• 更新日 : 2025年5月19日

塾の経営は儲かる?学習塾開業までの流れや成功するためのポイントなど解説!

経済産業省がまとめた『特定サービス産業実態調査』によると、2018年時点での学習塾の数は46,734で、2013年の50,594から3,860に減少しています。5年間で約7.5%減少しましたが、減少のトレンドはいまだに続いている模様です。

塾を利用する生徒の減少率はさらに大きく、2013年から2018年の5年間で98万人も減少しています。学習塾を経営するには厳しい環境であると言わざるを得ませんが、なかには利益を着実に確保し、安定した経営をしている学習塾も存在します。

本記事では、学習塾開業までの流れや、成功するためのポイントなどについて解説します。

塾の経営は儲かる?塾の経営が厳しい理由は?

厚生労働省が行った『令和5年度賃金構造基本統計調査』によると、個人教師および塾・予備校講師の平均年収は430万700円です。この金額をどう捉えるかどうかは人それぞれですが、塾の経営が年々難しくなってきていることを否定できないようです。

実際に、学習塾の数は、2013年から2018年までの5年間で3,860件も減少しています。塾の経営が厳しい理由は何でしょうか。

少子化の影響

塾の経営が厳しい最大の理由は少子化です。経済産業省の『特定サービス産業実態調査』によると、塾を利用する生徒の数は、2013年から2018年までに410万3,045人から312万1,983人へと98万1,062人も減少しています。

5年間で約24%も減少するという驚くべき減少率です。生徒の数そのものが減ってしまっているため、ビジネスとして成立させるのは相応に困難です。

参入障壁が低い

少子化の影響に加えて、参入障壁が低いことも塾の経営が厳しい理由です。学習塾の開業には必要な資格などがないため、開業したいと思い立ったら誰でも開業できます。また、開業費用も比較的低く、新規参入を促す要因のひとつとなっています。

参入障壁が低いことは競争を招き、ひいては業界内のプレイヤー同士によるスクラップビルドを促します。競争力のない学習塾は、激しいスクラップアンドビルド圧力によって市場からの撤退を余儀なくされるでしょう。

学習塾の開業に必要な資格・許可は?

上述した通り、学習塾の開業に必要な資格はありません。教員免許のほか、大学卒業の学歴なども必要ありません。特別な許可も不要です。ただし、難関校受験や医学部・薬学部の入試などに特化した学習塾を開業する場合、特に自らが講師として指導する際には、それなりの学歴や受験合格歴があったほうがマーケティング的に有利でしょう。

また、個人事業主として学習塾を開業する場合は、開業の日から1カ月以内に所管税務署へ開業届を提出する必要があります。

活用できる資格やスキル

学習塾の開業で、創業者自身がプレイヤーとして指導する場合に、保有しているとプラスに働く資格やスキルがあります。

例えば、大学の修士号や博士号などの学位です。専門的な分野に知見があることを証明でき、保護者からの信頼を獲得しやすいメリットがあります。大学などで取得できる教員免許も学習塾を開業する場合には有効な資格です。教員免許取得のためには、教育理論なども学習することから、生徒の指導に役立つ可能性があります。

学習塾関連の専門の資格には、学習塾講師検定があります。塾講師に求められる知識やスキルなどを証明できる資格です。プレイヤーとしてエキスパートを目指す場合に役立ちます。

他にも、学習塾で指導する教科に関連して、実用英語技能検定TOEIC実用数学技能検定小論文検定なども講義に役立つ可能性があります。

学習塾の開業に必要な費用は?

学習塾の開業に必要な資金は、学習塾の種類や規模、またはロケーションなどにより変動しますが、一般的には100万円から500万円程度かかるといわれています。

開業費の内訳は、物件取得費、内外装工事費、教材購入・作成費用、机や椅子などの什器備品、パソコンなどのOA機器購入費用、広告宣伝費、リモート学習を行う際は通信設備費、フランチャイズに加盟する際はフランチャイズ加盟料、開業後当面の運転資金などが含まれます。

学習塾を開業するまでの流れは?

学習塾を開業するまでの流れはどうなっているのでしょうか。どのようなタイプの学習塾を開業するかにもよりますが、多くのケースにおいて、以下の流れが一般的のようです。

なお、フランチャイズ加盟により学習塾を開業するのではなく、個人事業主として学習塾を開業することを前提としています。フランチャイズ加盟により学習塾を開業する場合は、フランチャイズ本部との契約ややりとりなどを併せて行う必要があります。

塾のコンセプトの策定

最初のステップは塾のコンセプトの策定です。実際に「どのような生徒を対象に、どのような授業を提供し、どのような成果を目指すのか」「集団指導(4人以上の生徒を指導すること)か、または個別指導(3人以下の生徒を指導すること)を行うのか」「授業科目やそれぞれのコマ数はいくつか」を明確にしていきましょう。

また、年間の指導プログラムの概要なども決めておくとよいでしょう。さらに授業時間、授業料、オンラインによるリモート学習の有無なども一緒に決めます。

商圏分析の実施

塾のコンセプトが決まったら、次のステップは商圏分析の実施です。開業を予定しているエリアにつき、人口、人口動態、小学校、中学校、高校のそれぞれの数と生徒数、競合する学習塾の数とタイプなどを把握してマッピングします。

そのうえで、そのエリアに特に多く存在すると予想される学習ニーズを推察します。推察された学習ニーズと策定したコンセプトを突き合わせし、ズレが認められた場合はコンセプトを修正します。

また、競合する学習塾については、特に繁盛している学習塾については実地調査を行うなどして情報を収集するとよいでしょう。

物件の取得

商圏分析を実施し、コンセプトの修正や調整が終わったら物件の取得です。対象エリアの地元の不動産屋に物件の紹介を依頼するとともに、自らもインターネットなどで物件情報を取得しましょう。

また、最近は学習塾の物件を居抜きで紹介するインターネットのWebサイトなども存在するため、積極的に利用しましょう。

物件を検討する際は、ターゲットとなる生徒達の居住エリアを確認し、生活範囲圏の動線と重なる場所を選ぶことがポイントになります。

開業・集客

物件を取得し、内外装工事や什器備品の設置が済み、教材などの準備が済んだらいよいよ開業です。個人事業主として開業する際は、開業の日から1カ月以内に所管の税務署に開業届を提出します。

開業に合わせて集客も開始しましょう。集客は、街頭でのチラシ配布、ポスティング、折込広告、フリーペーパー、スーパーマーケットなどの掲示板といったリアルの広告に加え、インターネットのホームページ、ブログ、ソーシャルメディア、YouTubeなどのオンラインの広告なども活用してください。

塾経営者の年収の目安は?

先述で、『令和元年度賃金構造基本統計調査』によると、個人教師および塾・予備校講師の平均年収は393万6,900円であるとお伝えしました。個人事業主として学習塾を開業した場合と、自分一人で講師をした場合の年収のボリュームゾーンは同程度であると思われます。

一方、難関校受験や医学部受験、またはロースクール受験などの特殊な受験ジャンルに特化するなどして収入を増やすことは可能です。また、学習塾によっては英語や数学に特化して授業料にプレミアムを乗せているところも存在します。

失敗する塾経営者の特徴は?

帝国データバンクによると、2018年度の学習塾を含む教育関連業者の倒産件数は91件で、リーマンショック後の2009年の93件に次ぐ過去二番目の高水準だったそうです。特に学習塾の倒産件数は35件で、過去最高を記録しています。

経済環境の悪化や少子化の進行により、さらに最近は人手不足による人件費の高騰から、一定数の学習塾が市場からの撤退を余儀なくされています。ここでは、失敗する学習塾経営者の主な特徴について、見ていきましょう。

生徒の学習ニーズに対応していない

学習塾の経営に失敗する経営者の特徴の一つは、生徒の学習ニーズに対応していないことです。

経営に失敗する学習塾の経営者のなかには、「生徒が教えてほしいと望んでいることを教える」のではなく、「自分が教えたいことを教える」傾向があるといわれています。また、授業の進行が一方的になり、学習成果も限られてしまいます。

一方で、優秀な経営者は生徒の学習ニーズを細かく把握し、それを満たすための授業を提供します。学習ニーズを満たすスキルを蓄積し、そのクオリティをどんどん高めてゆきます。

マーケティングができない

もう一つの特徴として挙げられるのが、マーケティングが十分にできないことです。マーケティングのなかでも、特に集客ができない方の多くは、「自分の授業や教材は優れているのだから、集客をしなくても生徒が集まってくる」と考えているようです。そのため、自ら行動をしていない傾向が見られます。

しかし、積極的に宣伝をして集客をしなければ生徒を集めることはできません。優秀な経営者はマーケティングの意味と重要性を理解し、自ら実践しています。

学習塾の経営に成功するためのポイントは?

では、学習塾の経営に成功するためのポイントは何でしょうか。それは、上述した失敗する塾経営者の轍を踏まないことです。すなわち、「生徒の学習ニーズに対応」「マーケティングを実践」することです。

生徒の学習ニーズに対応するには、学習目標を設定して、生徒とのコミュニケーションを密にとることが重要です。「生徒がもっとも身につけたい知識は何か」「生徒の強みと弱みは何か」といった重要な情報を生徒一人ひとりから聞き出し、共有しましょう。

また、マーケティングを実践するには、マーケティング目標を設定し、それを実現するための具体的な計画を立てて実行することが重要です。

例えば、新規生徒10人の獲得を目標に設定したら、既存生徒による紹介システムを導入する、または体験学習をポスティングで告知するなど、それぞれ策定して実行します。生徒の学習ニーズへの対応やマーケティングの実践に加え、以下に紹介する5つの学習塾を開業する際に確認しておきたいポイントです。

開業場所の選定

学習塾をどこに開業するかは収益に大きく影響します。新しく開業する際には、見つけてもらいやすい場所であることを意識しましょう。学校の近くにあるなど、通いやすさもポイントです。保護者の送迎も考えられるため、自動車や自動二輪での送り迎えに対応できるよう、駐車場や駐輪場を確保できる場所が理想です。

ただし、できるだけ好条件の場所を探そうとするあまり、家賃との兼ね合いに問題が生じることもあります。特に、駅の近くや幹線道路沿いは家賃が高い傾向にあります。家賃は学習塾経営において大部分を占めることもあるため、安定した経営ができるような家賃の範囲内で選定するようにしましょう。周辺の競合を調査しておくことも重要です。

価格の設定

学習塾を開業する際には、価格設定を十分に検討する必要があります。わかりやすいのは、周辺の学習塾の授業1コマあたりの相場です。学習塾によって1コマの時間が異なるため、1時間あたりの金額に換算して比較します。周辺の学習塾の相場の把握は、他と著しく乖離しない価格を設定するためにも重要です。

相場を把握したあとは、学習塾の授業の形態(個人指導なのか少人数指導なのかなど)や必要経費なども加味して価格を決めていきましょう。一般的に、学習塾は大人数向けよりも少人数向けの方が、1コマあたりの授業料は高くなる傾向にあります。

カリキュラムの編成

カリキュラムは、学習塾での教育目標を達成するための教育プログラムです。カリキュラムの作成は、学習塾の方向性を確立し、学習塾としての実績を高めるのに有効です。

カリキュラムの作成は、生徒の学力レベルを把握したうえで、どの程度のレベルの向上をどのくらいの期間で目指すのか、目標を明確にすることから始めましょう。目標をベースに年間の学習スケジュールを決定したあとは、学習内容に適した教材の選択を行い、カリキュラムに反映させます。カリキュラムは、定期的に進捗を確認しつつ、必要に応じて見直すことも必要です。

また、カリキュラムは学習塾のタイプによっても異なります。集団塾の場合は全体の学力の底上げ、個人指導の場合は生徒のニーズに適したカリキュラムの提供が重視されます。

大手との差別化

全国で展開するような大手と同じような経営をしても、知名度やブランド力では優位になるのが難しいため、大手に生徒が流れてしまいます。学習塾として確固たるポジションを築くには、大手と差別化する対策が欠かせません。

差別化の対策には、さまざまな方法が考えられます。例えば、大手では対応できない生徒一人ひとりのニーズを重視したカリキュラムで学力を向上させるなどです。保護者向けに、保護者が参加できる独自のサービスを提供する、独自のシステムを利用して生徒の自主学習をサポートするなどの方法も考えられます。コストパフォーマンスなども考慮し、大手との違いを打ち出していくことが学習塾経営の成功のポイントです。

集客

開業して間もない学習塾で必要なのは、生徒の獲得です。周辺に学習塾の存在を知ってもらうためには、看板の設置やチラシの配布などが有効でしょう。チラシは、関心を集めやすい定期テストや長期休暇のタイミングなどをねらって作成するのがおすすめです。

どのような授業を行っているか気軽に参加してもらえるように、無料の体験入会や授業料割引のキャンペーンなどを実施する方法も考えられます。インターネットで情報を集める方もいるため、ホームページの作成やWeb広告の出稿、SNS運用、動画投稿などのオンライン施策も集客に役立ちます。集客は、できるだけターゲットの目に触れやすい方法で、かつ複数の方法を運用するのがおすすめです。さまざまな経路での流入が期待できます。

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自分の強みを活かしつつニーズに対応しよう!

以上、学習塾の経営について、学習塾開業までの流れや成功するためのポイントなどを含めて解説しました。少子化が加速する日本においては、学習塾にとって困難な状況が今後も続くことでしょう。

しかし、学習塾に対するニーズがゼロになるわけではありません。そのため、自分の強みを活かしつつ、生徒の学習ニーズに対応することが求められます。本記事をご参考に、生徒一人ひとりの歩みに合わせて、学習塾の勝ち組となってください。

よくある質問

塾の経営が厳しい理由は?

塾の経営が厳しい最大の理由は少子化です。経済産業省によると、塾を利用する生徒の数は、2013年から2018年までに410万3,045人から312万1,983人へ約98万人も減少しています。詳しくはこちらをご覧ください。

塾の開業に必要な資格は?

学習塾の開業に必要な資格はありません。ただし、難関校受験や医学部の入試などに特化した学習塾を開業する場合には、それなりの学歴や受験合格歴があった方が集客に有利でしょう。詳しくはこちらをご覧ください。


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