- 更新日 : 2023年9月27日
起業するなら知っておくべき法律は?弁護士に相談できる?
起業をするうえで法律の知識は必須です。法律を知らないと気付かないうちに違法行為をしてしまったり、重大なトラブルに巻き込まれたりといった事態にもなりかねません。一方で、法律を知っておけば、問題が発生したときにもスムーズに対応することができます。
今回は、起業するうえで知っておきたい法律と、法律関係で困ったときの対処方法についてご説明します。
目次
起業するなら知っておくべき法律は?
まずは、起業するなら最低限知っておきたい法律についてご説明します。特に会社を経営するのであれば、「民法」「会社法」「労働基準法」については必ず把握しておく必要があります。
難解な条文をまるまる暗記する必要はありませんが、「どんな法律なのか」「どんな規制があるのか」を知っておくことが大切です。これを把握しておくだけでも、トラブルや困り事があったときにスムーズに該当する法律を調べることができます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
民法
民法とは、私人間(一般市民や法人)の権利義務について定めた法律です。物権や債権、親族、相続など、民法がカバーしている範囲は非常に広く、いずれも一般人を規律するものになっています。たとえば親族間や友人・知人との揉めごと、トラブルは民法で解決します。
もちろん経営者や事業者も私人に含まれ、民法に従う必要があります。むしろ、民法には商取引や金融取引、契約や財産の扱い方などについても定められているため、会社を経営するのであれば、ある程度理解を深めておく必要があります。
たとえば、契約後にトラブルが発生した場合でも、民法上の契約に関する定義や成立要件などを知っておけば、それに基づいてその契約が有効なのか、無効なのかを判断することができます。
会社法
会社法とは、会社の設立や組織、運営、管理について定めた法律です。特に会社経営者にとっては必ず知っておくべき法律といえます。こちらも非常に範囲が広く、株式会社や持分会社、社債、組織変更、合併、会社分割、株式交換および株式移転、外国会社、雑則にいたるまで、規定事項は多岐にわたります。
たとえば起業をする際には、会社法に従って一定のルールを守り、適切な手続きを行ったうえではじめて会社を設立することができます。他にも会計帳簿の保存や資金調達をする(株式を発行する)ときなど、さまざまな場面で会社法に従わなければなりません。
会社法について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。
労働基準法
労働基準法は、労働者の権利を守るための法律です。従業員を雇う場合には必ず把握しておきましょう。労働時間や休憩、賃金、休日、年次有給休暇、災害補償、就業規則など、労働者の権利を守るために幅広い規制があります。たとえば、労使の合意に基づく所定の手続きをすることなく時間外労働や休日出勤をさせた場合は違法となり、労働基準法違反で刑事的、民事的、社会的なペナルティを科せられるリスクがあります。
労働基準法について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。
下請法
従業員を雇うだけでなく、外部の企業や人に仕事を依頼する、いわゆる外注を使うケースもあるかもしれません。その際には下請法に従わねばならない可能性があります。発注者と下請け業者の関係では、どうしても仕事を発注してお金を支払う発注者のほうが力が強くなりがちです。下請法は下請け業者の権利を守るためにあるのです。
下請け業者との取引の方法や報酬の支払いについて定めており、発注者という優越的立場を濫用した行為(不当返品や買いたたきなど)を規制している法律です。
下請け業者と紛争になるケースもあるので、しっかりと把握したうえで仕事を外注しましょう。
著作権法
著作権とは、創作物を作成した人がそれを独占的に利用できる権利のことです。仮に第三者が他人の創作物を無断で複製・公開・改変した場合、著作者が不利益を被るおそれがあります。そのような事態が起こらないよう、著作権については著作権法で定めています。
映画や漫画、アニメ、楽曲、文章や絵、写真、動画、建築物、図面、プログラムなど、あらゆる創作物(著作物)が著作権法の対象となります。
企業は商品やサービス、あるいは広告なども含め、さまざまな創作物を世に送り出しています。他者の著作権を侵害しないため、あるいは自社の著作権を守るため、著作権法についても理解を深めておきましょう。
その他事業に関連する法律
ここまで紹介した法律以外にもさまざまな法律が存在します。ご自身のビジネスに関連した法律についてもしっかりと把握して、それに従って会社を運営し、商品やサービスを提供する必要があります。
たとえば、医療や美容関係なら薬機法に従って患者や顧客のケアをしなければなりません。不動産や住宅関連の会社なら、宅地建物取引業法に従って物件を紹介したり、建築基準法に従って住宅を建てたりする必要があります。他にも運送会社なら道路交通法や道路運送車両法、飲食店なら食品衛生法などの法律知識が必須です。
起業するときに弁護士に法律相談できる?
結論から言うと、迷った場合は弁護士に相談したほうがベターです。上記のようにさまざまな法律があり、さらに各法律は膨大な数の条文から構成され、解釈が分かれるものもあります。起業するうえで法律の知識を身につけておく必要はありますが、すべてを理解するのは容易なことではありません。法律のことで迷ったら、専門家である弁護士を積極的に頼りましょう。
スポットで相談することも可能です。また、顧問契約を結んで弁護士と関係を構築しておけば、トラブルが発生したときはもちろん、事業が法律に抵触していないか、あるいは契約書に不備がないか確認したいときにも相談できます。
自治体や弁護士会によっては無料相談の機会を設けていることもあります。困ったときにはぜひ相談してみましょう。
法律以外で起業したい人が勉強すべきこととは?
企業経営者は、法律以外にもさまざまなことを勉強しておく必要があります。商品やサービスに関する知識や技術、業界の動向などを知らなければ事業はうまくいきません。より多くの人に自社の商品やサービスを選んでもらうには、営業やマーケティングに関するスキルや知識が必須です。
会社のお金の流れを把握して健全な経営を継続させ、適正に納税するためには会計や税務の知識が必要となります。他にも政治経済、金融、コミュニケーション能力、社会人としての常識やマナー、あるいは教養など、幅広い知識やスキルが求められます。
経営者には、常に勉強する姿勢が必要です。大変だと思われるかもしれませんが、学べば学ぶほど成功に近付くでしょう。
起業に関する法律知識を身につけて経営に活かしましょう
法律というと人々や会社を縛るものというイメージがあるかもしれません。確かにそうした側面もあるのですが、一方で法律があるからこそ私たちの権利が守られ、トラブルが発生したときに手助けとなってくれるともいえます。
世の中は法律によって動いています。特に、会社経営は法律とは切っても切れないものです。法律を知らずして会社経営をすることは、装備を持たずに高山を登るような、非常に無謀な行為です。条文一つひとつを丸暗記する必要はありませんが、ある程度は理解を深めておきましょう。
また、困ったときや迷ったときには一人で解決しようとせず、専門家である弁護士を頼ることをおすすめします。
よくある質問
会社経営をするうえで知っておくべき法律はありますか?
民法、会社法、労働基準法については必ず理解しておくべきです。他にも下請法や著作権法、その他自社事業に関連する法律はしっかりと把握しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
法律に関する困り事があったら誰に相談すればいいですか?
弁護士に相談されることをおすすめします。法律関係のトラブルが発生したときはもちろん、事業や契約書の適法性も確認することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
法律以外に勉強しておくべきことはありますか?
商品やサービスに関する知識や技術、業界の動向、営業やマーケティングのノウハウ、会計や税務の知識、社会人としての常識やマナー、コミュニケーション能力など、多岐にわたります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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