- 更新日 : 2025年1月14日
会社設立時の「資本金払込」とは?やり方と注意点
会社設立時の「資本金払込」は設立事項で定めた資本金の金額を、所定の銀行口座に払い込む手続きです。
定款作成日よりも前に払込みがあったものに対しても、当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、払込証明書をもって設立登記申請の添付書類として使用できます。(令和4年6月13日付法務省民商第286号)
ここでは資本金払込の具体的な手続きと、会社設立登記の際に必要な書類の1つ「払込証明書」の作成方法、手続き時の注意点について解説します。
目次
会社設立時の「資本金払込」のやり方(前編)
資本金払込は5つのステップから構成されています。
ステップ1:発起人個人の銀行口座を用意する
はじめに用意するのは「発起人個人の銀行口座」です。資本金払込をする時点ではまだ会社は設立されていないので、会社の銀行口座は存在しません。そのため用意するのは発起人個人の銀行口座となります。発起人が複数人いる場合は発起人総代の銀行口座を使用します。
銀行口座の種別は普通預金口座で問題ありません。通帳が発行できる銀行口座の場合は、通帳コピーを用意する必要があります。また、ネットバンキングを利用していて通帳がない、いわゆるWEB通帳の場合は該当の取引がわかる明細をプリントアウトする形になります。また会社設立にあたって新たに銀行口座を開設する必要はなく、発起人が現在使用している銀行口座で問題ありません。
ステップ2:資本金を振り込む
銀行口座が用意できたら次は「資本金の振り込み」です。このとき重要なのは「資本金の預け入れ」ではなく「資本金の振り込み」である点です。各発起人は設立事項の段階で、誰がいくら出資するかを決められています。この時決めた金額と同額かそれ以上の金額を、各発起人が確かに払っているかどうかを証明するためには、通帳に払い込んだ発起人の氏名が記載される「振り込み」でなくてはならないのです。
ただし発起人が1人の場合は、預け入れでも問題ありません。その場合も「資本金として用意したお金」ということを明確にする必要がありますので、一旦資本金の額以上の額を引き出した後、再度同じ口座に資本金分を入金する必要があります。
会社設立時の「資本金払込」のやり方(後編)
ステップ3:資本金の払い込み内容の明細コピーを作成する
(1)通帳がある場合
通帳コピーは各発起人が銀行口座に所定の金額を確かに振り込んだということを証明するために作成します。この時のために発起人個人の銀行口座は通帳のある銀行口座でなくてはなりません。通帳のうち、コピーするのは次の3カ所です。
- 表紙
- 表紙裏
- 振り込み内容が記帳されているページ
表紙裏は支店名・支店番号、銀行印などが記載されているページを指します。コピー用紙のサイズに特に決まりはありませんが、会社設立登記の書類と同じA4で作成するのが一般的です。また「振り込み内容が記帳されているページ」に関しては、わかりやすいように発起人の名前と金額にマーカーで印をつけておきます。
(2)インターネットバンキングを利用している場合
インターネットバンキングを利用し、通帳がない場合は、必要な情報が確認できる箇所をプリントアウトします。必要な情報は基本的には通帳コピーの場合と同様で以下のような情報です。
- 銀行名、支店名、預金種別、口座番号
- 口座名義人の氏名
- 振り込み内容が記載されている箇所
ステップ4:払込証明書を作成する
払込証明書に必要な項目は次の7つです。
- 払込があった金額の総額
- 払込があった株数(株式会社の場合)
- 1株の払込金額
- 日付
- 本店所在地
- 会社名(商号)
- 代表取締役氏名
「払込があった金額の総額」「払込があった株数」は定款に記載した通りの数字を、「1株の払込額」は「払込があった金額の総額」を「払込があった株数」で割った数字を記載します。
「日付」に入るのは資本金が振り込まれた最も遅い日以降の日付です。「本店所在地」「会社名(商号)」は設立事項決定時に決めたものを記載します。
この7つに加え、会社代表印が2カ所必要となります。場所は払込証明書の左上に1つ、代表取締役氏名の右側に1つです。左上の印は通帳コピーと綴じる際に隠れないように、余裕をもたせて押すようにします。
ステップ5:通帳コピーと払込証明書を綴じる
最後のステップは通帳コピーと払込証明書の製本です。WEB通帳の場合はプリントアウトした紙を使用します。
- 払込証明書
- 通帳コピー(表紙)
- 通帳コピー(表紙裏)
- 通帳コピー(振り込み内容が記載されているページ)
WEB通帳の場合は以下の情報がわかるページのプリントアウトが必要です。金融機関によっては情報が複数のページにまたがって掲載される場合もありますので、該当する情報すべてが揃うようにプリントアウトをします。
- 払込先記入機関名
- 口座名義人名
- 振込日
- 振込金額
1が一番上、4が一番下になるようにホッチキスで綴じます。次に各ページの境目に代表者印を押印していきます。1の裏面と2の表面、2の裏面と3の表面、3の裏面と4の表面の3カ所です。ホッチキスで留める位置を書類の左端から少し内側にしておくと、この時押印しやすくなります。
会社設立時の「資本金払込」の注意点
ステップ1からステップ5までの資本金払込手続きにおいて、注意するべき点が2点あります。1つ目は「手続きのタイミング」です。5つのステップのうち、ステップ2以降は必ず定款認証日よりも後の日付になるように手続きしなくてはなりません。資本金の振込日が定款認証日よりも前になっていると、登記書類を法務局で受理してもらえない可能性があります。
2つ目の注意点は「会社代表者印」についてです。これは代表取締役の個人の実印ではありません。会社代表者印は「会社の実印」です。払込証明書に押印する2つの印のうち1つは代表取締役氏名の右側に押印しますが、この印も「会社の実印」である会社代表者印である点に注意しましょう。
まとめ
資本金払込を行うための5つのステップは、会社設立登記に必要な書類の1つ「払込証明書」を作成するための重要な手続きです。各ステップのポイントと2つの注意点をよく理解して手続きをしなければ、会社設立登記の際に作成し直さなくてはならなくなります。ヌケ・モレのないよう確実に処理しましょう。
よくある質問
資本金払込とは?
会社設立時の「資本金払込」は設立事項で定めた資本金の金額を、所定の銀行口座に払い込む手続きです。詳しくはこちらをご覧ください。
会社設立時の資本金払込のやり方は?
発起人個人の銀行口座を用意する、資本金を振り込む、通帳コピーを作成する、払込証明書を作成する、通帳コピーと払込証明書を綴じるの5ステップが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
会社設立時の資本金払込の注意点は?
資本金払込で注意すべきなのは、「手続きのタイミング」と「会社代表者印」の2点です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
資本金の関連記事
新着記事
創業融資を成功させる役員報酬の決め方は?金額や審査のポイント、届出の流れも解説
創業融資の審査において、役員報酬の設定は非常に重要な要素です。単に経営者の生活費を決めるというだけでなく、融資の可否、借入可能額、さらには設立後のキャッシュフロー、税負担、そして経営者自身の生活設計にまで影響を及ぼします。 本記事では、創業…
詳しくみる役員変更の法人登記ガイド|必要書類・役員変更登記申請書のテンプレート・費用も解説
会社の運営において、役員の変更は事業の成長や組織体制の変化に伴い、避けて通れない事象の一つです。そして、役員に変更があった場合、法務局への法人登記申請が法律で義務付けられています。この手続きを怠ると、過料の制裁を受ける可能性があるだけでなく…
詳しくみる創業融資の返済期間は何年がベスト?日本政策金融公庫の制度や返済方法についても解説
創業融資は、事業を軌道に乗せるための重要な選択肢です。創業融資の返済期間を適切に設定することは、事業のキャッシュフローを安定させ、健全な経営を持続させるための鍵となります。 この記事では、創業融資の返済期間に関するあらゆる疑問を解消し、あな…
詳しくみる買取資金調達ガイド|M&Aの株式買取や、事業承継の自社株買取などのポイントを解説
円滑な事業承継、M&Aにおいて、株式買取をはじめとする買取は避けて通れない重要なプロセスです。しかし、多くの場合は買取に多額の資金が必要となるため、資金調達が成功の鍵を握ります。 本記事では、M&Aや事業承継における株式買取…
詳しくみる自己破産後も創業融資は可能?日本政策金融公庫の再チャレンジ支援融資についても解説
「自己破産したら、もう二度と事業は起こせないのだろうか…」過去に自己破産を経験された方にとって、再び起業し、創業融資を受けることは非常に高いハードルに感じられるかもしれません。 しかし、自己破産後であっても、創業融資を受けられる可能性はあり…
詳しくみる創業融資の審査に年収は影響する?種類別の審査ポイントや年収が低い場合の対策も解説
創業融資を申し込むにあたり、「年収は審査にどう影響するのか?」「年収が低いと融資は受けられないのか?」といった不安や疑問を抱く方は少なくありません。 本記事では、創業融資における申込者個人の年収の位置づけ、審査で重視されるポイント、そして年…
詳しくみる