- 更新日 : 2023年8月25日
雀荘経営の基礎知識!必要な許可や見込み年収も解説
麻雀をする場所を提供するサービスとして「雀荘」があります。昨今は健康麻雀の考えから雀荘に通う高齢者も少なくありません。
一方で、雀荘の開業にあたっては風営法の許可など一定の基準があります。今回は、「雀荘経営は儲かるのか?」開業に必要となる許可、「用意すべき資金はどれくらいか?」などを解説します。
目次
雀荘経営のビジネスモデル
はじめに、雀荘経営の収入源は何かといった基本的なビジネスモデルについて解説していきます。
雀荘経営は儲かる?年収はどれくらい?
雀荘経営におけるメインの収入源は「麻雀を打つ場所の提供料」です。麻雀は1組4名で行うゲームですので当然1人ではできません。
4名が集まらない場合でも、雀荘に行くと来店した他の方と1組4名の卓を雀荘側がセッティングしてくれます(これを「フリー」と呼びます)。
また、仲間4名で麻雀を打つ場所を探しているようなケースもあります。この場合も雀荘に行けば雀卓を借りることができます(これを「セット」と呼びます)。
つまり、フリーやセットが支払う料金が雀荘の収入源です。雀荘の収入額は、雀荘の広さや雀卓の数、卓の稼働率や立地などの要素によって変わります。ここでは、後段で解説する「風営法」で決められた、1人1時間当たり料金の上限額600円で雀荘の収入額を考えてみます。
仮に12時間営業したとすれば、1組4名×600円×12=1卓あたり1日28,800円の収入です。当然人件費や光熱費、設備の導入維持費などの費用がかかりますが、10卓を置いてフル稼働させたとすれば288,000円ですから、収入ベースでみれば決して少ない金額ではありません。
田舎での雀荘経営は工夫が必要
家賃や人件費が高い首都圏と比べ、田舎であれば雀荘経営をしていくなかで発生する費用、特に固定的に発生する費用を安く抑えることが可能です。
雀荘は商品を仕入れて販売する小売業や卸売業と違って、場所を提供すれば自動的に収入が入る業種です。固定経費を抑えると収益率は上がるため、田舎での雀荘経営には大きなメリットがあります。
デメリットとして挙げられるのは、やはり集客でしょう。人口が集中している首都圏と違って田舎の場合、広範囲から打ち手を集めなければなりません。フリーの方は4人揃うまで待つのが基本ですから、待ち時間が長くなる可能性もあります。
雀荘経営に必要な許可
次に、雀荘を経営するために必要な「風営法」と「飲食店営業」の許可について解説していきます。
風俗営業許可(4号営業)
雀荘は点数で勝敗を競うゲームです。点数のかわりに金品を賭けることは賭博罪にあたりますので禁止されていますが、射幸心をあおる遊技台を設置して営業しますので風俗営業法の規制対象になります。したがって、雀荘を経営するためにはまず「風俗営業許可(4号営業)」を取得しなければなりません。
参考:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第三条 | e-Gov法令検索
飲食店営業許可
一般的に雀荘では飲料や食事を提供することがほとんどですので、風営法の許可とは別に飲食店としての営業許可を取らなければなりません。
許可がないまま飲料や食事を提供してしまうと、食品衛生法第82条および風俗営業法第49条で「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」が課されますので注意してください。なお、申請先は雀荘の所在地を管轄する保健所です。
参考:食品衛生法 第八十二条 | e-Gov法令検索、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第四十九条 | e-Gov法令検索
雀荘経営にかかる費用の目安
雀荘を開業し営業していくにあたって必要な経費にはどのようなものがあるでしょうか。次に、営業にかかる費用を「初期コスト」と「ランニングコスト」にわけて解説します。
初期コスト(開業資金)
雀荘経営をするにあたって、最初に必要となるのが開業資金です。
1.個人事業より法人のほうがコストがかかる
開業にあたり、個人事業であれば税務署に「開業届」を提出するだけですが、法人として経営する場合には初期費用がかかります。具体的には「定款認証費用」「法人設立登記費用」がかかるため20万円以上の費用が発生します。
2.店舗の契約時にかかる費用
店舗を賃貸物件にするのであれば、契約に際して保証金や礼金、仲介手数料や前払家賃などの費用が発生します。居抜きの物件でも、雀荘として使い勝手が悪い場合には、別途内装工事の費用が発生します。
3.雀荘としての設備費用
場所が決まったら、次に雀荘としての設備の導入を考えることになります。物件の広さに合わせて雀卓やカウンターなどの配置を考えなければなりません。メインとなる雀卓は、安いもので10万円程度、高いものだと50万円以上しますので、予算に合わせて卓数とグレードを決める必要があります。
ランニングコスト
開店後、店舗を維持管理していくためのランニングコストも考慮すべき事項です。
1.店舗や設備にかかる費用
賃借物件の家賃や電話代、水道光熱費、広告代などが毎月発生します。また、飲料や食事を提供するのであれば飲食にかかる仕入代金も必要です。店内の備品関係をリースで揃えれば毎月のリース料金も考慮しなければならないでしょう。
2.スタッフにかかる人件費
店主が自分1人でまかなえる規模であれば別ですが、一般的に来店者の接客や飲料の提供、食事の準備など雀荘にはホールスタッフが欠かせません。スタッフを雇用した場合、給与や賞与、社会保険加入時の会社負担分、労働保険の会社負担などが発生します。
3.雀卓のメンテナンス費用、更新料もかかる
全自動雀卓や牌は消耗品ですから、定期的にメンテナンスをしなければなりません。故障や破損した場合には、入れ替えが必要になることもあるでしょう。また、最新式の雀卓がリリースされれば、所有する雀卓を最新のものに更新することも検討しなければなりません。
雀荘を開業する際の流れ
ではここまで解説してきた内容を踏まえ、雀荘を開業するまでの大まかな流れを纏めてみましょう。
- 個人事業か法人かの決定
- 風営法許可および飲食店許可の取得
- 賃借する店舗物件の決定
- 賃借物件の内装工事の検討・実施
- 雀卓等の店内備品の決定調達
- スタッフの雇用
- 開店広告等の配布
- 開店
なお、上記内容の全額を自己資金でまかなえない場合には、金融機関からの融資手続きを並行して進めなければなりません。
雀荘経営を成功させるためのポイント
最後に、雀荘経営を成功させるために注意すべきポイントについて解説しましょう。
物件選び
雀荘経営にあたって、最初のハードルとなるのが風営法許可と飲食店許可の取得です。風営法許可では「照明は10ルクス以上」「射幸心をあおる看板や設備を設置しない」「1m以上の高い仕切りを作らない」などの基準があります。
また、飲食店許可でも「シンクを2槽以上設置」「60℃以上のお湯が出る給湯設備」「厨房とトイレに手洗い器の設置」など、詳細な審査基準があります。物件を選ぶ際には、これらの基準を満たしている、あるいは満たすためにかかる費用を抑えられるという点を考慮して選ぶべきでしょう。
宣伝方法
雀荘に限らず、経営を安定させるためにはやはり安定した集客が欠かせません。宣伝方法として、店舗は人が集まる目立ちやすい場所を借りるのがベストでしょう。
さらにSNSでの情報発信は必ず行うべきです。紙ベースでの広告宣伝と比べコストが安く抑えられますし、年代や地域を問わず広い範囲に宣伝できますので集客には最適です。
ただし、いくら健全とはいえ雀荘は風営法の対象業種ですから、不健全なイメージにならないよう気を付けなければなりません。クリーン、健全を前面に押し出す方向でいくべきでしょう。
雀荘経営のポイントをおさえて成功を
麻雀は若者から年配の方まで年代を超えて一緒に楽しめるゲームです。店舗の魅力を上手にアピールできれば幅広く顧客を集めることができるでしょう。雀荘経営のポイントを押さえて、店舗としての成功をつかみたいものです。
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