- 作成日 : 2024年7月24日
建設業の定款の書き方!事業目的の記載例・テンプレート
建設業の会社を設立する際は、定款の作成が必要です。定款とは会社の基本情報や規則を記載した文書であり、事業目的をはじめとして必ず記載しなければならない項目があります。事業目的は、許可を取得する予定の事業内容に沿って記載しましょう。
本記事では、建設業の会社設立で作成する定款の内容や書き方・記載例を紹介します。
目次
建設業における定款とは?
建設業の会社設立には、会社の概要を決定して定款を作成するという流れがあります。定款とは、会社の基本情報や規則を定めた書類のことです。
ここでは、定款の概要や必須項目、会社設立の流れを解説します。
定款の必須項目(絶対的記載事項)
定款は、会社を運営していくうえで欠かせない基本的なルールを記載した書類です。必ず記載が必要な項目があり、次の6つは絶対的記載事項として記載が義務付けられています。
- 商号
- 事業目的
- 本店の所在地
- 発行可能株式総数
- 設立に際して出資される財産の価額
- 発起人の氏名および住所
このうち、事業目的は会社を設立後に行う事業内容を記載するもので、取引の安全確保が主な目的です。取引先や金融機関がその会社と取引をするか、融資をするかを判断する際の判断材料になります。
絶対的記載事項のどれかひとつでも記載が漏れると定款が無効になるため、作成の際は注意しなければなりません。
建設業許可の申請には定款が必要?
建設業は国土交通大臣、または都道府県知事の許可が必要であり、申請に必要な書類のひとつが定款です。建設業の許可申請では、特に事業目的が重要になります。
申請の際には、定款の事業目的に許可を取得したい建設業の事業内容が記載されていなければなりません。
事業目的の文言がどの程度具体的であるかは、自治体によっても異なります。事業目的の文言にこだわらない自治体もありますが、定款の文言から許可業種を読み取れない場合、定款変更が必要になるケースもあるため注意が必要です。
会社を設立する地域の自治体がどのような取り扱いをしているか、事前に確認しておくとよいでしょう。
建設業の定款作成から会社設立の流れ
建設業の会社設立は、次のような流れで手続きを行います。
- 会社概要の決定
- 定款の作成
- 定款の認証
- 資本金の払込み
- 法人登記
まず、設立にあたって社名や所在地、資本金など会社の基本事項を決定します。基本事項はこのあと定款にも記載する内容になるため、しっかり決めておきましょう。
このとき、法務局に設立登記の申請をするときには、会社の実印が必要になります。そのため、社名が決まったら実印を作っておきましょう。なお、設立登記をオンラインで行う場合の印鑑は任意ですが、会社設立後に実印を使う場面は多く、設立のタイミングで作っておけば面倒がありません。定款を作成したら認証を受け、資本金を払い込みます。登記申請では、資本金の振り込みを証明する書類が必要です。
最後に登記申請に必要な書類を揃えて申請し、登記申請後、不備がなければ1週間~10日程度で登記が完了し、会社設立の手続きが完了します。
建設業の定款テンプレート・ひな形
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建設業の「事業目的」の考え方や記載例
建設業の会社設立で定款に記載する事業目的は、許可の取得を想定して定めることが必要です。
ここでは、建設業における事業目的の考え方や、記載例を紹介します。
建設業における事業目的とは
建設業の会社を設立する際は、業種ごとに許可申請が必要です。建設業法に定められている許可業種は土木工事業や建築工事業など29種類あり、定款の事業目的には、これらのうち許可を取得する予定の業種名を記載します。
事業目的は複数記載できるため、現在は行っていなくても、将来許可を取得して実施する予定の業種があれば記載しておくことをおすすめします。
新たに追加したり変更したりすると、変更登記の手続きをしなければならず、手数料も必要になるためです。
定款に記載する事業目的の記載例
建設業の定款に記載する事業目的は、次のように記載します。
(目的)
第2条 当会社は、以下の事業を行うことを目的とする。
- 土木・建築および各種建築設備工事業
- 給排水設備等に関する管工事業
- 宅地建物の売買、賃借、交換、管理および仲介
- 普通および特別管理産業廃棄物処理
- 建物の保守点検および清掃管理
- 建築資材の販売
- 前各号に附帯、または関連する一切の事業
事業目的の最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」と記載することで、列記した事業目的に関連性がある事業も目的の範囲に含められます。
建設業の定款の書き方
建設業の会社を設立する際に必要になる定款は、絶対的記載事項を漏れなく記載しなければなりません。
ここでは、各項目の内容や具体例を解説します。
商号
商号とは、「株式会社〇〇建設」といった会社名のことです。定款には、以下のように記載します。
第1条 当会社は、株式会社〇〇と称する。
株式会社の場合は、商号に必ず「株式会社」の文字を入れてください。商号は会社の事業内容やイメージを伝えるために大切なもので、建設会社であることがわかる名称にすることが大切です。
同一所在地に同一名の会社がある場合は、登記できません。同じ商号があるかどうかは、本店所在地を管轄する法務局の「商業調査簿」で調べられます。すでに商標登録されている会社名やブランド名、商品名なども使用できないため、注意しましょう。これらはインターネットで検索できます。
事業目的
定款に事業目的を記載するのは取引の安全を図るためであり、取引先や金融機関から信頼されるために、適法性・営利性・明確性を満たしていることが必要です。建設業の場合は、許可を受ける事業内容が読み取れるように書きましょう。
(目的)
第2条 当会社は、以下の事業を行うことを目的とする。
- 土木・建築および各種建築設備工事業
- 給排水設備等に関する管工事業
- 建築物及びその他工作物の解体工事業
- 電気設備工事業
- 前各号に附帯、または関連する一切の事業
目的の個数に制限はありませんが、5〜10個程度が適しています。10個以上になると、会社の実態が把握しにくいこともあるため、できるだけ避けた方がよいでしょう。
本店の所在地
本店所在地には、事業を行う住所を記載します。記載例は、次のとおりです。
第3条 当会社は、本店を東京都△△区に置く。
住所は、最小行政区画(東京23区内なら区、郡なら町・村、それ以外は市)までの記載にとどめることもできます。最小行政区画内であれば、移転しても定款や登記を変更する必要がありません。
本店の所在地はバーチャルオフィスや自宅でも構いませんが、建設業許可を取得する場合は、建設業の契約実務を行える営業所が必要です。
そのため、バーチャルオフィスは認められず、自宅の場合は生活の場所と事務スペースが明確に区切られていなければなりません。
営業所に関する要件は自治体ごとに定められているため、確認しておきましょう。
発行可能株式総数
発行可能株式総数とは、会社がどれだけの株式を発行できるのかという枠のことです。設立時に発行する株式数ではありません。会社の発展性を考慮し、設立時発行株式数よりもある程度多い数を記載します。
定款には、次のように記載しましょう。
第5条 当会社の発行可能株式総数は、〇〇株とする。
定款に記載することで、会社が発行できる株式数に上限が設けられます。発行可能株式総数を超えて株式を発行したい場合は、株主総会の特別決議を行って定款を変更しなければなりません。
設立に際して出資される財産の価額
資本金の額とする予定の額(最低の額)を記載します。出資できるのはお金に限らず、物による出資もできます。このような場合を現物出資と呼びます。
発起人が出資する金額が決まっていない場合は、事業を運営するために必要な財産の最低額を記載してください。
定款の記載例は、次のとおりです。
第6章 附 則
(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第〇〇条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金△△万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金△△万円とする。
出資される財産の価額は各出資者の出資金の合計であり、そのまま資本金の額となります。
なお、建設業許可の取得には資本金に一定額以上という要件があるため、注意が必要です。例えば、一般建設業許可であれば資本金500万円以上(または預金残高500万円以上など)に設定しなければなりません。
発起人の氏名又は名称及び住所
発起人となっている全員の氏名と住所を記載します。発起人とは、会社を設立するときに会社設立の手続きを行う人のことです。
定款には、次のように記載します。
(発起人の氏名ほか)
第〇〇条 発起人の氏名又は名称、住所、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数及び設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額は次のとおりである。
東京都〇〇区△△町1丁目1番1号 発起人〇〇〇〇 〇〇株、金△△万円
発起人の氏名と住所は、発起人の印鑑証明書に記載されている氏名・住所の表記と完全に一致させてください。
建設業の定款を電子申請するには
定款は紙で作成するほか、電子定款で作成することも可能です。紙の定款は紙で作成・印刷して保存するのに対し、電子定款はPDF化したファイルに電子署名をしてデータで保存します。
紙の定款は役場の認証を受ける際に4万円の収入印紙代がかかりますが、電子定款では収入印紙代が発生しません。
会社設立の手続きをスムーズに進めたい方には、マネーフォワード クラウド会社設立がおすすめです。電子定款にも対応しており、手間のかかる設立手続きを簡略化できます。
建設業の会社設立では定款を正しく作成しよう
建設業は許可が必要な業種があり、許可申請には事業目的に許可を受ける業種を記載した定款が必要です。事業目的は、将来許可を受ける予定の事業内容も記載しておくと、あとから変更登記する手間が省けるでしょう。
定款は事業目的のほかに必ず記載が必要な絶対的記載事項があり、すべて漏らさずに記載しなければなりません。
記事も参考に、定款を正しく作成して建設業の会社設立を進めてください
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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