- 作成日 : 2024年6月28日
合同会社設立の人数は何人から?【簡単に解説】
合同会社は1人でも設立することができます。もちろん2人以上でも設立できるのですが、その場合は設立方法のパターンが変わってきますので、役職の違いや法人の参加の有無などに着目して適切な設立手続きを採らなければなりません。人数による違いが合同会社設立にどのように影響するのか、ここで整理しておきましょう。
目次
合同会社の設立に必要な人数は?
合同会社の設立に必要な人数は「1人」です。社員が1人でもいるなら合同会社を立ち上げることができます。
なお、ここでいう「社員」は出資者を指しており、一般的な「従業員」とはまったく異なる存在であることに留意してください。株式会社でいうところの「株主」に相当しますが、合同会社の社員は資本の出資のみならず原則として経営に参加する点で株主と異なっています。
合同会社で必要な役員の数は?
株式会社では取締役・監査役・会計参与が役員であり、社員である株主は役員ではありません。しかし合同会社に取締役などの役職はなく、会社の所有と経営が一致しています。
つまり社員が経営にも参画するため、原則として社員=役員となるのです。
そして前述の通り「合同会社の設立には少なくとも社員が1人いればいい」ということですので、役員も1人で足りるということになります。
社員1人で設立できる会社形態・できない会社形態
設立できる会社には4種類あります。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
このうち社員1人で設立できる会社形態は、株式会社・合同会社・合名会社です。
合名会社は無限責任社員のみで構成される会社のことですので、無限責任社員1人で設立可能です。株式会社では取締役が必置ですが、社員(株主)兼取締役が1人いれば設立できます。
一方の合資会社は無限責任社員と有限責任社員から構成される会社ですので、少なくとも2人の社員が必要となります。
このうちよく設立されているのは合同会社と株式会社です。両社は全社員が有限責任社員である点で共通していますが、次のように異なる特徴を持ちます。
| 合同会社 | 株式会社 | |
|---|---|---|
| 会社の機関 |
|
|
| 意思決定 | 原則として社員の過半数で決する ※出資額に関係ない | 出資額に比例した議決権を持つ |
| 役員の任期 | 制限なし | 最長10年 |
| 株式の発行 | × | 〇 |
| 社債の発行 | 〇 | 〇 |
また、設立手続きに関しても違いがあります。次のように合同会社の方がシンプルな手順となっています。
| 手順 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 1 | 商号など基本事項の決定 | 商号など基本事項の決定 |
| 2 | ― | 発起人会での協議 ※1人で設立または定款の定めで不要。 |
| 3 | 定款を作成 | 定款を作成 |
| 4 | ― | 定款の認証を受ける |
| 5 | 出資の履行 | 出資の履行 |
| 6 | ― | 設立時役員の選任 |
| 7 | ― | 取締役による調査 |
| 8 | 登記申請 ※登録免許税の最低額6万円 | 登記申請 ※登録免許税の最低額15万円 |
株式会社は法的な制約が多く、設立にかかるコストも大きいです。その反面、株式を発行することで規模の大きな資金調達が可能ですし、事業をより拡大させていきやすいといえるでしょう。
一方の合同会社は株式会社に比べて認知度に劣り、株式発行による資金調達もできません。しかし設立やその後の運営にかかる手間が小さく、内部自治の柔軟性も高いという利点を持っています。そのため「小規模ながらも法人格は取得し、仲間内で柔軟に運営をしていきたい」という場合に適しているといえます。
合同会社の定義とは?
合同会社は、「有限責任社員のみからなる持分会社」と定義することができます。
そして「有限責任社員」とは、出資した額の限度で責任を負う社員を指しています。もし会社が倒産したとしても、社員が負うリスクは「出資した金銭などを失うこと」に限られ、個人の財産から会社債権者に弁済しないといけないリスクを負う必要はありません。
※会社債権者に対して負債のすべてを支払う責任を持つ社員は「無限責任社員」と呼ばれる。
また「持分会社」とは、合同会社・合資会社・合名会社の総称で、所有と経営が原則として一致するタイプの会社をいいます。
※「持分」とは持分会社における社員としての地位を指す。株式会社における「株式」に相当。
持分会社であって有限責任社員しかいなければ合同会社になれますので、人数に関する制約はありません。
合同会社の役職・役員について
合同会社はすべての社員が役員になりますが、定款に定めることで次の役職を設けることも可能です。
- 業務執行社員
- 代表社員
業務執行社員と代表社員とは?
合同会社では、社員が複数いるとき、その中から「業務を執行する社員」を定款により限定することもできます。このとき業務執行権を持つ社員を「業務執行社員」と呼び、経営に直接関わる社員とこれに関わらない社員とを分断することができるのです。
業務執行社員については、株式会社における取締役に相当する役員、といえばイメージしやすいかと思います。
さらにこの業務執行社員の中から、合同会社を代表する社員を定款により選出することも可能です。この社員は「代表社員」と呼び、株式会社における代表取締役に相当する役員ということができます。
代表社員が複数いてもよい?
合同会社の代表社員を1人と定めるケースは多いですが、2人以上選任することも可能です。
ただしこの場合、会社の重大な意思決定をする際に代表社員同士の意見が分かれてなかなか決断ができなくなる危険性があります。そのため複数人置くかどうかは慎重に検討することが大事です。
法人は代表社員や業務執行社員になれる?
株式会社だと法人を取締役などの役員にすることはできませんが、合同会社の場合法人を社員とすることも可能ですし、法人を業務執行社員や代表社員などの役員に就任させることもできます。
ただし法人が業務執行権を持つ社員になるには、会社法の規定に従い「職務執行者の選出」が必要です。社員となる法人から選ばれた、実際に業務を行う人物を選ばないといけません。
※代表社員は常に業務執行権も持つため、法人を代表社員とする場合にも職務執行者を置く必要がある(会社法第598条1項)。
法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければならない。
特に法人が代表社員になるときは、設立登記で準備しないといけない書類が増えますし、定款に会社名や代表者名を記載したり代表社印の押印をしたりするなど、手間も増えますので注意が必要です。
合同会社設立において人数の違いで変わること
合同会社設立に関して、社員の人数の違いでどのような差が生まれるのか、以下に押さえておきたい要点をまとめます。
1人で設立
合同会社を1人で設立するとき、その方は必然的に代表権と業務執行権を持つ社員になります。そのため組織構成はシンプルになり、利益配分も決める必要がなくなります。また、意思決定もすべて1人でできますので運営方法が単純化させられます。
「1人で設立しても資金に問題がない」「自分だけで物事を決めていきたい」という場合には1人で設立するのが向いているでしょう。
2人で設立
2人、あるいはそれ以上の人数で設立するときは組織構成について考える必要があります。
重要なポイントは「業務執行社員や代表社員を限定するかどうか」です。そのほか、「原則通り一人一議決権とするのかどうか」「利益配分を出資額とは別の基準で定めるかどうか」なども検討しましょう。これらの事項に関しては定款に定めを置くことで調整できます。
なお、2人で設立するときは次のパターンに分けられます。
- 2人ともが業務執行権と代表権を持つ
- 2人ともが業務執行権を持ち、代表権は1人に限定する
- 1人だけが業務執行権と代表権を持つ
2人の場合は、意見が分かれたときに会社としての意思決定ができなくなってしまうおそれがあります。このようなリスクを排除するには、「どちらか一方のみに業務執行権を与える」または「出資割合に応じた議決権を与える」などの対策が有効です。
3人で設立
3人で設立するとき、全員が議決権を持ったとしてもぴったり半分で意見が分かれることがありません。意見が分かれても2/3で決することができ、偶数人で経営を行うときより意思決定ができないリスクが小さくなるでしょう。
ただしそのうちの1人を「業務執行権を持たない社員」としてしまうと、結局経営判断を行うのは2人となります。意見が分かれた場合のリスクが大きくなってしまいますので注意が必要です。
4人以上で設立
4人以上、大人数で設立することも可能です。規模の大きな組織を運営する場合は経営者となる社員を多く設けることもあるでしょう。ただし冒頭で述べた通り、ここでいう社員は従業員ではありませんので、単に労働力が欲しいだけなら社員を増やすのではなく従業員を多く雇用することで解決しましょう。
そして社員を4人以上置くときは、「議決権がぴったり半分にならないようにすること」に注意してください。
例えば社員が4人いるとき、2対2で意見が分かれて会社の意思決定ができなくなるおそれがあります。そこで議決権を持つ人数を奇数にする、または出資額によって議決権を調整する、などの対策を採りましょう。
合同会社は1人でも複数人でも設立できる
「持分会社であること」「有限責任社員しかいないこと」を満たせば合同会社は設立できます。人数に関する制約はありませんので1人でも問題なく設立でき、逆に複数人の社員がいてもかまいません。法人が社員となって設立することも可能です。
ただし、複数人の社員を設けるなら議決権がぴったり半分にならないように調整することが望ましいですし、法人の社員を設けるなら職務執行者の選任にも留意する必要があります。「設立できるかどうか」という視点のみならず、会社法上のルールや円滑な組織運営の観点からも社員構成を考えることが大事です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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