- 更新日 : 2023年10月23日
健康経営とは?メリット・取り組み事例も紹介!
健康経営とは、従業員の健康に配慮し、健康を経営的視点から考える経営手法です。従業員の健康管理や健康増進の取り組みを「投資」と捉え、戦略的に取り組みます。
本記事では健康経営の概要や注目されている背景を説明するとともに、取り組むメリットや健康経営の始め方を解説します。
目次
健康経営とは?
健康経営とは、企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面でも大きな成果が期待できるとする経営手法です。福利厚生の充実や長時間労働の見直しなど、社員が健康的に働ける職場作りを目指します。
これまで従業員の健康管理は自分自身で行うものと考えられていましたが、健康経営の考え方では、従業員への健康投資が従業員の活力向上をもたらし、その結果、生産性の向上と組織の活性化につながると期待されています。
健康経営が注目されているのはどのような背景があるのか、詳しくみていきましょう。
健康経営が注目されている背景
健康経営が多くの企業に注目されている背景には、少子高齢化による労働人口の減少と従業員の高齢化があげられます。
労働人口の減少による人手不足で1人あたりの仕事量が増え、長時間労働など労働環境の悪化が深刻化しています。その結果、健康を害するリスクが高まり、従業員の健康を守ることが重視されるようになりました。
また、従業員の高齢化により、病気などで働けなくなるというリスクも高まっています。医療を利用する人が増えることで社会保険料の増加を招き、企業の社会保険料負担が増えることにもなります。
このような背景により、いつまでも健康で長く働ける環境づくりが必要だという認識が広まり、健康経営が注目されるようになりました。企業活動には健康経営が不可欠と考える経営者が増え、関心が高まっています。
また、ESG投資が世界的に拡大していることも健康経営が注目される理由のひとつです。ESG投資とはEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を合わせた言葉で、投資家が投資の判断をする際、財務情報に加えて環境への配慮などの観点を取り入れる方法です。
健康経営は従業員の心身の健康を尊重する取り組みであり、ESG投資のSocial(社会)と方向性が同じといえます。投資家からの評価を高めるという意味でも、健康経営が注目を集めています。
健康経営に取り組むメリット
健康経営に取り組むことで、さまざまなメリットを得られます。ここでは、健康経営に取り組むことでどのようなメリットが得られるのか、詳しくみてみましょう。
企業価値の向上につながる
健康経営によって従業員が健康で元気に働けることで、生産性の向上が期待できます。業績が上がり、企業の成長につながるでしょう。
健康経営は「従業員の健康に気を遣う優しい企業」というイメージを発信でき、企業価値の向上にもつながります。求職者にも良いイメージを与え、応募者の増加と優秀な人材の獲得も期待できるでしょう。
金融機関・投資家からの信用・評価が上がる
業績アップや企業価値の向上により、金融機関からの信用が上がります。健康経営に取り組む企業は優良企業として、融資条件にも勘案される場合もあるようです。
例えば、日本政策投資銀行では独自に開発したスクリーニングシステムにより企業の非財務情報を評価し、優れた企業を選定して融資しています。健康管理および健康経営を評価する「健康経営格付」では、健康配慮への取組みを3段階にランク付けし、それぞれに応じて金利を優遇しています。
また、前に紹介したESG投資において、投資家からの評価が上がるのもメリットです。近年、世界的に拡大しているESG投資において、投資家は企業の評価について業績や財務情報だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)といった非財務情報を重視する傾向にあります。
社員の健康状態が良好になる
健康経営を導入して労働環境が良くなることで従業員自身も健康に気を遣うようになり、
病気などで病院にかかる機会が減ります。治療費や薬代が抑えられ、医療費が削減されるのがメリットです。
社会保険料は従業員と企業が折半して負担していますが、医療費を抑えることは社会保険料の増加を抑制し、企業の負担を軽減することにもなるでしょう。
社員の離職率が低下する
健康経営によって従業員が健康を維持すれば、欠勤が少なくなり離職率の低下も見込めるでしょう。厚生労働省が行った調査でも、健康経営に取り組む企業ほど離職が少ないという結果が出ています。
離職率の全国平均が10.7%なのに対し、健康経営度調査で回答した企業の離職率は5.0%という結果です。
また、健康経営に取り組む企業は有給取得率が高い傾向にあり、法人単位の特定健診実施率も高いということがわかっています。
健康経営の始め方
健康経営は、すべての企業が取り組むべきものです。特に長時間労働が常態化していたり、従業員の離職が多かったりする企業は、早急な取り組みが必要といえるでしょう。
健康経営の導入は、以下の手順で行います。
- 健康経営を行うことを宣言する
- 健康経営のための専門部署を作る
- 従業員の健康状態をチェックして課題を抽出する
- 課題に基づいて健康経営の計画を立てる
- 具体的な取り組みを行う
まず、健康経営を企業理念に明文化し、取り組む姿勢を社内外に発信しましょう。次に専門部署や担当者を配置し、取り組みの体制を整えます。
さらに、従業員の健康診断やストレスチェックなどを実施して健康状態を確認し、課題を見つけて目標を設定します。施策を実施し、効果を確認して次の取り組みへと活かしましょう。
健康経営優良法人認定制度とは
経済産業省では、2016年に「健康経営優良法人認定制度」を設けています。地域の健康課題に即した取り組みなどをもとに、特に優良な健康経営を行っている大企業や中小企業を顕彰する制度です。
健康経営に取り組む企業を可視化することで、従業員や求職者、取引先などから健康経営に取り組む企業として社会的な評価を受けられる環境づくりを目標としています。
顕彰を受けた企業は、経済産業省のホームページに社名が掲載され、「健康経営優良法人」のロゴマークを広報活動に利用できます。
認定されるためには申請が必要で、経営理念や組織体制などの認定基準を満たすことで表彰される仕組みです。
健康経営に取り組む中小企業の事例
健康経営は大企業から中小企業まで、多くの企業が取り組みを行っています。ここでは、中小企業の事例をいくつか紹介しましょう。
食生活習慣の改善に注力|大垣タクシー株式会社
岐阜県大垣市で運輸業を営む大垣タクシー株式会社は、2019年、生命保険会社の健康経営アドバイザーからのすすめで健康経営の取り組みを開始しています。
従業員を対象としたアンケートで、「食べ物に関して健康を意識しているか」という問いに対し、「6ヶ月以内 に健康づくりを始める意思がない」という回答の割合が25%と高かったため、課題設定を行いました。
取り組みでは食生活に関する情報を定期的に提供し、食事・栄養管理支援アプリを従業員に無償で配布しました。その結果、従業員の食べ物への関心が高まり、食習慣の改善につながったということです。
就業中のフィットネスタイムで不調改善|株式会社エイジェントヴィレッジ
愛知県名古屋市で保険業を営む株式会社エイジェントヴィレッジは、働きやすい環境づくりが不十分で、従業員の定着率が低いという課題がありました。
まず、従業員の半数以上が肩こりや頭痛・眼精疲労の症状があるという課題を抽出し、ストレッチや運動習慣をつけるイベントの実施などに取り組みました。
取り組み後に行ったアンケートの結果では、眼精疲労に悩む人の偏差値が25%改善し、 デスクワークの姿勢が悪い人の偏差値が25%改善したということです。
婦人科腫瘍マーカー検査の実施|株式会社エヌ・ケーエンジニアリング
北海道千歳市にあるサービス業の株式会社エヌ・ケーエンジニアリングでは、2017年に健康経営優良法人認定制度を知り、社員の健康づくりを推進していくため、取り組みを開始しています。
同社では、女性特有の病気や不調を抱えている従業員から、婦人科検診や健康関連セミナーなどの提供や実施、参加補助を行ってほしいという要望を受けました。そのため、会社負担で検査の受診を実施するとともに、勤務時間内に受診できるよう配慮しました。さらに女性特有の病気や不調に関するリーフレットを作成し配布したり、就業時間中にディスカッショ ンする場を設けたりする取り組みを実施しています。
その結果、検査は目標の100%を達成し、リーフレットの配布とディスカッションも高い評価を受けたということです。
健康経営で企業価値を高めよう
健康経営は従業員に長く健康で働いてもらえるよう、健康に配慮する経営手法です。健康経営の実施により企業価値が高まり、イメージアップを図れます。金融機関や投資家からの評価が高まり、離職率が低下するなどのメリットも得られるでしょう。
健康に関する課題は、企業によりさまざまで、課題により取り組む施策も異なります。まずは従業員アンケートなどを通して自社の課題を抽出し、健康経営に取
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