• 作成日 : 2022年10月14日

個人事業主は福利厚生費を経費計上できる?条件や事例を解説

個人事業主は福利厚生費を経費計上できる?条件や事例を解説

自身で事業を営んでいる個人事業主は、経費を福利厚生費に計上できないか知りたいのではないでしょうか。本記事では、個人事業主でも福利厚生費を計上できるケースや、従業員が福利厚生として利用できるサービスについて解説していきます。自身や家族の経費は福利厚生費に計上できませんが、従業員を対象にしている場合は経費に計上できます。

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福利厚生費とは

従業員の慰安を目的として、給与や賞与以外で支出する経費のことを福利厚生といいます。社会保険雇用保険厚生年金保険などの福利厚生を法定福利といい、それ以外のものを法定外福利といいます。

福利厚生については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

福利厚生費として認められる条件

従業員を雇用していない個人事業主は、経費を福利厚生費に計上することはできません。福利厚生は、あくまで従業員のために行われるものだからです。

福利厚生費として認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 賃金ではないこと
  • 全従業員に平等に適用されること
  • 社会通念上妥当と思われる金額の範囲内であること

賃金ではないこと

福利厚生は、換金性に欠けるものや、物品などの選択ができないものなど、賃金とは異なる性質があるものを導入する必要があります。社員食堂や忘年会など、賃金以外で利益を受けることが福利厚生の要件となっています。

最近では福利厚生をアウトソーシングする「カフェテリアプラン」を導入する企業も増えていますが、従業員が選択するメニューの内容によっては、課税の対象となる場合があるため、注意が必要です。

全従業員に平等に適用されること

また、全ての従業員が利用できること(機会の平等性)も福利厚生の要件とされています。役員だけが利用できる場合や、福利厚生を利用しなかった従業員に対して金銭で支給を行うような場合は、その金額が給与として課税される場合があります。

社会通念上妥当と思われる金額の範囲内であること

福利厚生の内容があまりに高額である場合は金額の妥当性に欠けるため、福利厚生として認められない可能性があります。では、社会通念上妥当とされる金額はいくらまででしょうか。

国税庁では、例えば4泊5日の社員旅行では1人10万円、創業記念品の配布は1万円であれば、社会通念上妥当としています。福利厚生の内容に応じて金額の妥当性は異なるため、不安であれば、税理士に確認するといいでしょう。

個人事業主でも福利厚生を利用できるケースとは

原則として個人事業主は福利厚生を利用できませんが、場合によっては利用できるケースもあります。

単独経営・家族経営の場合は計上できない

福利厚生はあくまで、従業員の慰安を目的としているため、1人で事業を営んでいる場合や、家族を従業員としている場合は、福利厚生費を通常は計上できない場合が多くなっています。スポーツクラブやマッサージなどは、仕事に必要な支出だと考えているかもしれませんが、個人事業主の場合は、福利厚生費に計上できません。

家族以外の従業員がいる場合は福利厚生が利用できる

雇用している家族以外に従業員には、福利厚生が利用できます。ただし社員旅行や懇親会といったように、従業員の慰安を目的としたものに限ります。また、社会通念上妥当と認められる費用であれば、雇用主である個人事業主や家族(専従者)の参加費も福利厚生費として計上可能です。

福利厚生として利用できるサービス

福利厚生として利用できるサービスには、以下のようなものが考えられます。

  • 家賃補助
  • 生命保険
  • 健康診断
  • 社員旅行
  • スポーツクラブ
  • マッサージ

家賃補助

従業員が会社の近くに住むような場合は、家賃の全額または一部を補助するケースがあるかもしれません。その場合の経費は、家賃補助として福利厚生費に計上することが可能です。

ただし従業員に社宅や寮を貸与する場合は原則として、従業員から賃貸料相当額として、1カ月当たり一定以上の家賃を受け取る必要があります。従業員に無償で貸与する場合は、賃貸料相当額が給与として課税されます。

賃貸料相当額は、以下の(1)〜(3)の合計額です。

  1. その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2パーセント
  2. 12円 ×( その建物の総床面積(平方メートル)/ 3.3平方メートル)
  3. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22パーセント

生命保険

全従業員を対象としている生命保険の保険料は、福利厚生費に計上することができます。ただし、生存保険金または死亡保険金の受取人によっては、給与として課税される場合があります。従業員の遺族ではなく会社にしている場合は、保険料の一部は経費にできません。

養老保険に加入している場合

契約者被保険者死亡保険金の受取人生存保険金の受取人課税の有無
会社(使用者)役員または従業員会社(使用者)会社(使用者)福利厚生費として経費に計上
会社(使用者)役員または従業員役員または従業員の遺族役員または従業員給与として課税
会社(使用者)役員または特定の従業員役員または従業員の遺族会社(使用者)1/2は給与1/2は福利厚生費

健康診断

従業員を雇用している場合は労働安全衛生法により、年に1回の健康診断が義務づけられています。健康診断にかかる費用は会社で負担することになりますが、その際の費用は一般的に経費として、福利厚生費に計上することができます。

個人事業主の場合は福利厚生の対象にならないため、各保険組合や市町村で実施する健康診断を受診すると、費用が安く抑えられるでしょう。

社員旅行

従業員との旅行に要した費用も、妥当な金額とみなされる範囲であれば、福利厚生費として計上可能です。一般的な目安として、3泊4日の宿泊であれば7万円まで、4泊5日の宿泊であれば10万円までの負担が妥当な金額だとされています。

社員旅行を福利厚生費へ計上するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること
  • 全従業員が参加できること
  • 旅行に参加した人数が社員全体の50%以上であること

スポーツクラブ

健康促進を目的として、スポーツクラブの利用を福利厚生としている企業もあります。このような施設利用権の場合は、全従業員が利用できる契約形態であれば、一般的に福利厚生費として認められると考えらます。ただし個人事業主が契約しているスポーツクラブは、経費として認めらないのが一般的です。

マッサージ

こちらもスポーツクラブと同様に、全従業員が利用できる契約形態であれば福利厚生費に計上できます。社内常駐型のものよりも、契約している施設へ訪問して施術を受ける契約形態の方が多いようです。

福利厚生費と間違えやすいもの

ここからは、間違えやすい福利厚生費について解説していきます。原則として経費には計上できますが、勘定科目が福利厚生費でないケースがよく見られます。

交際費と福利厚生費の違い

取引先との接待に従業員を同席させたような場合は、福利厚生費ではなく交際費に該当すると考えられます。得意先や仕入先、その他事業に関係ある方への接待や慰安に該当するものは、交際費に計上するのが一般的です。社内の従業員の慰安を目的として行われた忘年会や食事会は、福利厚生費にあたります。

旅行が福利厚生費で認められるルール

福利厚生費は従業員を対象に行うものであるため、社員旅行や慰安旅行の名目で旅行を行う場合は、条件を満たせば福利厚生費として認められます。ただし従業員である家族と旅行するような場合は、基本的には福利厚生費として認められません。

また、個人事業主が取引先に会う目的で旅行するような場合は、福利厚生費ではなく旅費交通費として計上するといいでしょう。

福利厚生費の会計処理はどうする?

福利厚生費は、借方に福利厚生費、貸方に支払い方法(現金など)を計上します。今回は従業員が福利厚生制度を利用してマッサージを受けたと仮定して、仕訳を行ってみましょう。

福利厚生費を経費に計上する場合は、以下のように仕訳を行います。
従業員が利用したマッサージの施術代15,000円を現金で支払った。

借方
貸方
福利厚生費15,000円現金15,000円

福利厚生に関する悩みは税理士に相談しよう

福利厚生は従業員の慰安を目的としているため、従業員を雇用していない個人事業主は経費に計上できません。従業員を雇用して、全員を福利厚生の対象とし一定の要件を満たす場合には、その支出を福利厚生費として計上できると考えられます。

また、福利厚生はサービスの内容や金額に応じて、それぞれ要件が定められています。要件を満たしていない場合は、給与として課税されることになるため、気になることがある場合は、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

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よくある質問

個人事業主は福利厚生費を経費計上できますか?

1人で事業を行っている場合は、福利厚生費を経費計上することはできません。また、家族のみを従業員としている場合も福利厚生は認められていません。詳しくはこちらをご覧ください。

福利厚生費として認められるための条件はありますか?

家族以外の従業員を雇用している場合は、福利厚生費が認められます。ただし賃金として支給するものではないことや、金額が妥当であること、全従業員が対象であるなど要件を満たす必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:冨田 健(不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務)

43都道府県で不動産鑑定業務経験があり、各種媒体に不動産価格や不動産税務に関する講演及び寄稿も行う。
令和3年8月に不動産の評価手法・相続・税務、立退料の評価、戸建住宅の価格目線の把握法等を実例を交え一般向けに述べた自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」を上梓。
公認会計士世田谷会幹事・国土交通省公示価格鑑定評価員・その他公職にあり。
特技は12年間学んだエレクトーンで、公認会計士東京会第四回音楽祭で優勝経験あり。

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