• 作成日 : 2025年7月18日

女性の起業成功例を紹介|今すぐ始めるための準備や支援制度も解説

これから起業を考えている女性にとって、実際に成功している女性起業家の事例は大きなヒントになります。本記事では日本国内の女性の起業成功例を紹介します。事業のきっかけや成長の工夫、公的支援の活用方法に加え、起業前に押さえておきたい準備や相談先も解説します。

成功する女性起業家の特徴は?

日本国内の女性起業家たちの成功例を見ていくと、業種や規模を問わず、いくつかの共通した特徴が見えてきます。共通点はビジネススキルにとどまらず、考え方や姿勢、準備の進め方にも及びます。ここでは、成果を上げている女性起業家たちに共通する特徴を解説します。

社会課題や自分の経験に根ざした発想

成功している女性起業家の多くは、自分の人生経験や身近な課題を出発点としてビジネスを立ち上げています。たとえば保育園不足に悩んだ母親が自ら保育事業を始めたり、柔軟な働き方を模索する中でマッチングサービスを構築したりといったように、ニーズを実感しているからこそ、サービスの方向性がぶれません。自分の中から湧き出た動機をビジネスに転化している点が、共感を得るサービスの土台になっています。課題の実感があるため、粘り強く事業に取り組む姿勢にもつながります。

無理なく始めて、持続可能性を重視する

女性の起業は、いきなり多額の投資をせず、手持ちのリソースで始める傾向が強いのが特徴です。副業からスタートし、検証と改善を繰り返しながら本格展開へ進めるケースが多く見られます。このような段階的な展開は、資金面だけでなく心理的ハードルの軽減にもつながり、失敗のリスクを抑えながら着実な成長を図る土台となっています。また、長く続けられる働き方を意識し、利益だけでなく働き手の幸福や生活リズムとの調和を大切にする点も特徴的です。

参考:「女性起業のトレンド」選択と集中が大切、やらないことを決める勇気も

公的支援や人脈形成を積極的に活用する

成功事例の多くでは、自治体や中小企業支援機関によるビジネスプランコンテスト、創業支援セミナー、日本政策金融公庫の融資などを賢く活用しています。また、女性起業家ネットワークや起業コミュニティに積極的に参加し、相談できる人脈を築いていることも共通している特徴です。孤立せず、必要な場面でアドバイスを受けられる関係を築くことが、判断力の向上と事業継続の後押しになっています。持続可能な経営には社会とのつながりを持つ姿勢が必要です。

女性の起業成功例(1):郊外シェアオフィス事業「Trist」

千葉県流山市発の「Trist(トリスト)」は、働く人々にとって暮らしと仕事のバランスを保ちやすい環境を提供する郊外型シェアオフィス事業です。代表の尾崎えり子さんが立ち上げたこの取り組みは、地域密着型の働き方を実現し、企業と働き手の双方から評価を得ました。その後、コロナ禍のテレワーク推進によって地域に根差して働ける場所が増えたことで、Tristは2022年に事業を終了しました。

起業のきっかけと地域ニーズへの対応

2016年にTristを立ち上げた尾崎さんは、子育て中に都市部への長時間通勤に課題を感じ、自宅近郊で働ける環境の必要性を強く実感しました。多くの家庭では育児や介護と仕事の両立が大きな負担となっており、「もっと柔軟に働ける場所があれば、多くの人がキャリアをあきらめずに済むのではないか」と考えたことが起業の原動力となりました。

当時の日本社会では「働く=会社への通勤」という前提が強く根付いており、郊外の住宅地に職場を作るという発想は斬新でした。しかし、地域で働きたいという声は確実に存在しており、それに応える形でTristの構想が生まれました。尾崎さんは流山市や周辺自治体と連携し、空き物件の活用や情報提供を受けながらシェアオフィスの開設に至りました。さらに流山市の創業補助金なども活用することで、専門的な知識やネットワークを得て、事業基盤を整えていきました。

開業初期から地域メディアや行政広報に取り上げられたこともあり、利用希望者や企業の関心が高まりました。郊外で働きたいという潜在的なニーズが可視化されたことで、社会的意義のある事業としての評価が高まりました。

経営の工夫とサービスの方向性

Tristの経営において、最も注目すべき工夫の一つが「選択と集中」の戦略です。たとえば、利用者からは託児サービスの設置を求める声もありましたが、尾崎さんはそれを導入しない決断をしました。その理由は、経営資源を自らの得意分野である法人営業とオフィス運営に集中させるためです。

保育サービスは人手や資格が必要な分野であり、品質を維持するには大きな投資が伴います。そのため、無理に手を広げず、主力事業に専念する判断を下しました。この選択が結果的に功を奏し、少人数でも質の高いサービス提供が可能となり、顧客からの高い評価につながっています。

Tristでは、オフィス空間の清潔さや使いやすさ、ICT環境の整備、そして企業担当者への丁寧なヒアリングを重視し、顧客一人ひとりのニーズに対応しています。こうした細やかな運営体制により、郊外で働きたいという働き手の期待に応え、契約企業数も年々増加しました。

女性起業家としての視点と今後の展望

尾崎さんの事業は、女性ならではの生活への観点や共感力を強みに転換した点でも特筆に値します。子育てとキャリアの両立という視点を軸に、地域に根ざした働き方を提案したことが、多くの共感と支持を得る理由となっています。郊外の就労支援という取り組みは、人口減少・高齢化が進む地域社会において、持続可能な地域活性化の手段としても期待されています。

参考:シェアオフィス事業(Trist)
参考:「株式会社新閃力」千葉県流山市でシェアサテライトオフィスを運営 | 女性起業家応援ページ
参考:Model10流山市 株式会社 新閃力 代表取締役 尾崎 えり子 | ちば起業家応援事業

女性の起業成功例(2):働く女性向けアパレルブランド「kay me」

働く女性の悩みを解決するアパレルブランドとして生まれた「kay me(ケイミー)」は、実用性とデザイン性を兼ね備えた商品展開により支持を集めています。創業者の毛見純子さんが、自身の経験を起点に市場を開拓し、着実にブランドを成長させた成功例です。

起業の動機と社会的背景

kay meを創業した毛見純子さんは、祖母の影響で幼い頃から起業への関心を持ち、外資系コンサルティング会社での経験を経て、「働く女性の不満を解消する服を作りたい」という想いを抱くようになりました。東日本大震災をきっかけに、自身の使命を形にしようと決意しました。2011年、「一瞬で華やか、ずっとラク」をコンセプトに、長時間着ても疲れにくく自宅で洗えるワンピースの開発に乗り出しました。こうした実体験に基づく商品企画が、多くの共感を呼んでいます。

商品設計とブランド戦略

kay meの最大の特長は、ジャージー素材を用いた高機能なビジネスウェアです。国内の職人による丁寧な縫製と、日本人女性の体型に合った設計が、品質と快適さを両立させています。加えて、オンライン販売と都心の直営店を組み合わせることで、忙しい女性でもアクセスしやすい販売網を実現しました。さらに、英語対応の公式サイトを活用し、海外市場への展開も積極的に行っています。こうした多角的な戦略が、短期間での成長を支えました。

公的支援の活用と成長の加速

起業後まもなく、毛見さんは日本政策投資銀行(DBJ)が主催する「女性新ビジネスプランコンペティション」に応募。2016年にはDBJ女性起業大賞を受賞し、1,000万円の投資枠を獲得しました。この資金は、商品開発やマーケティング強化、企業連携に大きく寄与しました。公的支援を積極的に活用しながら、kay meはブランド力を高め、今では日本を代表する女性起業家ブランドの一つとして広く知られています。

参考:kay me
参考:kay me 毛見 純子 氏|東京都創業NETインタビュー
参考:「一瞬で華やか、ずっとラク」な服を、ハードに働く女性のために――kay me毛見純子さん(前編) | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン)

女性の起業成功例(3):ぬいぐるみ旅行代理店「ウナギトラベル」

「旅をするのはぬいぐるみ」。そんな独自の発想から生まれたウナギトラベルは、ぬいぐるみ専門の旅行代理店というユニークなサービスを展開し、国内外から高い注目を集めています。創業者・東園絵(あずま そのえ)さんの柔軟な着眼点と行動力は、国内外から称賛されています。

起業の原点は「癒やし」と「冒険」への共感

東さんは、かつて銀行員として働いていましたが、「人の心を動かす仕事がしたい」との思いから転身を決意。2010年、世界でも珍しいぬいぐるみ旅行専門会社「ウナギトラベル」を創業しました。サービスは、依頼主から預かったぬいぐるみを観光地に連れて行き、旅の様子を写真に収め、SNSで共有するというものです。

この取り組みは、旅行が難しい高齢者や病気療養中の人、育児や仕事に追われる人、さらには海外のぬいぐるみファンにも支持されました。「自分の分身であるぬいぐるみが旅をする」ことで得られる感動は、サービスを超えた体験となっています。

サービスの意義と社会的影響

ウナギトラベルのモットーは「誰にでもアドベンチャーを」。東さんは、旅に出たくても出られない人に小さな冒険を届けることで、その人の心や日常に変化を起こしたいと考えています。

ぬいぐるみが旅する様子を見ることで、利用者は喜びや癒やしを感じ、自分自身も前向きになれるといいます。実際、利用者からは「生きる楽しみが増えた」「ぬいぐるみが帰ってきたときに涙が出た」といった声も届いています。このサービスは、エンターテインメントとしてだけでなく、精神的なケアの側面でも高く評価されています。

連携と資金調達による事業展開

事業を軌道に乗せる過程で、東さんは企業や自治体とのコラボレーションに積極的に取り組みました。たとえば、自治体と連携して地域観光地をめぐるツアーを企画したり、企業の工場見学をぬいぐるみに体験させるといったユニークなプロモーションを多数実現。

また、クラウドファンディングを活用して海外遠征の資金を集めるなど、資金面の工夫も積極的に行っています。利用者が増える中で、柔軟な企画力と資金調達力が成長の鍵となりました。

こうした取り組みは、サービスの幅を広げただけでなく、地域活性化にもつながり、行政や企業にとっても新たな価値を生む機会となっています。

参考:ウナギトラベル
参考:第1回 私の代わりに旅をして
参考:NTTクラルティ広報誌[クラルテ] Vol.2

成功例に学ぶ起業準備のポイント

起業を目指す多くの女性にとって、最も不安なのが「何から始めればよいか分からない」という点です。成功例に共通するのは、偶然の成功ではなく、事前の準備を着実に積み上げていたことです。ここでは、成功者の行動をもとに、起業前に踏むべき3つのステップを紹介します。

ステップ1:課題を洗い出し、事業の「核」を明文化する

まず重要なのは、自分が「なぜこの事業をやるのか」を明確にすることです。成功した起業家たちは、生活の中で感じた不満や課題、自分の原体験を丁寧に掘り下げ、そこから事業のテーマを設定しています。

この段階では、ノートにアイデアを書き出し、「誰に」「何を」「どんな価値で」提供するのかを言語化していきます。さらに、同様の課題を抱える人がどのくらいいるか、簡単な市場調査やヒアリングを通してニーズを確かめることも重要です。単なるアイデアにとどめず、「人に説明できる言葉」にすることで、次のステップに進みやすくなります。

ステップ2:スモールスタートに向けた実行計画を立てる

事業の方向性が定まったら、すぐに大きな投資をするのではなく、できる範囲で始められる方法を具体的に検討します。成功事例では、多くの女性起業家が自宅で始められる形態を選び、副業として運営しながらサービスをテストしています。

この段階では、以下のような要素を簡単な事業計画書にまとめておくと効果的です。

  • 初期費用と運転資金の見積もり
  • 目標とする顧客層の明確化
  • 集客方法(SNS活用や口コミ施策など)
  • スケジュールと業務の優先順位

無理のない形で実行できる計画を立てることで、途中で挫折するリスクが下がり、少ないコストで効果的な検証が可能になります。

ステップ3:創業支援制度と相談機関を活用する

起業準備を進める中で、資金調達や手続き、販路開拓などに不安を感じる場面は少なくありません。そこで活用すべきなのが、公的機関や民間支援団体による創業支援制度です。

たとえば、地域の商工会議所や中小企業支援センターでは、無料で創業相談に乗ってもらえる窓口があります。女性起業家向けのビジネスプランコンテスト、創業補助金、融資制度も年々充実しています。

事業計画書や資金繰り表などを用意して専門家に相談することで、計画の弱点が明らかになり、改善の糸口が得られます。孤立せず、支援ネットワークを早期に築くことが、安定した起業につながります。

女性の起業に関する支援制度・相談サービス

起業を目指す女性にとって、専門的な支援やアドバイスを受けられる相談窓口の存在は非常に心強いものです。日本各地には、女性の起業を対象とした公的な支援機関や情報提供サービスが整備されています。ここでは、代表的な3つの相談先・支援制度を紹介します。

日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」

日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は、政府系金融機関として創業時の融資制度を提供しています。なかでも「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性が新たに事業を始める際に利用できる代表的な制度です。

対象となるのは、新たに事業を開始する女性や、開始後おおむね7年以内の事業者。無担保・無保証人でも利用できる場合があり、資金面でのハードルを下げる仕組みが整っています。

融資申請に際しては、創業計画書の提出が必要であり、地域の日本公庫支店にて事前相談が可能です。相談では、事業内容や資金繰り、収支見通しなどを専門担当者が一つひとつ丁寧にヒアリングし、実現可能な資金調達を支援してくれます。

参考:新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)

全国商工会議所・商工会による「創業支援窓口」

各地域の商工会議所および商工会は、起業に関する無料相談窓口を常設しており、女性起業家の支援にも積極的です。創業計画の策定から、税務、経理、販路開拓まで、幅広い相談に対応しています。

たとえば、東京都内の商工会議所では「創業ゼミナール」や女性向けの起業セミナーが定期的に開催され、経験豊富な中小企業診断士などの専門家に直接相談することが可能です。

地方自治体とも連携して補助金・助成金の案内も行っており、相談者の状況に応じた支援策を紹介してくれます。また、ネットワークを通じて先輩起業家とのマッチング支援を受けることもでき、事業立ち上げ初期の孤立感を和らげる環境が整っています。

参考:創業支援・起業支援 | 経営相談 |東京商工会議所

中小企業基盤整備機構「J-Net21」女性起業家応援ページ

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」は、起業や経営に関する情報を体系的に提供する公的サイトです。なかでも「女性起業家応援ページ」では、全国各地の女性起業家インタビュー、支援事例、公的機関の支援制度などがまとめられており、信頼性の高い情報を得ることができます。

J-Net21ではまた、各地の支援団体やセミナー情報、補助金・助成金の検索機能も充実しており、自分に合った支援策を探すのに非常に便利です。

情報収集だけでなく、専門家派遣制度などの紹介もあり、実務的な支援と合わせてオンライン上で起業準備を進めたい方にも適したサービスとなっています。起業の初期段階で「どこから始めてよいか分からない」という方にとって、最初にアクセスすべきサイトの一つです。

参考:女性起業家応援ページ | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

経験を出発点に起業に踏み出そう

起業に成功している女性たちは、自分自身の経験や課題を出発点に、共感を生むビジネスを築いています。大きな資金がなくても、小さく始めて徐々に育てる方法で、安定的な成長を実現していることが特徴です。さらに、公的支援や相談窓口を活用することで、一人では難しい課題も乗り越える力を得ています。小さな気づきや疑問も、十分に起業のタネになります。焦らず、確実に一歩を踏み出す準備を始めてみてください。


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