• 作成日 : 2025年9月16日

唐揚げ屋の開業は儲からない?閉店ラッシュの現実と失敗しないためのポイントを解説

唐揚げは国民食ともいえるほどの人気を誇り、比較的少ない資金で開業できる手軽さから、近年参入者が急増しました。しかし、2023年には唐揚げ専門店の閉店数が過去最多と報じられ、ブームの反動や競争激化が現実となっています。

この記事では、唐揚げ屋を開業したいと考える方が、儲からないといった失敗を避け、着実に成功を目指すための具体的な方法を解説します。

唐揚げ屋の開業形態

唐揚げ屋を開業するには、フランチャイズ(FC)に加盟する方法と、完全に独立した個人店として開業する方法があります。それぞれに異なる特徴があり、自身の経験や資金、目指す店舗像に合わせて選択することが求められます。

フランチャイズ(FC)

唐揚げ屋のフランチャイズに加盟する最大のメリットは、本部のブランド力と確立された経営ノウハウを活用できる点です。多くの場合、研修制度が整っているため、飲食業界が未経験の方でもスムーズに開業しやすいでしょう。

ただし、加盟金や毎月のロイヤリティの支払いが発生します。また、メニューや店舗運営に関するルールが定められており、経営の自由度が制限される側面もあります。さらに、フランチャイズ契約は中途解約が難しい場合も多いため、契約内容の精査が重要です。

個人開業

個人開業の魅力は、経営の自由度の高さにあります。味付けやコンセプトを自分の意思で追求でき、利益はすべて自分に帰属します。

ただし、ブランド認知度の確保や安定的な仕入れルートの構築、資金調達、経理・労務管理、集客マーケティングまで全てを自己責任で対応する必要があります。食品衛生法に基づく「食品衛生責任者」の設置や保健所の営業許可、防火管理者選任(規模による)といった法令遵守も欠かせません。

リスクは高いものの、成功すれば大きな収益やブランド価値を手にできる可能性があります。

唐揚げ屋の閉店ラッシュの背景

近年、唐揚げ専門店の数が増加しましたが、同時に多くの店が市場から姿を消しています。この閉店ラッシュの背景には、単なるブームの終焉だけではない、構造的な問題が存在します。

参入障壁の低さが招いた競争激化

唐揚げ屋は比較的小さなスペースと少ない設備投資で開業できるため、飲食業の中でも特に参入しやすい業態です。しかし、同じような価格帯や品質の店舗が乱立し、価格競争が激化しています。そのため、他店との明確な差別化ができない店舗は淘汰されるという、非常に厳しい状況です。

原材料・光熱費の高騰による利益圧迫

鶏肉や揚げ油といった主要な原材料の価格、さらに電気代やガス代などの光熱費は、社会情勢を反映して上昇を続けています。これらのコスト増は、利益を直接的に圧迫する可能性があります。

唐揚げ屋の開業に必要な資格・許可

唐揚げ屋を開業するには、主に以下の資格と許可が必要です。

  • 食品衛生責任者
    各店舗に1名必ず配置しなければならない国家資格です。地域の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで取得できます。
  • 飲食店営業許可
    店舗の所在地を管轄する保健所に申請し、施設の検査に合格して取得する許可です。厨房設備・シンクの数・換気・衛生動線などが審査対象となります。工事着工前に設計図を持参して保健所に事前相談を行うとスムーズです。
  • 防火管理者(必要に応じて)
    収容人員が30人以上となる店舗では、消防法に基づき甲種防火管理者の選任が義務づけられています。小規模店舗でも、火を使用する設備を導入する際には、消防署への届出(使用開始届・火気設備設置届など)が必要になる場合があります。店舗規模に応じて、事前に所轄消防署へ確認しましょう。

唐揚げ屋の開業に必要な資金

開業を決意した際に、最初に直面するのが資金の問題です。

テイクアウト専門店であれば、小規模な物件で済むため300万円〜700万円程度が開業資金の一つの目安です。一方、イートインスペースを設ける場合は、内装工事費や客席の設備費が加わり、1,000万円以上になることもあります。

開業資金の主な内訳
  • 物件取得費:保証金、礼金、仲介手数料など
  • 内外装工事費:設計デザイン費、施工費など
  • 厨房設備費:フライヤー、冷蔵庫、作業台、シンクなど
  • 初期運転資金:開業直後の売上が安定するまでの数か月分の家賃、人件費、原材料費、光熱費など

開業資金の全額を自己資金で賄うのが理想ですが、多くの場合、融資の活用を検討することになります。日本政策金融公庫の創業融資制度は、比較的低い金利で利用できる可能性があるため、多くの起業家が活用しています。融資審査を通過するには、事業の実現性や収益性を具体的に示した、精度の高い事業計画書が不可欠です。

唐揚げ屋の1日の売上と利益のシミュレーション

ここで、1日のリアルな売上と利益を想定し、事業計画の精度を高めましょう。

売上シミュレーション

例えば、客単価を800円と設定し、1日に60人の来客があった場合、1日の売上は48,000円です。月25日営業すると、月の総売上は約120万円になります。この売上目標を達成するために、どのような商品構成や集客活動が必要かを逆算して考えます。

利益シミュレーション

月の総売上120万円から経費を差し引いて、利益を計算します。原材料費(売上の30%)が36万円、家賃が15万円、人件費が30万円、光熱費・その他経費が15万円と仮定すると、合計96万円が経費です。この場合、手元に残る利益は24万円となります。

唐揚げ屋の開業で失敗しないためのポイント

多くの店舗が閉店していく中で生き残り、繁盛店となるためには明確な戦略が必要です。唐揚げ屋の開業における失敗の典型的なパターンを避け、顧客に選ばれ続ける店になるための、5つの重要な取り組みを紹介します。

1. コンセプトとターゲットの明確化

誰に、何を、どのように提供するのかというコンセプトを徹底的に具体化しましょう。例えば、学生向けのボリューム満点唐揚げ、健康志向の女性向けの米粉を使ったヘルシーな唐揚げ、地域の家族をターゲットにした夕食のおかずとしての唐揚げなど、ターゲット顧客を絞ることで、メニュー開発、価格設定、店舗デザイン、立地選定の方向性が明確になります。

2. 徹底した味の追求と品質管理

唐揚げ屋の生命線は、言うまでもなく味です。冷めても美味しいか、衣の食感はサクサクか、肉はジューシーに保たれているかなど、細部にわたる味の追求がリピーターを育てます。特定の銘柄鶏を使う、秘伝のタレを開発する、揚げ油の種類や交換頻度にこだわるなど、他店にはない価値を提供することが重要です。また、いつ訪れても同じ品質の商品を提供できる、安定したオペレーションの構築も欠かせません。

3. 立地選定とマーケティング戦略

人通りが多いからという理由だけで立地を決めるのは危険です。設定したターゲット顧客が実際に生活したり、働いたりしているエリアを慎重に見極める必要があります。

また、集客にWebマーケティングは不可欠です。Googleビジネスプロフィールを充実させ、SNSで開店前から情報を発信するなど、認知度を高めましょう。オープン後もチラシ配布や地域イベントへの出店、デリバリーサービスの活用など、地道で継続的なマーケティング活動が繁盛店への道を開きます。

4. 利益率を最大化する経営戦略

売上を伸ばすだけでなく、利益率を意識した経営が重要です。唐揚げ単品だけでなく、ポテトやサラダ、ドリンクといったサイドメニューを充実させ、セット販売で客単価の向上を目指しましょう。また、ごはん付きの唐揚げ弁当を提供することで、ランチ需要を取り込むことも有効です。フードロスを最小限に抑えるための発注管理や、効率的な人員配置による人件費の最適化も、利益を確保するために常に意識すべきポイントです。

5. 緻密な事業計画の策定

思いつきで開業するのは失敗への最短ルートです。ここまで解説してきたコンセプト、資金計画、収支シミュレーション、マーケティング戦略などを具体的な数値目標と共に詳細な事業計画書に落とし込みましょう。計画を具体化する過程で、事業の課題やリスクが明確になります。この計画書は、金融機関から融資を受ける際の必須資料となるだけでなく、開業後の経営の羅針盤となります。

厳しい時代を勝ち抜く唐揚げ屋を目指しましょう

この記事では、唐揚げ屋の開業を取り巻く厳しい現実と、その中で成功を掴むための具体的な方策を解説しました。閉店ラッシュの背景にある競争激化やコスト高は紛れもない事実ですが、緻密な事業計画と他店にはない独自の魅力があれば、十分に勝機はあります。

開業資金の計画、売上と利益のシミュレーション、そして失敗を避けるためのコンセプト設計と地道な努力。これらを一つずつ着実に実行することが、あなたの店を地域で永く愛される人気店へと導くでしょう。


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