- 作成日 : 2025年8月19日
日本政策金融公庫で融資を断られたらどうする?再申請のポイントや代替策を解説
日本政策金融公庫の融資は、創業者にとって貴重な資金調達手段の一つですが、審査に落ちてしまうことも少なくありません。しかし、融資を断られたからといって資金調達の道が閉ざされるわけではなく、適切な対応と準備を行えば再チャレンジも可能です。
本記事では、融資審査に落ちる原因や対処法、再申請のポイント、代替資金の活用策を解説します。
目次
日本政策金融公庫の融資審査で断られるケースは珍しくない
日本政策金融公庫の融資審査は民間の金融機関に比べれば利用しやすいといわれますが、事業計画や返済能力などを総合的に判断する厳正な審査が行われるため、融資を断られることも決して珍しくありません。審査通過率は公表されていませんが、万全な準備が求められます。
政府系の公的融資とはいえ、事業計画や返済能力などを総合的に判断する厳正な審査が行われるので、融資を断られることは決して稀ではありません。
日本政策金融公庫の公表資料によると、たとえば2024年度の国民生活事業だけでも約27万件の融資が実行されており、全体の申込件数はこれを上回る規模となります。政府系の公的融資とはいえ、誰でも融資を受けられるわけではありません。
日本公庫の創業融資では、担当者との面談や事業計画書の内容をもとに審査が行われ、約2〜3週間で結果が通知されます。残念ながら審査落ちとなった場合でも落胆する必要はありません。なぜ融資が断られたのか理由を把握し、改善に取り組めば再挑戦のチャンスはあります。
日本政策金融公庫の融資審査は断られても再申請できる?
日本政策金融公庫の融資に一度落ちてしまったとしても、再び挑戦することは可能です。ただし、再申請には一定の条件やタイミングがあるため、落ちた原因を正しく把握し、準備を整えることが必要です。ここでは、再申請の可否や注意点について解説します。
再申請は原則として6ヶ月後から可能
日本政策金融公庫では一度審査に落ちた場合でも再申請は可能ですが、公式なルールではないものの、実務上は最初の申請から最低でも6ヶ月程度は期間を空けるのが一般的とされています。これは、否決の原因となった課題を改善するための準備期間と捉えられています。
仮にこの期間中に申請しても受理されない、または再び否決となる可能性が高いため、焦らず改善に時間を充てることが大切です。
日本政策金融公庫の融資が断られる主な理由と対策
日本政策金融公庫の融資の審査にはいくつかの評価基準があり、そこに満たない場合は融資を断られることもあります。ここでは、断られる主な理由とそれぞれの対策を解説します。
信用情報に傷がある
日本政策金融公庫の審査では、申込者の信用情報が必ず確認されます。過去にクレジットカードやローンの支払いの延滞、自己破産、債務整理の履歴があると、「返済能力に問題がある」と判断され、融資審査で不利になります。これらの情報は、信用情報機関に5〜10年にわたって記録されるため、その間は融資が通りにくくなります。
信用情報に心当たりがある場合は、自身で情報開示を行い、履歴を確認することが第一歩です。延滞している支払いがある場合はすぐに清算し、今後の信用回復に努めましょう。また、債務整理後であっても時間が経過し、収入や支出のバランスが健全であれば、再挑戦の余地はあります。
自己資金が不足している
創業融資を申し込む際には、自己資金の有無が重要な判断材料になります。自己資金とは、他人からの借入に頼らず、創業者自身が蓄えた資金を意味します。2024年以降は創業資金総額に占める自己資金額の条件は制度上撤廃されました。ただし、実務的には融資希望額の2〜3割程度の自己資金があるほうが審査に通りやすい傾向は続いています。
自己資金が少なすぎると「返済への責任感が弱い」と見なされる可能性があります。親族からの贈与や、退職金・貯金の取り崩しなどで、少しでも多くの資金を用意することが望まれます。自己資金の金額だけでなく、その蓄え方(継続的な積立など)も評価されるため、日頃からの資金管理が大切です。
税金や公共料金の未納がある
所得税、住民税、消費税、国民年金、健康保険料などの公的支払いに未納・滞納があると、日本公庫の審査では大きなマイナスポイントになります。これらの未払いは「資金管理能力の欠如」と受け取られ、経営者としての信頼を損ねる結果となります。
融資申請の際には納税証明書の提出が求められるため、過去の滞納が発覚することは避けられません。未納がある場合は、まずはすべて完納し、必要であれば「完納証明書」などを準備して誠実な姿勢を示しましょう。もし過去に滞納などがあった場合でもすでに解消済みであれば、その点をきちんと説明することも大切です。
創業計画書に説得力がない
事業の将来性を判断するうえで、創業計画書の内容は重要です。売上や利益の予測が現実的でなかったり、収支計画が甘かったり、資金使途があいまいであった場合には、審査でマイナス評価となる可能性が高くなります。また、数字に裏付けがなかったり、市場分析が不足していたりすると「準備不足」と見なされることもあります。
創業計画書を作成する際は、売上根拠として客観的なデータ(業界統計、見積書、契約予定など)を用い、支出についても内訳を明確にすることが求められます。不安があれば、商工会議所や認定支援機関などの専門家に事前相談を行い、ブラッシュアップしてから提出するようにしましょう。
創業分野での経験が乏しい
創業しようとする分野での実務経験が不足している場合も、融資審査では不利に働きます。経験がないまま全く新しい業種に挑戦する場合、事業運営に対する理解や準備が十分でないと判断されるおそれがあります。
そのようなときは、資格の取得や関連する講座の受講履歴を提示する、実務経験のあるパートナーとチームを組むなどの対策が有効です。また、試験的にスモールスタートで実績を作り、「この事業は実行可能である」という証明を整えたうえで、あらためて申し込むこともひとつの方法です。
日本政策金融公庫で融資を断られたが再申請をしたい場合にすべきこと
日本政策金融公庫からの融資審査に通らなかったとしても、資金調達の可能性がすべて閉ざされるわけではありません。大切なのは、落ち込む前に原因を冷静に把握し、再申請や代替手段に向けた適切な対応をとることです。ここでは、融資を断られた後にとるべき行動と、再挑戦に向けた準備の進め方について解説します。
担当者に審査結果の理由を聞く
最初にすべきことは、日本政策金融公庫の担当者に審査結果の理由を尋ねることです。審査結果は通常、郵送で通知されますが、そこには具体的な否決理由は記載されていません。多くの場合、電話や面談で直接担当者に問い合わせることで、「自己資金が不十分だった」「売上見込みが甘かった」「税務面の書類が不完全だった」など、融資否決の背景について教えてもらえることがあります。
審査の詳細は開示されない場合もありますが、可能な範囲で助言をもらえることが多く、公庫側も再申請の可能性を見据えてアドバイスしてくれる傾向があります。「どの点を改善すべきか」「どの程度の自己資金が望ましいか」など、具体的に質問して理解を深めましょう。原因がわかれば、次回の申請でどこに重点を置くべきかが明確になります。
指摘された不足点を改善する
担当者からのフィードバックをもとに、審査で指摘された不足点を徹底的に見直しましょう。たとえば、自己資金が少なかった場合は貯蓄を進めたり、親族などから資金提供を受けて資本金を厚くしたりする対策が考えられます。また、創業計画書が不十分だった場合は、専門家に内容を確認してもらい、収支計画や市場分析、資金使途の明確化などを加えて説得力を高める必要があります。
信用情報に傷があるケースでは、延滞や滞納の解消後、一定期間クレジットの正常な利用履歴を重ねることで、信頼を回復できます。こうした修正や改善には時間がかかる場合もありますが、一度審査で否決された原因をしっかり解消してから再申請することで、融資が通る可能性は高まります。
専門家に相談しサポートを受ける
融資の再挑戦に向けて、認定支援機関などの専門家のサポートを受けることは非常に有効です。税理士や中小企業診断士、公認会計士などは、事業計画書の改善、収支シミュレーションの見直し、自己資金や資金繰りに関する戦略の提案など、具体的で実践的なアドバイスを提供してくれます。
各地域の商工会議所や自治体が設ける創業支援窓口でも、無料もしくは低料金で専門的な支援が受けられます。日本政策金融公庫自体も、定期的に創業相談会や個別相談を開催しており、そこでは実際に審査を担当する職員からアドバイスを受けられることもあります。
一人で悩むよりも、第三者の視点や経験を取り入れながら再申請の準備を進めることで、次回の融資成功率は格段に高まります。とくに初めての創業である場合や、事業経験が浅い方にとって、専門家の伴走支援は心強い味方となるでしょう。
日本政策金融公庫以外に検討できる資金調達方法
日本政策金融公庫の融資に通らなかったとしても、資金調達の選択肢は他にも存在します。ここでは、公庫以外の現実的な資金調達方法について紹介します。
地方銀行や信用金庫からの制度融資
日本政策金融公庫に次ぐ主要な融資先として挙げられるのが、都市銀行・地方銀行・信用金庫といった民間金融機関です。創業初期の企業は信用力が十分でないことから、民間金融機関の融資は難しいと考えられがちですが、「信用保証協会付き融資」や「自治体の制度融資」を活用することで可能性が広がります。
信用保証協会付き融資は、各都道府県の信用保証協会が借入の保証人となる制度で、借主が返済できなくなった場合に協会が金融機関に対して弁済を行います。金融機関にとってはリスクが軽減されるため、創業者でも融資を受けやすくなります。制度融資とは、自治体が金融機関・信用保証協会と連携して行う低利融資で、創業支援の一環として実施されています。
このような融資制度は、保証料が発生する場合や、審査に時間がかかる場合があるものの、自治体によっては利子補給や保証料の補助を実施しているケースもあります。自社の所在地で利用可能な制度融資を調べ、積極的に活用する姿勢が重要です。
クラウドファンディングや出資による資金調達
融資に頼らず資金を集める手段として注目されているのが、クラウドファンディングや投資家からの出資といった方法です。クラウドファンディングは、インターネット上で不特定多数の支援者から資金を募る仕組みで、返済義務がない点が最大のメリットです。プロジェクトに共感を集めれば、商品やサービスの予約販売という形で実質的に開業資金を確保できます。
また、スタートアップや成長が期待される事業であれば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資を受けることも視野に入ります。出資を受けることでまとまった資金を得られますが、経営権の一部を譲渡することになるため、出資契約の内容には慎重な検討が必要です。
飲食店や地域密着型の小売業などでは、地域の有志や知人からの出資を募る形で資金を調達する例もあります。このように、融資以外にも「出資してもらう」ことを選択肢に加えることで、資金調達の幅が広がります。
補助金・助成金の活用
融資とは異なるアプローチとして、国や自治体から交付される補助金・助成金を活用する方法も有効です。
補助金は、国が実施する「事業再構築補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などの一部の類型や、各地方自治体が独自に行う「創業支援事業補助金」などが代表的です。
補助対象となる費用には、店舗の内装費、設備投資、広告宣伝費などが含まれ、補助率も制度により異なります。補助金は予算枠があるため競争があり、採択されるには質の高い事業計画書の提出が求められます。
一方、助成金は雇用創出に関連するものが多く、ほとんどは厚生労働省が管轄する制度で、条件を満たせば比較的申請しやすいものもあります。例えば従業員を雇用する際の支援や、働きやすい職場環境を整えるための施策に対して助成が行われます。
いずれの制度も申請から交付までに時間がかかることが多いため、融資とは別の資金確保手段として、早めに情報を収集し準備を進めておくことが重要です。募集時期や条件は年度ごとに変更される場合があるため、各機関の公式サイトで最新の公募情報を確認し、タイミングを逃さないようにしましょう。
断られても融資・資金調達の道は開ける
日本政策金融公庫の融資審査は、制度上のハードルが低くても、計画の不備や信用情報、自己資金の不足などが原因で断られるケースがあります。しかし、審査に通らなかったことは終わりではなく、次に備えるための貴重な経験です。原因を冷静に分析し、改善に取り組めば、再申請の道は開かれます。また、金融公庫に限らず、民間金融機関の制度融資やクラウドファンディング、補助金・助成金など、多様な資金調達手段があります。諦めずに前向きに行動することが、創業の成功へとつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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