- 作成日 : 2024年9月26日
グループホームの開設時に事業所指定を受ける方法は?許可基準を詳しく解説
グループホームを開設するためには、まず法人の設立が必要です。さらに、設備や人員配置、運営に関する詳細な許可基準を満たさなければなりません。必要書類を揃えて申請を行う前に、自治体への相談をしておきましょう。
本記事では、グループホームを開設するまでの流れや許可基準の内容、事業者指定を受けるまでにかかる費用について解説します。
目次
グループホームを開設するまでの流れ
グループホームとは、「認知症対応型共同生活介護」として介護保険上に位置付けられている、認知症の方が共同生活を送るための施設です。
グループホームを開設するためには、法人を設立してから許可基準を満たすという手順があります。
詳しくみていきましょう。
法人を設立する
グループホームは個人では運営できないため、法人でない場合には株式会社や合同会社などの法人を設立する必要があります。
法人の設立では定款を作成しますが、管轄の自治体から介護保険事業者指定を受けるため、必須記載事項の「事業目的」には次のような文言を記載してください。
- 介護保険法に基づく介護予防サービス事業
- 介護保険法に基づく認知症対応型通所介護事業
- 障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業
資金調達をする
施設の運営には十分な資金が必要です。資金が少ないと開設の審査が下りないため、自己資金だけでは足りない場合、資金調達方法を検討しなければなりません。
施設を賃貸してゼロからグループホームを設立する場合、数百万〜1,000万程度の資金が必要とされています。
融資を受ける場合は事業計画書の提出が必要になり、福祉事業の実情に沿った内容の記載が必要になるでしょう。
自治体の許可基準を満たす
グループホームの開設では、次の3つの基準を満たすことが義務付けられています。
- 設備基準
- 人員配置基準
- 運営基準
設備基準とは、場所や設備、環境の条件であり、立地条件や定員などの基準が細かく定められています。人員配置基準は、定員ごとに決められている管理者・職員の人数です。
運営基準は、運営のルールや営業日・営業時間などで、各自治体の基準に沿って定めます。
事業者指定を受ける
グループホームの事業者指定を受けるためには、グループホーム開設予定地の自治体に対する指定申請が必要です。
申請には指定申請書をはじめ、法人の登記簿謄本や定款、組織体制図など、多くの書類を揃えなければなりません。
グループホームの開業については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
グループホームの許可基準
グループホームの許認可を受けるためには、法人格を取得するほか、3つの許可基準を満たす必要があります。
それぞれの要件をみていきましょう。
法人基準を満たす条件
グループホームを開設するためには、まず法人格の取得が必要です。法人には、主に次のような種類があります。
- 株式会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- 特定非営利活動法人
- 社会福祉法人
株式会社の場合を例に、法人設立の流れをみてみましょう。
- 発起人を決定し、会社の設立に必要なこと(商号や所在地など)を決定する
- 会社の代表者印を作成する
- 定款を作成・認証を受ける
- 資本金を振り込む
- 設立登記申請書を作成する
登記を行い、法人の設立は完了です。
設備基準を満たす条件
設置基準を満たす条件は、次のとおりです。
住居 |
|
---|---|
設備 |
|
店員 |
|
その他の設備 | 居間、食堂、トイレ、浴室、洗面所、キッチンなど |
人員基準を満たす条件
人員基準を満たす条件は、主に次のとおりです。
管理者 | 常勤1名 |
---|---|
サービス管理責任者 | 利用者数30人以下:1名 利用者数31人以上:30人を超えるごとにさらに1名 |
世話人 | 常勤換算で、利用者数を10で除した人数以上 |
生活支援員 | 1名以上 |
管理者は、事業所の従業者や業務の管理、その他の管理を全般的に行います。サービス管理責任者は入居者の支援に関する総責任者であり、実務経験があるか、都道府県が行う研修の受講が要件です。
世話人は、食事の提供や健康管理・金銭管理の援助などを行います。生活支援員は、食事や入浴、排せつその他の直接的な介護を行う役割があります。
運営基準を満たす条件
運営基準では、「運営規定」を作成します。
規定の一例は、次のとおりです。
- 適切・適法な人員配置を把握する
- コンプライアンスを遵守した業務が行うためにスタッフ教育を行う
- 必要な日常業務を把握する
- 運営推進会議を設置する
- 定期的に避難、救出訓練を実施する
運営ルールや営業時間などは、各自治体の基準条例に沿った作成が必要です。
グループホームの事業所指定を受けるために必要な申請
グループホームの事業所指定を受けるためには、まず必要書類を準備します。
主な必要書類は、次のとおりです。
- 指定申請書
- 付表
- 法人の定款
- 法人の登記簿謄本
- 勤務形態一覧表
- 管理者の経歴書
- サービス管理責任者の経歴書・資格証明書・実務経験証明書
- 運営規程
- 平面図
- 事業所の写真
- 苦情処理に関する措置の概要
- 事業計画書
- 収支予算書
- 賠償責任保険に関する書類
- 事業所の賃貸借契約書
申請をスムーズに進めるためには、指定申請の前に自治体の担当者を訪ね、計画について相談することが大切です。
すべて手配したあとに申請し、不備があって受理してもらえない場合、変更には手間やコストがかかります。問題がないかを確認しながら準備すれば、そのような事態を防げるでしょう。
グループホームが事業所指定を受けるまでにかかる費用
グループホームが事業所指定を受けるまでには、大きく分けて次のような費用がかかります。
- 法人の設立
- 物件取得
- 改装費
- 人件費・運営費
- 行政書士などへの報酬(依頼する場合)
法人の設立では、株式会社の場合、登記取得などに費用がかかり、30万円程度必要です。
物件取得費は、賃貸の場合、利用者が入居するまでの家賃や敷金・礼金・保証金などが必要であり、100万〜700万程度かかるでしょう。
その他、内装や消防設備、利用者に必要な設備を整えるために100万円程度の予算を考えておいてください。
また、利用者が入居してからすぐに収入があるわけではなく、開業からしばらくは人件費や運営費の支出が必要になります。
指定を受けるまでには必要書類の作成をはじめさまざまな手続きがあり、法人設立も合わせると1人で行うのは大変です。行政書士などに代行を依頼すればスムーズに手続きできますが、20万〜30万円程度の報酬が必要になるでしょう。
全体として、事業所指定を受けるまでに数百万〜1,000万円程度の費用がかかると考えられます。
グループホームの開設は手順を確認しておこう
グループホームの開設には法人格を取得しなければならず、必要書類の準備も必要です。資金の融資を受けるためには、事業計画書も作成しなければなりません。
指定申請するまでの手順を把握し、適切に進めていきましょう。申請の前には、自治体の担当者に相談することも大切です。許可基準を満たす計画をまとめ、問題がないかを確認しておいてください。
準備にはある程度の時間が必要になるため、余裕をもった計画を立ててグループホーム開業を成功させましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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