- 更新日 : 2024年4月30日
デイサービス(通所介護)を開業するには?指定基準や申請方法を解説!
「通所介護」を指すデイサービスは、高齢化社会の現代には必要不可欠となっています。食事や入浴・排せつなどの面で高齢者の生活を支え、介護者の負担を大きく軽減しています。また、高齢者の健康維持や孤立感の解消、生活の質の向上も図ることができます。このように社会的貢献度の高いデイサービスの施設を開業するには、具体的にどうすればよいのでしょうか。
デイサービスの開業は、申請の流れや必要書類、かかる費用や資金調達の方法など、確認すべきことが多くあります。本記事ではデイサービス開業に関する基本的な情報をはじめ、人員基準や助成金についてなど、詳しい情報をご紹介していますので、これから独立もしくは法人化を考えている方は、ぜひご覧ください。
目次
デイサービスを開業するために必要な資格・指定基準は?
デイサービスを開業するにあたって気になることといえば、資格や指定基準ではないでしょうか。これらをしっかりと守らなければ法律違反となってしまうので、安全で確実なサービスを展開するためにも、詳しく知っておきたいものです。ここからは、デイサービス開業にあたって必要な資格と指定基準についてご紹介します。
人員基準
人員基準とは、利用者とその家族を安全にサポート、フォローすることができる職員の配置基準のことをいいます。ここでいう人員には「管理者」「看護職員」「機能訓練指導員」「介護職員」「生活相談員」などが挙げられます。このような人員がそろっていない施設は開業ができず、もし基準を守らずに開業してしまった場合は法律違反として罰則が下されることもありますので、注意が必要です。
- 管理者
具体的には職員のマネジメントや収支管理、行政機関への報告、申告などいわゆる企業でいう経営の部分を担う人のことを指します。デイサービスでは施設内に1人常勤で配置しておく必要がありますが、管理者の業務に支障がない場合は、別の業務と兼務してもよいとされています。 - 看護職員
利用者の健康を管理する業務を行う人員です。看護師もしくは准看護師の資格を持った人を専従で1人配置しなければなりません。 - 機能訓練指導員
生活レベルを向上させるための機能訓練を指導・計画する役割を持ち、こちらも1人以上配置する必要があります。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の資格保持者でなければなりません。 - 介護職員
心身のケアやレクリエーションの計画・管理などをする人員を指し、利用者が15人以下の施設で1人、15人を超える場合はその数に応じた人員数が在籍している必要があります。 - 生活相談員
利用者や利用者の家族の相談に乗ることを目的とした人員で、社会福祉士または社会福祉主事任用資格、精神保健福祉士などの有資格者が1人在籍している必要があります。
設備基準
設備基準とは、食事や運動をはじめ、レクリエーションなど利用者が安全、快適に過ごせるような設備の決まりのことをいいます。主に「食堂」「機能訓練室」「静養室」「相談室」「事務室」などが挙げられます。もちろん「消防」「トイレ」など要件を満たした設備も必要不可欠です。
運営基準
運営基準とは、デイサービスを適切に運営するための決まりです。主に「サービス提供に関すること」「利用料に関すること」「職員の勤務体制に関すること」「書類に関すること」の4項目が定められています。運営基準を満たし続けることで、介護保険サービス事業者として「指定」を受け、介護保険からの介護報酬が受けられます。
そのほか都道府県や自治体が条例で定めた基準もありますので、そちらもあわせて確認する必要があります。
デイサービスを開業する方法・流れは?
デイサービスを開業するにあたって、具体的な方法や流れがわからない方も多いでしょう。ここからは、デイサービスを開業する際に必要な書類や申請方法、法人設立の方法などを詳しくご紹介します。
コンセプトとサービス内容を決める
開業において、具体的なコンセプトとサービス内容を決めておくことが大切です。これらがブレると、利用者が集まらなかったり、安心して利用してもらえなくなったりしてしまいます。
必要書類をそろえる
デイサービス開業にあたって必要とされる主な書類は、以下の通りです。
開業にあたっては、都道府県と市町村の事業所指定が必要となるため、新たな事業所においては多くの資料の提出が求められます。必要書類の書式については、該当する都道府県の介護保険課のWebサイトなどで確認することも重要です。
法人を設立する
デイサービスの開業には法人の設立が必須となっているため、「株式会社」「合同会社」「NPO法人」「一般社団法人」のどれかで法人化しましょう。それぞれ設立に関する条件をはじめ、設立までにかかる費用や期間が異なるため、慎重に選んでください。
自治体へ事前協議を行う
自治体によって届出を行う前に事前協議が必要な場合がありますので、自治体のルールを詳しくチェックしておきましょう。また、事前相談や事前研修を設けている自治体もあり、初めて介護事業を開業する方は、こういった制度を利用するとより安心です。
民間企業の中にはデイサービス開業を行う事業者向けに経営や具体的な手続きの流れについてのセミナーを開催しているところもありますので、ぜひ利用してみてくださいね。
物件の契約
ここまで来たら、実際に事務所とする物件を契約します。利用してくれそうな人が集まっている地域や、立地が良い地域など総合的判断で決めましょう。
内装工事
物件が決まったらいよいよ内装工事です。利用者さんとその家族が利用しやすいような内装を目指してくださいね。
必要な備品をそろえる
デイサービスの運営にあたって必要な備品を不足なくそろえましょう。
自治体へ指定申請を行う
自治体へ介護事業者としての指定を受けるための指定申請を行い、晴れてデイサービス開業となります。
デイサービスの開業に必要な資金・費用は?
デイサービスの開業をするにあたって、もう一つ気になる点が費用面ではないでしょうか。新しい事業を始めるとなれば、初期費用としてまとまった資金が必要なのは仕方のないことですが、「何にどれくらいの費用がかかるのか」を知っているのと、知らないのとでは安心感が違ってきます。こちらではデイサービス開業に必要な費用面について詳しくご説明していきます。
法人設立費
法人を設立する際にかかる費用で0〜30万円ほどが相場です。先ほどご紹介した法人の種類によってかかる費用が異なりますが、例えば株式会社だと20万円以上の費用がかかります。NPO法人だと設立費用がかからないが、設立までに半年程度かかるなど、法人の種類によって性質がさまざまであるという点を理解しておきましょう。
物件の初期費用
デイサービスの事業所となる物件を借りる際に敷金(保証金)、礼金、前家賃、仲介手数料などの初期費用が発生します。物件の大きさや立地によって金額は異なりますが、仮に賃料が20万円、敷金が2カ月分、礼金・仲介手数料・前家賃がそれぞれ1カ月分だとすると、100万円前後の初期費用が必要になります。
改修工事・内装工事費用
デイサービス施設として安全かつ快適に運営するためには、内装工事や水回り、空調などの改修工事が必要です。元々デイサービス施設として使われていたような居抜き物件の場合はそこまで高い費用がかかりませんが、飲食店から介護施設に改修するといった場合は高い費用がかかります。内装工事には大体150万〜500万円の費用がかかると思っておきましょう。
デイサービス開業時の資金調達方法は?
デイサービスの開業を考えている方の中には「自己資金があまりない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこでこちらでは開業時の資金調達方法をいくつかご紹介しますので、金額やニーズに合った方法で無理なく開業を目指しましょう。
自己資金
開業において一番リスクが少ないのは、やはり自己資金です。できるだけ多くの自己資金を事業資金にあてることで、返済の心配もありません。しかし、自己資金を使いすぎて生活が苦しくなっては本末転倒ですので、バランス良く利用するのが重要です。
銀行で融資を受ける
開業をするにあたって銀行で融資を受けるという選択肢もあります。銀行の融資を受ける際には、自己資金の金額や事業内容を明示する必要があり、また経営者個人の信用情報にも大きくかかわってきます。過去に滞納や犯罪歴があれば融資を受けるのが難しくなるでしょう。
日本政策金融公庫の創業融資を利用する
日本政策金融公庫では、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方向けに「新規開業・スタートアップ支援資金」を提供しています。融資限度額 は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、返済期間が長く設定できるのが特徴です。
※日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、令和6年3月31日で取扱いを終了しています。
助成金・補助金を申請する
デイサービス開業に対して各種助成金や補助金が用意されています。助成金や補助金は毎年のように制度が変わるので、開業時に受け付けているものを確認してください。
現在申請できる助成金・補助金は、以下の通りです。
- キャリアアップ助成金(正社員化コース)
- ICT導入支援事業補助金
- 人材確保等支援助成金
- 両立支援等助成金(出産時両立支援コース・介護離職防止支援コース・育児休業等支援コース)
助成金や補助金の多くは返済不要ですが、提供元は国だけでなく自治体や民間団体の場合もあります。支給元や対象条件を必ず確認のうえ、要件に合致する制度を活用してください。
介護事業で独立・開業するときの注意点は?
介護事業で独立、もしくは開業をする際にはどういった点に注意が必要なのでしょうか。開業してみて「こんなはずではなかった」とならないためにも、開業前から注意点を知っておきましょう。
資金繰り計画をシミュレーションしておく
介護事業にかかわらず、どのような事業でも開業する際には膨大な初期費用がかかります。開業してしばらくは多くの運転資金も必要となるため、収入と支出のバランスをしっかりとシミュレーションしておく必要があるでしょう。
デイサービスにおいては法人格を持っている必要があるため、法人設立の費用も別途必要です。必要な設備、人員に対する費用も大きくかかるため、一つ一つ整理して抜かりないよう準備しておきましょう。
事業を始めると税金もかかってくるため、税理士や公認会計士、弁護士などのプロとコネクションを作っておくと心強いです。
信頼のおける人員を確保する
介護事業は人の命を預かる、非常に重要な仕事です。看護師や介護職員など、デイサービス開業に定められた人員を確保するのはもちろん、確かな技術やスキルを持った人員を確保することに注力しましょう。
コンセプトやサービス内容は念入りに考えておく
デイサービスと一言でいっても、施設によってサービス内容はさまざまです。どのような利用者をターゲットにするのか、また利用者が気持ちよく過ごすためには、どのようなサービスを提供するのかという点は非常に重要な項目といえるでしょう。
デイサービス・介護事業開業向けの事業計画書テンプレート(無料)
こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。
必要な指定基準や資金を知って安定した開業を目指そう
デイサービスをはじめ介護事業を開業するとなれば、さまざまな指定基準を満たす必要があります。大きく分けて人員基準、設備基準、運営基準の3つは、どのような施設であっても守らなくてはならないため、まずはこれらをクリアすることが第一条件となるでしょう。また、いくら基準を満たしていたとしても、事業を運営していく資金がなければ倒産となってしまう可能性があります。
せっかく開業したデイサービス事業を長続きさせるためにも、資金調達の方法を知っておくとともに、綿密な資金繰り計画を立てておくことも重要です。そしてコンセプトやサービス内容も開業前にしっかりと考えておくことで「利用者が利用しやすい施設」を目指すことができ、より地域に愛されるデイサービスを提供できるでしょう。今回ご紹介した内容をもとに、無理なく安定した開業を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
エステサロンの開業に必要な許可とは?保健所への届出や開業届について解説
エステサロンの開業は、夢を実現すると同時に、法律や規制の理解が不可欠です。保健所への届出や税務署への開業届提出など、手続きはサービス内容によって異なります。適切な手続きを怠ると、罰則や営業停止などのリスクが発生するでしょう。本記事では、営業…
詳しくみるジムを開業・経営する方法は?必要な資格や初期費用、失敗しないポイントも解説!
トレーナーや選手の経験がある方、スポーツが得意な方は、経験や特技を活かしてジムを開業するのもよいかもしれません。今、特にパーソナルジムが話題となっており、成功すれば大きな利益を得られる可能性もあります。 今回はジムを開業する方法やメリット、…
詳しくみるバイク屋を開業するには?バイク屋の業務形態や開業の流れを解説
好きなバイクに囲まれ、同じ趣味を持つ仲間と語り合い、ライダーたちのバイクライフをサポートする。バイク屋の開業は、大きな魅力とやりがいに満ちています。 しかし、その一方で、開業には綿密な計画と準備、そして乗り越えるべきハードルも少なくありませ…
詳しくみる店舗開業に必要な準備は?必要な資格や流れを解説
店舗を開業することは、多くの人にとって夢の実現であると同時に、大きな挑戦でもあります。成功する店舗開業には、入念な準備と適切な手続きが不可欠です。この記事では、店舗開業を成功させるための準備で必要なことや、成功のためのポイントなどを解説しま…
詳しくみる鹿児島県の開業届の提出方法(ネット・郵送)税務署一覧まとめ!
鹿児島県で開業届を提出する際は、ご自身がお住まいの地域を管轄する鹿児島県内の税務署に提出する必要があります。 開業届は、事業所得や、不動産所得・山林所得が発生するような事業を開始をした方が、鹿児島県の税務署に提出しなければならない書類です。…
詳しくみる東京都港区の開業届の提出方法(ネット・郵送)税務署一覧まとめ!
東京都港区で開業届を提出する際は、ご自身がお住まいの地域を管轄する港区内の税務署に提出する必要があります。 開業届は、事業所得や、不動産所得・山林所得が発生するような事業を開始をした方が、港区の税務署に提出しなければならない書類です。 青色…
詳しくみる