• 更新日 : 2025年12月23日

会社設立時の「資本金払込」とは?やり方と注意点

会社設立時の「資本金払込」は会社法34条に基づき、定款で定めた出資金額について、発起人が定めた銀行等の払込み取扱い場所(通常は発起人や設立時代表取締役名義の口座)に金銭を払い込む手続きです。

定款作成日よりも前に払込みがあったものに対しても、当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、払込証明書をもって設立登記申請の添付書類として使用できます。(令和4年6月13日付法務省民商第286号)

ここでは資本金払込の手続きと、会社設立登記の際に必要な書類の1つ「払込証明書」の作成方法、手続き時の注意点について解説します。

目次

会社設立時の資本金払込とは?

会社を設立する際、株主が会社に提供する資金は「資本金」として計上されます。この資金を実際に会社へ払い込む行為を「資本金払込」と呼び、会社成立の根幹となる手続きです。以下では、資本金払込の意味とその法的・実務的な位置づけを解説します。

株主が会社へ出資金を払い込むことで会社の基礎財産を形成する手続き

資本金払込とは、会社設立時に発起人や出資者が会社に対して現金などの財産を払い込み、会社の資本金として計上する手続きを指します。

出資の履行義務は会社法第34条で定められており、資本金の額自体は会社法第445条で「設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額」と定義されています。

払込は通常、会社法34条2項に基づき、発起人が定めた銀行等の払込み取扱い場所(銀行・信用金庫など)の口座(一般には発起人や設立時代表取締役名義の口座)へ振り込む形で行われ、その通帳コピーや明細が“払込証明書類”として登記申請に使用されます。これらの書類は会社登記に不可欠であり、資本金の存在を客観的に証明するための重要な根拠となります。

参考:会社法 第445条|e-GOV

会社の信用力や財務基盤を決定し、設立手続きの要となる

発起設立の場合、設立時発行株式について出資金の払込みが行われ、そのことを証する書面を添付して登記申請をしなければ会社設立はできません。また、資本金の額は創業初期の銀行取引・融資・取引先との信用形成に大きな影響を与えます。たとえば、資本金が極端に少ないと「資金力が乏しい企業」と判断される場合があり、逆に適切な資本金額は事業運営の安定性を支える役割を果たします。さらに、資本金は事業開始後の設備投資や運転資金に充てられるため、払込の段階で事業計画に応じた適正額を設定することが重要です。

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会社設立時の「資本金払込」のやり方は?

会社設立時の資本金払込は、会社成立に必須となる手続きであり、正確に手順を踏まなければ法務局で登記が受理されません。以下では、その流れを詳しく説明します。

① 発起人個人の銀行口座を用意する

資本金払込時点では会社がまだ存在しないため、資金を振り込む口座は「発起人または設立時代表取締役名義の銀行口座」を使用します。発起人が複数いる場合は、発起人総代の口座を用いるのが一般的です。普通預金口座で問題ありませんが、払込証明に必要なため、通帳が発行できる銀行が望ましいです。インターネットバンキングのみの場合は、必要情報が記載された明細を印刷して利用します。新しく口座を作る必要はなく、既存の個人口座で対応できます。

② 資本金を振り込む

口座の準備ができたら、発起人がそれぞれ出資額を「振込」により払い込みます。通帳に発起人名が記載される必要があるため、通帳に誰がいくら払い込んだかを明確に残すため、複数の発起人がいる場合は「振込」により入金することが推奨されます。発起人が1名の場合は預け入れでも差し支えありませんが、入金の事実が明確に分かるよう、一度引き出して再度入金する方法が採られます。

③ 資本金払込を証明する通帳コピー(またはWEB明細)を作成する

(1)通帳がある場合

通帳コピーは各発起人が銀行口座に所定の金額を確かに振り込んだということを証明するために作成します。証明書面として必要な情報(銀行名・支店名・口座番号・名義人・払込記録)が確認できる必要があるため、通帳のある銀行を利用するのが一般的です。通帳のうち、コピーするのは次の3カ所です。

  • 表紙
  • 表紙裏
  • 振り込み内容が記帳されているページ

表紙裏は支店名・支店番号、銀行印などが記載されているページを指します。コピー用紙のサイズに特に決まりはありませんが、会社設立登記の書類と同じA4で作成するのが一般的です。また「振り込み内容が記帳されているページ」に関しては、わかりやすいように発起人の名前と金額にマーカーで印をつけておきます。

(2)インターネットバンキングを利用している場合

インターネットバンキングを利用し、通帳がない場合は、必要な情報が確認できる箇所をプリントアウトします。必要な情報は基本的には通帳コピーの場合と同様で以下のような情報です。

  • 銀行名、支店名、預金種別、口座番号
  • 口座名義人の氏名
  • 振り込み内容が記載されている箇所

④ 払込証明書を作成する

払込証明書には以下の7項目を記載します。

  • 払込があった金額の総額
  • 払込があった株数(株式会社の場合)
  • 1株の払込金額
  • 日付
  • 本店所在地
  • 会社名(商号)
  • 代表取締役氏名

払込金額は定款記載の内容と一致させます。「日付」は最も遅い払込日以降(同日を含む)で、設立時代表取締役の就任日以降の日付を記載します。さらに、代表印を左上と代表取締役氏名の横に押印します。左上の印は後の製本で隠れないよう余裕をもって押します。

⑤ 通帳コピーと払込証明書を綴じて製本する

最後のステップは通帳コピーと払込証明書の製本です。WEB通帳の場合はプリントアウトした紙を使用します。

  1. 払込証明書
  2. 通帳コピー(表紙)
  3. 通帳コピー(表紙裏)
  4. 通帳コピー(振り込み内容が記載されているページ)

WEB通帳の場合は以下の情報がわかるページのプリントアウトが必要です。金融機関によっては情報が複数のページにまたがって掲載される場合もありますので、該当する情報すべてが揃うようにプリントアウトをします。

  • 払込先金融機関名
  • 口座名義人名
  • 振込日
  • 振込金額

実務上は、1から順にホッチキスで綴じます。次に各ページの境目に代表者印を押印していきます。1の裏面と2の表面、2の裏面と3の表面、3の裏面と4の表面の3カ所です。ホッチキスで留める位置を書類の左端から少し内側にしておくと、この時押印しやすくなります。

参考:商業・法人登記の申請書様式|法務局、「株式会社設立登記申請書(記載例)

会社設立時の「資本金払込」の注意点は?

資本金払込は会社設立に必須の手続きであり、形式不備があると登記が受理されないだけでなく、後に増資・会計処理で問題が発生する可能性もあります。押さえるべきポイントを解説します。

振込方法・口座名義・払込日が正確か確認する

資本金払込は出資金の入金事実が客観的に確認できる形で記録されていることが重要です。特に複数の発起人が出資する場合は、誰がいくら払込んだかが分かるよう「振込」で入金する方法が一般的に推奨されます。預け入れでも証明が不可能とは限りませんが、発起人ごとの払込額が判別しづらくなるため注意が必要です。

口座名義人は原則として発起人または設立時代表取締役(発起人総代を含む)の名義とし、第三者や家族名義・共同名義の口座は証明力や通達上の趣旨を踏まえて避けるのが無難です。

また、払込日として扱えるのは通常、通帳や取引明細に記載された入金日付であるため、法務局で使用する設立日より前に振り込みが完了している必要があります。

通帳コピーの不備やWEB明細の情報不足は、登記申請の補正や遅延につながる

払込証明には通帳コピー(またはWEB明細)を添付しますが、銀行名・支店名・口座番号・名義人・振込内容のいずれかが欠けていると、法務局から補正や追加資料の提出を求められ、登記がスムーズに受理されない原因となります。また、WEB通帳の場合は画面全体が必要で、複数ページに分かれる場合はすべて印刷する必要があります。

振込人名が途中で省略されているケースでは、特に発起人が複数いる場合に、誰の出資かを説明しづらくなるため、必要であれば銀行窓口で明細を再発行するなどの対応が望ましいでしょう。コピーするページの順番や綴じ方にも決まりがあり、正しい順で綴じないと不備扱いされる場合があります。

払込証明書の記載内容に誤りがあると修正が必要になる

払込証明書には払込総額・払込株数・払込金額など、定款で定めた数値と一致する内容を記載しなければなりません。間違いがあると補正や再提出が必要となり、登記はそのままでは受理されません。また、代表印の押印位置や通帳コピーの綴じ方に不備がある場合も指摘されることがあります。設立日を意図的に設定する場合は、払込日と整合しているかも重要で、日付の前後関係を誤ると登記の補正や申請のやり直しが必要になることがあります。

「会社代表者印」は代表取締役の個人印ではなく、会社の実印

払込証明書には代表取締役氏名の横などに押印しますが、ここで押す印は代表取締役個人の実印ではなく、会社の実印である「会社代表者印」です。設立準備中は個人印と混同されやすいため、会社実印の登録と押印準備を事前に整えておくことが重要です。押印位置については、法務局の記載例にならい、表紙左上の綴じ印と代表取締役氏名横の2カ所に会社代表者印を用いるのが一般的です。誤った印を押した場合は再作成が必要となるため、注意深く作業を行いましょう。

払込後の資金の使い道は?

会社設立時に払い込まれた資本金は、会社の財産として会社の事業目的の範囲内で自由に利用できます。しかし、事業開始直後の資金は運転資金として重要な意味を持ち、使い方を誤ると早期の資金繰り悪化を招きます。

払い込まれた資本金は、会社の事業活動に自由に使用できる

会社法上、資本金は会社の純資産に計上されますが、資本金の全額を銀行口座に残しておく義務はありません。事業開始後は、資本金をもとに設備投資、仕入れ、人件費、広告費など会社の事業運営に必要な支出に利用できます。よく誤解される点として「資本金は引き出してはいけない」というものがありますが、資本金は“資金を調達したという事実”を示しているだけで、資金そのものを常に残しておく必要はありません。

ただし、一般に資本金が大きいほど財務基盤が強いと評価されるため、資本金に見合う自己資本や口座残高が極端に減ると金融機関や取引先からの信用に影響する場合があります。

創業初期は運転資金を厚めに確保し、資金繰りを安定させる

払込後の資金の使い道で最も重要なのは、運転資金の確保です。多くの新設会社では、創業後すぐに十分な売上が確保できないため、目安として半年〜1年程度の運転資金を残しておくと安全です。特に、家賃、人件費、外注費、仕入れ払いなど固定的に発生する支出は、資本金の使用計画に必ず組み込みます。

また、営業活動に必要な出張費や広告宣伝費など、売上につながる支出も優先度が高い項目です。資本金を無計画に消費すると、資金ショートにより事業継続が困難になるケースが多いため、資金繰り表の作成と定期的な見直しが不可欠です。

資本金残高は、融資・信用力・取引条件に影響するため計画的に管理を

資本金は設立時の信用力を示す指標でもあり、創業融資や取引先契約の審査に影響します。もちろん、金融機関は利益水準や債務超過の有無なども総合的に見ますが、初期段階では「資本金の額」や「自己資本の厚み」も重視されがちです。そのため、資本金をすべて使い切るような資金管理は避けるべきです。創業時に法人税社会保険料の支払いが発生することも考慮し、一定額の現預金残高を確保しておくことが望ましいです。銀行は口座残高の推移を確認するため、急激に資金が減っていると「資金繰りの悪化」と判断される可能性があります。払込資金は自由に使える一方、信用力の維持という観点から“使いどころ・残しどころ”を意識した運用が求められます。

払込証明書の提出後に行う会計処理と仕訳例は?

資本金払込が完了し、払込みがあったことを証する書面(払込証明書)などを添付して設立登記が完了すると、企業は会計帳簿の作成と日々の仕訳処理を開始する必要があります。以下では、設立後の会計処理の流れと仕訳例を解説します。

設立日の時点で、払込資本金を「資本金」として計上する

会社設立日が到来すると、発起人が払い込んだ資本金は、会社の純資産として正式に計上されます。会計上は、設立日における会社の資産として「現金預金」、負債ではなく純資産として「資本金」を記録します。この仕訳は、会社のスタート時点の財務状態を明確にするための最も基本的な処理です。複数発起人が出資している場合でも、最終的に集約された払込額を1つの「資本金」として計上します。

また、会社法上、払込額のうち2分の1を超えない部分については資本金ではなく資本準備金とすることも認められているため、定款や出資決議で一部を資本準備金に振り分けた場合は、その内容に応じた仕訳が必要となります。

開業後は、資本金とは別に日常取引を正しく記録し、帳簿を整える

会社が設立された後は、事業に伴う支出や売上の記録を日々行い、適切な会計帳簿を作成していきます。設立直後は支出が先行しがちですが、設備投資・仕入・通信費交通費などの項目を適切に分類し、発生主義に基づいて処理します。

また、開業後に会社が法人名義の銀行口座を開設した場合は、資本金を個人口座から法人口座へ移すことがありますが、この場合は「口座間移動」であり、会計上は同じ「現金預金」同士の振替として処理されるため、資本金や資本準備金の金額自体は変わりません。

設立時の資本金計上の代表的な仕訳例

以下は、1,000万円の資本金を払い込み、設立日に計上する場合の仕訳例です。

借方貸方
現金預金10,000,000円資本金10,000,000円

また、払込額のうち5,000,000円を資本金、残り5,000,000円を資本準備金に計上する場合は次のとおりです。払込額の2分の1を資本金とし、残りを資本準備金とする典型例です。

借方科目貸方科目
現金預金10,000,000円資本金5,000,000円
資本準備金5,000,000円

資本金払込を正しく行い、設立手続きをスムーズに進めよう

会社設立時の資本金払込は、会社の成立を支える最重要手続きであり、登記の可否を左右するプロセスです。また、払込後の資金は事業活動に自由に使用できますが、創業期の資金繰りや信用力維持を考慮し、適切に管理することが重要です。

さらに、設立後は資本金の会計処理や帳簿の整備を行い、会社経営の基盤を整えることが求められます。資本金払込を正確に行い、計画的な運営につなげることで、会社設立後の事業を安定してスタートさせることができるでしょう。

よくある質問

資本金払込とは?

会社設立時の「資本金払込」は設立事項で定めた資本金の金額を、所定の銀行口座に払い込む手続きです。詳しくはこちらをご覧ください。

会社設立時の資本金払込のやり方は?

発起人個人の銀行口座を用意する、資本金を振り込む、通帳コピーを作成する、払込証明書を作成する、通帳コピーと払込証明書を綴じるの5ステップが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

会社設立時の資本金払込の注意点は?

資本金払込で注意すべきなのは、「手続きのタイミング」と「会社代表者印」の2点です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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