- 作成日 : 2025年8月19日
ブラック扱いでも日本政策金融公庫で融資を目指すには?他の資金調達ルートも解説
日本政策金融公庫の融資審査では、信用情報機関に延滞や債務整理などの登録がある、いわゆる「ブラックリスト」状態の方は、融資の審査に通りにくくなります。しかし、信用情報の見直しや改善、自己資金の強化、事業計画の精度向上を図ることで、融資の可能性が生まれます。また、補助金やクラウドファンディングといった融資以外の資金調達方法も有効です。
本記事では、ブラック情報がある場合の対応策と資金調達の選択肢について解説します。
目次
ブラックリストとは
一般にブラックリストと呼ばれるものは、信用情報機関に延滞や債務整理などの記録が登録されている状態を指します。たとえば、クレジットカードやローンの長期延滞、スマートフォン端末の分割払いの滞納、奨学金の未払い、さらには自己破産や個人再生などが該当します。こうした事故情報がある場合、信用取引に制限がかかり、新たなローン契約や融資の申込みは難しくなります。
信用情報機関では、事故情報の種類ごとに保存期間が定められており、延滞や代位弁済などの情報は契約終了後から最大5年間、自己破産や個人再生などの法的整理は最大10年間記録が保持されます。そのため、一度事故情報が登録されると、5~10年程度は金融機関の審査に通りづらくなるのが現実です。この期間が経過し、情報が消えるまでは、融資審査での不利を避けるのは難しいと考えられます。
日本政策金融公庫と信用情報機関の関係
日本政策金融公庫は、融資審査にあたり、個人の信用状況を確認するために複数の信用情報機関から情報提供を受けています。具体的には以下の信用情報機関と連携しています。
- CIC(株式会社シー・アイ・シー):クレジットカードや分割払いの情報
- JICC(株式会社日本信用情報機構):消費者金融やリース契約などの情報
- KSC(全国銀行個人信用情報センター):銀行ローン、奨学金、保証情報など
これらの情報をもとに、日本公庫は融資希望者の過去の返済履歴や現在の債務状況を確認します。実際に審査では、ローン契約日や返済履歴、延滞の有無、債務整理の有無などが詳細にチェックされます。融資申込書にも、信用情報の照会について同意する旨の記載があり、申込者は情報提供を前提として審査に臨むことになります。
信用情報に不安がある方は、申請前にCICやJICCなどで自身の情報を確認し、必要であれば改善策を講じることが大切です。事故情報が登録されていた場合は、その内容と期間を把握し、完済や記録の削除まで待ってからの申込みが望ましいでしょう。
ブラック情報が日本政策金融公庫の融資審査に与える影響
日本政策金融公庫の創業融資では、事業計画や自己資金の内容に加えて、申込者本人の信用情報も重視されます。信用情報に過去の金融事故の記録、いわゆる「ブラック情報」があると、融資審査において不利に働くことが多くなります。ここでは、ブラック情報が審査に与える影響と、融資を受けられる可能性について解説します。
ブラック情報が審査に与える影響
日本政策金融公庫では、信用情報機関から取得した過去の金融取引履歴をもとに、返済能力や信用力を判断しています。そのため、延滞や債務整理、自己破産といった事故情報が現在進行形で信用情報に登録されている場合、審査通過は難しくなります。
支払い遅延が繰り返されている場合や、自己破産の履歴がある場合、公庫側は「今後も返済が滞るリスクがある」と判断し、融資を見送るケースが多いとされています。また、日本政策金融公庫は信用情報だけでなく、申込者の日常的な資金管理状況にも着目します。通帳を通じて家賃や税金、公共料金の支払い履歴が確認され、そこに滞納やルーズな支払いの形跡があると、審査上マイナスに評価されることがあります。
こうした点から、ブラック情報を抱えている方は、金融面だけでなく生活面でも信用に不安を持たれる可能性があり、総合的に見て融資通過のハードルはかなり高くなるのが現実です。
ブラックでも融資を受けられる場合はある?
一般的には、ブラックリストに載っていると日本政策金融公庫のような公的機関からの融資は受けられないと考えられがちです。しかし、過去に金融事故歴があったとしても、融資が実行されるケースはあります。原因となった債務をすでに完済し、信用情報機関の記録が削除されるまでの期間(事故内容によりますが約5年〜10年)が経過している場合は、審査の土台にのることが可能です。
たとえば、事故情報の内容が比較的軽微であり、現在の経済状況や信用状態が安定していれば、事故情報を考慮されたうえでも融資を受けられることがあります。また、自己資金をしっかり準備し、内容のある事業計画を提示できる場合には、他の要素でマイナス点を補うことも可能です。創業支援に携わる専門家の中にも、「事故情報があっても、すでに完済済みであれば審査に通った例はある」とする意見があります。
ただし、こうした例はあくまで例外であり、多くの場合は事故情報が信用情報に残っている間は融資の実行は難しいと考えておくべきです。「ブラックだけど借りられた」という情報には注意が必要で、事故情報が信用情報機関の記録から削除されているか、もしくは事業計画など他の要素で高い評価を得た結果にすぎません。
そのため、事故情報が登録された状態で急いで融資を申し込むよりも、まずは完済や時間の経過によって信用情報をクリーンに戻し、あらためて申し込む方が現実的で効果的なアプローチといえるでしょう。
ブラックリスト状態で融資審査に臨む場合の準備と対策
信用情報に傷がある、いわゆるブラックリスト状態で日本政策金融公庫の創業融資を目指す場合、通常以上に丁寧な準備が求められます。審査通過の可能性を少しでも高めるためには、事前に自身の信用状況を把握し、審査で評価される要素を意識して改善に取り組むことが必要です。
信用情報を確認し、事故情報の整理を優先する
まず取り組むべきは、自身の信用情報の開示請求です。CICやJICCなどの信用情報機関から情報を取り寄せ、延滞や債務整理、代位弁済などの記録が残っていないかを確認しましょう。もし未払いの借り入れがある場合は速やかに完済し、延滞中の債務があれば債権者と交渉し、解消を目指すことが大切です。事故情報が登録されている間に融資申請を行う場合は、他の評価項目で信頼を得られるよう意識的に補強する必要があります。
事業計画書は具体性と説得力を重視する
信用情報の不利をカバーする手段として、綿密に作られた事業計画書は極めて有効です。計画には、事業内容の説明に加え、想定売上や収支見込み、その根拠となる市場調査データや商談の証拠などを含め、数字の裏付けとともに明確な返済見通しを示しましょう。金融機関が「この事業なら貸付後も安心できる」と感じられる構成を目指すことが審査通過への第一歩です。
専門家のサポートで信用力を補完する
創業融資支援に強い中小企業診断士や税理士など、認定支援機関の協力を得るのも効果的です。第三者からの推薦や、事業計画書の監修を受けることで、日本政策金融公庫の担当者に安心感を与えられます。また、制度によっては保証人や担保が必要になることもあるため、信用情報に不安がある場合には、可能であれば信頼できる親族や共同経営者に保証人を依頼する選択肢も検討しておきましょう。
自己資金をできるだけ増やす
日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金の有無も審査で重視されます。特に信用情報に難がある場合、自己資金が豊富であることは返済能力の裏付けとして好印象につながります。日本政策金融公庫の創業融資では、原則として自己資金に関する要件はありません。ただし、審査においては自己資金が多いほど返済能力や計画性が高いと評価される傾向にあるため、一般的に専門家の間では3分の1程度準備することが望ましいと言われています。
資金計画に余裕を持たせることで、借入額を抑え、審査通過の可能性を高められます。
融資が否決された場合は冷静に次の手を考える
万が一、日本政策金融公庫の審査に落ちてしまっても、すぐに諦める必要はありません。否決の理由が信用情報にあると判断できる場合は、事故情報の消去時期を見極め、期間を空けてから再申請を目指しましょう。また、日本政策金融公庫以外の選択肢として、自治体の制度融資や信用保証協会を通じた民間金融機関からの借り入れを検討することもできます。ただし、これらのルートでも信用情報は確認されるため、根本的な解決としては、やはり信用状態の回復が先決となります。
融資以外に検討できる資金調達方法
日本政策金融公庫からの融資審査に通らなかった場合や、信用情報の関係で申請が難しい状況にある場合でも、事業を諦める必要はありません。創業時に利用できる資金調達方法は融資以外にも複数存在します。
補助金・助成金
まず検討したいのが、国や自治体が実施している補助金・助成金制度です。これらは返済義務のない資金であるため、財務的な負担を増やさずに事業資金を確保できる点で魅力的です。信用情報の影響を受けないため、金融事故歴がある方にとっても利用の可能性があります。
たとえば、国が実施する「小規模事業者持続化補助金」や、各地方自治体が独自に設ける創業支援の補助金・助成金などがあります。制度は年度や自治体によって大きく異なるため、中小企業庁のポータルサイト「ミラサポplus」や、事業を行う市区町村のウェブサイトで最新の情報を確認することが不可欠です。
信用保証付き融資制度
信用保証協会が提供する保証制度を活用することで、民間金融機関からの融資が受けやすくなる可能性があります。セーフティネット保証制度は、経営環境の悪化や資金繰りの悪化が一時的な場合に利用される制度で、信用保証協会が借り入れに対して保証を行うことで、銀行などの金融機関が融資を実行しやすくなります。日本政策金融公庫から直接借り入れが難しい場合の代替手段として有効であり、自治体と連携した制度融資も併せて検討できます。ただし、信用保証協会による審査も行われるため、信用情報の状況によっては利用が制限されることもある点には注意が必要です。
担保付き融資の選択肢
不動産などの資産を持っていれば、担保にすることで民間金融機関からの融資を受ける方法もあります。信用力が十分でない場合でも、担保によってリスクを低減できるため、金融機関としても貸し出しやすくなります。ただし、創業直後の事業者には担保となる不動産を持っていないケースが多く、利用可能な人は限られるかもしれません。担保提供にはリスクも伴うため、契約内容を十分に理解したうえで慎重に判断することが求められます。
売掛債権を活用した資金調達
すでに事業を開始しており、取引先に対する売掛金が発生している場合は、ファクタリングの活用も選択肢となります。ファクタリングとは、売掛債権を第三者に売却することで早期に資金を得る仕組みです。信用情報の影響を受けにくく、融資とは異なるため審査の観点も異なります。ただし、売掛金の金額に対して一定の手数料が差し引かれるため、資金効率や手元に残る金額に注意を払いながら活用する必要があります。資金繰りを一時的に安定させる手段としては有効です。
クラウドファンディング
新規性のある商品や社会的に意義のあるサービスを展開する場合は、クラウドファンディングの活用も有効です。クラウドファンディングでは、インターネットを通じて広く支援者を募り、支援金を受け取る形で資金を集めます。支援金であるため原則として返済義務はなく、個人や団体から少額ずつ資金提供を受けられる点が特長です。成功させるためには、プロジェクトの魅力や必要性を的確に伝える広報活動が欠かせません。準備から実行までのプロセスは時間と労力を要しますが、事業の認知拡大や顧客獲得にもつながるため、長期的に見て大きな効果が期待できます。
再挑戦支援資金制度
過去に廃業歴がある方や、事業の失敗によってブラックリスト状態となっている方に対しては、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」の利用も検討可能です。この制度は、再起を図る創業者向けに設計されており、前事業の負債整理も含めて長期での返済が可能とされています。利用には、廃業歴があること、前事業の負債が新事業に悪影響を与えない見込みであること、やむを得ない事情による廃業であることなど、複数の条件を満たす必要があります。該当する可能性がある場合は、最寄りの公庫支店で早めに相談することをおすすめします。
ブラックリスト状態でも再挑戦に向けて準備を整えよう
日本政策金融公庫の融資審査では、ブラック情報があると通過は難しくなりますが、状況を正しく把握し対策を講じれば再挑戦の道はあります。信用情報を整理し、自己資金を積み上げ、説得力ある事業計画を整えることが審査通過への第一歩です。また、補助金やクラウドファンディングなど融資以外の選択肢も積極的に活用しましょう。焦らず段階を踏んで信用を回復し、創業の実現を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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