- 作成日 : 2023年4月21日
環境経営とは?メリットや企業事例について解説!
環境経営とは、環境に配慮しつつ自社の企業価値も高める取り組みです。企業イメージの向上やビジネスチャンスの発見、業務改善などがメリットとして期待できます。
環境経営を行うために必要な環境マネジメントシステムに含まれるのが、ISO14001認証やエコアクション21です。本記事では、これらの概要だけでなく事例についても解説します。
目次
環境経営とは?
環境経営(環境配慮経営)は、環境問題に取り組み、社会的責任を果たしながら、自社の企業価値も高めていく経営のことです。環境省は、環境経営を進めるにあたって必要なこととして、以下の点を挙げています。
- 経営者の主導的関与
- 環境への戦略的対応
- 組織体制とガバナンス
- ステークホルダー(利害関係者)への対応
- バリューチェーン志向
- 持続可能な資源・エネルギーの利用
このうち、ステークホルダーへの対応とは、顧客・取引先、株主・投資家、従業員などのステークホルダーに対し、ヒアリングや調査、意見交換などを通じて期待や要望を把握し、経営活動の中に還元することを指します。ステークホルダーとは、自社の利害関係者のことです。
また、バリューチェーン志向は、自社だけでなく、仕入先などを含めた製品ライフサイクルにおける関係先全体でバリューチェーンの改善に取り組むことを指します。バリューチェーンとは、企業の事業活動を価値の連鎖としてとらえるフレームワークです。
環境経営のメリットは?
環境経営のメリットは、以下のとおりです。
- 企業イメージの向上につながる
- ビジネスチャンスが期待できる
- 投資家の評価が高まる
- 天然資源への依存から脱却できる
各メリットを詳しく解説します。
企業イメージの向上につながる
環境経営の取り組みを行うことにより、企業イメージの向上につながる点がメリットです。SDGsが取り沙汰されている現代において、環境配慮の取り組みは不可避だといえます。
環境経営により一定の信用を得られた結果、場合によっては融資を受けやすくなることもあるでしょう。金融機関が融資にあたって、対象企業の環境経営の取り組みや環境配慮活動を評価し、融資の条件設定や融資実行の可否を判断する「環境格付融資」もあります。
ビジネスチャンスが期待できる
他企業に先んじて環境経営を行うことで、ビジネスチャンスを期待できる点もメリットです。ビジネスチャンスを活かせば、事業拡大にもつながるでしょう。
環境省の調査結果によると、環境配慮経営の位置付けとして「重要なビジネス戦略の一つである」と回答した企業の割合はおよそ2割で、「企業の社会的責任の一つである」(58.2%)に次ぐ数字でした。
参考:環境省 令和元年度 環境にやさしい企業行動調査 調査結果【概要版】
投資家の評価が高まる
近年ESGやSDGsなどの環境関連への取り組みを参考に投資判断する投資家が増えていることもあり、環境経営で投資家の評価が高まる点も期待されます。投資家からの評価が上がれば、出資を受けやすくなるでしょう。
ESGは環境や社会に配慮したり、ガバナンス(企業統治)の遵守を重視したりすることです。一方、SDGs(持続可能な開発目標)は、人類が地球で暮らし続けていくために国連が採択した17の国際目標をさします。
天然資源への依存から脱却できる
環境経営で循環資源や再生可能エネルギーなどを効率的に活用することで、従来型の天然資源依存からの脱却につながる点もメリットです。うまく脱却できれば、天然資源に対する価格変動リスクの軽減も期待できます。
ただし、天然資源への依存から脱却するには、業務プロセスの改善も必要です。業務プロセスの改善とは、企業の目的を達成するための活動を効率化したりコストダウンを図ったりすることを指します。
環境マネジメントシステムとは?
環境マネジメント(環境管理)は、環境保全に向けた取り組みを推進するにあたって、基本方針や目標を設定し、達成に向けて取り組んでいくことを指します。また、環境マネジメントシステム(EMS – Environmental Management System)とは、環境マネジメントのための組織の体制・計画活動・責任・慣行・手順・プロセスなどの仕組みです。
環境マネジメントシステムには、環境省が策定したエコアクション21や国際規格のISO14001認証などがあります。ここから、それぞれの概要を確認していきましょう。
ISO14001認証
ISO14001認証は、環境マネジメントシステムの要求事項を規定する仕様書のことです。製品の製造やサービスの提供など、自社の活動による環境への負荷をPlan-Do-Check-Act(PDCA)の概念に基づき、改善するように定められています。組織の全体的なマネジメントシステムの中に環境ガバナンスを取り込み、最高経営層に責任ある関与を求めている点もISO14001の特徴です。
会社などの組織は、自社がISO14001に沿った環境マネジメントシステムを構築していることについて、JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)が認定した外部機関に認証や登録を求められます。具体的な認証や組織は、JABのホームページで確認可能です。
参考:環境省 ISO14001
参考:公益社団法人 日本適合性認定協会 適合性評価と認定とは
エコアクション21
エコアクション21とは、環境マネジメントシステムや環境パフォーマンス評価、環境報告をひとつに統合したものです。企業はエコアクション21に取り組むことで、自主的・積極的な環境配慮に対する取り組みを展開し、結果を「環境経営レポート」として公表できます。
エコアクション21ガイドラインに基づき、環境コミュニケーションを行う事業者を認証し、登録する制度が「エコアクション21の登録・認証制度」です。一般財団法人 持続性推進機構(IPSuS)が、認証・登録制度を実施しています。
エコアクション21ガイドラインは、エコアクション21事務局のホームページで確認可能です。
参考:環境省 エコアクション21
参考:エコアクション21中央事務局 エコアクション21とは
環境経営の取り組みを行う企業事例は?
環境経営の取り組みを行う企業事例は豊富です。今回は、地球温暖化防止に取り組む企業や、環境に配慮した業務に取り組む食品メーカー、コンサルティングファームの事例を紹介します。
地球温暖化防止に取り組む企業
醤油などの調味料製造・加工で知られるキッコーマングループは、2030年度までに、地球温暖化の原因とされるCO2の排出量を2018年度比で30%以上削減するという目標を掲げています。達成のための具体的施策が、再生可能エネルギーの活用、プロセス改善、エネルギー効率の高い設備の導入などです。
2011年6月には、グループの国内主要事業所を対象とするISO14001の一括認証を取得し、環境マネジメント推進体制のより一層の強化を図っています。2017年6月には、新たな国際規格での一括認証を再取得しているとのことです。
参考:キッコーマン 主な取り組み 地球温暖化防止
参考:キッコーマン 主な取り組み 環境マネジメントの推進
環境に配慮した業務に取り組むコンサルティングファーム
コンサルティングファームのデロイトトーマツでは、公益性を重んじる成熟社会へのシフトに対応すべく、「環境と経営の一体化」のコンセプトを唱えています。経営戦略の立案に環境視点を組み込み、経営活動と環境活動が一体的に管理できるようガバナンス体制とPDCAサイクルを確立するなどが「環境と経営の一体化」の具体例です。
また、環境に配慮した業務活動としては、省資源・リサイクルやグリーン購入などを推進しています。グリーン購入とは、製品やサービスを購入する際に、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで購入することです。
参考:デロイトトーマツ 経営や社会へのインパクトを重視した環境活動の変革
参考:デロイトトーマツ 環境に配慮した業務活動の推進
環境経営で自社の価値も高める
環境経営とは、環境問題に取り組み、社会的責任を果たしながら、自社の企業価値も高めていく経営を指します。環境経営を進めることで、企業イメージの向上につながる点や、ビジネスチャンスが期待できる点などがメリットです。
環境経営に関連し、ISO14001やエコアクション21の認証・取得を進めれば、自社の価値向上につながるでしょう。
よくある質問
環境経営とは?
環境問題に取り組み社会的責任を果たしながら、自社の企業価値も高めていく経営のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
環境経営のメリットは?
企業イメージの向上、ビジネスチャンスの発見などのメリットが期待できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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