- 作成日 : 2024年12月19日
中小企業における事業承継とは?経営者が知っておくべき制度や補助金も解説
事業承継とは、経営者が自身の会社や事業を後継者へ引き継ぐことです。
この記事を読めば、「事業承継のやり方がわからない」「事業承継で使える補助金は?」という悩みを解決できます。
本記事で、事業承継が必要なケースや、支援策等について確認していきましょう。
目次
中小企業で事業承継を考慮すべきケース
事業承継を円滑に進めるためには、適切なタイミングの検討と事前準備が重要です。後継者へ事業を引継ぎすることは、企業にとって発展や存続をする上での転換点になるため、実行する時期について悩んでいる経営者は多いと考えられます。
中小企業で事業承継を考慮するべきタイミングは4つです。
- 経営状況が安定しているタイミング
- 後継者の用意が整ったタイミング
- 業績が好調なタイミング
- 経営者の年齢が60歳前後のタイミング
経営状況が安定しているタイミング
事業承継は、経営者交代により社内が混乱して業績悪化の要因になることも想定されるため、経営状況の安定している時期が理想的です。経営が安定しているときは、社内に余裕が生まれることから、スムーズに後継者への引継ぎが進められます。
しかし、経営者の力量などの要因で経営が悪化している場合は、早期に事業承継を進めることで業績の改善につながることもあるでしょう。
後継者の用意が整ったタイミング
事業承継は、事業を引き継ぐ後継者として適任な人がいるかどうかを確認する必要があります。M&Aという選択肢もあることから、必ずしも社内で後継者を確保しなくても良いです。しかし、職場内で働く従業員の理解が得られやすいのは、同じ職場で働いた経験がある人になることから、まずは社内の適任者を探してみましょう。
後継者が見つかった場合は、仕事や経営の能力が充分なのかを確認します。万が一、能力が足りていない時は、経営者としてふさわしい水準まで育成しましょう。
業績が好調なタイミング
業績が良くて好調なときは、第三者によるM&Aも検討できます。企業の価値が高い状態は有利な条件で交渉を進められることから、後継者がいない場合でも外部の企業にとって魅力的な強みを生かしましょう。
自社の業績は変化を続けていくため、M&Aを検討するタイミングは重要です。適切な時期を逃してしまうと承継先がいなくなってしまう可能性もあります。
経営者の年齢が60歳前後のタイミング
株式会社東京商工リサーチが行っている調査では、経営者の平均引退年齢が71歳前後という結果が出ています。
事業承継の準備期間を10年と設定すると、60歳から事業承継を始めるのが理想的です。社長が高齢になってくると、若いころに比べて業績が悪化する傾向にあるため、なるべく早い段階で事業承継の準備を進めるべきでしょう。
参考:株式会社東京商工リサーチ 2024年「代表者交代調査」
中小企業の事業承継を支援する制度・サービス
日本企業の中で中小企業の割合は99%以上と言われています。中小企業や小規模事業者が廃業してしまうと日本経済に悪影響を及ぼすため、事業承継を支援する制度やサービスが豊富にあります。
事業承継を支援する制度やサービスの例を2つ紹介します。
- 日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援
- 事業承継・引継ぎ支援センターの相談窓口
それぞれ詳しく見ていきましょう。
日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援
事業承継マッチング支援は、2020年に始まった日本政策金融公庫の支援事業です。無料で事業承継の支援が受けられる制度で、対象者の多い小規模・中小企業が使えます。
起業を目指している後継者と後継者を探す小規模・中小企業とをマッチングする支援内容で、金融機関として日本政策金融公庫が両者を引き合わせてくれるため、廃業を防いでくれています。
基本的には、事業資金として日本政策金融公庫に借入残高がある個人事業主や企業を対象としていますが、士業などの専門家や商工会議所の紹介がある場合は借入がなくても利用可能です。
事業承継・引継ぎ支援センターの相談窓口
事業承継・引継ぎ支援センターは各都道府県に設置されていて、事業承継に悩みを抱える経営者の相談窓口やアドバイザーの役割を果たしています。支援センターには専門家が多数在籍しているため、M&A実務を学べる研修や実施体制を構築する助言が受けられるでしょう。
無料相談から情報を集める手助けも受けられて、譲受候補企業の紹介も実施していることから、事業承継について詳しくない人でも安心して相談が可能です。支援センターは全国の各センターと情報共有も行っているため、遠方の候補企業も含めて同時に選べます。
参考:中小企業庁 2021年版 中小企業白書 小規模企業白書
中小企業の事業承継に利用できる補助金
中小企業の経営者は高齢化によって後継者不足が深刻になっています。国はM&Aや事業承継に取り組む中小企業への支援を多数実施しています。その中で注目されているのが、「事業承継・引継ぎ補助金」です。
補助金が設立された背景は、中小企業の後継者不在率が高くなっていることや、代表者の高齢化が進んでいることなどがあります。休廃業をする企業が増加していて、黒字の廃業率も半数以上を占めていることから、後継者のいない黒字企業が増えている状態です。事業承継・引継ぎ補助金について解説します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業・小規模事業者のM&Aや事業承継等を支援する補助金です。対象の支援内容によって下記の3つに分類されています。
- 経営革新
- 専門家活用
- 廃業、再チャレンジ
事業承継・引継ぎ補助金の補助率は補助対象の要件によっても異なりますが、1/2〜1/3で補助金の上限額は600万円になります。支援内容によって、事業承継した後の取り組みを補助するものや事業承継を始める人が支援されるものもあるため、対象者が広くて使いやすい補助金になっているでしょう。
支援内容の中でも経営革新事業は、一定金額の賃上げを実施する場合は補助金額の上限を800万円に優遇されます。事業承継は在籍している従業員から、反感があったり不安になったりする人も出てくる可能性もあるでしょう。そんなときは、事業承継をきっかけに賃上げを進めることで、従業員の待遇改善に望む姿勢を見せられます。
中小企業の事業承継に役立つマニュアル・ガイドライン
中小企業庁では、事業承継に役立つマニュアルやガイドラインを作成及び配布をしています。中小企業を支援する目的で後継者の育成方法や事業承継計画の立て方、承継に伴う課題や対策が紹介されています。
事業承継ガイドライン
中小企業庁は2016年12月にガイドラインを10年ぶりに改訂しています。ガイドラインの中では、事業承継に向けた早期取組の重要性や事業承継支援体制の強化について掲載されています。
事業承継は承継元と承継先があることから、幅広い知識が必要です。事業承継ガイドラインは事業承継についての辞典のような役割をしているため、準備段階の説明からM&Aの手法について学べます。
事業承継マニュアル
事業承継マニュアルは事業承継ガイドラインの内容から、事業承継計画の立て方や後継者の育て方等についてまとめた事業承継マニュアルが作成されています。ガイドラインは情報量が多いことから事業承継について学び始めた人にはハードルが高いです。事業承継マニュアルは、ガイドラインの内容がわかりやすくまとめられているため、読みやすいものから読んでみましょう。
事業承継マニュアルは、図解やキャラクターによってガイドラインが解説されています。事業承継についての概要だけでなく、事業承継に関わる税金対策も覚えておきましょう。
事業承継支援のサービスを活用しよう
事業承継支援のサービスとしてオススメな制度は大きく分けて以下の2つです。
- 日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援
- 事業承継・引継ぎ支援センターの相談窓口
事業承継支援の制度を覚えておくことで、後継者を探すときの不安要素を減らせます。事業承継は10年間の準備期間が必要と言われていますが、事業承継の準備を始める立場になるとあっという間に時間は過ぎてしまいます。後継者の候補が無い経営者は準備を進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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