- 作成日 : 2025年8月29日
障害者施設の開業・立ち上げガイド|必要な資格・資金から経営者の年収まで徹底解説
社会貢献への意欲と事業の安定性を両立できる可能性から、障害者施設の開業に関心を持つ方が増えています。しかし、その一方で「何から始めればいいのか分からない」「特別な資格や多額の資金が必要なのでは?」といった不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、障害者施設の開業を目指す方へ向けて、事業の種類や立ち上げの具体的なステップ、避けては通れない資金調達の方法、そして気になる経営者の年収や収入源を分かりやすく解説します。
目次
障害者施設の種類
障害者施設と一言でいっても、そのサービス内容は多岐にわたります。障害者総合支援法に基づき、利用者の障害特性やニーズに合わせて、様々な事業形態が存在します。どの事業を選ぶかによって、必要な人員、設備、そして収益構造が大きく変わるため、最初の選択が極めて重要です。
共同生活援助(グループホーム)
地域での自立した生活を目指す障害のある方を対象に、夜間や休日を中心に共同生活を営む住居を提供し、相談や入浴、食事などの日常生活上の援助を行うサービスです。利用者数(定員)に応じた継続的な給付費収入が見込めるほか、家賃収入も得られるため、比較的安定した収益モデルを築きやすい特徴があります。
就労継続支援(A型・B型)
一般企業での就労が困難な障害のある方へ、働く場と生産活動の機会を提供するサービスです。A型は利用者と雇用契約を結び、最低賃金を保障する「雇用型」、B型は雇用契約を結ばずに軽作業などの訓練を行う「非雇用型」という大きな違いがあります。A型は給付費に加えて事業活動からの収益、B型は給付費と生産活動で得た工賃が収入の柱となり、多角的な収益化を目指せる事業です。
生活介護
常に介護を必要とする方(障害支援区分3以上など)を対象に、日中、事業所に通っていただき、入浴、排せつ、食事といった身体介護や、創作的・生産的活動の機会を提供するサービスです。医療的ケアの必要性が高い利用者を受け入れることも多く、高い専門性が求められる分、給付費の単価は他のサービスに比べて高く設定されています。
放課後等デイサービス
障害のある就学児童(小学生から高校生まで)を対象としたサービスです。放課後や夏休みなどの長期休暇中に、生活能力向上のための訓練や社会との交流促進など、個々の状況に応じた療育プログラムを提供します。少子化という課題はあるものの、共働き世帯の増加などを背景に社会的ニーズは依然として高く、提供するプログラムの質が事業所の競争力に直結します。
障害者施設を開業する流れ
障害者施設の開業は、思いつきで始められるものではありません。法令に基づいた厳格な基準を満たし、計画的に準備を進める必要があります。ここでは、事業計画の策定から事業開始までの具体的な流れを7つのステップに分けて詳しく解説します。
1. 事業計画の策定
全ての事業の出発点となるのが、精度の高い事業計画です。「どのような理念で、誰に、どのようなサービスを提供したいのか」という事業の核を明確にしましょう。その上で、サービス提供地域におけるニーズ調査、競合施設の分析、収支シミュレーションなどを行い、事業の実現可能性を具体的に検証します。事業計画書は、後の資金調達や行政への説明においても重要な資料となります。
2. 法人格の取得
障害福祉サービス事業を行うには、原則として法人格が必要です。株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人などから、事業規模や理念に応じて最適なものを選択します。
- NPO法人:非営利性が強く、社会的信用を得やすいが、設立に時間がかかる。
- 合同会社:設立費用が安く、手続きが迅速。小規模で始める場合に人気。
- 株式会社:社会的な信用度は高いが、設立費用や運営コストがかかる。
3. 資格を取得し、人員基準を満たす
事業運営には、法令で定められた人員基準を満たす必要があります。特に、利用者の個別支援計画を作成する「サービス管理責任者(サビ管)」は事業の要です。
サービス管理責任者(サビ管)になるには、実務経験(通常3年以上)と研修修了が必須であり、現場では人手不足が続いています。 そのため、事業計画と並行して、早い段階で人材確保を進めることが重要です。
4. 物件を確保し、設備基準をクリアする
利用者が安全かつ快適に過ごせる環境を整えるため、物件選びは極めて重要です。建築基準法や消防法に加え、障害福祉サービスごとに定められた設備基準を全てクリアしなければなりません。駅からのアクセスや周辺環境も利用者の集まりやすさに影響します。基準を満たす物件が見つからない場合は、リフォームや新築も視野に入れる必要があります。
5. 指定申請書類を提出する
事業所として正式に認可を受けるために、管轄の都道府県または市町村へ「指定申請」を行います。申請には、事業計画書、定款、法人登記事項証明書、従業員の資格証の写し、事業所の平面図、運営規程など、非常に多くの書類が必要です。
不備があると認可が遅れる原因となるため、チェックリストを作成し、一つひとつ着実に準備を進めましょう。専門性が求められる場面では、行政書士などの専門家へ依頼するのも有効な方法です。
6. 行政との協議・実地調査を行う
書類を提出した後は、行政の担当者との面談や協議が行われます。事業内容や運営方針について詳しく説明を求められるほか、実際に事業所の現地確認(実地調査)が行われることもあります。ここでは、申請書類の内容と実際の設備や運営体制が一致しているか、基準を遵守しているかが厳しくチェックされます。誠実かつ的確な対応を心がけましょう。
7. 指定通知書を受領し、事業を開始する
全ての審査をクリアすると、行政から「指定通知書」が交付されます。この通知書を受け取って初めて、障害福祉サービスの事業者として正式に事業を開始し、国保連(国民健康保険団体連合会)へ介護給付費を請求できるようになります。指定日以降、計画に沿って利用者を受け入れ、サービスの提供をスタートします。
障害者施設の開業資金の内訳
開業に必要な資金は、設備資金と運転資金に分けられます。
- 設備資金:物件取得費・賃貸初期費用、内外装工事費、什器・備品購入費など
- 運転資金:事業が軌道に乗るまでの人件費、家賃、水道光熱費など
特に重要なのは、運転資金です。給付金の入金はサービス提供から約2ヶ月後になるため、最低でも3ヶ月分以上の運転資金を確保しておくことが安定経営の第一歩です。
障害者施設の開業時の資金調達方法
障害者施設の開業時の資金調達方法は、以下の通りです。
自己資金
全てを自己資金で賄うのは現実的ではないため、多くの場合、自己資金と融資を組み合わせて資金を準備します。融資を受ける際、自己資金の額は事業への本気度を示す指標として見られます。一般的に、創業融資を受けるには、必要資金総額の20%〜30%程度の自己資金を用意しておくことが望ましいとされています。計画的に貯蓄を進めておくことが大切です。
融資制度の活用
自己資金や補助金だけでは不足する場合、金融機関からの融資を検討します。特に、これから事業を始める方にとって心強いのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」や「ソーシャルビジネス支援資金」です。民間の金融機関に比べて低金利かつ長期での借入が可能な場合が多く、創業時の大きな支えとなります。融資を受けるためには、実現可能性の高い事業計画書の提出が不可欠です。
参考:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫、ソーシャルビジネス支援資金|日本政策金融公庫
補助金・助成金の活用
国の施策として、障害者施設の開設や運営を支援するための補助金・助成金制度が用意されています。例えば、施設の整備費や改修費に対する補助、設備の購入費用を助成する制度などがあります。具体的な金額は、自治体や年度、事業内容によって大きく異なりますが、数百万円から数千万円規模の補助が受けられるケースもあります。自治体の障害福祉課などに早めに相談し、活用できる制度がないか情報収集を積極的に行いましょう。
障害者施設の収入源と経営者の年収
事業を継続させていくためには、収益性を確保することが不可欠です。ここでは、障害者施設の主な収入源と、気になる経営者の年収、そして安定経営を実現するためのポイントについて解説します。
主な障害者施設の収入源
障害者施設の収入源の大部分は、国や自治体から支払われる「介護給付費」や「訓練等給付費」です。これは、提供したサービスの内容や利用者の数、利用日数などに応じて算出されます。利用定員に対する稼働率を高めることが、収入を安定させる上で非常に重要になります。その他、利用者から受け取る食費や家賃などの実費も収入の一部となりますが、基本的には公的な給付金が経営の柱です。
障害者施設の経営者の年収
障害者施設の経営者の年収は、施設の規模や事業の種類、稼働率、経営手腕によって大きく変動するため一概には言えません。小規模な施設であれば300万〜500万円程度から、複数の事業所を展開するなど事業を拡大していけば1000万円以上を目指すことも可能です。重要なのは、適切な人員配置や経費管理によって利益を確保することです。設立当初は役員報酬を低めに設定し、経営が安定してから見直すのが一般的です。
障害者施設の安定経営を実現するためのポイント
安定した経営を実現するためには、以下の3点が重要です。
- 高い稼働率の維持
待っているだけでは利用者は集まりません。地域の相談支援事業所や病院、特別支援学校などを訪問し、施設の理念や特色を伝え、信頼関係を築く地道な営業活動が不可欠です。 - 質の高いサービスの提供
利用者やその家族の満足度が、良い評判を生み出します。口コミや紹介が、何よりの営業ツールとなるのです。 - 適切なコスト管理
収入の大部分が障害福祉サービス等報酬で決まっているため、利益を出すにはコスト管理が鍵となります。特に大きな割合を占める人件費や家賃を適切にコントロールし、健全な財務体質を維持しましょう。
障害者施設の開業についてよくある質問
最後に、障害者施設の開業に関してよく寄せられる質問にお答えします。
障害者施設は一人で開業できる?
法令上、一人で障害者施設を立ち上げ、運営することはできません。管理者やサービス管理責任者など、複数の専門スタッフの配置が義務付けられているからです。
ただし、法人設立や事業計画策定といった開業準備の多くは一人で進められます。その過程で理念に共感してくれる仲間を見つけ、信頼できるチームを築き上げることが成功への第一歩です。
障害者グループホームを作るには特別な資格が必要?
経営者自身が特定の福祉資格を持っている必要はありません。しかし、事業所には、必要な資格を持つ「サービス管理責任者」や「世話人」などを必ず配置しなければなりません。これらの有資格者を雇用できれば、無資格からでも開業は可能です。ただし、質の高い運営のためには、経営者自身が福祉の理念や関連法規を深く理解しておくことが不可欠です。
障害者施設の開業を成功させましょう
障害者施設の開業は、社会的な意義が極めて大きく、安定した事業運営も期待できる、やりがいに満ちた挑戦です。その実現には、情熱はもちろんのこと、入念な事業計画、法令に基づいた人員・設備基準の遵守、そして確実な資金計画という冷静な視点が欠かせません。
本記事で解説した立ち上げのステップや経営のポイントが、あなたの開業プランを具体化する一助となれば幸いです。
不安な点は専門家の力も借りながら、まずは一歩を踏み出してみましょう。あなたの熱意が、地域社会を支える新たな光となることを心から願っています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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