- 作成日 : 2025年5月1日
違法な資金調達とは?ファクタリングの危険性や関連する法律なども解説
違法な資金調達は、企業や個人の信用を失墜させ、法的な制裁を招く危険な行為です。ファクタリングを装った詐欺や、補助金の不正受給など、巧妙化する手口に巻き込まれないよう注意が必要です。
本記事では、違法な資金調達の実態や安全な資金調達方法などについて解説します。違法な資金調達に関与しないために、正しい知識を身につけましょう。
目次
違法な資金調達とは
違法な資金調達とは、法律や社会的なルールに反する方法で資金を調達する行為です。これには、詐欺や不正、反社会的勢力との関与などが含まれます。
違法な手段で資金を得ることは、短期的な資金繰りの解決策に見えても企業や個人の信用を大きく損ない、法的制裁のリスクを高めることになります。
近年では手口が巧妙化しており、一見すると合法に見えるスキームも存在するため十分な注意が必要です。違法な資金調達に巻き込まれないためには、その実態を理解し、リスクを回避するための知識を身につける必要があります。
違法な資金調達の事例
違法な資金調達は、企業の信用失墜や法的責任を招く重大なリスクも伴います。以下では、代表的な違法手法やその注意点について解説します。
ファクタリングを装った詐欺
ファクタリングが詐欺や犯罪に該当するケースは、主に以下のとおりです。
請求書を偽造する
請求書偽造は、ファクタリング詐欺の悪質な手口の一つです。存在しない取引をねつ造し、ファクタリング会社から資金をだまし取ります。実在企業のロゴなどを悪用し、請求書の信ぴょう性を高めるケースもあります。
偽造請求書による詐欺は、ファクタリング会社だけでなく、取引先や顧客にも被害が及ぶ可能性もあるため注意しなければなりません。
債権を二重に譲渡する
債権を二重に譲渡する行為は、1つの債権を複数のファクタリング会社へ譲渡することを指します。悪意のある場合だけでなく、知らずに二重譲渡してしまうケースもあるため注意が必要です。
売掛債権は手形と異なり目に見えないため、複数の会社へ譲渡しやすい性質を持っています。1つの債権は1社のみに譲渡することを徹底し、社内での情報共有を強化することが重要です。
不良債権を譲渡する
不良債権をファクタリング会社に譲渡する行為は、詐欺罪に該当する可能性があります。不良債権とは、支払期日が過ぎている、または回収不能となった債権のことです。
通常、不良債権はすぐに発覚しますが、利用者と売掛先が共謀して計画倒産を行うなど、意図的に隠ぺいした場合には気づかれないこともあります。このような行為は、法的責任を問われるため、厳に慎むべきです。
クラウドファンディングを装った詐欺
クラウドファンディングは資金調達の手段として有効ですが、運用方法によっては詐欺とみなされることがあります。
支援者に約束したリターンを提供しない場合、信用を失うだけでなく、法的責任を問われる可能性もあるため注意しなければなりません。また、資金を集めた後にプロジェクトを中止したり、説明と異なる用途に流用したりする行為も問題視されます。
補助金・助成金の不正受給
補助金・助成金を不正に受給する行為は犯罪とされ、禁止されています。
虚偽の報告書を提出すると、詐欺罪や偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。不正が発覚すれば、交付が取り消されるだけでなく、加算金を含めた返還が必要です。
さらに、逮捕・起訴されれば企業の信用が損なわれ、事業継続にも影響を及ぼしかねません。適正な手続きにより、補助金・助成金を申請し受給することが重要です。
暴力団や反社会的勢力からの資金調達
近年、暴力団や反社会的勢力は企業活動を装い、その手口を巧妙化させています。こうした勢力と関与すれば、違法行為への加担とみなされ、社会的信用の失墜や法的制裁を受けるリスクがあります。
また、企業や従業員が標的となり、不当な要求や事業の乗っ取りといった深刻な被害のおそれもあるでしょう。これらのリスクを回避するためには、徹底したコンプライアンス対策が不可欠です。
架空の売上を利用した資金調達
架空の売上を利用した資金調達は、実際の取引がないにもかかわらず取引を装い、資金を得る違法な手法です。売上の架空計上や取引額の過大計上を行い、業績を好調に見せかける目的があります。
発覚した場合は、詐欺罪や私文書偽造などの刑事責任を問われる可能性もあり、取引先や金融機関の信用を失い経営継続が困難になるリスクもあります。
違法な資金調達に関連する法律
違法な資金調達を防ぐには、関連する法律への理解が必要です。ここでは、出資法や金融商品取引法など、資金調達にかかわる主要な法律について解説します。以下で詳しく見ていきましょう。
出資法
出資法は、高利貸しや違法な融資から利用者を守るための法律です。不特定多数の人々に対して、元本保証を示して出資金を受け入れる行為は、出資法違反に該当します。
違反した場合は、刑事罰の対象となるため注意が必要です。資金調達を行う際は、企業の信用維持と法的リスク回避のため、正規かつ合法的な手段を選択しましょう。
金融商品取引法
金融商品取引法は、金融市場の公正性を確保し、投資家保護を目的とした法律です。企業の情報開示や金融商品取引業者の規制を定めています。
違反行為としては、相場操縦行為やインサイダー取引、風説の流布などです。これらの行為は、市場を誤導し投資家に不利益をもたらすため、厳しく規制されています。
違反した場合には、罰則が科されるため、資金調達を行う際は適法な取引を心がけることが重要です。
貸金業法
貸金業法は、消費者向け貸付の金融業者を規制し、過剰な借金を防ぐための法律です。登録を受けずに貸付を行う業者は「ヤミ金融」と呼ばれ、違法行為とされています。
ヤミ金融は、法外な金利や過剰な取り立てを行い、借り手に深刻な被害をもたらすケースが多く見られます。資金調達を検討する際は、登録済みの貸金業者を利用することが重要です。
特定商取引法
特定商取引法は、訪問販売や電話勧誘など特定の取引形態における消費者保護を目的とした法律です。
合同会社の社員権を販売する場合、金融商品取引業の登録は不要ですが、販売方法によっては特定商取引法の規制を受けます。
訪問販売や電話勧誘で社員権を販売する際は、事業者に書面交付義務が課され、消費者にはクーリングオフ制度が適用されます。
ヤミ金融対策法
ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部改正法)は、違法な貸金業者による高金利や過剰な取り立てを規制するための法律です。金融庁が主体となり、ヤミ金融の取り締まりを強化しています。
SNSなどを通じた個人間融資は、貸金業法に抵触する可能性があり、貸し手は無登録営業で罰せられ、借り手は犯罪被害に巻き込まれるリスクがあります。資金調達を検討する際は、ヤミ金融には近づかないことが重要です。
違法な資金調達を行った場合のリスク
資金調達は企業の成長に不可欠ですが、違法な手段に手を染めると、深刻なリスクを招きます。刑事・民事責任や社会的信用の失墜、そして経営者個人の責任追及など、その影響は多岐にわたります。以下で、それぞれ見ていきましょう。
刑事責任
違法な資金調達を行うと、刑事責任を問われる点にも注意しなければなりません。架空債権を用いたファクタリングは詐欺罪に該当し、10年以下の懲役刑が科されるケースもあります。
また、粉飾決算による資金調達では、違法配当罪や特別背任罪、有価証券報告書虚偽記載罪などが適用され懲役刑や罰金刑が科されることもあります。信用を失墜させるだけでなく、経営者個人の責任も問われるため注意しましょう。
民事責任
違法な資金調達を行い、関係者に損害を与えた場合は、民事責任を問われる可能性があります。投資家や金融機関から、損害賠償請求を受けるケースが想定されるでしょう。
高額な賠償金を支払うことになれば、企業の財務状況が悪化し、存続が困難になるリスクもあります。資金調達に際しては、法的に適正な手段を選択するとともに、関係者への影響を十分に考慮する必要があります。
社会的信用の失墜
違法な資金調達が発覚すると、企業の社会的信用は大きく損なわれます。取引先や金融機関からの信頼を失い、取引停止や融資を打ち切られてしまうリスクもあります。
その結果、事業の継続が難しくなることも少なくありません。信用の回復には長い時間と多大な努力が必要となるため、違法な手段による資金調達は避けなければなりません。
経営者個人の責任
違法な資金調達を行った場合、経営者個人が責任を負うリスクもあります。取締役が会社の債務を連帯保証しているケースや職務執行に故意または重過失があった場合には、責任が問われることもあるため注意が必要です。
また、粉飾決算や虚偽の登記・公告が発覚すると、損害賠償請求を受けることもあります。名義だけの取締役であったとしても、代表取締役を適切に監視する義務を怠った場合には、責任を追及される点には留意しましょう。
違法な資金調達を防ぐためのポイント
違法な資金調達を避けるためには、事前の確認と専門的なアドバイスが不可欠です。個人や不正業者からの危険な取引を防ぐために、信頼できる金融機関や登録業者を利用するようにしましょう。ここでは、資金調達を行う際に押さえておきたいポイントについて解説します。
SNSや個人間での資金調達を避ける
SNSや個人間での資金調達は、違法な貸付や犯罪被害のリスクがあるため避けるべきです。個人が反復的に金銭を貸し付けることは、貸金業法に抵触します。
また、個人を装ったヤミ金業者による、法外な利息請求や悪質な取り立ても行われる可能性があります。貸金業登録のある金融機関から、資金調達をするようにしましょう。
金融庁・消費者庁の登録業者か確認する
資金調達をする際は、利用する業者が金融庁や消費者庁に登録されているかを確認しましょう。
ノンバンクや消費者金融の場合は、金融庁の「登録貸金業者情報検索入力ページ」で業者名や代表者名などから検索が可能です。
銀行や信用金庫は、貸金業法ではなく銀行法が適用されるため、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認します。
参考:金融庁 登録貸金業者情報検索入力ページ
参考:金融庁 免許・許可・登録等を受けている業者一覧
資金調達をする前に専門家に相談する
資金調達を検討する際は、専門家に相談することが重要です。認定支援機関や税理士、弁護士、司法書士などの専門家は、適切なアドバイスを提供してくれます。
認定支援機関は中小企業庁の認定を受けた機関であり、資金調達に関する専門的な知識を有しています。また、税理士は税務面での助言を行い、弁護士や司法書士は法的な手続きに関するサポートが可能です。
違法にならない安全な資金調達方法
資金調達を検討する際は、違法な資金調達手段を避け、安全な方法を選ぶことが重要です。適法な資金調達手段には、金融機関からの融資、ベンチャーキャピタルからの出資、事業提携・共同出資などがあります。各手段の特徴を理解し、自社の状況に合った選択をしましょう。
金融機関からの融資
金融機関からの融資は、違法にならない安全な資金調達方法の一つです。銀行や信用金庫、日本政策金融公庫が提供する融資制度を利用することで、低金利でまとまった資金を確保できます。
返済期間や条件が柔軟に設定できる場合もあり、事業運営に適したプランを選べます。ただし、審査には事業計画書や財務資料の提出が必要です。不備があると審査に通らない可能性があるため、事前に十分な準備をしておくことが重要です。
ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタルからの出資は、返済義務がない資金調達方法として有効です。成長性の高い企業に出資する投資ファンドであり、スタートアップにとって有力な選択肢となります。資金だけでなく、経営アドバイスやネットワーク提供といった支援も受けられる点もメリットです。
ただし、事業計画書の作成やプレゼンテーションによるアピールが求められます。また、株式譲渡により経営権が分散する可能性もあるため、慎重な検討が必要です。
事業提携・共同出資
事業提携や共同出資は、技術やノウハウ、人材、資本を活用できる安全な資金調達方法です。
業務提携は、開発や販売など特定の目的に応じた協力が可能であり、解消しやすい点が特徴です。一方、資本提携は株式保有を伴うため、長期的な関係が前提となります。
効果が限定的な場合、業務提携は協業の停滞リスクがあり、資本提携は解消が困難となるケースもあります。目的に応じて適切な手法を選択することが重要です。
違法な資金調達を回避し、安全に資金を確保しよう
違法な資金調達は、企業や個人に深刻なリスクをもたらします。短期的な資金繰りの解決につながったとしても、やがては法的責任や社会的信用の喪失につながり、最悪の場合、刑事罰を受ける可能性もあります。
ファクタリングやクラウドファンディングを悪用した詐欺など、一見合法に見える手段には、特に注意を払わなければなりません。資金調達を行う際は、適切な方法を選び、関連する法律を正しく理解することが大切です。安全で健全な経営を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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