- 作成日 : 2025年10月21日
女性の起業で創業融資を受けるには?有利な支援制度や自己資金の条件を解説
女性の起業で創業融資を成功させるには、有利な支援制度の活用と、自己資金や事業計画の準備が大切です。とくに女性向けの制度は金利などの条件が有利な場合もあり、知っているかどうかで資金計画は大きく変わります。
この記事では、女性が有利な創業融資制度から、気になる自己資金の条件、審査で想いを伝えるコツまで、その挑戦をサポートする情報をわかりやすく解説します。
目次
女性が有利な創業融資とは?
女性が創業融資で有利になる制度には、主に日本政策金融公庫の創業融資と、地域が支える自治体の制度融資の2つがあります。いずれも女性起業家を後押しするため、金利が低めに設計されているなどのメリットが用意されていることが多いでしょう。まずは、日本政策金融公庫の創業融資と、地域に根差したサポートが受けられる自治体の制度、それぞれの特徴を理解することから始めましょう。
日本政策金融公庫の支援資金
日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性起業家などが基準利率より低い特別利率で融資を受けられる国の制度です。多くの相談窓口があり、創業支援の実績も豊富なため、多くの女性起業家が最初に相談する窓口の一つといえるでしょう。
この制度は、女性の新たな挑戦を後押しし、多様なビジネスが生まれる社会の実現を目的としています。無担保・無保証人で利用できる場合もあり、事業に集中しやすい環境づくりを支えてくれます。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 対象となる方:新たに事業を始める、または事業開始後おおむね7年以内の女性
- 特徴:要件を満たすことで、通常より低い特別利率が適用される
- 資金の使いみち:設備資金や運転資金
参照:新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援資金)|日本政策金融公庫
地域・自治体の「制度融資」
制度融資とは、お住まいの都道府県や市区町村が、地域の金融機関・信用保証協会と連携して創業者を支える仕組みです。自治体が創業者をサポートすることで、地域の銀行や信用金庫からの融資が受けやすくなります。自治体による利子補給や保証料の補助が受けられる場合もあり、手厚いサポートにつながります。次の章で全国の具体例を詳しくご紹介します。
女性が有利になる全国の「制度融資」5選
全国の自治体では、地域での起業を促すために特色ある「制度融資」が用意されています。とくに女性起業家を対象としたものは、金利の優遇や保証料の補助など、資金計画を大きく助ける内容が豊富です。ここでは、東京や大阪などの大都市から地方まで、具体的な事例を紹介しますので、ご自身の地域にどのような制度があるか、ぜひ参考にしてください。
1. 東京都「女性・若者・シニア創業サポート事業」
制度の対象者として女性が明確に位置づけられており、低利な融資を活用できます。また、TOKYO創業ステーションによる事業計画策定から融資実行後の経営フォローまで、一貫したサポートを受けられる点も心強いでしょう。
- 融資限度額:1,500万円以内(女性は2,000万円以内)
- 対象:都内における女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で、創業の計画がある方。または創業後5年未満(女性は7年未満)の方(NPOなども含む)
- 特徴:最長3年間、融資利率のうち0.4%を東京都が補助。信用保証料も不要。
2. 大阪府「開業・スタートアップ応援資金(女性・若者・シニア向け融資)」
女性を対象とした特別な利率が設定されており、通常の創業者向け融資よりも有利な条件で借入ができます。これにより、創業初期の金利負担を軽減しながら事業を軌道に乗せることに集中できるでしょう。
- 融資限度額:3,500万円
- 対象:府内で開業または開業後5年未満の方
- 特徴:女性、若者、シニア、UIJターン該当者は利率優遇(0.2%引下げ)
3. 川崎市「女性・若者・シニア創業支援融資」
川崎市では、女性や若者(30歳未満)、シニア(50歳以上)の創業を支援するための制度融資を設けています。市内で新たに事業を始める、または開業後5年未満の方を対象に、金融機関・信用保証協会と連携して低利での資金調達をサポートしています。
- 融資限度額:3,500万円
- 対象:代表者が「女性」「若者(30歳未満)」「シニア(50歳以上)」のいずれかで、一定の要件に該当する、川崎市内に事業所を置く中小企業者等(NPO法人を除く)
- 特徴:保証料0%、利率優遇あり
4. 茨城県「女性・若者・障害者創業支援融資」
茨城県では、女性や若者(35歳未満)、障害者の創業を支援するために、金融機関や信用保証協会と連携した制度融資を提供しています。創業時の資金調達を支えるため、低利率や保証料補助などが設けられており、県内で事業を始めたい方にとって利用しやすい仕組みです。
- 融資限度額:設備資金:3,500万円、運転資金:3,500万円、併用:3,500万円
- 対象:県内に住所又は居所を有する女性・若者・障害者で、融資対象区分ごとに、一定の要件に該当する方
- 特徴:融資利率は年1.3%~1.6%、信用保証料も年0.9%と低く(経営者保証不要の場合は1.1%)、返済期間は運転資金7年以内、設備資金10年以内。
5. 福岡県「女性スタートアップ資金」
福岡県では、創業を目指す女性を後押しするために「女性スタートアップ資金」を設けています。市町村の創業支援事業計画に基づく特定創業支援等事業の支援を受けた女性が対象で、金融機関や信用保証協会と連携して手厚い条件が設定されています。利子補給や保証料の軽減があるため、創業初期の資金調達を有利に進めやすい仕組みです。
- 融資限度額:3,500万円以内(創業前は2,000万円以内)
- 対象:県内で新たに創業を予定する女性(創業支援等事業を受けた方)
- 特徴:融資利率が年1.30%以内と低く、女性または50歳以上であれば1.20%。信用保証料率も0%から0.2%で負担を抑えられる。返済期間は10年以内。
※融資額や金利、各種条件は2025年9月5日時点の情報を基にしており、申込者の状況や制度の改定によって変動します。詳細は各機関にご確認ください。
女性の創業融資は自己資金なしでも大丈夫?
創業融資において、自己資金ゼロでの借入は一般的に難しいのが実情です。ただし、自己資金要件が比較的ゆるやかな制度もあります。自己資金が少ない場合でも、将来の収益性を示す計画の具体性や創業準備の積み上げを示せれば、融資に到達できるケースはあります。なぜ自己資金が求められるのかを理解し、状況に合った準備を進めましょう。
自己資金は「本気度」を伝える要素
自己資金は、準備期間・計画性・リスクテイクを客観的に示す指標です。金融機関の視点では、通帳履歴で計画的な蓄積が読み取れるほど、事業への本気度や返済継続性が評価されやすくなります。一般に必須の比率が法律で決まっているわけではなく、あくまで目安ですが、総資金の約3分の1を自己資金で賄えていると、計画の実行可能性が評価されやすいといわれます。
自己資金が少ない場合にできること
自己資金が目標に満たないときは、根拠ある売上仮説・費用計画まで落とし込んだ事業計画を整えましょう。親族・知人からの支援は、贈与なら自己資金に算入できますが、借入は自己資金にはなりません。補助金・助成金は原則後払いのため、自己資金の代替になりにくい点に注意が必要です。通帳の入出金履歴で見せ金と判断されないよう、計画的な積立の痕跡を整えておくことが重要です。
経営者保証を不要とする信用保証制度も
「スタートアップ創出促進保証制度」なら、経営者個人の連帯保証や担保が不要で、最大3,500万円・最長10年の保証付融資を受けやすくなります。対象は創業予定者および創業後5年未満の法人等です。税務申告1期未了の創業者等は創業資金総額の1/10以上の自己資金が要件です
さらに東京都では、同制度をベースにした「創業経営者保証不要型(創業経保)」があり、保証料のうち2/3を東京都が補助してくれる支援制度もあります。
参照:スタートアップ創出促進保証制度の概要|中小企業庁
参照:都創業融資「創業経営者保証不要型(略称:創業経保)」東京信用保証協会
女性の創業融資の審査のポイント
創業融資の審査では、主に事業計画、これまでの経験、そして資金計画の3点が総合的に評価されます。数字の計画だけでなく、事業にかける想いや、なぜ自分がこの事業を行うのかという背景をしっかり伝えることが、融資担当者の理解を得るためには欠かせません。ここでは、審査で評価されるポイントを3つのコツとして解説します。
コツ1:「想い」が伝わる事業計画
事業計画書で大切なのは、誰が読んでも事業内容とその成功イメージが描けることです。なぜこの事業を始めたいと思ったのか、きっかけや背景にあるストーリーは、計画に深みを与えます。自身の経験から感じた課題を解決したい、といった想いは、事業の動機として大きな説得力を持ちます。
コツ2:経験を「強み」に変える見せ方
創業する事業と、これまでの職務経歴や人生経験に一貫性があると、計画の説得力が増します。融資担当者は、事業を遂行するだけの知識やスキルが備わっているかを見ています。結婚や出産などでキャリアにブランクがある場合でも、その経験が事業のアイデアにつながることも少なくありません。ブランクを弱みと捉えず、事業にどう活かせるかという視点で伝えましょう。
コツ3:数字で示す「安心感」
融資担当者がとくに注目するのは、具体的な資金計画と、無理のない返済計画です。事業への想いがどれほど強くても、それを支えるお金の計画がしっかりしていなければ、事業の継続は難しくなってしまいます。少なくとも1年分の「資金繰り表」を作成し、事業がきちんと回り、返済も問題なく行えることを数字で示しましょう。
創業融資と助成金・補助金の違いや使い分け
創業時の資金調達には、返済が必要な「融資」だけでなく、原則として返済が不要な「助成金・補助金」もあります。この2つは性質が全く異なるため、違いを正しく理解し、ご自身の事業フェーズに合わせて両方を賢く使い分けることが、資金繰りを安定させるうえで欠かせません。
融資と助成金・補助金の違い
融資と助成金・補助金の最も決定的な違いは、「返済義務」の有無です。融資は「借入金」ですが、助成金・補助金は「支援金」です。ただし、助成金・補助金は経費を使った後に支給される「後払い」が基本のため、先に事業を動かす資金は融資で確保し、事業運営の中で条件に合う助成金を活用する、という組み合わせが現実的でしょう。
女性起業家も使える助成金・補助金
助成金・補助金は公募期間が限られているため、常に最新情報の確認が大切です。たとえば、キャリアアップ助成金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金など、事業の目的に合うものを選びましょう。
参照:キャリアアップ助成金|厚生労働省
参照:IT導入補助金2025|IT導入補助金事務局
参照:小規模事業者持続化補助金|全国商工会連合会
女性の創業融資の申し込み手順は?
創業融資の申し込みは、全体の流れをあらかじめ把握しておくことで、計画的に準備を進められます。
- 相談先選定・事前相談(日本政策金融公庫/地域の金融機関・支援機関)
- 必要書類準備(創業計画書、見積書、許認可の写し、通帳履歴、契約予定物件の資料、受注・予約の証跡 など)
- 申し込み・面談(訪問/オンライン)
- 審査・決定・契約・実行(目安:2週間~1か月超。制度融資は保証協会審査を挟むため長めになりがち)
女性向け創業融資制度のまとめ
女性が起業で創業融資を受ける際には、日本政策金融公庫や自治体の制度融資を理解しておくことが重要です。とくに日本政策金融公庫や自治体の制度融資は、条件が有利に設計されており、創業初期の資金繰りを支える有効な手段となります。
自己資金が少ない場合でも、熱意や経験を具体的に事業計画に反映させ、専門家に相談しながら準備を整えれば、融資の可能性は広がります。制度の特徴と条件を正しく押さえ、現実的な資金計画を立てることが、創業を成功に近づける第一歩となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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