- 作成日 : 2025年3月27日
脱サラ起業で創業融資を受けるには?自己資金や手続き、助成金を解説
脱サラ起業の場合に創業融資を受けられるのか、自己資金はいくら必要なのか、不安に感じている方もいるでしょう。本記事では、脱サラ起業で創業融資を受けるメリットや脱サラ起業の場合に日本政策金融公庫で利用できる創業融資の種類などについて解説します。そのほか、自己資金の目安や創業融資を受ける流れも紹介します。
目次
脱サラ起業で創業融資を受けるメリット
代表的な創業融資として、日本政策金融公庫の創業融資が挙げられます。ここでは、日本政策金融公庫の創業融資を受けるメリットについて解説するので、参考にしてください。
日本政策金融公庫の創業融資には、一般貸付や新規開業資金などさまざまな創業融資があります。一般貸付とは、多くの業種の中小企業が対象となる融資です。新規開業資金は、新規事業を始める方、事業開始後約7年以内の方が受けられる融資です。
日本政策金融公庫の創業融資を受けるメリットとしては、事業実績がなくても利用可能な制度が多いことや、無担保・無保証人で利用できる制度があることなどが挙げられます。
また、金利も比較的低いため、金利負担を抑えられる点は起業間もない方にとっては大きなメリットといえるでしょう。そのほか、創業計画書の作成支援や悩み相談など創業に関連するさまざまなサポートも充実しています。
資金面を含め、創業に関して悩みがある場合には、日本政策金融公庫に相談することをおすすめします。
脱サラ起業で利用できる創業融資の種類(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫で利用できる創業融資の種類について解説します。主な融資としては次の3つが挙げられます。
- 新規開業資金
- 新規開業資金:女性、若者/シニア起業家支援
- 新規開業資金:中小企業経営力強化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
新規開業資金
新規開業資金とは、新たに事業を始める方や事業開始後約7年以内の方が利用可能な融資制度のことです。新規開業資金は、設備資金と運転資金それぞれに使えます。
また、以下の人は特別利率で利用可能です。
- 女性や35歳未満または55歳以上の方
- 廃業歴等があり創業に再チャレンジする方
- 中小会計を適用する方
ただし、創業計画書を提出する必要があり、適正な事業計画になっていて事業の実現性が高いのかを確認されます。
新規開業資金の詳細は次のとおりです。
<融資限度額>
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
<返済期間>
- 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
- 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)※廃業歴等がある方は15年以内(うち据置期間5年以内)
新規開業資金:女性、若者/シニア起業家支援
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)とは、女性や35歳未満または55歳以上の方が利用できる融資制度です。対象は、新たに創業する方や事業開始後7年以内の方となっています。こちらの融資制度も、設備資金と長期運転資金に利用可能です。
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)の詳細は次のとおりです。
<融資限度額>
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
<返済期間>
- 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
- 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)※廃業歴等がある方は15年以内(うち据置期間5年以内)
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
新規開業資金:中小企業経営力強化
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)の対象となるのは、次の2点に当てはまる方です。
- 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
- 中小企業の会計に関する基本要領または中小企業の会計に関する指針を適用している(適用予定)で、事業計画書を自ら作成し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)の詳細は次のとおりです。
<融資限度額>
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
<返済期間>
- 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
- 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
脱サラして創業融資を受ける自己資金の目安
脱サラして創業融資を受けるためには、自己資金が必要です。自己資金の目安は、一般的に融資額の10〜30%程度といわれています。なお自己資金の目安は、融資を受ける金融機関や起業する事業内容によって異なるため注意しましょう。
自己資金が少ない場合でも、蓋然性の高い事業計画であり、実現の可能性が高いと判断されれば、融資を受けられる可能性は高いです。
自己資金が用意されていることで、金融機関からすると起業者の事業に取り組む本気度を確認できるほか、貸し倒れのリスク軽減にもつながります。
では、自己資金を用意できなかった場合にはどうすればよいのでしょうか。ここでは、自己資金が用意できなかった場合の対処法について解説します。
自己資金なしの場合
自己資金がない場合の対処法としては、次の3つが考えられます。
- みなし自己資金
- 資産を売却した自己資金
- 第三者割当増資による自己資金
みなし自己資金とは、事業を始めるために使用したお金を自己資金として認めてもらう方法のことです。事業をすでに開始して設備投資等に資金を投じている場合は、みなし自己資金を検討しましょう。
また、所有する車などの自己資産や有価証券などの金融資産を売却して得られた資金を創業資金に充てた場合も自己資金として認められます。資産を売却した自己資金は、預貯金などと同様に資産形成してきたものだと評価される点はメリットです。
他人(家族・親族を含む)から出資を受けるなどの第三者から出資してもらう第三者割当増資による自己資金も、自己資金とみなされます。ただし、返済義務がないものであることが条件です。
脱サラして創業融資を受ける流れ
脱サラして日本政策金融公庫の創業融資を受ける流れについて解説します。
①日本政策金融公庫に相談
まずは、日本政策金融公庫に創業融資の相談にのってもらいましょう。
相談方法は、次の3通りです。
- 電話相談
- 支店窓口での相談:支店窓口での相談の場合は必ず事前に予約が必要
- オンラインでの相談:オンラインでの相談の場合、2営業日前の16時までに予約が必要
自分にあった方法を選びましょう。
②事業計画書や関連書類の準備
日本政策金融公庫の創業融資を利用するためには、必要書類の提出が必要です。申込者の状況によって必要書類は異なりますが、以下のような書類を準備しましょう。
準備漏れで申請ができないという事態に陥らないためにも、あらかじめ確認しておきましょう。
③創業融資の申し込み
相談が終わったら、必要書類を用意して融資の正式申し込みをします。なお、初回相談時にも申し込みは可能です。そのほか、郵送やインターネット上での申し込みもできます。
インターネットであれば、24時間365日いつでも申し込めるため、直接支店に来店しなくても手続きを進められる点はメリットです。
④面談
提出した書類についての審査が終わったあとは、日本政策金融公庫の支店での融資面談が行われます。面談は提出書類についての確認も行われるため、書類に記載した内容を説明できるようにしっかりと理解しておきましょう。
⑤融資決定の連絡
融資面談に通過したら、日本政策金融公庫の担当者から融資内定の連絡がきます。内定連絡は、融資面談後の1週間〜10日程度を目処にくることが多いです。
⑥契約書類到着と返送
内定連絡がきたあとは、契約書や借用証書などの書類一式が記載した住所宛に郵送されてきます。必要書類の到着まで、融資内定連絡後5〜10日程度を要します。
書類作成の際には印鑑証明書や印紙などが必要となるため、あらかじめ準備しておくようにしましょう。書類に必要事項を記載したあとは、入金センターに書類を送付します。
⑦公庫による融資金の振り込み
必要書類が入金センターに到着後、指定口座に融資が実行されます。融資実行は、入金センターに書類が到着してから約1〜2週間後です。
すべての工程がスムーズに行った場合、面談開始から1ヶ月程度で融資の着金までたどりつけるでしょう。
⑧融資金の返済
融資金振込後は、融資金の返済を行っていきます。返済開始時期は、申込者の状況によって異なるため、スケジュールを確認しておきましょう。
脱サラ起業で創業融資の審査に通るポイント
脱サラ起業で創業融資の審査に通るポイントについて解説します。重要な審査基準のポイントは、自己資金をどれだけ用意したか(自己資金割合を満たしているか)どうかです。
自己資金の割合は、通常融資では売り上げの3分の1程度といわれています。また、起業後に運営予定の事業に関連する経験をどれだけ経験してきたかも問われます。
お金を貸す側の立場において、返済できるだけの利益を上げられるかも重要なポイントです。
それらを事業計画書でしっかりと証明できなければ、融資審査には通りません。月の売り上げや利益を予測し妥当性のある数値を用いて証明しましょう。お金の使い道についても、見積書などで根拠を明示することが重要です。
脱サラ起業におすすめの補助金・助成金
日本政策金融公庫の創業融資以外に、脱サラ起業におすすめの補助金・助成金について解説します。代表的な補助金・助成金には、以下のようなものが挙げられます。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- 人材開発支援助成金
- 自治体の助成金・補助金
活用できるものがないか、しっかりと確認しましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、販路開拓や生産向上に取り組む際の費用の一部を補助する制度です。対象者は、個人事業主や小規模企業の事業主などです。
補助上限額:50万~5,000万円(申請枠で異なる)
IT導入補助金
IT導入補助金とは、生産性を上げるためにITツールを導入する際に補助されるお金です。自動化やデジタル化が進めば、労働環境の改善や生産性向上が見込めます。
補助上限額:5万~3,000万円(申請枠・類型、企業規模等で異なる)
参考:中小企業庁 「IT導⼊補助⾦」でIT導⼊・DX(デジタルトランスフォーメーション)による⽣産性向上を⽀援︕
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金とは、労働者のキャリア形成を支援する制度です。事業主が正規雇用労働者に対して、専門的知識やスキルを習得させる際の経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
人材開発支援助成金には6つのコースがあり、それぞれ補助金額は異なります。
自治体の助成金・補助金
そのほか、自治体による助成金や補助金もあります。たとえば、東京都港区で実施されている創業・スタートアップ支援事業補助金では、港区内で創業して2年未満を対象とした補助金で250万円を限度に補助対象経費の3分の2が補助されます。
補助率や上限額は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体に確認ください。
脱サラでも創業融資を受けられる
脱サラでも創業融資を受けることは可能です。代表的なものとしては、日本政策金融公庫の創業融資が挙げられます。日本政策金融公庫の創業融資のメリットとしては、事業実績がなくても利用可能な制度が多いことや、無担保・無保証人で利用できる制度があることなどです。
ただし、創業融資を受けるためには、自己資金が必要です。自己資金の目安は、一般的に融資額の10〜30%程度といわれているため、注意してください。
なお、脱サラ起業の詳細は、以下の記事をご参照ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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