- 更新日 : 2025年8月21日
創業融資で2000万円借りる方法|日本政策金融公庫、制度融資、銀行融資などを解説
創業期において、事業を軌道に乗せるためには十分な資金調達が不可欠です。特に2000万円という金額は、ある程度の規模の事業開始や初期投資、運転資金を賄ううえで一つの目安となるでしょう。しかし、これだけの金額を調達するには、入念な準備と正しい知識が求められます。
本記事では、2000万円の創業融資を実現するための具体的な方法、審査のポイント、注意点などを解説します。
目次
日本政策金融公庫の創業融資で2000万円借りる方法
創業者にとって最も身近で頼りになる金融機関の一つが日本政策金融公庫です。特に創業期の資金調達においては、民間金融機関に比べて柔軟な対応が期待できるため、積極的に活用を検討すべきです。ここでは、2000万円の創業融資獲得を目指すうえで知っておきたい、日本政策金融公庫の主要な融資制度について解説します。
新規開業・スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる代表的な制度です。
- 対象者
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 - 融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円) - 返済期間
設備資金 20年以内、運転資金 10年以内
(いずれも据置期間5年以内) - 金利
基準利率
一定の要件を満たす場合は、特別利率が適用されます。 - 保証人・担保
相談の上、決定されます。
※2024年3月末に終了した「新創業融資制度」の内容が「新規開業資金」に統合され、2025年3月に「新規開業・スタートアップ支援資金」に名称変更されました。
※「新創業融資制度」では一定の自己資金が必要でしたが、「新規開業・スタートアップ支援資金」では自己資金の要件が撤廃されました。
中小企業経営力強化資金
「中小企業経営力強化資金」も、2000万円の創業融資を検討する際に有力な選択肢の一つです。
- 対象者
認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)による指導や助言を受けて事業を行う方 - 融資限度額
7億2,000万円 - 返済期間
設備資金 20年以内、運転資金 7年以内
(いずれも据置期間2年以内) - 金利
基準利率
一定の要件を満たす場合は、特別利率が適用されます。 - 保証人・担保
相談の上、決定されます。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
「マル経融資」は、商工会議所や商工会、都道府県商工会連合会の経営指導を受けている小規模事業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる融資制度です。
- 対象者
商工会、商工会議所又は都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者であって、商工会、商工会議所等の長の推薦を受けた方 - 融資限度額
2,000万円 - 返済期間
10年以内
(据置期間2年以内) - 金利
特別利率F - 保証人・担保
不要
参考:マル経融資(小規模事業者経営改善資金)|日本政策金融公庫
必要書類と準備期間
日本政策金融公庫で2000万円の融資を申し込む際には、主に以下のような書類が必要です。
- 借入申込書
- 創業計画書または事業計画書
- 見積書(店舗改装や設備購入など、設備資金を借りる場合)
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 本人確認書類(運転免許証など)
- その他、状況に応じて追加資料の提出を求められることがあります。
これらの書類を不備なく、かつ質の高い内容で準備するには相応の時間がかかります。特に、融資審査の核となる創業計画書、事業計画書の作成には、十分な時間と労力を割くべきです。
申し込みから実際に融資が実行されるまでの期間は、書類の準備状況や審査の状況によって異なりますが、一般的に1ヶ月から2ヶ月程度を見込んでおくと良いでしょう。早めの準備と、必要であれば専門家への相談も検討しましょう。
制度融資や銀行融資で2000万円借りる方法
日本政策金融公庫以外にも、2000万円の創業融資を調達する方法は存在します。地方自治体が窓口となる制度融資や、信用保証協会の保証を利用した民間金融機関からの融資も有力な選択肢です。それぞれの特徴を理解し、最適な手段を選びましょう。
地方自治体の制度融資
多くの都道府県や市区町村では、創業者や中小企業を支援するための「制度融資」を設けています。これは、地方自治体が金融機関や信用保証協会と連携して提供する融資制度で、比較的低金利で、かつ長期の返済期間が設定されていることが多いのがメリットです。また、自治体によっては利子や保証料の補助を受けられる場合もあります。
デメリットとしては、融資実行までに時間がかかる場合があることや、自治体ごとに制度内容や条件が異なるため、自身の事業所所在地の制度を個別に確認する必要がある点が挙げられます。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に、その債務を保証することで資金調達を円滑にする公的機関です。創業者が民間金融機関から融資を受ける場合、実績が乏しいためプロパー融資(保証なしの融資)のハードルは非常に高くなります。そこで、信用保証協会の保証を付けることで、金融機関は貸し倒れリスクを軽減でき、融資が実行されやすくなります。
手続きとしては、金融機関を通じて信用保証協会に保証を申し込み、審査を経て保証が承諾されれば融資が実行される流れとなります。
銀行からのプロパー融資
民間金融機関、特に銀行からのプロパー融資を創業時に2000万円受けることは、一般的に非常に難易度が高いと言えます。銀行はリスクを重視するため、事業実績のない創業者に対して高額な融資を無担保・無保証で行うことは稀です。
ただし、創業者の過去の実績が非常に優れていたり、事業計画が極めて革新的かつ確実性が高いと判断されたりする場合には、可能性がゼロではありません。
2000万円の創業融資の審査に通過するための対策
2000万円という金額は、融資機関にとっても決して小さな額ではありません。審査を突破するためには、万全の準備と戦略が必要です。ここでは、審査通過の可能性を高めるための具体的な対策を解説します。
説得力のある事業計画書
融資審査において最も重要な書類の一つが事業計画書です。特に、売上予測、経費予測、利益予測をまとめた「収支計画」と、必要な資金額とその調達方法、返済計画を示す「資金計画」は、具体的かつ現実的でなければなりません。市場調査や競合分析に基づいた根拠のある数値を示し、どのようにして収益を上げ、借入金を返済していくのかを明確に説明することが求められます。専門家のアドバイスを受けながら作成することも有効です。
自己資金の準備
自己資金は、創業者の本気度や事業へのリスク負担能力を示す重要な指標です。一般的に、融資希望額の1/3程度が目安と言われることもありますが、これはあくまで目安であり、多ければ多いほど審査には有利に働きます。2000万円の融資を希望する場合、最低でも数百万円単位の自己資金は用意しておきたいところです。見せ金ではなく、コツコツと貯めてきた経緯がわかる通帳などを提示できると、より信頼性が高まります。
面談対策
融資審査では、書類審査だけでなく担当者との面談も行われます。面談は、事業計画書だけでは伝えきれない経営者の熱意や人柄、事業への理解度を直接伝える絶好の機会です。事前に想定される質問への回答を準備しておくことはもちろん、自身の言葉で、自信を持って事業内容や将来展望を語れるように練習しておきましょう。また、質問に対しては誠実に、かつ論理的に回答することが重要です。服装や言葉遣いなど、基本的なビジネスマナーも忘れてはいけません。
専門家への相談
創業融資の手続きや事業計画書の作成は、専門的な知識や経験が求められる場面が多くあります。一人で全てを抱え込まず、必要に応じて専門家のサポートを活用しましょう。専門家に相談することで、融資審査の通過率を高めるだけでなく、事業開始後の円滑な運営にもつながります。相談料はかかりますが、将来への投資と考えれば十分に価値があるでしょう。
2000万円の創業融資を実現し、事業を軌道に乗せましょう
2000万円の創業融資獲得は決して容易な道のりではありませんが、適切な準備と戦略があれば実現の可能性は十分にあります。成功の鍵は、説得力のある事業計画書の作成、十分な自己資金の準備、そして熱意を伝える面談対策です。必要であれば専門家の力も借り、諦めずに挑戦することが大切です。この記事で得た知識が、皆様の事業の成功、そして夢の実現への確かな一歩となることを心より願っています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
新規事業に活用できる補助金は?メリット・申請方法・注意点を解説
新規事業の立ち上げには、中小企業、個人事業主、どちらにおいても初期投資や運転資金など多くの資金が必要となります。返済不要で活用できる補助金は、創業期の資金調達の選択肢として有効で、事業の実現可能性を高めるだけでなく、経営計画の見直しや社会的…
詳しくみる資金調達の手数料は?経費になる?種類・相場・節約方法を解説
資金調達を検討する際には、調達額や金利だけでなく「手数料」にも十分注意を払う必要があります。手数料には、保証料、事務手数料、サービス利用料などが含まれ、調達方法によって異なるのが特徴です。これらの手数料を見落とすと、実際に使える資金が目減り…
詳しくみる脱サラ起業で創業融資を受けるには?自己資金や手続き、助成金を解説
脱サラ起業の場合に創業融資を受けられるのか、自己資金はいくら必要なのか、不安に感じている方もいるでしょう。本記事では、脱サラ起業で創業融資を受けるメリットや脱サラ起業の場合に日本政策金融公庫で利用できる創業融資の種類などについて解説します。…
詳しくみる売掛金を資金調達に活用する方法は3種類|メリットや注意点をそれぞれ解説
事業を継続・成長させていくうえで、資金繰りの安定は欠かせません。なかでも、売掛金は将来現金化される資産でありながら、入金までのタイムラグが資金の流動性を損なう要因にもなります。そこで資金化までの時間差を解消するために注目されるのが、売掛金を…
詳しくみる代表者の連帯保証なしで借りられる創業融資とは?種類や注意点を解説
金融機関に事業の融資を申込む場合、代表者の連帯保証を求められることも珍しくありません。なぜ、連帯保証を求められるのでしょうか。代表者の連帯保証が必要な理由や、連帯保証がなくても融資を申し込める制度について紹介します。 創業融資に代表者の連帯…
詳しくみる資金調達スキーム完全ガイド|MBOからスタートアップまで!成長に導く秘訣を解決
企業の持続的な成長には、適切なタイミングでの資金確保が不可欠です。その鍵を握るのが、緻密に設計された資金調達スキームです。 本記事では、資金調達におけるスキームの重要性から、具体的な種類、そして自社に最適なスキームを選択するためのポイントま…
詳しくみる