- 更新日 : 2026年3月13日
会社役員とは?取締役などの役職の種類、執行役員との違い、役員報酬の仕組みまで解説
会社法で定められた「取締役」「会計参与」「監査役」の三役を指し、株主から経営を委任された重要なポストです。
- 一般社員とは異なり委任契約で経営責任を負う
- 経営実態があれば税法上の「みなし役員」になる
- 報酬は「定期同額」が原則で期中変更は不可
役員は経営方針の「決定・監督」を行いますが、執行役員は決定事項に基づき現場業務の「実行」を担う任意の役職であり、法的な役員には含まれません。
「会社役員」という言葉は日常的に使われますが、法律上の定義、税務上の扱い、そして一般的なビジネスシーンでの使われ方には明確な違いがあります。
会社法における狭義の「会社役員」は、「取締役」「会計参与」「監査役」の三役のみを指します。一般的に役員と呼ばれる「執行役員」や「社長」「専務」といった肩書きは、必ずしも会社法上の役員とは限りません。
本記事では、会社役員の定義、従業員や執行役員との違い、報酬の決まり方、選任・変更の手続きまで、経営者や役員候補が知っておくべき知識を解説します。
目次
会社役員とは?
会社役員とは、広義には会社の経営幹部全般を指しますが、どの法律を基準にするかで範囲が変わります。

会社法上の役員は取締役・会計参与・監査役
会社法において厳密に役員と定義されているのは、以下の3つのポジションです。
- 取締役:業務執行の意思決定を行う
- 会計参与:計算書類を作成する会計の専門家
- 監査役:取締役の業務や会計を監査する
これらは株主総会の決議によって選任され、商業登記簿にも氏名が記載されます。
税務上のみなし役員に注意
会社法上の役員でなくても、税法(法人税法)の観点からは「実質的に経営に従事している」と判断されれば、「みなし役員」として扱われることがあります。
- 会長、副会長、理事長
- 相談役、顧問
- 同族会社の株主で、経営の実権を握っている者
これらに該当すると、支払われる給与が「役員報酬」として扱われ、一般的な従業員の給与のように全額を経費(損金)にするためのルールが厳しくなるため注意が必要です。
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会社役員とその他のポジションの違いは?
役員とそれ以外のポジションには、契約形態や法律上の扱いに明確な違いがあります。
役員と社員(従業員)の違い
役員と社員(従業員)の最大の違いは、会社との契約形態と労働基準法の適用有無です。
| 項目 | 役員 | 社員(従業員) |
|---|---|---|
| 契約形態 | 委任契約(任用契約) 経営のプロとして結果責任を負う | 雇用契約 会社の指揮命令下で労働力を提供する |
| 労働基準法 | 適用外 (残業代等は原則なし) | 適用あり |
| 社会保険 | 加入義務あり (報酬がある場合) | 加入義務あり |
| 労働保険 | 原則加入不可 (雇用・労災) | 加入義務あり |
ただし、役員であっても従業員としての立場も有する場合(使用人兼務役員など)は、例外的に労災保険や雇用保険の対象となることがあります。
役員と執行役員の違い
「経営」と「執行」のどちらを担うかが決定的な違いです。
- 役員(取締役等):会社の経営方針や重要事項を「決定・監督」する立場
- 執行役員:決定された方針に従って現場の業務を「執行」する立場
執行役員は会社が任意で定める役職であり、法的な設置義務はありません。役員が現場業務から離れ、経営判断に集中するために導入されるケースが多いです。
「執行役員」と似た言葉に「執行役」がありますが、これは別物です。執行役は「指名委員会等設置会社」という特定の機関設計を持つ会社に設置が義務付けられた、会社法上の法的な機関です。
役員と社長・専務・常務の違い
「社長」「専務」「常務」は、会社法上の名称ではなく、社内的な「役職(序列)」に過ぎません。
- 社長:商慣習上のトップ。法的には「代表取締役」であることが一般的。
- 専務:社長の補佐役として、会社全体の業務管理や監督を行う。
- 常務:社長を補佐しつつ、現場の日常業務も担当する。
これらは法的な役職ではないため、設置するかどうか、どのような権限を持たせるかは会社の自由です。しかし実態としては、これら役職者の多くが法的な「取締役」を兼任しており、役員としての扱いを受けます。
会社役員の種類と役割は?
会社法に規定された主要な役員の役割について詳しく解説します。
取締役
取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う役員です。株式会社には必ず1名以上置く必要があります。以前は取締役会の設置(3名以上の取締役)が義務でしたが、現行法では取締役1名でも会社設立が可能です。株主(所有者)から経営を任された存在であり、株主総会で選任されます。
代表取締役
代表取締役は、会社を代表する権限(代表権)を持つ取締役です。契約の締結や手形の振り出しなど、対外的な行為を会社を代表して行います。「社長」とほぼ同義で使われますが、社長はあくまで通称であり、法的な正式名称は代表取締役です。
会計参与
会計参与は、取締役と共同して計算書類(決算書など)を作成する役員です。会計のスペシャリストとしての役割が求められるため、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人のいずれかの資格を持つ者しか就任できません。
監査役
監査役は、取締役の職務執行が法令や定款に違反していないかをチェック(監査)する役員です。業務監査(業務が適正か)と会計監査(計算書類が適正か)を行い、不正があれば報告や差し止め請求を行う権限を持ちます。
社外取締役
社外取締役は、社内の人間関係やしがらみにとらわれず、第三者の視点で経営を監督する取締役です。コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を目的として、上場企業等では設置が義務付けられています。非上場企業でも、透明性の確保や将来の上場を見据えて設置するケースが増えています。
会社役員の実務関与の実態は?
会社法における会社役員は、会社の経営方針の決定や監督を行うことが主な役割ですが、実際のビジネスの現場では、役員自らが実務に深く関与しているケースも少なくありません。
マネーフォワード クラウドでは、業務委託契約の締結に関する調査において、発注者として業務委託契約の締結にどのように関わっているかを尋ねたところ、経営者・役員層で最も割合が高かったのは「実務上の判断と捺印・署名作業の両方を行う人」で32.7%でした。
この結果から、会社役員は単なる最終承認だけでなく、契約内容の検討や修正といった実務上の判断から最終的な署名まで、一貫して契約業務を担当している実態が読み取れます。企業においては、役員が経営判断に集中するための執行役員制度の導入など、実務負担を軽減する体制づくりも重要になります。
出典:マネーフォワード クラウド、業務委託契約への関与状況【業務委託契約書に関する調査データ】(回答者:881名(有効回答:業務委託契約に関与する605名)、集計期間:2026年1月実施)
会社役員の選任・変更手続きは?
会社役員を決める、あるいは変更する際には、法的な手続きが必要です。
役員の選任方法
機関設計(取締役会があるかどうかなど)によって異なりますが、基本は以下の流れです。
- 株主総会の決議:株主が役員を選任します。
- 就任承諾:選ばれた本人が承諾することで契約が成立します。
- 登記:法務局へ登録します。
取締役会がない会社(取締役1名の会社など)では、定款で定めた創業メンバーがそのまま取締役になることが一般的です。
役員の変更方法
辞任、解任、任期満了、死亡などで役員に変更が生じた場合は、変更日から2週間以内に管轄の法務局で登記申請を行う必要があります。
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 定款の謄本
登記を忘れて2週間を過ぎると「登記懈怠(けたい)」となり、代表者個人に対して100万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。手続きは自分で行うことも可能ですが、司法書士へ依頼するのが確実です。
参考:役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です|法務省
会社役員の報酬(給与)の決め方は?
役員報酬は、従業員の給与とは異なり、税務上の厳しいルール「定期同額給与」などに縛られます。
原則は「定期同額給与」
役員報酬は、毎月の支給額を一定(同額)にする必要があります。「今月は利益が出たから増やす」「資金繰りが厳しいから減らす」といった操作は認められません。期中に変更した場合、差額分が経費(損金)として認められず、法人税の課税対象となります。
報酬額を変更できるのは、原則として以下の3つのタイミングのみです。
- 通常改定:事業年度開始から3ヶ月以内
- 臨時改定:役職変更など重大な職務変更があった時
- 業績悪化改定:経営状況が著しく悪化し、やむを得ない場合
参考:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
賞与は「事前確定届出給与」
役員にボーナス(賞与)を支払う場合は、事前に税務署へ「いつ・誰に・いくら払うか」を届け出る必要があります。これを「事前確定届出給与」と呼びます。届け出た内容とズレると、全額が経費として認められなくなるため、厳密な計画性が求められます。
役員報酬の適正額を決めるポイント
高すぎれば税務調査で否認され、安すぎれば生活やモチベーションに影響します。以下のバランスを考慮して決定しましょう。
- 会社の損益状況:無理なく支払えるか
- 従業員給与とのバランス:格差が不自然でないか
- 同業他社の相場:世間一般の基準と乖離していないか
- 税金・社会保険料:会社と個人の負担額をシミュレーションする
会社役員に関してよくある質問
会社役員について、起業時や就任時によく寄せられる質問をまとめました。
会社役員は何人必要ですか?
株式会社の場合、取締役が1名いれば設立可能です。以前は取締役3名以上+監査役1名が必要でしたが、会社法の施行により要件が緩和されました。ただし、取締役会を設置する場合は、取締役3名以上と監査役1名以上が必要です。
役員に定年はありますか?
法律上、役員に定年はありません。何歳であっても就任・重任が可能です。ただし、任期(通常2年または10年)があるため、任期満了時に再任されなければそこで退任となります。企業によっては、定款や内規で独自に「役員定年制(例:70歳を超えての再任はしない等)」を定めているケースもあります。
役員は副業や他社の役員を兼任できますか?
法律上は可能です。ただし、役員には「競業避止義務(ライバル会社のために働いてはいけない)」や「利益相反取引の制限」が課されています。会社の利益を損なうような兼業は法律違反となり、損害賠償を請求されるリスクがあるため、兼任する場合は必ず株主総会や取締役会の承認を得る必要があります。
役員報酬を0円にすることはできますか?
可能です。設立当初で資金繰りが厳しい場合など、役員報酬をゼロ、あるいは月額数万円といった低額に設定することは法的に問題ありません。ただし、報酬がゼロであっても、常勤役員であれば社会保険への加入が必要になるケースがあるため、年金事務所等への確認が必要です。
会社役員の構成は慎重な検討を
会社役員とは、狭義には「取締役」「会計参与」「監査役」を指しますが、実態に合わせて「みなし役員」と判断される場合や、執行役員制度を活用する場合など、そのあり方は多様です。
会社を運営する上では、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 役割の明確化:経営(役員)と執行(従業員・執行役員)を区別する。
- 手続きの遵守:選任や変更登記は期限内(2週間以内)に行う。
- 報酬設計:定期同額給与などの税務ルールを守り、3ヶ月以内に決定する。
- リスク管理:社会保険の加入や、損害賠償リスクへの備えを行う。
役員の構成や報酬設計は、会社の税金や社会的信用に直結します。法律と税務のルールを正しく理解し、自社に最適な体制を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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