- 作成日 : 2025年8月29日
商業登記簿謄本とは?種類やオンラインの取得方法、手数料の金額までわかりやすく解説
商業登記簿謄本は、会社の設立、融資の申し込み、許認可の申請、重要な取引先との契約など、ビジネスのあらゆる節目で必要となる重要な書類です。しかし、「登記簿謄本とは何が違うの?」「種類が多くてどれを取得すれば良いかわからない」「オンラインで安く取れるって本当?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、商業登記簿謄本の取得方法、具体的な費用、そして見本を使った読み方までわかりやすく解説します。
目次
商業登記簿謄本とは
商業登記簿謄本とは、法務局に登記されている会社の基本的な情報を証明するための公的な書類です。会社の設立から現在までの商号(会社名)、本店所在地、役員、資本金などの情報が記録されており、会社の身分証明書とも言える重要な役割を果たします。
商業登記簿謄本と登記簿謄本の違い
登記簿謄本は、不動産(土地や建物)の情報を記録した「不動産登記簿」と、会社の情報を記録した「商業登記簿」の両方の謄本を指す広い言葉です。一方、商業登記簿謄本は、会社の登記情報に限定した証明書を指します。
つまり、商業登記簿謄本は登記簿謄本の一種ということになります。ビジネスの文脈で登記簿謄本と言われる場合は、多くのケースで商業登記簿謄本を指しています。
商業登記簿謄本の記載内容
商業登記簿謄本には、会社の重要な情報が以下のように区分されて記載されています。
商業登記簿謄本の4つの種類と選び方
登記事項証明書は、記載される内容によって主に以下の4種類に分けられます。提出先から特に指定がない場合は、一般的に「履歴事項全部証明書」を取得します。
1. 履歴事項全部証明書
履歴事項全部証明書は、現在効力のある登記事項に加えて、証明書の交付を請求する日の3年前の年の1月1日から請求日までの間に抹消された(過去の)役員情報や商号、本店移転などの履歴が記載されています。
3年以上前の情報は閉鎖事項全部証明書へ移りますが、会社の過去から現在までの変遷を含めて証明できるため、融資や許認可申請など、多くの手続きでこの証明書の提出が求められます。
2. 現在事項全部証明書
現在事項全部証明書は、その名の通り、現在効力がある登記事項のみが記載された証明書です。過去に変更された役員の情報や、以前の商号・本店所在地といった履歴は記載されません。現在の会社の登記情報だけをシンプルに証明したい場合に適しています。
例えば、取引先との契約で、現在の代表者や本店の情報を確認する目的などで使用されることがあります。履歴事項全部証明書に比べて情報量が少ないのが特徴です。
3. 閉鎖事項全部証明書
閉鎖事項全部証明書は、合併による消滅や本店移転などによって閉鎖された過去の登記記録がすべて記載された証明書です。退任した役員や商号変更など、請求する日の3年前の年の1月1日以前の情報も記載されています。
例えば、吸収合併されてなくなった会社の情報を確認したい場合や、管轄外への本店移転前の情報を遡って調べる必要がある場合などに請求します。
4. 代表者事項証明書
代表者事項証明書は、会社の代表権を持つ者(代表取締役など)を証明することに特化した書類です。会社に関する多くの情報の中から、代表者の氏名や住所、会社法人等番号、会社名、本店所在地、役職名など、代表権に関する現在の情報だけを抜粋して記載しています。
契約手続きや訴訟手続きなどで、代表者の代表権を公的に証明する必要がある際に利用されます。情報が限定されているため、提出先にこの証明書で問題ないか事前に確認することが重要です。
商業登記簿謄本の取得方法
商業登記簿謄本(登記事項証明書)を取得するには、主に3つの方法があります。それぞれ手数料や取得までにかかる時間が異なるため、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
1. 法務局の窓口で申請する方法
法務局の窓口で直接申請する方法です。全国どこの法務局でも、自社の管轄に関わらず取得できます。窓口に設置されている申請書に必要事項を記入し、手数料分の収入印紙を貼って提出すれば、通常は30分〜1時間程度で即日発行されます。
急いでいる場合には最適な方法ですが、手数料が1通600円と他の方法に比べて割高になる点と、法務局の開庁時間内(平日8:30〜17:15)に訪問する必要がある点に注意が必要です。
2. 郵送で請求する方法
法務局へ行く時間がない場合は、郵送で請求することも可能です。法務局のウェブサイトから申請書をダウンロードして印刷し、必要事項を記入します。そして、手数料分の収入印紙と、返信用の切手を貼った封筒を同封して、本店所在地の管轄の法務局へ郵送します。
申請書が法務局に到着してから証明書が返送されるまで、数日から1週間程度の時間がかかります。手数料は窓口申請と同じく1通600円です。時間に余裕がある場合に選択肢となる方法です。
3. オンラインで請求する方法
現在、最も推奨されるのがオンラインでの請求です。「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を利用すれば、自宅やオフィスのパソコンから申請できます。手数料は、郵送で受け取る場合は1通520円、指定した法務局の窓口で受け取る場合は1通490円と、最も安く設定されています。
平日の21時まで申請可能で、場所や時間を選ばずに手続きできる利便性の高さが最大のメリットです。初めて利用する際は初期登録が必要ですが、今後のメリットを考えると登録しておくと便利です。
目的に合った方法で商業登記簿謄本を取得しましょう
本記事では、商業登記簿謄本(登記事項証明書)の種類から取得方法、手数料までを詳しく解説しました。
会社の信用を証明する重要な書類だからこそ、その内容と取得方法を正しく理解しておくことが大切です。この記事を参考に、ご自身の状況に合わせて最適な方法で商業登記簿謄本を取得してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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