- 更新日 : 2025年10月14日
定款の事業目的の書き方は?業種別の例文一覧付きでわかりやすく解説
定款の事業目的の書き方は?業種別の例文一覧付きでわかりやすく解説
会社を設立する場合、必ずその会社の事業目的を決めなければなりません。それはどのような事業を行うのか、他の会社や銀行に明示するためです。事業目的とはどのように決めていけばよいのか、そのポイントについて解説します。
目次
定款に記載する事業目的とは
定款とは、会社の組織活動の根本規則のことであり、会社設立にあたって作成する必要があります。定款作成にあたって、必ず記載しなければならない事項に「事業目的」があります。
事業目的とは、その会社がどのような事業を行うのか明示するためのものです。定款に事業目的を記載することで、会社がどのような事業を行って利益を得るのか示します。
定款の事業目的の書き方
事業目的の書き方には「適法性」「営利性」「明確性」という3つのルールがあります。
1. 適法性
当然のことですが違法性を有するような事業内容、犯罪を目的とすることはできません。
2. 営利性
会社は一部の種類の会社を除いて「営利追及」を目的とする必要があります。営利性のない事業を事業目的とすることはできません。
3. 明確性
目的の中に使う用語や全体の意味が明確であり、誰でもそれを理解できる必要があります。世間一般の人たちに浸透していない言葉は使用できません。
また、目的の具体性もある程度必要です。例えば、事業目的の最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」という事業目的を入れる会社が多いのですが、それを「その他の事業」つまり、「世の中に存在するすべての事業」を事業目的としても、問題はありません。具体性が必要というルールはないため、このような目的も可能かもしれませんが、定款認証の手続きや登記申請で実際に受理されるかどうかはわかりません。
事業目的は自分の会社がどのような会社なのか、自己紹介をする部分にもなりますので、不明確な目的を記載しないようがよいでしょう。
他社の事業目的を検索する方法
ここからは、他社の事業目的を検索する方法を見ていきましょう。
企業の公式ホームページを確認する
事業目的そのものではありませんが、ホームページに企業情報などが掲載されている場合、「業務内容」や「事業目的」として記載されているものを見ることができ、参考になります。
業務内容の例 日本マクドナルド株式会社

国税庁の法人番号公表サイトで調べる
日本には似ている名前の企業が多くあるため、調べたい企業の事業目的を公式ホームページなどで確認するには、企業名や所在地などをきちんと把握しておく必要があります。そのときに便利なのが、国税庁の法人番号公表サイトです。
国税庁の法人番号公表サイトは、あくまで「商号又は名称」「所在地」「法人番号」という法人の基本情報を調べるサイトであるため、他社の事業目的を検索することはできません。
「商号又は名称」では、部分一致検索や前方一致検索ができます。また「所在地」では都道府県や郵便番号で検索できるので、自社の名称と似ている会社名や自社の商圏にある競合他社を見つけることができます。検索した情報をもとに、企業の公式ホームページなどを探し、他社の事業目的を確認します。
登記情報提供サービスを利用する
登記情報提供サービスとは、法務局が管理している法人の登記情報を、インターネットで取得できる有料サービスのことです。法務局に行かなくて良いので便利です。
取得できる登記情報には、事業目的も含まれます。法人の登記情報は一般に公開されている情報なので、誰でも取得することができます。
ただし、登記情報提供サービスを使うためには、事前に申込手続きを行う必要があります。法人利用の場合、申込手続きには約1か月程度かかるため 、余裕を持ったスケジュールで申込手続きをしましょう。
民間企業が提供するデータベースで検索する
国や公的機関だけでなく、民間企業でも法人情報のデータベースを提供しているところがあります。民間企業が提供するデータベースでは、会社のニーズに合ったデータベースの提供をしてくれるところもあります。
民間企業が提供するデータベースは有料であることも多いので、利用する際にはコストのことも考える必要があります。
定款の事業目的を記載する際の注意点
事業目的の作成にあたっては、適法性、営利性、明確性、そして具体性に留意します。以下、注意点を見ていきましょう。なお、事業目的の中には、会社設立当初ではまだ準備中や構想中でも、将来的に始めたいと考えている事業も入れておきましょう。
将来行う可能性のある事業も入れておく
定款の事業目的には、将来行う可能性のある事業も入れておいた方が良いです。定款作成後に事業目的を追加しようとすると、煩雑な手続きが必要でコストもかかるからです。
定款に記載する事業は、必ずしも今すぐに行わなければいけないものではありません。将来行う可能性のある事業があれば、定款作成時にあらかじめ記載しておきましょう。
許認可が必要な業種かどうかを確認する
国や地方自治体の許可や認可がないと、その事業を行うことができないものがあります。そういった事業を行う場合は、その事業目的の記載方法で許認可が下りるのか必ず事前に確認をしてください。
許認可が必要な主な事業には下記のようなものがあります。
- 食品製造、販売や飲食店の経営
- ガスや灯油の販売
- 中古品の販売
- 宅地建物取引業
- 旅行業、旅館業
- 産業廃棄物処理業
- 運送業
- 介護事業
許認可が必要な業種とその手続きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
事業目的をたくさん記載しすぎない
設定する事業目的の数に制限はありません。しかし、会社設立時にあまりにも多岐にわたる事業目的の設定はおすすめしません。会社を設立してすぐに融資を受ける場合には、事業目的はメイン事業及び5年くらいで行いたい事業目的に絞った方がいいでしょう。
融資を受ける場合には必ず5年から10年の事業計画書を提出します。銀行は実績が何もない会社に対して融資を行い、本当にお金が返済されるのかを審査します。会社の信用度を測るには事業計画書しかありません。
事業者は借入金の返済をどのようにして可能にするか、事業計画書とともに融資担当者に口頭で説明します。そして銀行本部の融資課で融資をするかしないかを判断するのです。窓口担当者には対面で説明でき、事業に対する想いを伝えることが可能ですが、本部の融資課の担当者は資料だけを見て判断します。
その際、事業目的が多すぎるとこの会社は一体何を目的として事業をやっていく会社なのか、判断しにくくなります。そのため、審査が長引くことや、融資が下りない可能性が出てくるのです。
「前各号に付帯関連する一切の事業」を入れる
事業目的の作成にあたっては、「前各号に附帯関連する一切の事業」と各目的の最後に入れておくと、定款に記載していない事業でも関連事業であればできるようになります。将来の事業に幅を持たせるためにも入れておくことをおすすめします。
事業目的 付帯事業の記載例
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
- ○○の製造及び販売
- ××の輸入及び販売
- 前各号に附帯又は関連する一切の事業
引用:定款等記載例|日本公証人連合会、「定款の記載例(小規模な会社)」
事業別・業種別の事業目的の例文一覧
事業別に各分野の事業目的例を一覧にしたものです。事業目的の記載方法が各分野により特徴があるのがわかります。許認可の必要な業種においては、事業目的に盛り込まなければなりません。
IT、インターネット関連
- ハードウェア・ソフトウェアの企画、開発、制作、販売及び保守
- インターネット、その他の通信を利用した通信販売業
- ウェブサイト、ウェブコンテンツの企画、制作、保守及び管理
- インターネットを利用した代金決済システムの構築、運営、管理
- アプリケーションソフトウェアの設計及び開発並びに販売
- インターネットによる音楽、動画、映像等の配信に関する企画、制作及び管理
コンサルティング関連
- 経営コンサルタント業
- キャリアコンサルティング業
- 企業経営に関する各種コンサルティング業務
- 飲食店の経営及び店舗開発、並びにコンサルティング業務
- イベントの企画、運営及びコンサルタント業
- 物流に関する調査及び開発、コンサルティング業務
Web制作・デザイン関連
- インターネットホームページの企画及び制作、運用業務
- デザイン業及び広告代理店業務
- インターネットによる広告業務
- WEBサービスの企画及び開発、並びに運営業務
- ウェブサイトの構築及びデザイン制作業務
不動産関連
- 不動産業
- 不動産賃貸業
- 不動産の保有、売買、仲介、賃貸借及び管理
飲食業関連
- 飲食店の経営
- 農水産物及びその加工品の製造、販売及び輸出入
旅行関連
- 旅行業法に基づく旅行業及び旅行代理店業
- 住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、住宅宿泊管理業及び住宅宿泊仲介業の経営
- 外国人旅行者、ビジネスマン、患者のガイド、業務補助及び付き添い
投資関連
- 各種金融商品、仮想通貨等に対する投資
- 国内外の株式、通貨、外国為替その他金融商品及び仮想通貨に対する投資
- 不動産投資
保険関連
- 損害保険代理業
- 生命保険の募集に関する業務
- 自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業
建設業関連
- 土木工事業
- 建設工事業
- 電気工事業
- 鉄筋工事業
- 防水工事業
- 内装仕上工事業
会社設立後に事業目的を変更・追加する方法
会社設立後の事業目的の変更や追加は、次の手順で行います。
1. 株主総会で決議
会社設立後に事業目的の変更や追加をする場合、まずは株主総会を開き、株主の決議を受ける必要があります。また、法務局への提出のため、株主総会議事録も作成します。
2. 定款の変更
株主の決議を受けたら、定款の事業目的を変更・追加します。定款の変更には公証役場での手続き(認証)は不要です。
3. 変更登記
最後に法務局で、事業目的の変更登記を行います。事業目的の変更登記には、変更登記申請書と株主総会議事録 が必要です。また、登録免許税3万円 がかかります。
電子定款で事業目的の管理を効率化できる
会社設立時に事業目的を慎重に検討した後は、電子定款の活用で効率的な管理体制を構築することが重要です。電子定款は印紙代4万円が不要になるだけでなく、将来の事業展開を見据えて複数の事業目的を記載する場合、変更履歴をデータで正確に管理できる利点があります。
事業目的の変更・追加には株主総会の特別決議と登録免許税3万円が必要ですが、電子定款なら変更前後の比較が容易で、株主への説明資料作成もスムーズです。また、融資申請で金融機関から定款提出を求められた際も、最新版を即座に印刷でき、適法性・営利性・明確性を満たした事業目的を正確に伝えることができます。
さらに、許認可が必要な事業を追加する際も、行政機関への提出書類を迅速に準備できます。
会社設立時に定款に適切な事業目的を記載しましょう
定款の作成によって、会社設立の意義が明らかになると言えます。事業目的は、定款の中でも中枢部分ともいうべき重要な部分です。事業目的とは会社設立目的でもありますので、よく検討し、必要であれば専門家の意見も聞きながら、自社に適切な事業目的を設定しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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