- 更新日 : 2025年10月14日
卸販売・小売業の会社設立で定款に記載する事業目的の書き方
会社設立の際、作成が義務付けられている定款。会社の憲法ともいえる定款には、会社の事業目的を記載する必要があります。卸販売・小売業で会社を設立する場合、事業目的はどのように書けばよいのでしょうか。本記事では、卸販売・小売業で会社を設立する際の事業目的の書き方などについて解説します。
目次
卸販売・小売業で会社設立をするために必要な手続きとは?
卸販売・小売業で会社を設立するために必要な手続きは、他の業種で会社を設立するケースと同様です。会社名や代表者名、事業目的などの会社概要を策定し、それに基づいて定款を作成します。その後登記申請書を作成し、役員就任承諾書などの必要書類とともに法務局に提出して登記申請をします。
卸販売・小売業で会社設立するために必要な書類
卸販売・小売業で株式会社を設立するために必要な書類は、以下の通りです。
- 定款
- 登記申請書
- 収入印紙貼付台紙
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役全員の印鑑証明書
- 資本金の払い込みを証明する書類
- 印鑑届出書
なお、定款で本店所在地を番地まで含めて記載している場合、発起人の決定書は不要です。また、取締役が1人の場合、代表取締役の就任承諾書は不要です。取締役会設置会社の場合は、代表取締役の印鑑証明書のみを提出します。
定款に記載する事項とは
定款に記載する事項には、必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、必ずしも記載する必要はないものの記載しないと効力が生じない相対的記載事項、そして定款を作成する際に決まっていなくてもよい任意的記載事項があります。
絶対的記載事項は、以下の通りです。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価格またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
相対的記載事項の例は、以下の通りです。
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主総会などの招集通知を出す期間の短縮
- 役員の任期
- 株券発行の定め
- 現物出資
- 財産引受
任意的記載事項の例は、以下の通りです。
- 事業年度
- 取締役などの役員の数
- 株主総会の議長
- 定期株主総会の召集時期
- 基準日
小売業の場合の事業目的の書き方例
定款に記載する事業目的は絶対的記載事項であり、必ず記載しなければなりません。しかし、卸販売・小売業で初めて会社を設立する場合は、どのような書き方がよいかわからない人も多いでしょう。ここでは、卸販売・小売業で会社を設立する際の事業目的の書き方について、事例とともに説明します。
定款の「事業目的」とは?
定款の「事業目的」は絶対的記載事項の一つで、必ず記載しなければなりません。事業目的は文字通り、その会社が何の事業を行うかを記したものであり、それを公に知らしめるステートメントです。会社が行う事業の種類によっては、例えばリサイクルショップや酒類販売業のように、定款の事業目的にあらかじめ記載しておかなければならないものがあります。事業目的は会社設立登記完了後も追加・変更できますが、変更登記には費用と手間がかかるので、想定される事業があらかじめわかっている場合は、漏れなく記載しておいた方がよいでしょう。
卸販売・小売業の場合の「事業目的」の考え方
卸販売・小売業で会社を設立する場合、「事業目的」についてどのように考えればよいのでしょうか。ポイントは、会社設立時に明らかになっている事業目的に加えて、将来行う可能性がある事業や、将来やってみたい事業などもあらかじめ盛り込んでおくことです。例えば、会社設立当初は「食品の販売」を事業目的としていて、将来製造販売や輸出入も行いたいといった場合は、「食品の製造、販売、卸売および輸出入業務」というように記載します。
事業目的の記載例
参考に、卸販売・小売業の「事業目的」の記載例を見てみましょう。
クスリのアオキホールディングス
イオンリテール
「衣料品、食料品、家庭用品、日用品雑貨、電気製品、家具製品、化粧品、装飾品雑貨その他の百貨の小売ならびにこれに関する物品の製造、加工、卸売および輸出入」「米穀、塩、たばこ、郵便切手類、印紙、鉄砲刀剣類および古物の販売ならびに宝くじの売りさばき」
このほか、「カタログによる通信販売業」「経営コンサルタント業」「金融商品仲介業」「発電事業およびその管理・運営ならびに電気の売買に関する事業」など、30項目以上の事業目的が記載されています。
事業目的を記載する際に気を付けるべきこと
定款の事業目的を記載する際に、気を付けるべきことは何でしょうか。最大のポイントは、会社設立当初で想定される事業と、将来行う可能性がある事業を漏れなく記載することです。定款の事業目的に記載されていない事業を行ったとしても、何らかの罰則が適用されることはありませんが、取引先や金融機関などの心証に悪影響を与える可能性があります。
定款作成から登記までの流れ(株式会社の場合)
株式会社を設立する場合は、上述の会社設立に必要な書類をそろえて、所管の法務局に提出して申請します。申請は書面によるものだけでなく、代表取締役本人がマイナンバーカードを使用し、オンラインで登記申請することもできます。オンラインで登記申請する場合は、申請者情報の登録と申請用総合ソフトのインストールを行い、添付書面情報に電子署名を付与するなどして手続きを行います。登録免許税を電子納付により納付し、添付書面と印鑑届出書を提出すれば完了です。
卸販売・小売業で会社を設立する場合に必要な資格・許認可
卸販売・小売業で会社を設立する場合、販売するものによっては免許や許可が必要です。
例えば、リサイクルショップで古物を販売する場合、所轄の警察署から「古物商許可」を取得する必要があります。酒類を販売する場合は所轄の税務署から「一般酒類小売業免許」を、弁当や総菜あるいは乳製品などを販売する場合は所轄の保健所から「食料品等販売業営業許可」を受ける必要があります。
卸販売・小売業で会社を設立する場合のポイント
卸販売・小売業で会社を設立する場合のポイントは、他の業種と同様に事業計画をしっかりと策定することです。事業計画は、定款に記載した事業目的を実現するためのアクションプランです。事業計画なしに事業を開始することは、航空機のパイロットがフライトプランなしに飛行機を操縦することと同じです。また、事業計画とともに資金計画も策定すべきです。卸販売・小売業は仕入れなどでまとまった資金が必要なため、資金計画を策定して資金を管理しないと丼勘定になるおそれがあります。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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