- 更新日 : 2025年11月25日
集金代行に許認可は必要?資金移動業と収納代行の違いも解説
集金代行サービスを始めるときに、国などへの登録や許可が必要かどうかは、お金の流れ(スキームの実態)によって決まります。
もし、委託した会社(債権者)に代わってお金を受け取り、そのお金をすぐにその会社に渡すだけの仕組みであれば、一般的な「収納代行」にあたります。この場合は、資金のやり取りが一方向のみで、第三者への送金を行わないため、特別な登録は不要です。
一方で、お客様から預かったお金を、別の人や会社に送る機能(送金・エスクローなど)をサービスの中で行う場合は、「資金移動業」とみなされます。その場合は、資金決済法に基づき財務局(または財務支局)への登録が義務となります。
自社のサービスがどちらのスキームに該当するのか、その違いを正しく理解しないまま事業を行うと、意図せず法令違反となる可能性があります。
この記事では、集金代行に必要な許認可の基準や、よく似た収納代行との違い、事業者が注意すべき点をわかりやすく解説します。
目次
集金代行とはどのようなサービスか?
集金代行とは、事業者に代わって顧客(利用者)から代金を受け取り、事業者に引き渡す業務の総称です。請求書の発行や入金確認、支払い案内などの事務作業を外部に委託できるため、業務の効率化や入金管理の精度向上、未回収リスクの軽減に役立ちます。
また、お金の流れ(スキーム)によっては、資金決済法上の「資金移動業」に該当する場合があるため、登録の要否を確認することも重要です。
集金代行が担う業務
事業者は集金代行業者と契約することで、代金の受け付けから入金管理までの決済関連業務を外部委託できます。代表的には次のとおりです。
- 多様な決済手段の提供:
口座振替・コンビニ収納・クレジットカード・キャリア決済等の導入/運用支援 - 請求業務の代行:
請求データに基づく請求書(払込票・番号)の発行・送付、決済処理 - 入金管理:
入金の一元管理、入金消込の自動化・照合の代行 - 支払い案内:
未入金の事実を知らせる通知・案内レベルの連絡
インターネットショッピングサイトでの商品代金回収や、学習塾・サブスクリプションサービスなどの月謝・定額料金の回収で広く活用されています。
集金代行に許認可は原則不要というのは本当?
単なる「集金代行(収納代行)」として提供する場合でも、お金の流れ(スキーム実態)が為替取引に当たらないことが前提です。典型例は委託元(債権者)への代理受領で、資金の流れが利用者→代行業者→委託元という一方向に限定され、受領資金を委託元にのみ速やかに引き渡す設計です。この場合は資金決済法の資金移動業登録は不要と整理されています。
許認可が必要になる「資金移動業」とは何か?
利用者から預かったお金を、別の利用者や事業者へ送金する「為替取引」を行う事業を「資金移動業」と呼びます。この事業を実施するには、資金決済法に基づき、あらかじめ内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
ここでいう為替取引は、判例上「隔地者間で現金を直接輸送せずに資金を移動する仕組みにより資金移動の依頼を受け、これを引き受け又は遂行すること」と定義されています。資金移動業には3つの類型があり、第一種は送金上限なし(100万円超も可)、第二種は1件あたり100万円以下、第三種は1件あたり5万円以下という規制区分があります。
資金移動業の登録が必須となる理由
資金移動業は、利用者から預かった大切なお金を移動させる役割を担います。もし事業者が破綻した場合、利用者の資金が保護されないといった事態になりかねません。
そこで、資金決済法では、利用者資金を保護するため、履行保証・分別管理、情報セキュリティ管理、監督報告等を義務づけています。したがって、無登録で為替取引を業として行えば違法となり得ます。
資金移動業に該当するサービスの具体例
特に、個人間でお金を送り合う機能を持つサービスや、国境を越えた送金、ECサイトなどで売り手と買い手の間に入ってお金を一時的に預かるエスクローサービスなどは、資金移動業とみなされる可能性が高いでしょう。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- 個人間送金サービス:
いわゆる「割り勘アプリ」のように、個人Aの依頼を受けて、代行業者が個人Bの口座にお金を送金するサービス。 - 国際送金サービス:
海外の顧客から代金を集金し、国内の事業者に送金する、あるいはその逆のサービス。 - CtoCプラットフォームのエスクローサービス:
フリマアプリなどで、買い手から預かった代金を、商品到着の確認後に売り手へ支払うサービス。
収納代行と資金移動業の違いは?
「収納代行」と「資金移動業」の最大の違いは、預かったお金が委託元(債権者)“以外”へ移動するかどうかです。判断はお金の流れ(スキーム実態)で行います。
収納代行と資金移動業の違いを比較
収納代行と資金移動業の主な特徴を、お金の流れ、根拠となる法律、許認可の要否といった観点から比較します。
| 項目 | 収納代行 | 資金移動業 |
|---|---|---|
| お金の流れ | 利用者→代行業者→委託元(債権者)の一方向。受領資金は委託元にのみ速やかに引渡し | Aさん→業者→Bさんなど、第三者への資金移転を業として実施 |
| 根拠法 | 民法上の委任・代理等に基づく契約設計(代理受領の明示、支払時に弁済完了となる設計が前提)+金融庁の整理(実態で判断) | 資金決済法(銀行等以外が為替取引を業として営む)。登録制度・監督下に置かれる |
| 許認可 | 原則不要 | 内閣総理大臣の登録(実務窓口:各財務(支)局)が必要 |
| サービスの主目的 | 特定の委託元への代金回収 | 送金(資金移動)そのもの |
| 具体例 | コンビニ収納、口座振替による売上回収、家賃等の収納代行など | スマホ送金機能、割り勘送金、国際送金、CtoCエスクローなど |
自社サービスが許認可対象か判断する際のチェックポイントは?
自社のサービスが許認可(登録)の対象かは、お金の流れ=為替取引に当たるかというスキームの実態で決まります。次の3つの視点で確認しましょう。
1. 利用者から預かったお金は最終的に誰へ渡るか?
受取人が委託元(債権者)に限定され、受領資金を委託元にのみ速やかに引き渡す「代理受領型」の収納代行なら、原則、資金移動業の登録は不要です。反対に、委託元以外の第三者へ移す(P2P/エスクロー/国際送金等)なら為替取引に当たり、資金移動業の登録が必要です。
2. 利用者資金はサービス内で滞留・チャージされるか?
アカウント残高にチャージさせたり、入金をプールして後日まとめて振り分ける等は、資金移動業や前払式支払手段の論点になります。前払式支払手段は、未使用残高が基準額を超えると届出・登録等が必要です。
3. サービスの仕組みは誰のためのものか?
事業者側の代金回収効率化が主目的で、支払時に弁済が完了する代理受領型の設計は収納代行に整理されやすい一方、利用者側の送金利便を中核とする機能は為替取引に該当しやすく、資金移動業の枠組みになります。
これらの点で少しでも懸念がある場合は、無登録で事業を開始してはなりません。法律の専門家や管轄の財務局に相談しましょう。
信頼できる集金代行業者を選ぶにはどうすればよいか?
収納代行を主とする集金代行サービスには許認可制度がないため、どの業者を選ぶかは事業者の自己責任となります。大切な売上金を預ける相手だからこそ、信頼性を見極めることが肝心です。
業者選定の際は、その業者がどれだけの実績を持っているか、料金体系はわかりやすいか、そして顧客の大切な情報を守るためのセキュリティ体制は万全か、といった事業運営の信頼性を多角的に確認することが大切です。特に以下の点を確認しましょう。
豊富な導入実績と事例を公開しているか
自社と同じ業種・事業規模での導入事例があるかを確認しましょう。公式サイトに実際の導入企業名や運用事例が掲載されていれば、業者の実績と信頼性を判断する大きな手がかりになります。
また、稼働年数やシステム障害時の対応事例も、安定運用力を見極める参考になります。
料金体系は透明か
初期費用・月額利用料・決済手数料・振込手数料・返金対応費用など、全てのコスト項目が明確に提示されているかを確認しましょう。見積もりを取る際は、「最低利用料」「オプション費用」など、想定外の追加費用が発生しないかもチェックが必要です。
セキュリティ体制はどうか
集金代行では、顧客の個人情報や口座情報、決済データを扱うため、情報セキュリティ対策の実施状況を必ず確認します。
特に、以下の認証や基準を満たしているかは信頼性を判断する重要なポイントです。
- プライバシーマーク(Pマーク)
個人情報保護マネジメントシステム(JIS Q 15001)に準拠している事業者に付与されます。 - ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム:ISO/IEC 27001)認証
組織全体でリスク管理・情報保護を実施していることを示す国際規格です。 - PCI DSS(クレジットカード業界のデータセキュリティ基準)
クレジットカード情報を扱う場合は、対応レベルと認証の有無を確認する必要があります。
集金代行の許認可は事業内容の確認から始めよう
集金代行を始める際に登録(許認可)が必要かは、スキームの実態が「収納代行」か「資金移動業(為替取引)」かで明確に分かれます。
委託元(債権者)への代理受領として、資金の流れが利用者→代行業者→委託元の一方向に限られ、受領資金を委託元にのみ速やかに引き渡す典型的な収納代行であれば、資金決済法上の資金移動業登録は原則不要です。
一方、預かった資金を第三者に移す機能(P2P送金、エスクロー、国際送金等)を業として提供する場合は為替取引に該当し、資金移動業として内閣総理大臣の登録が必要です。無登録で為替取引を営むことは違法となり得ます。
最終的には、自社サービスのお金の流れを図示して実態を精査し、少しでも判断に迷う場合は管轄の財務局へ事前相談、または専門家に確認することが、法令遵守と安定運営への近道です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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