可を受けたい建設業によって異なります。実務経験としては10年以上の経験、または指定学校を卒業後、3~5年の従事経験が必要です。

社会保険に加入している

2020年10月の法改正によって、社会保険への加入も建設業許可の要件となりました。建設業許可の申請をする際には、社会保険に加入しているかを確認されます。

法律上加入義務があるため、社会保険に加入していないと建設業許可の申請ができません。

誠実性がある

建築業許可を取得するためには、請負契約の締結・履行を誠実に行っているかどうかも問われます。不正または不確実な行為をする恐れがある企業は、建設業を許可されません。

たとえば、建設業以外の事業で不正行為を行って、営業許可取消処分になったことがある場合などには建設業許可を受けられない可能性があります。

欠格要件に該当しない

国土交通省の定めた欠格要件に該当した場合、建設業許可が下りません。欠格要件とは、破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない場合や、許可を取り消された経歴がある場合などをいいます。

たとえば破産者や刑罰を受けて5年以上経過していない方、暴力団関係者などです。

塗装業の建築業許可を申請する流れ

塗装業の建築業許可を申請する流れについて、解説します。

準備

まず、建設業許可の申請に必要な書類を揃えましょう。事前に地方公共団体のWebサイトで最新の必要書類を確認するようにしましょう。

代表的なものとしては、会社の定款や役員の履歴書、経営事項審査結果などが必要です。

あわせて、取得する許可についても確認しておきましょう。前述したように、建設業には一般建設業と特定建設業の2種類があります。自社の事業内容に応じて、どちらの許可が必要か確認しておきましょう。

また、提出先の営業所の数によって異なるため注意してください。営業所が1つの都道府県にある場合は各都道府県庁に申請し、都道府県知事の許可を取得します。

2つ以上の都道府県に営業所がある場合は、国土交通省の各地方整備局へ申請し国土交通大臣の許可をもらいます。

許可申請書・添付書類の作成

地方公共団体の窓口で許可申請書を受け取り、必要事項を記入します。許可申請書には、会社の基本情報のほか役員の経歴、事業内容、工事実績などを記入しましょう。

そのほか、添付書類も必要です。添付書類としては会社の登記簿謄本、定款、役員の履歴書、納税証明書、経営事項審査結果通知書などがあります。

申請書の提出

作成した許可申請書と添付書類を提出します。前述したように、提出先は営業所の数に応じて異なるため注意してください。

  • 営業所が1つの場合は都道府県知事の許可:各都道府県庁に申請
  • 営業所が2つ以上の場合は国土交通大臣の許可:国土交通省の各地方整備局に申請

なお、提出時には手数料が必要になります。各申請費用は以下のとおりです。

  • 知事許可:許可手数料9万円
  • 大臣許可:登録免許税15万円

申請から許可が下りるまでの期間は、以下のとおりです。

  • 知事許可:1~2ヶ月
  • 大臣許可:3~4ヶ月

期間に余裕を持って申請をするようにしましょう。

書類審査

提出された申請書類に基づいて審査されます。提出書類の内容が適正かどうか、許可要件を満たしているかどうかが審査にて確認されます。もしも書類に不備があった場合は、追加書類の提出が求められるため、注意してください。

現地調査

必要に応じて、地方公共団体の担当者が現地調査を行うこともあります。現地調査では、申請内容と実際の事業実態とが一致しているかが確認されます。

許可の取得

書類審査と現地調査が完了すると、許可の取得が認められます。許可証が発行されると、正式に建設業を営めるようになります。

取得した許可証は、事務所内の見やすい場所に掲示するようにしてください。

定期的な報告や更新

許可取得後も、定期的な報告や更新が必要です。定期的に財務状況の報告や経営事項審査などを行い、有効期限が近づいたら更新手続きも行いましょう。

報告を怠ると、許可が取り消されることがあるため注意しましょう。

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塗装業を開業する流れや申請方法しておこう

塗装業を開業する際、特別な許可や資格はありません。ただし、クライアントからの信頼を得たい場合には、塗装業に役立つ資格を取得するとよいでしょう。

塗装業においても、建築業許可が必要な場合もあります。許可を得ずに工事を請け負った場合、建設業法違反となって罰金刑や懲役が課されてしまうため、注意してください。

建築業許可を取得するためには、さまざまな条件が存在します。取得しようと思っても条件を満たしていなかったとならないように、あらかじめ理解しておきましょう。


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