• 作成日 : 2025年4月24日

資金調達先による審査の違いは?融資で重視されるポイントを解説

資金調達先による審査の違いを知ることは、融資で重視されるポイントを明確に把握し、円滑に資金を得るために重要です。調達先ごとの審査基準を理解し、財務や事業計画の要点を押さえておくと、融資審査の通過率は格段に上がります。

本記事では、資金調達先ごとの審査や難易度の違い、融資審査で重視されるポイントも併せて解説します。

資金調達における審査の重要性

資金調達は事業を維持・成長させるうえで欠かせない手段といえますが、融資を受ける際、金融機関や公的機関からの審査はほぼ必須です。審査では、貸し手が返済や投資回収の確実性を判断するため、事業の安定性・成長性が綿密にチェックされます。

特に金融機関は、融資が焦げ付くリスクを負担しなければなりません。そのため、事業の将来性や経営者の信用力、財務状況などを多角的に評価し、返済能力を慎重に見極める必要があります。

融資などによる資金調達を考える際には、審査を意識して事業計画や財務の健全性を整えることが、円滑な資金調達の第一歩といえます。

資金調達の審査は主に何を重視しているのか

資金調達を検討するうえで気になるのが、「審査では何を見られるのか」というポイントではないでしょうか。一般的には、どの調達先でも「返済可能性」を最大の判断基準にしていますが、その内容や角度は多岐にわたります。

ここでは、資金調達における審査で重視されるポイントについて見ていきましょう。

事業の将来性

金融機関や投資家が知りたいのは、事業がどの程度の将来性を秘めているかです。資金調達の審査に臨む際には、提出する事業計画書に市場の成長性や競合優位性、ビジネスモデルの独自性などをしっかりと示すようにしましょう。

特に創業段階では、経営者が解決したい課題や社会的ミッションをどのように設定し、どのようなアプローチで取り組むのかが注目ポイントになります。「既存の課題をどのようなプロダクトやサービスで解決するのか」「それが市場にどれくらい受け入れられそうか」などを整理しておくことが望ましいでしょう。

財務の健全性

事業の将来性が見込めても、財務が不安定では融資審査を通過しにくくなります。金融機関などは売上高、利益率、利益剰余金、現預金残高といった財務指標を通じて、事業主や法人の健全性を評価するため、不安を感じさせないような健全性を築いておく必要があるといえるでしょう。

特に決算書資金繰り表は、直近の事業の実態や将来的な返済能力を把握するために重視されます。また、資金繰りが安定しているかどうかも審査における重要ポイントであるため、入出金のバランスや支払能力の継続性が精査されます。

実績や信頼性

企業の実績や経営者のバックグラウンドがしっかりしているかも、審査項目のひとつです。

「同業種での豊富な経験を持つ経営者か」「過去に成功させたプロジェクトがあるか」といった点は、信頼度を判断するために詳しく確認されます。特に創業融資では、経営者自身がその業界で実績を積んでいる場合や、人脈や取引先ネットワークをすでに確保している場合には評価が高まることが期待できます。

資金調達の審査にはどのような方法があるか

融資や出資を検討するとき、金融機関や投資家がどのような方法で審査を進めていくかを知っておくと、不安を和らげたり、事前準備をスムーズに行えたりします。

審査方法の詳細は、それぞれの金融機関や機構などによって異なりますが、主な流れとしては「書面審査→面談→追加の資料請求(必要があれば)→最終決定」という形が一般的です。

以下で、代表的な審査方法を見ていきましょう。

事業計画表による審査

書面審査では、事業計画書(創業計画書)や各種提出書類の内容がチェックされます。特に創業時は事業計画書の重要度は非常に高く、事業の目的、資金の使途、調達方法、売上や利益の見込みなどが具体的かつ現実的に示されているかを中心に評価されます。

大切なのは「説得力のある数字」と「実現可能なプラン」です。売上見込みについては、市場規模や競合状況を踏まえたうえで妥当な根拠を示すと良いでしょう。加えて、借入希望額が事業の成長規模と整合性を持っているかも重要視されます。

面談による審査

面談では、書類だけではわからない経営者の人物像や事業に対する熱意、経営力などを対話することによって確認されます。

面談の場では「創業のきっかけ」「想定されるリスクと対策」「競合との違い」など、事業計画を深堀りした質問をされることが多く、ここで自身の言葉で事業の魅力や課題への対応策を語れるかが審査に大きく影響を与えることも少なくありません。

面談は単なる「質問の答弁」だけではなく、面談担当者に安心感と信頼感を与えるための機会と捉えてください。

財務データの審査

資金調達の審査では、法人の場合は過去2〜3期分の決算書が求められ、個人事業主の場合は確定申告書などから実績を確認されます。ここで注目されるのは売上高や利益率、キャッシュ・フローなどです。

黒字経営であることはもちろんですが、黒字倒産のリスクを避けるために手元現金(運転資金)が十分にあるかどうかもチェックされます。また、在庫の回転率や売掛金の回収リスクなども考慮されるケースがあるため、数字に不明点がないようにしておくことが必要です。

返済能力の審査

財務が健全でも、毎月の返済スケジュールを実行できるかは別問題です。実際に借入を行う際は、借入額と返済期間、金利のバランスに無理がないかが審査されます。

売上見込みから返済原資を引き算したとき、手元に残る資金で事業を継続し成長させる余力があるかどうかが重視されます。計画に無理があると、審査担当者から「リスキーだ」と判断され審査に不利に働く可能性が高いでしょう。

信用情報による審査

審査では事業主や法人の過去の借入履歴・支払い状況を示す信用情報機関のデータも必ずチェックされます。

自己破産や債務整理といった金融事故の情報が掲載されているケースでは、審査通過が極めて難しくなります。クレジットカードの延滞や税金の滞納なども、マイナス評価となる可能性が高いでしょう。信用情報は個人信用情報機関(CIC、JICCなど)や全国銀行個人信用情報センターで管理されているため、日頃から支払いを滞らせないことが審査対策にもつながります。

これらの各項目を通じて総合的に判断されるため、財務状態や信用情報を健全な状態に保つことはもちろん、一貫性のある説明資料や事業計画書の作成、誠実な受け答えが大切です。

資金調達先による審査内容の違い

資金調達先には、大まかに分けて公的機関や銀行、信用金庫、ノンバンク、ベンチャーキャピタルなどがあります。

それぞれ融資の目的やリスクの捉え方が異なるため、審査の視点や基準にも若干の違いが生じることは理解しておきましょう。ここでは主な資金調達先と、その審査の特徴を紹介します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は国が100%出資する政策金融機関で、中小企業や個人事業主の支援を目的にさまざまな融資制度を設けています。

日本政策金融公庫の創業融資においては、自己資金が総事業資金の10分の1以上あることが求められます。自己資金の有無は事業への本気度や計画性を測る指標とされるため、預金通帳などで証明できる形で準備する必要があるでしょう。

審査においては面談が重視され、「事業への理解度」「具体的な運用計画」「市場調査の度合い」を入念に確認されます。たとえば、設備資金であれば導入予定の機器やシステムをどのように活用し、それによってどれほどの収益向上が見込めるかまで説明が求められるでしょう。

担保や保証人に対しては、銀行などの金融機関と比較して比較的柔軟な姿勢を示す傾向があります。

制度融資

制度融資は自治体、金融機関、信用保証協会の3者が連携して行う融資制度で、融資の際には金融機関と信用保証協会の2段階審査があるため、審査期間は平均3ヶ月程度と比較的長めの傾向があります。

ただし自治体が金利の一部を負担してくれるため、低金利での借入が可能となるメリットがあります。創業支援を目的としているため申込要件が緩和されているケースも多く、創業時の資金調達先として検討しやすいといえるでしょう。

銀行

銀行融資において最も重視されるのは財務状況や返済能力で、決算書や確定申告書、事業計画書、資金繰り表などから総合的に判断します。

特に大企業向け融資が主体のメガバンクなどは、担保や保証を求められるケースが多いでしょう。また、融資を受ける額と資金使途に整合性があるか、返済財源が明確かどうかを厳しくチェックされます。

返済実績を積み上げて信用力を高めればプロパー融資(信用保証協会の保証なしの融資)を受けやすくなりますが、事業規模によっては融資対象外となり、創業間もない場合は実績が少ないため審査難易度が高いのが現状です。

信用金庫

信用金庫は地域密着型の金融機関であり、中小企業への積極的な融資を行っています。提出書類としては事業計画書以外にも、見積書や契約書、場合によっては事業を行う店舗や事務所の賃貸借契約書など、資金使途を証明できる資料が必要になるケースもあります。

地域経済の活性化が使命であるため、地元での実績やネットワークを評価してくれることも多いのが特徴といえるでしょう。地域の活動に貢献する事業だと判断された場合、融資条件が優遇される場合もあります。

ノンバンク

ノンバンク(消費者金融やリース会社、クレジットカード会社のグループなど)は、銀行や信用金庫に比べると審査基準がやや緩い場合が多いという特徴があります。審査では経営者のクレジットヒストリーや事業計画の収益性、他社からの借入状況が重視されます。

急な資金調達に対応するスピード融資や、担保なしでの融資が可能な場合もありますが、金利はやや高めに設定されていることが多いため、コストとメリットを比較検討する必要があるでしょう。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタル(VC)は、出資という形で資金を提供します。審査の視点は「この会社がどれだけ大きく成長し、IPOやM&Aで投資回収できるか」という投資的観点が中心です。

事業の革新性や経営者チームの実績、さらに出口戦略のリアリティがポイントになります。投資決定までにはビジネスプランの詳細なレビュー、マーケットリサーチ、経営陣との複数回の面談、最終的には出資委員会での決議など、時間と手間がかかります。創業間もない企業が大きな資金を集める手段として有力ですが、成長性が見込まれない小規模企業に出資するケースは少なく、出資を受けられても経営権の一部を譲渡しなければならない場合がある点にも留意が必要でしょう。

資金調達の審査を通過するためのポイント

審査を通過しやすくするための主なポイントとしては、以下の点が挙げられます。

  • 財務状況の健全性
  • 事業計画の実現可能性
  • 資金使途と返済計画の明確化
  • 経営者の信用力と実績
  • 自己資金の準備

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

財務状況の健全性

財務が安定している企業であることは、金融機関や投資家にとって安心材料となります。売上の拡大や利益確保をはじめ、運転資金としての現預金や利益剰余金がしっかり蓄えられているかを示すことが重要です。

たとえば決算書には、キャッシュ・フロー計算書を同封して資金繰りの状況をわかりやすく伝えるなどの工夫を行いましょう。赤字決算がある場合も、原因と今後の改善施策をきちんと説明できれば致命的なマイナスにはならない可能性もあります。

事業計画の実現可能性

事業計画は、審査担当者が「この企業は将来どう成長するのか」を判断する基準となります。達成が難しい売上目標や、根拠の薄い楽観的な見込みは説得力に欠け、審査難易度を上げる原因になりがちです。

市場データや競合分析などの客観的情報を盛り込んで、論理的に説明できる状態にしておきましょう。創業直後で実績がない場合でも、開発中の商品やサービスを具体的に紹介し、その市場価値や競合優位性を示せばプラス評価につながります。

資金使途と返済計画の明確化

融資を受けたお金を何に使うのか、どう返済するのかをはっきり示すことは非常に大切です。設備投資、人件費の増強、広告宣伝費など、使途別に金額を分けて説明できるとより明いいでしょう。

返済計画については、売上見込みや利益率から月ごとの返済余力を算出したり、資金が不足する場合のバックアップ策を示したりすることで、審査担当者に安心感を与えます。説明内容を裏付ける資料(設備の見積書や賃貸契約書など)があるとさらに説得力が増すでしょう。

経営者の信用力と実績

特に個人事業主や小規模企業の場合、経営者個人の信用力が融資判断を左右するケースが多くあります。クレジットカードや公共料金の支払いを延滞せず、税金を期限内に納めていることは最低限の条件です。

また、創業融資では「以前から該当業種での経験を積んでいたか」など、事業との関連性や実績のあるスキルが高く評価されます。人脈や協力先の存在など、事業を支えるネットワークがあるかどうかもアピール材料になるため、日ごろからそういった関係づくりを行っておくことも大切です。

自己資金の準備

創業融資を含め、自己資金がどれくらい用意できているかは重要ポイントのひとつです。審査通過率を高めるためには、融資希望額の3分の1程度の自己資金を用意しておくことが望ましいでしょう。

自己資金が多いほど事業に対する熱意がある、と判断されやすくなります。預金通帳や資産証明書など、資金の存在を証明できるものを提出しましょう。

資金調達の審査にも役立つ事業計画書の書き方

資金調達の際の審査において、事業計画書は欠かせません。特に創業融資では重視されがちなので、数字やデータ、計画の根拠となる市場調査の情報などを具体的に盛り込み、説得力を高めることが大切です。

さらに詳しい書き方やテンプレート例は、以下のリンクからご確認いただけます。マネーフォワード クラウド会社設立では事業計画書や創業計画書のフォーマットが豊富に揃っているため、ぜひご活用ください。

ポイントを押さえてスムーズな資金調達を

資金調達を成功させるには、事業計画や財務の準備を入念に行い、調達先ごとの審査基準を正確に理解することが大切です。特に日本政策金融公庫や銀行、ベンチャーキャピタルなどは審査の視点が異なるため、それぞれの特徴を踏まえた書類作成・面談対策が必要となります。

自己資金の用意や信用情報の管理といった基本要素を押さえつつ、金融機関や投資家に納得してもらえる計画を提示し、スムーズな資金調達を目指してください。


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