- 更新日 : 2025年10月21日
道の駅の経営は民間でも可能?成功の秘訣と始め方を解説
道の駅の経営は、民間企業でも可能です。全国の多くの道の駅では「公設民営」方式がとられており、自治体が設置した施設を民間企業や第三セクター(公・民共同出資団体)が運営しています。
国の「道の駅第3ステージ」政策(地方創生・観光・防災機能の強化を柱に道の駅の高度化を図る方針)も追い風となり、民間ならではの経営ノウハウを活かすチャンスは広がっているといえるでしょう。
一方で、施設の老朽化や経営難という課題も存在します。この記事では、道の駅経営の基本的な仕組みから、民間が参入するメリットと課題、そして黒字化を達成するための成功戦略まで、実際の例をふまえてわかりやすく解説します。
目次
道の駅はどこが経営している?
道の駅の経営は、施設の設置者=自治体と、実際の運営=指定管理者が分かれる「公設民営」が一般的です。運営は、指定管理者制度を通じて地域の第三セクターや民間企業、NPO法人などが担います。ここでは、道の駅の基本定義と、運営の主体についてわかりやすく整理します。
そもそも「道の駅」とは?
道の駅とは、道路利用者のための「休憩機能」、地域の文化や特産品を紹介する「情報発信機能」、地域住民や観光客との交流をうながす「地域連携機能」の3つをあわせ持つ施設です。
市町村などの地方公共団体が設置・申請し、要件を満たすものが国土交通省(道路局長)に登録されます。2025年6月13日現在、全国で1,230駅が登録されています。
主な運営形態は2種類
道の駅の運営形態は、誰が施設を「設置」し、誰が「運営」するかによって、主に以下の2つの方式に分けられます。
- 公設民営方式
自治体が施設を整備し、民間企業や第三セクター、NPO法人などが運営を行う最も一般的な形式です。民間事業者の専門知識やノウハウを活かした、効率的で柔軟な運営が期待されます。 - 公設公営方式
自治体が施設を整備し、そのまま自治体自身が直接運営を担う方式です。公共性は保ちやすい一方で、運営の柔軟性や収益性の面で課題を抱えることもあります。
民間企業でも道の駅の経営ができる?
民間企業でも道の駅の運営には参画できます。実際、多くの道の駅で民間企業が指定管理者として運営を担い、施設の活性化に貢献しています。民間の参入は、地域の新たな魅力を引き出す原動力として国や自治体からも期待されています。制度上、道の駅の設置(登録申請)は市町村等の公的主体が担います。
民間企業の参入方法「指定管理者制度」とは?
指定管理者制度は、市町村などが設置した公の施設の管理・運営を、株式会社やNPO法人、第三セクター等が担える仕組みです。これを活用することで、民間企業は自治体が所有する道の駅の運営事業者になれます。
運営範囲、料金設定、人員体制など裁量の幅や評価基準は自治体ごとに公募要項で定義されるため、事前確認が重要です。多くの自治体はウェブサイト等で指定管理者を公募・審査・議決し、協定を締結します。
民間企業が経営に関わる2つの運営形態
民間企業が道の駅の経営に関わるための主な方法は、以下の2つです。これから参入を検討する場合、とくに「指定管理者制度」が一般的な窓口となるでしょう。
運営形態 | 概要 | 民間企業の役割 |
---|---|---|
指定管理者制度 | 市町村などが設置した「公の施設」の管理・運営を、民間企業やNPO法人、第三セクターなどが代行する制度。一般的な形態。 | 指定管理者として、施設の運営全般(物販、飲食、イベント企画、人事、経理など)を裁量をもって行う。 |
PPP/PFI方式 | 民間の資金と経営能力、技術力を活用して公共施設などの設計、建設、維持管理、運営を行う手法。 | 企画・建設段階から参画し、長期にわたって運営を担う。より大きな裁量と責任を持つ。 |
道の駅を運営している会社・企業の傾向
道の駅の運営を担う企業は、その地域の食品加工会社や建設会社、観光事業者から、全国で複数の施設を運営する専門の会社までさまざまです。
たとえば、物販や飲食事業に強みを持つ企業、イベント企画やマーケティングを得意とする企業などが、それぞれの強みを活かして経営にあたっています。公募の際には、地域経済への理解度や、これまでの事業実績、そして地域を盛り上げたいという熱意などが総合的に評価される傾向にあります。
出典:道の駅運営の会社・企業一覧(全国)|Baseconnect
道の駅で経営するメリットとは?
道の駅を運営するメリットは、国の方針に沿った拠点整備の追い風を受けつつ、地域貢献と事業成長を両立できる点にあります。「道の駅」ブランドは来訪動機になりやすく、適切な立地・商品企画・回遊設計が伴えば安定的な集客の基盤になり得ます。
地方創生の拠点として地域に貢献できる
道の駅は、物販にとどまらず休憩・情報発信・地域連携の3機能を担う地域の顔です。民間が運営に参画することで、地域資源の発掘・磨き上げや観光消費の創出を機動的に進められます。こうした取り組みが、自社の成長=地域活性につながるのが魅力です。
国が後押し!「道の駅第3ステージ」で高まる将来性
国土交通省は、2020〜2025年をめどに「道の駅 第3ステージ」を進め、道の駅を『地方創生・観光を加速する拠点』へと進化させる方針を掲げています。
これまでの地域センター的役割に加え、インバウンドを意識した観光機能の強化や、広域連携を見据えたネットワーク化、災害時に機能する防災機能の強化が柱です。なお、この考え方は2025年で打ち切られるものではなく、今後の発展の基盤として継続的にフォローアップされています。国の後押しを背景に、民間企業は政策の追い風を受けながら事業を展開しやすい環境にあります。
ブランド力を活かした集客ポテンシャル
「道の駅」という名称自体が旅行・ドライブの目的地として選ばれやすいブランドです。もっとも、立地(幹線接道・回遊導線)/品揃え・飲食体験/イベント設計等が成果を左右します。ブランド+独自の魅力を積み上げることで、継続的な集客に繋げられます。
道の駅の経営が抱える課題やデメリットとは?
道の駅経営の主な課題は、「施設の老朽化」「収益の伸び悩み」に起因する赤字化リスク、そして「行政との調整コスト」です。とくに初期開業施設では更新投資の負担や、人口・交通の構造変化による来訪の減少がボトルネックになりがちです。国の第3ステージでも防災機能の強化やネットワーク化が掲げられており、設備更新や機能高度化の必要性は高まっています。
施設の老朽化と大規模修繕のリスク
道の駅は公の施設であるため、修繕・更新の費用負担や責任範囲(軽微/大規模)を、指定管理協定・条例で明確に線引きしておくことが重要です。事業計画段階で築年数・インフラ劣化・法定点検の履歴を精査し、長期修繕計画と財源手当(補助・自己資金・リース等)を織り込むとリスクを抑えられます。
人材確保と育成の難しさ
多くが地方立地のため、人材確保は構造的課題です。地域採用×育成プログラム(評価制度・ジョブローテ・接客/衛生/安全教育)や、副業人材・季節雇用の活用、地域高専/大学との連携などで、定着率と多能工化を高める設計が求められます。
赤字経営のリスク
物販偏重だと粗利率が伸びにくく、需要季節性の影響も受けます。学術研究や報道では「約3割が赤字」との指摘があり、統一した公的統計ではない点に留意が必要です。参入時は、飲食(高付加価値)・体験(滞在価値)・EC(商圏拡張)・イベント(回遊/再来)を組み合わせた複線的な収益モデルと、在庫回転・人時生産性をKPIに据えた運営改善を前提化しましょう。
行政との連携やルールへの対応
道の駅は公共性を帯びるため、指定管理者制度の趣旨に沿った提案・評価・改善サイクル(公募要項→協定→モニタリング)への対応が不可欠です。報告・監査・料金権限・データ共有等の要件は自治体ごとに異なるため、協定での合意形成と定例協議を仕組みに落とすと、運営の自由度と説明責任のバランスが取りやすくなります。
道の駅の経営は本当に儲かる?
「道の駅は赤字が多い」というイメージを持つ方もいるかもしれません。実際に、経営に苦戦している施設も存在する一方で、創意工夫によって高い収益を上げ、地域経済をけん引している道の駅も数多くあります。ここでは、赤字に陥る背景と、それを乗り越え黒字化を達成するためのポイントについて解説します。
なぜ「道の駅は赤字」と言われるのか?
もっとも多い失速パターンは、利益率の低い物販偏重に陥ることです。自治体の調査でも、農産物直売は相対的に利益率が低く、加工品・特産品(高付加価値)の物販や飲食の強化が有効と示されています。また、商品・サービスが更新されず陳腐化する、人件費や在庫の管理が甘いといった運営上の課題も赤字要因になります。
これらの課題は、民間企業が持つ経営ノウハウやマーケティング力を活かすことで、十分に克服できるものではないでしょうか。
収益の柱となるビジネスモデルの作り方
物販だけに頼るのではなく、収益源を複数持つことが安定した経営の基本です。たとえば、以下のようなビジネスモデルを組み合わせることで、収益構造を強化できます。
- 飲食事業の強化
地域食材を活かした高付加価値のレストランやカフェを展開します。ここでしか食べられない名物メニューは、強力な集客ツールになります。 - 体験型コンテンツの導入(六次産業化)
農業体験や加工品作り体験などを提供し、「モノ消費」から「コト消費」へのニーズに応えます。生産(1次)×加工(2次)×流通・販売(3次)を一体化する「六次産業化」の視点が収益性を高めます。 - ECサイトの運営
オンラインで全国に商品を販売し、商圏を拡大します。実店舗への訪問のきっかけ作りにもつながります。
これらの事業を組み合わせ、施設の魅力を高めながら収益の安定化をはかることが、黒字経営への道筋となるでしょう。
成功する道の駅に共通する経営戦略
高い収益を上げている道の駅には、地域資源を徹底的に活用し、行政や地域と深く連携しながら、常に新しい価値を提供し続けているという共通点があります。民間ならではのスピード感と企画力を活かし、地域全体のショーケースとなるような場を創り出すことが、成功への道ではないでしょうか。
① 地域資源を活かしたキラーコンテンツ開発
その道の駅でしか買えないオリジナル商品や、SNSで話題になる名物グルメなど、「これを目当てに訪れたい」と思わせる強力なコンテンツを開発しましょう。
地域の特産品をそのまま売るだけでなく、加工品にしたり、新しい食べ方を提案したりする企画力が求められます。地域資源を深く理解し、新たな価値を見出す視点が、他の施設との差別化につながります。
② SNSやメディアを活用した魅力の発信
SNSやメディアを積極的に活用し、施設の魅力を効果的に発信しましょう。
それに加え、顧客の反応や売上データを日々分析し、売場のレイアウトや品揃えをスピーディーに改善していくことが大切です。季節ごとのイベントやフェアを積極的に開催し、いつ来ても新しい発見がある新鮮さを保つ努力が、リピーターの心を掴みます。
③ 地域連携によるファン作り
地元の生産者や商工会、観光協会など、地域のさまざまなプレイヤーを巻き込み、地域全体のファンを増やしていく視点を持ちましょう。
生産者の顔が見える売場作りや、共同でのイベント企画などを通じて、道の駅を地域全体の情報発信拠点と位置づけます。設置主体である自治体との密な連携をはかり、一体となって地域を盛り上げる体制を作ることが理想的です。
道の駅の経営を始めるにはまず何をすればいい?
道の駅の運営に参入するには、まず希望する自治体の情報収集から始め、実現性の高い事業計画を組み立てます。制度上、道の駅は自治体が設置・登録し、運営は指定管理者制度で民間等に委ねるのが一般的です。したがって、公募→選定→議会議決→指定→協定締結という自治体の正式プロセスを前提に準備します。
STEP1:情報収集と事業計画の策定
参入候補地について、自治体サイトの公募予定/過去の募集要項・評価表、現地の導線・客層・競合を徹底的に把握します。加えて、指定管理協定で争点になりやすい項目を事前に想定し、売上だけでなく粗利・人時生産性・再来率まで織り込んだ計画に落とします。第3ステージの方針(観光・ネットワーク化・防災)との整合も示せると評価が上がります。
STEP2:設置者である自治体へのアプローチ
計画が固まったら、設置者である自治体の所管部局へ事前相談します。運営事業者の公募予定、既存施設の課題、評価観点(サービス水準・地域連携・収支・体制)をヒアリングし、公募要項の要請に合致する形へ磨き込みます。指定管理は議会議決と協定締結が必要である点も前提に進めます。
STEP3:運営事業者の公募に選ばれるコツ
多くの自治体は公募・審査・議会議決を経て指定管理者を選定します。公募時に提出する企画提案書では、収支計画の実現性や、地域への貢献策、安定した運営体制などを具体的に示すことが、選定を勝ち抜くためのカギとなるでしょう。とくに、その地域が抱える課題を解決するような独自の提案は、高く評価される傾向にあります。
成功事例に学ぶ!道の駅の経営アイデア
全国には、独自の戦略で多くの来場者を惹きつけ、地域のブランド価値向上に大きく貢献している道の駅が存在します。ここでは、とくに参考になる3つの成功事例をとりあげ、その差別化のポイントを探ります。自社の強みを活かすヒントが、ここにあるかもしれません。
【商品開発型】道の駅もてぎ(栃木県)
「道の駅もてぎ」は、地域資源である「ゆず」を活かした「ゆず塩らーめん」が道-1グランプリ2016、2017、2018と三連覇を果たし大ヒットしました。全国的な知名度を誇ります。一つの強力なキラーコンテンツが、施設全体の集客をけん引している好例です。
出典:道の駅もてぎ 公式サイト
【建築・体験型】道の駅ましこ(栃木県)
益子焼で有名な「道の駅ましこ」は、山々の稜線と呼応するような大きな三角屋根が特徴で、その美しい建築デザインでも高く評価され各種メディアやランキングで高い評価を受けています。
また、「ましこのマルシェ」や、地元の食材を活かした食事が楽しめるレストラン「ましこのごはん」が人気を集めています。
レンタサイクルも行っており、益子の美しい里山風景をサイクリングで楽しむなど、商品を売るだけでなく、益子の文化や魅力を深く体験してもらうことで、訪れる人との関係を深めています。
出典:道の駅ましこ 公式サイト
【体験型】道の駅とみうら 枇杷倶楽部(千葉県)
「道の駅とみうら 枇杷倶楽部」は、「全国道の駅グランプリ」で最優秀賞を受賞した実績を持つ人気の道の駅です。南房総の温暖な気候で育つ特産の「房州びわ」をテーマにした、オリジナルのびわソフトクリームや多彩なびわ関連商品が充実しています。
緑豊かな庭園や花畑に囲まれ多くの観光客で賑わいます。お土産の購入だけでなく、体験型のイベントも充実しています。
道の駅経営は「まちぐるみ」の視点で価値を高める
道の駅の経営は、民間企業が専門知識を活かすことで、地域に新たな価値をもたらす事業です。多くの利用者を惹きつけている施設に共通しているのは、単に商品を売るだけでなく、民間ならではの柔軟な発想と経営ノウハウを活かし、行政や地域住民と一体となって「まちぐるみ」で戦略的に取り組んでいる点でしょう。
国の「道の駅第3ステージ」という後押しがある今、民間企業が活躍できるフィールドは確実に広がっています 。この記事で解説した運営の仕組みや成功戦略をふまえ、自社の強みを活かすことで、持続可能な事業を実現する道は拓けていくでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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