- 更新日 : 2024年4月30日
自己資金ゼロで起業するなら融資制度を活用すべき!資金調達方法を解説
開業・創業を計画しているものの、資金ゼロの場合は一体どうしたらよいのでしょうか?今回は、自己資金ゼロでの起業について、活用すべき融資制度、融資以外の資金調達で起業する方法、自己資金ゼロで開業できるビジネス事例などを紹介します。
目次
自己資金ゼロでも起業できる?
自己資金ゼロで起業することは理論上可能です。
例えば、Webライターやエンジニアといった、モノの仕入れがなく自宅でできる仕事は自己資金ゼロでも開業できます。開業にあたってパソコンや椅子・デスク等を購入した場合でも、10~20万円程度で「預貯金で対応できる」という方が多いのではないでしょうか。
一方で、仕入れが必要な職種や、美容系のサロンといった場所が必要な仕事等の場合、開業のための資金が必要となります。預貯金が少ない方は、融資を受ける、親から支援してもらうといった方法で資金調達が可能です。
ただ自己資金ゼロでの起業・開業は、病気や事故など、想定外の出来事があった時に対応できない可能性が高くなってしまいます。自己資金が準備できているケースよりもリスクが高いことをおさえておきましょう。
自己資金ゼロで起業するなら融資制度を活用すべき
自己資金ゼロで起業する場合は、融資制度の活用を検討しましょう。これから起業する方は、会社の事業実績がないため民間の金融機関では審査が厳しい傾向にありますので、公的金融機関に融資を申し込むことをおすすめします。
ここでは公的金融機関・地方自治体の融資制度を紹介します。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、返済期間が長く設定されているのが特徴です。
※日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、令和6年3月31日で取扱いを終了しています。
信用保証協会の制度融資
信用保証協会は、全国47都道府県に設置されており、中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受けやすくするために保証を行う公的機関です。
例えば、東京信用保証協会の創業融資では、一定の要件を満たす方が、最大3,500万円(2024年度時点)まで融資を受けられます。
地方自治体の創業融資
地方自治体も独自の創業融資制度を実施しています。例えば、東京都の創業融資は、以下のいずれかに該当する方が対象です。
- 現在事業を営んでいない個人で、創業の具体的計画を有する方
- 創業から5年未満の中小企業者等
- 分社化を行う会社、または分社化から5年未満の会社
融資限度額は 3,500万円(2024年度時点)で、区市町村の「特定創業支援等事業」や商工団体等の支援を受けた場合、利率が0.4%優遇されます。
また、「女性・若者・シニア創業サポート事業」では、都内の女性・若者・シニアによる地域密着型の創業を支援するため、信用金庫・信用組合による低金利・無担保の融資を行っています。
融資以外の資金調達で起業する方法は?
融資を受けたくない、または融資を受けられない方はどうやって資金調達を行うべきなのでしょうか?家族からの贈与、クラウドファンディングなど8つの方法について解説します。
家族や親戚から贈与を受ける
家族や親戚から援助を受けられる方は、贈与を受けるという方法があります。
贈与を受ける際には贈与日や贈与者(贈与した方)と受贈者(贈与を受けた方)、贈与金額を記載した「贈与契約書」を作成し、取り交わしておけば、いざという時に贈与契約の証明ができます。基本的に年間110万円を超える贈与には贈与税が課されますので注意しましょう。
なお、贈与されたお金は自己資金とみなされる可能性がありますが、親から借りたお金は借入金であり自己資金ではありません。
共同経営者のサポートを受ける
共同経営者に貯蓄がある場合、資金援助をしてもらい、資本金(出資金)として起業することが可能です。ただ、後のトラブルを回避するために援助の金額、日付、氏名・住所などを記して押印し、書類として残しておきましょう。
不動産や財産を現物出資として申告する
現物出資とは、会社設立の際に資本金として不動産や車など現物財産(形のある財産)を出資することを指します。発起人のみが現物出資をすることができます。個人事業主が法人化する際にも有効な手段となります。
クラウドファンディング
インターネット上で不特定多数の人から資金を募る方法です。一般的にはクラウドファンディングサイトに登録し、事業の内容や目的・達成したいこと等を掲載して支援・寄付を募ります。「達成目標金額」に達した場合に、支援してくれた方にリターンを提供するタイプもあります。
東京都では主婦・学生・高齢者等の創業や新製品の開発、ソーシャルビジネス等への挑戦を促進するため、クラウドファンディング資金調達事務局を設け、取扱クラウドファンディング事業者と連携した支援を行っています。
流動資産担保融資保証制度
流動資産担保融資保証制度とは、中小企業・小規模事業者の方が保有する売掛債権や棚卸資産を担保に金融機関から借入を行う際に、信用保証協会が保証を行う制度です。保証限度額は2億円(金融機関からの借入限度額は2億5千万円)となっています。
国や地方自治体の助成金・補助金
国や地方自治体の助成金・補助金を活用する方法です。経済産業省では中小企業・小規模事業者対象のものづくり補助金、ITツール導入のためのIT導入補助金などの制度があります。
厚生労働省では人材の確保・定着を目的とした人材確保等支援助成金や、中途採用の拡大を図った企業に助成を行う中途採用等支援助成金などがあります。
公益財団法人東京都中小企業振興公社では、都内で創業予定の方、または創業して5年未満の中小企業者等の方を対象に、一定の条件を満たせば創業初期に必要な経費の一部を助成する事業を行っています。
都道府県別の創業者向け補助金・給付金の情報は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「J-Net21」内「創業者向け補助金・給付金(都道府県別)」で確認できます。
ビジネスプランコンテスト
ビジネスプランコンテストは、応募者が作成したビジネスプラン(事業計画)について、事業の新規性・革新性、発展可能性など様々な観点から審査を行うものです。コンテストによって異なりますが、入賞すると賞金を獲得できて、事業計画の実現に向けた支援を受けることができます。
開催されているコンテストは、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「J-Net21」内「起業・創業に関する表彰制度(ビジコン)」でチェックできます。
副業から始めて自己資金を貯める
現在就業中でこれから起業したいという方には、休日やすきま時間を利用して「スモールスタート」で起業し、自己資金を貯めるという方法があります。最もリスクが低い方法と言えるでしょう。
自己資金ゼロで起業する時の注意点は?
自己資金ゼロで融資を受ける際には基本的に無担保となりますので、担保がある場合よりも融資の金利が高くなり、融資額が低くなる傾向があります。
また資金ゼロの起業はリスクが高いため、事業計画は5年先・10年先を見据えて立案しましょう。起業から3年、5年と一定の年数が経過した時には計画の見直し・再構築も必要となります。
融資を受けた場合には、返済シミュレーションを行いましょう。金融広報中央委員会の「知るぽると」で借入返済のシミュレーションができます。
予想される収益では返済に何年かかるか、収益が予想よりも10%下がった時には返済期間がどのくらい伸びるかといった見通しを立てておくことで、返済への不安が和らぐケースがあります。事業計画を立てる時の参考にもなるでしょう。
自己資金ゼロでの起業・開業に適したビジネス事例は?
自己資金ゼロで起業できるビジネス事例を3つ紹介します。
Webライター
パソコンを持っている方は、自己資金ゼロでWebライターを始めることが可能です。
Webライターに資格は必要なく、初心者の多くはクラウドソーシングで始めるようですが、始めて間もなくは単価が低いという現実があります。ライターを続けスキルアップしながら単価を上げる、ライター向けのコンサル業を行うなどの方法で収入を上げられる可能性があります。
フランチャイズ
フランチャイズとは、個人・法人が本部となる親企業と契約を結び、ロイヤリティ(対価)を支払いながら店舗などを経営するビジネス形態です。
コンビニや飲食店に多く見られます。親企業のブランド名を利用でき、経営のノウハウも学ぶことができます。資金ゼロで始められるフランチャイズもありますが、「親企業の指定する高単価の企業から仕入れなければならない」「ロイヤリティが高い」など問題点があるケースも存在します。
コンサルタント
専門知識やノウハウを教え、顧客をサポート・支援する人を「コンサルタント」と呼びます。
「コンサルタント」と言えば経営やビジネスなどを思い浮かべる方が多いと思いますが、建設やIT、マーケティングなどジャンルは多岐にわたります。まずは自身の職歴・経験・スキルの棚卸しを行い、コンサルタントとして活かせるものはないか検討してみましょう。
自己資金ゼロで始められるビジネス3つを紹介してきましたが、個人事業主や法人として事業を継続するのは容易なことではありません。5年先・10年先の事業計画を立てた上で実行に移していきましょう。
自己資金なしの起業は事業計画の立案と返済シミュレーションがポイント
今回は、自己資金ゼロでの起業について、活用できる融資制度、融資以外の資金調達方法、自己資金ゼロで起業できるビジネス事例3つ、自己資金ゼロで起業する際の注意点について解説しました。
起業の資金には、日本政策金融公庫の融資制度や親からの贈与、国や地方自治体の助成金・補助金の活用など様々な調達方法があります。ただし、自己資金ゼロの起業はリスクが高いため、事業計画と返済シミュレーションを念入りに行いましょう。
よくある質問
資金ゼロでも起業はできる?
可能です。ただし、自己資金が準備できているケースよりもリスクが高いことをおさえておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
資金ゼロの起業で活用できる融資制度は?
新創業融資、中小企業経営力強化資金などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
資金ゼロの起業で注意すべきこととは?
事業計画を立て、返済シミュレーションを行いましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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