• 更新日 : 2023年4月10日

運転資金とは?種類や計算式・目安、資金調達を受ける方法までわかりやすく解説

Point運転資金とは?

運転資金とは、売上の入金前に発生する仕入れや人件費などの支払いを立て替えるための手元資金のことです。

  • 発生要因により経常・増加など4種類ある
  • 入金と支払いのズレを埋め、黒字倒産を防ぐ
  • 手元資金の目安は月商の1.5~3ヶ月分

「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で算出された差額が、本来自社で確保しておくべき運転資金の金額となります。

運転資金とは、事業を日々継続していくために必要となる資金のことです。会社経営において、仕入れや人件費の支払いは売上の入金よりも先に来ることが一般的であるため、入金と出金のズレを埋めるための手元資金(キャッシュ)が不可欠となります。

本記事では、経営者や経理担当者が知っておくべき運転資金の基礎知識、4つの種類、正しい計算式、そして融資審査でも重視される目安について解説します。

運転資金とは?

運転資金とは、商品を仕入れてから現金が入ってくるまでの期間を乗り切るために立て替えておくお金のことです。

例えば、材料を仕入れて商品を製造・販売した場合、材料費や人件費の支払いは先にやってきますが、売上の入金は1〜2ヶ月先になることがよくあります。この期間中に手元の現金が尽きると、たとえ利益が出ていても支払いができず倒産(黒字倒産)してしまいます。これを防ぐための資金が運転資金です。

運転資金の内訳は?

運転資金は、大きく「変動費」と「固定費」の2つで構成されています。

  • 変動費
    売上の増減に比例して変動する費用です。
    「材料費」「仕入費」「外注費」などが該当します。売上が増えればこれらの費用も増加するため、多くの運転資金が必要になります。
  • 固定費
    売上の有無に関わらず、毎月一定額発生する費用です。
    「事務所の家賃」「水道光熱費」「通信費」「従業員の給与(基本給)」「リース料」などが該当します。

固定費と変動費とは?代表的な種類や削減方法を解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード

運転資金と設備資金の違いは?

運転資金と混同しやすいのが、設備資金です。設備資金とされるものには以下の費用があります。

  • 機械の購入資金
  • 事業用車両の購入資金※
  • 工場の増改築資金
  • 事務所を賃貸する場合にかかる敷金、保証金など(賃料・礼金は運転資金)

※事業用車両の購入資金として融資を受ける場合、その車両が配達・運送事業等で使うものであることが前提です。バスやタクシー、営業用のトラック、バン(4ナンバー)、キッチンカーがこれに当たります。プライベートと併用して使うという場合は認められません。設備資金として金融機関から融資を受ける場合は、見積書の提出が必要ですので注意してください。

また、「設備資金のため」として融資を受けたお金を運転資金へ流用すると、融資の取消処分の対象となる場合もあります。判明した場合、資金の即時返還を求められたり、今後融資を受けられなくなったりする可能性もありますので、絶対に行わないようにしましょう。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。

会社設立時に決めることチェックリスト

「会社設立時に決めることチェックリスト」では、会社設立の基本事項や、株式会社・合同会社別の決めることチェックリストなどを、1冊にまとめています。

図解でカンタンにまとめており、完全無料でダウンロードいただけます。

無料ダウンロードはこちら

補助金をまるっと理解!会社設立時の補助金ガイド

補助金の概要や各制度の内容に加え、会社設立直後の企業でも使いやすい補助金や実際の活用事例などについてまとめました。

「使えたのに知らなかった!申請が漏れてた!」といったことを防ぐためにも、会社設立時の資金調達方法の一つとしてお役立てください。

無料ダウンロードはこちら

法人成り手続きまるわかりガイド

初めて法人成りを考える方に向けて、法人成りの手続きや全体の流れ、個人事業の整理方法など、必要な情報をわかりやすくご紹介したガイドです。

多くの個人事業主の方にダウンロードいただいておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。

無料ダウンロードはこちら

起業家1,040人への調査でひも解く!先輩起業家が一番困ったことガイド

マネーフォワード クラウド会社設立では、会社設立の経験がある方1,040名に対して、会社設立に関する調査を実施しました。

先輩起業家が悩んだ部分や、どのように会社設立を行ったかを、定量的に分析していますので、ぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

運転資金の種類は?

運転資金は、資金が必要となる発生要因によって主に4つの種類に分類されます。 それぞれの特性を理解することで、適切な資金調達方法(融資や内部留保など)を選択できるようになります。

1. 経常運転資金(正味運転資本)

経常運転資金とは、通常の営業サイクルの中で、売掛金の回収と買掛金の支払いのズレを埋めるために常に確保しておくべき資金です。 企業が存続する限り発生し続けるものであり、一般的に銀行融資では「短期継続融資」として扱われるケースが多いです。これが不足すると日常的な支払いが滞るため、最も管理が重要な資金と言えます。

2. 増加運転資金

増加運転資金とは、売上の拡大に伴い、仕入れや掛売(売掛金)が増加することで一時的に必要となる資金です。 「売上が増えるなら資金も増えるのでは?」と思われがちですが、実際には入金よりも先に仕入れや外注費の支払いが増えるため、手元のキャッシュは一時的に減少します。成長企業が陥りやすい資金不足の原因の一つです。

3. 減少運転資金

減少運転資金とは、業績が悪化し売上が減少している局面で、固定費などの支払いを維持するために必要となる「赤字補填」のための資金です。 売上の入金が減っても、家賃や従業員の給与はすぐに減らせないため発生します。金融機関からは「後ろ向きな資金」と見なされるため、融資のハードルは高くなる傾向があります。

4. 季節性運転資金

季節性運転資金とは、特定の季節に一時的に多額の資金が必要になるものです。

  • 夏・冬の賞与(ボーナス)資金
  • 繁忙期に向けた在庫の大量仕入れ
  • 決算時の納税資金

数ヶ月で回収できる見通しが立ちやすいため、金融機関への説明もしやすい資金です。

運転資金の計算方法・目安は?

自社が正常な営業活動を行うために必要な経常運転資金の額は、以下の計算式で導き出せます。

売上債権(売掛金+受取手形) + 棚卸資産(在庫) - 仕入債務(買掛金+支払手形

この計算式は、「まだ回収できていないお金(売上債権)」と「在庫として眠っているお金(棚卸資産)」の合計から、「まだ支払わなくて良いお金(仕入債務)」を引いた金額を表します。この差額が、自社で立て替えておくべき運転資金となります。

計算シミュレーション

具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。例えば、以下のような状況の会社があるとします。

  • 売掛金:500万円
  • 棚卸資産:300万円
  • 買掛金:400万円

この場合、計算は以下のようになります。

500万円 + 300万円 - 400万円 = 400万円

つまり、この会社が事業を回していくためには、常に400万円程度の運転資金を手元に確保しておく必要があることがわかります。

簡易的な目安(月商倍率法)

詳細なデータがない場合、月商(月の売上高)を基準に手元流動性(現預金)の目安を知る方法もあります。

  • 健全企業:月商の1.5〜3ヶ月分
  • 安全圏:月商の3〜6ヶ月分
  • 理想的:月商の6ヶ月分以上

※業種による違い:現金商売(飲食店・小売)は少なめでも回りますが、入金サイトが長い建設業や在庫を持つ製造業などは、月商3ヶ月分以上の確保が望まれます。

運転資金を効率よく管理する方法は?

計算上の必要額を減らし、資金繰りを楽にするためには、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮と、資金繰り表による管理が重要です。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)とは、現金を支払ってから回収するまでの日数のことです。以下の対策でこの日数を短縮できれば、手元に現金が残りやすくなり、必要な運転資金を圧縮できます。

  1. 売掛金の回収を早める(回収サイトの短縮・前受金の交渉など)
  2. 在庫を減らす(過剰在庫の削減・適正在庫の維持)
  3. 支払いを遅らせる(支払サイトの延長交渉)

資金繰り表による管理

決算書上の「利益」が出ていても、銀行口座に「現金」がなければ会社は倒産します。これを防ぐために「資金繰り表」の作成が必須です。

資金繰り表を作成するメリット
  • 資金不足の予知
    「3ヶ月後に現金が底をつく」といったリスクを早期発見できる。
  • 融資審査での信頼度アップ
    銀行へ提出することで、計数管理能力のアピールになる。
  • 投資判断の基準
    設備投資や採用を行っても資金が回るか、数値で判断できる。

まずはExcelやスプレッドシートで、「前月繰越金」「経常収入(入金)」「経常支出(出金)」「財務収支(借入・返済)」「翌月繰越金」を管理するところから始めましょう。

運転資金に関してよくある悩みとは?

株式会社マネーフォワードが会社設立の経験がある方を対象に実施した調査によると、会社設立直後から1年後までに起業家が「最も頭を悩ませた」と感じた項目のうち、最も割合が高かったのは「資金繰り・資金調達」で、37.5%でした。次いで「取引先・販売先を探すこと、売上を上げること」が29.7%、「会計・経理業務」が21.9%と続いています。このデータから、およそ4割の起業家が事業を開始した直後の運転資金の確保や資金調達に関する課題に直面していることがわかります。

企業が事業を継続していくためには、売上の入金と支払いのズレを埋めるための経常運転資金や、事業拡大に伴う増加運転資金などを正しく計算し、常に手元資金の目安を把握しておくことが不可欠です。不足が予測される場合は、銀行融資や日本政策金融公庫の活用など、自社に合った資金調達の方法を早めに検討し、資金繰りの悪化による黒字倒産を防ぐことが重要となります。

出典:マネーフォワード クラウド、設立直後に起業家を悩ませたトップ3【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)

運転資金が不足した時の調達方法は?

自己資金や社内留保で賄えない場合、外部からの資金調達が必要です。状況や緊急度に合わせて適切な方法を選びましょう。

1. 銀行融資・信用保証協会

最も一般的で金利コストを抑えられる方法です。

  • プロパー融資:銀行が直接リスクを取る融資。審査は厳しい。
  • 保証付融資:公的機関である信用保証協会が保証人となる融資。創業間もない企業や中小企業の定石です。審査期間は2週間〜1ヶ月程度かかります。

参考:全国信用保証協会連合会

2. 日本政策金融公庫の創業融資

政府系金融機関であり、民間銀行からの借入が難しい事業者にとって強力な味方です。無担保・無保証人の制度が充実しています。赤字決算でも事業計画次第で融資の可能性がありますが、着金まで1ヶ月程度かかります。

参考:創業融資のご案内|日本政策金融公庫

3. ファクタリング

保有している売掛金(請求書)を売却して現金化するサービスです。

  • メリット:最短即日で現金化可能。審査対象は「取引先の信用力」であるため、自社が赤字でも利用しやすい。
  • デメリット:手数料が割高(数%〜20%程度)。恒常的な利用は利益を圧迫します。

参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁

4. ビジネスローン

消費者金融や信販会社などが提供する事業者向けローンです。審査が早く通りやすいですが、金利が高めに設定されています。どうしてもつなぎ資金が必要な場合の最終手段として検討しましょう。

5. その他の調達手段

  • 補助金・助成金:返済不要ですが、後払い(原則、経費使用後の受給)である点に注意が必要です。
  • クラウドファンディング:インターネットで支援者を募る方法。テストマーケティングを兼ねることができます。
  • ベンチャーキャピタル(VC)・出資:上場を目指すスタートアップ向け。株式と引き換えに資金を得ます。

運転資金の融資をスムーズに受けるためのポイントは?

運転資金の融資を申し込む際、金融機関は「何に使うのか(資金使途)」と「どうやって返すのか(返済原資)」を厳しくチェックします。

スムーズに融資を受けるためには、以下の準備が不可欠です。

  1. 資金使途の明確化:「売上が急増して仕入れ資金が必要(増加運転資金)」など、論理的な理由を説明する。
  2. エビデンスの提出:資金繰り表や試算表を作成し、口頭だけでなく数値で根拠を示す。
  3. 経営改善計画(赤字の場合):減少運転資金の場合は、どのように黒字化して返済するかという具体的な計画書が必要です。

運転資金の種類を知り、適切に調達しよう

運転資金が不足すれば即座に事業継続が困難になるため、どんぶり勘定ではなく、正しい計算式で必要額を把握し、資金繰り表で管理することが経営の安定につながります。

  • 通常時は月商の3ヶ月分を目安に現預金を確保する。
  • 不足が予測される場合は、早めに銀行や日本政策金融公庫へ相談する。
  • 緊急時はファクタリングなども検討しつつ、コスト意識を持つ。

これらを意識し、無理のない範囲で適切な資金調達と管理を行いましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事