- 更新日 : 2025年8月29日
大学生起業の成功率は?成功事例や失敗のポイントなどを解説
近年、若手起業家の活躍が注目される中、大学生のうちに起業を志す学生が増加しています。「学生起業は失敗率が高い」という話を耳にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、実際の成功率はどの程度なのでしょうか?成功する学生と失敗する学生の違いは何なのでしょうか?この記事では、最新データと具体的な事例をもとに、学生起業の実態を詳しく解説します。
目次
学生起業の成功率は?
学生起業の実際の成功率について、公的データと国際比較の観点から詳しく分析します。
公的データから見る学生起業の現状
経済産業省の「令和6年度大学発ベンチャー実態等調査」によると、2024年10月時点での大学発ベンチャー数は5,074社と過去最高を記録し、前年度から786社もの大幅な増加となりました。この数値には教職員などが立ち上げたベンチャーも含まれますが、学生による起業が活発化している傾向を示しています。
また、企業の生存率に目を向けると、帝国データバンクの「令和4年度中小企業実態調査委託費」では、起業から1年後の生存率は94.3%、5年後でも80.7%とされています。つまり、5年という期間で見ると、19.3%の企業が事業を継続できていない計算になりますが、最初の1年を乗り越える企業は9割以上にのぼります。
直近の「中小企業白書2024」では、2022年度の開業率が3.9%、廃業率が3.3%と報告されており、企業の入れ替わりは常に起きていることが分かります。
出典:経済産業省|令和6年度大学発ベンチャー実態等調査
 中小企業庁|2024年版「中小企業白書」
実際の成功率はどう評価すべきか
一部界隈では「起業家の失敗率は90%以上」という話もありますが、学生起業家だった人の多くは、何らかの形で平均以上の経済力を得ているという実態もあります。
重要なのは、「廃業=失敗」という単純な図式ではないことです。多くの学生起業家は複数の事業に挑戦し、経験を積みながらキャリアを築いています。
出典:学生起業関連調査レポート
海外との比較から見る日本の特徴
起業活動指数の国際比較では、日本は低位であり、「身近に起業した人を知っているか」という質問では、日本は14%と先進国平均30.9%の約半分となっています。このような環境の中で、学生起業に挑戦すること自体が貴重な経験となっています。
学生起業の成功事例
学生時代に起業し、現在も成功を続けている企業家たちの具体的な事例を通じて、成功パターンを分析します。
ITサービス分野での成功事例
BASE株式会社の鶴岡裕太氏
ECサイト作成サービス「BASE」を展開するBASE株式会社の創業者である鶴岡裕太氏は、大学生の時に同社を設立しました。現在、BASEは多くの個人事業主や小規模事業者に利用される主要なECプラットフォームに成長しています。
dely株式会社の堀江裕介氏
レシピ動画サービス「クラシル」を運営するdely株式会社の堀江裕介氏は、2014年に学生起業し、同サービスを有名なレシピ動画プラットフォームに育て上げました。
Progate創業者の加藤將倫氏
東京大学在学中にオンラインプログラミング学習サービス「Progate」を創業した加藤將倫氏は、2018年3月にはForbes 30 Under 30 ASIAに選出されました。
歴史的な成功事例
ソフトバンクグループの孫正義氏
大学在学中に音声装置付きの多国語翻訳機の試作機を作り、シャープに直談判して売り込み、1億円の融資を受けた経験があります。その後、ソフトバンクの前身となる「ユニソン・ワールド」を立ち上げ、現在の巨大企業グループの礎を築きました。
マイクロソフトのビル・ゲイツ氏
世界で一番のお金持ちとして有名なマイクロソフト社創業者のビル・ゲイツは、学生の頃に起業し成功を収めています。
学生起業の成功率を上げるポイント
成功した学生起業家に共通する要素や戦略について、具体的な事例をもとに分析します。
1. プロダクトファーストの戦略
Progate創業者の加藤將倫氏は「めちゃくちゃプロダクトを磨き込むというフェーズを最初に持ってきたのは個人的に良かった」と述べており、営業リソースをかけずに伸びていった要因をプロダクトの評価にあるとしています。
2. 大学のリソース活用
大学によっては学生の起業に対してさまざまな支援を行っており、相談窓口を開いて起業や経営のアドバイスを行ったり、インキュベーション施設を運営したりしています。
3. 同世代のニーズを深く理解
学生起業家の周囲には学生が多いため、ニーズや市場調査をする機会が多いことが特徴であり、大学生が大学生向けのビジネスをするのであれば、学生起業にはかなりの強みがあります。
4. チームとネットワークの構築
学友や先輩後輩のつながりから優秀な仲間を得たり、起業家コミュニティでメンター支援を受けられる環境が成功を後押しします。人脈形成のメリットは学生起業の大きな強みの一つです。
5. 低リスクでの挑戦
学生で家族を養っている人は非常に少ないため、資金面を考えた場合のリスクも社会人に比べて低くなります。また、失敗したとしても就職という選択肢も残されているため、挑戦しやすい環境にあります。
学生起業の失敗しがちなポイント
失敗した学生起業の共通パターンを分析し、回避すべき落とし穴を明確にします。
1. 計画性の欠如
学生が起業する際に一番やってはいけないのが「なんとなく起業」であり、「学生のうちに起業とかかっこよくない?」「とりあえず起業してみればいいんじゃない?」というノリでの起業は絶対にやめるべきだとされています。
2. 資金調達の甘い見積もり
日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、一般的な会社の開業資金の平均は1,027万円、中央値で550万円となっており、学生がアルバイトで稼げる金額との大きなギャップがあります。補助金や助成金を当てにして起業した場合、補助金や助成金をもらうことができなかったという状態に陥りかねません。
3. 共同創業者との関係性問題
学生起業では、同じく在学中の友達と共同で会社を立ち上げるケースが多くありますが、仕事をしていく中で価値観・方向性・理念などにズレが生じ、意見もまとまらなくなって起業が失敗に終わってしまうことがあります。
4. 独自性の不足
学生起業を行ったとしてもうまく利益を上げられず失敗する人の共通点として、独自性のなさが挙げられます。成功者のやり方をなぞって起業しても、すでに存在するビジネスモデルということもあり競合が多くなります。
5. 経験不足からくる柔軟性の欠如
学生起業で失敗してしまう人には、柔軟性がなく一度決めてしまうと臨機応変な対応ができない人も多くいます。起業では予期せぬトラブルが発生することもあり、万が一トラブルが生じた時は、状況を冷静に判断し柔軟な対応をとらなくてはいけません。
6. 他責マインドの問題
学生起業で失敗してしまう人の多くは自責マインドではなく、他責マインドを持っていることがあります。他責マインドは何かトラブルが生じても人のせいにしてしまいますが、起業においてそのような言い訳は通用しません。
学生起業の成功率が上がる社会に
成功のカギは、勢いだけでなく冷静な分析力、独自性のあるアイデア、そして継続的な学習姿勢にあります。また、大学や公的機関の支援制度が充実してきており、学生起業にとって追い風となる環境も整いつつあります。
重要なのは、「起業すること」を目標にするのではなく、「どのような価値を社会に提供するか」を明確にすることです。この視点を持ち続けることができれば、たとえ一度の起業が思うような結果にならなくても、その経験は必ず次のステップへの貴重な資産となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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