- 更新日 : 2025年3月21日
鍼灸院の事業計画書とは?テンプレートをもとに書き方を解説
鍼灸院を開業する際は、事業計画書の作成が必要です。事業計画書は融資を受ける際に必要になるほか、治療理念や開業の目的を明確にして、事業の成功に向けてモチベーションを高める役割があります。
本記事では、鍼灸院における事業計画書を作成する目的や書き方について解説します。無料テンプレートも紹介しますので、ぜひチェックしてください。
目次
鍼灸院の開業時に作る事業計画書とは
鍼灸院を開業する際は、事業計画書の作成が欠かせません。事業計画書を作成する目的は、次のとおりです。
- 開業の目的や治療理念を明確にする
- 事業の目標を設定する
- リスク管理をする
- 融資を受ける
事業計画書は、開業の目的や治療理念を明確にするために必要な書類です。治療理念を形にすることで、事業を進めるモチベーションを高められます。
鍼灸院の運営では、具体的な目標設定も必要です。事業計画書には具体的な目標と戦略を記載するため、目標達成に向けて指針を立てられます。
事業計画書の作成では、潜在的なリスクをあぶりだすことも可能です。リスクを事前に把握できれば、適切な対策を立てられるでしょう。
また、開業時には多くの資金が必要になり、融資を受ける際は事業計画書が求められます。審査に通るためには、具体的で説得力のあるビジネスプランを示すことが必要です。
鍼灸院の事業計画書の書き方・記入例
鍼灸院の事業計画書は、項目ごとにポイントを押さえた記載が必要です。
ここでは、鍼灸院の事業計画書の書き方・記入例を紹介します。
創業動機・目的
まず、鍼灸院を開業する動機、目的を記載します。治療理念や事業の目標、ビジョンなどをまとめましょう。
事業を円滑に進めていく上で重要な項目であり、審査の担当者が具体的にイメージできるように記載することが大切です。
(記入例)
専門学校を卒業後、業界で11年の経験があります。直近では店長を3年間経験していました。鍼灸院の運営に携わるなかで、より自分の信念を治療に反映し、顧客のニーズに合った鍼灸院を開業したいと考えるようになりました。独立開業を決めてから立地条件の良い物件を探していましたが、よくやく希望に合う物件が見つかったため、開業することを決めた次第です。
職歴・事業実績
鍼灸に関するこれまでの職歴・事業実績を記載する項目です。これまでの経験・実績により、事業を円滑に進められることをアピールします。職務経歴書と同じ書き方で、簡潔にわかりやすく記載することが大切です。
記入例
平成〇年〇月 〇〇専門学校卒業(「はり師」「きゅう師」の国家資格を取得)
平成〇年〇月 〇〇鍼灸院 入社(8年)
(施術、売上管理などに従事)
令和〇年〇月 〇〇鍼灸院 店長就任(3年)
令和〇年〇月 個人事業主として開業予定
取扱商品・サービス
鍼灸院で取り扱う商品・サービスを記載する項目です。商品・サービスの内容のほか、「セールスポイント」「販売ターゲット・販売戦略」「競合・市場など企業を取り巻く状況」について記載します。
事業のコンセプトや他店との違いを明確にし、事業の強みをアピールしましょう。
鍼灸院が提供する商品・サービスには、主に次の内容があげられます。
- 一般鍼灸治療
- スポーツ鍼灸
- 温灸治療
- 美容鍼
- 鍼灸用品・機器の販売
(記入例)
保険診療(健康保険、自賠責保険、労災等):売上シェア70%
自費診療:売上シェア30%
「セールスポイント」には、メニュー内容や他店と異なる独自性を記載します。
「販売ターゲット・販売戦略」は、ターゲットの属性やターゲットに合わせた販促方法を記載する項目です。
「競合・市場など企業を取り巻く状況」は、商圏での市場規模の推定や他店のメニュー内容や価格帯、立地や営業時間などとの比較を記載してください。
取引先・取引関係
取引先や仕入れ先を記載する項目です。取引先(販売先)は、来院する顧客について記載します。
仕入れ先は、医療機器・鍼灸用品などの仕入れ業者を書き、取引関係として広告業者、医療提携先なども記載します。
記入例
販売先:一般個人(保険診療)70%
一般個人(自費診療)30%
仕入れ先: 〇〇株式会社 掛取引〇% 〇日〆〇日回収
外注先: 〇〇広告代理店 掛取引〇% 〇日〆〇日回収
従業員
運営体制を記載する項目です。経営者を含めて、店舗運営に何人必要かを記載します。鍼灸院を運営するのに何人の従業員が必要かは、あらかじめよく検討しておくことが大切です。
人件費と関係するため、収益と合わせて計画を立てましょう。
従業員を雇用する場合は、受付やアシスタントなどがそれぞれ何人かを記載してください。
(記入例)
常勤役員:0人
従業員:2人 うち家族従業員(受付)1人
うちパート従業員(アシスタント)1人
借入の状況
現在の借入状況を記載する項目です。事業に関係のない住宅ローンなども含め、現在利用しているすべての借入金額を記載してください。
審査の際、担当者は借入状況から返済の負担を判断し、融資が可能かどうかを検討します。
(記入例)
借入先名 | 使いみち | 借入残高 | 年間返済額 |
---|---|---|---|
〇〇銀行 | 住宅 | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
〇〇ローン | 車 | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
必要な資金と調達方法
開業に必要な資金の金額と、その調達方法を記載する項目です。ここで具体的な借入希望額と用途を伝えます。
概算を書くのではなく、具体的に何にどのくらいの金額が必要なのか、そのうち自己資金で賄えている範囲はいくらなのかを記載してください。自己資金は、全体の1/3〜1/4程度を用意するのが理想です。
(記入例)
必要な資金 | 見積先 | 金額 | 調達方法 | 金額 | |
---|---|---|---|---|---|
設備資金 | 保証金 店舗内装 ベッド | 〇〇株式会社 〇〇株式会社 〇〇株式会社 | 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 | 自己資金 親からの借入 日本政策金融公庫からの借入 他金融機関からの借入 | 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 |
運転資金 | 家賃 光熱費 人件費 備品購入 | 〇〇万円 | |||
合計 | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
事業の見通し
事業の見通しは、収益が上がる見通しがあることを伝える項目です。金融機関の担当者は、この項目から収益が確保できて返済能力があることを見極めます。そのため、十分な収益の見込みがあり、返済に問題がないことを伝えなければなりません。
できるだけ具体的な数字で、十分な利益を確保し、返済できることを伝えることが大切です。
(記入例)
創業当初 | 軌道に乗った後 | 計算の根拠 | |
---|---|---|---|
売上高 | 〇〇万円 | 〇〇万円 | 【創業当初】 売上高〇〇円 保険診療〇〇円 自費診療〇〇円 【軌道に乗った後】 売上高〇〇円 保険診療〇〇円 自費診療〇〇円 |
売上原価 | 〇〇万円 | 〇〇万円 | |
経費 | 家賃 〇〇万円 人件費 〇〇万円 支払利息 〇〇万円 その他 〇〇万円 | 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 〇〇万円 | |
利益(売上高−売上原価−経費) | 〇〇万円 | 〇〇万円 |
鍼灸院の事業計画書に使える無料テンプレート
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鍼灸院の開業を成功に導く事業計画書のポイント
鍼灸院の事業計画書を書く際は、次の2点に注意が必要です。
- 専門用語を使わない
- 鍼灸院の強みやコンセプトを伝える
ここでは、鍼灸院の開業を成功させるための事業計画書のポイントを解説します。
専門用語を使わない
融資の際に事業計画書を提出する場合、読むのは金融機関の担当者です。担当者は鍼灸院の治療や施術に関して詳しくないため、専門用語を使うのは避けましょう。
自分にとっては常識になっている言葉でも、ほかの人には専門的でわからない可能性があります。誰が読んでもわかるように作成することを心がけてください。
できるだけわかりやすく簡潔に、質問などの必要がないように作成することがスムーズに審査を進めるポイントです。
鍼灸院の強みやコンセプトを伝える
鍼灸院の事業計画書は、全体を通して強みやコンセプトを伝えることがポイントです。他店と差別化できる独自の施術など、顧客を確保できる根拠を具体的に示しましょう。収益や集客の見込みは、説得力を持たせるため、実現可能で具体的な数字で示すことが大切です。
また、事業計画書の内容は一貫性を持たせ、強みやコンセプトを口頭でも説明できるようにしておきましょう。
鍼灸院を開業するときの資金調達方法
鍼灸院を開業するときは、テナント費や設備費用、運転資金などに1,000万円程度の資金が必要です。自己資金で賄えない部分の調達には、次の方法があげられます。
- 日本政策金融公庫や金融機関から融資を受ける
- 自治体から融資や助成金・補助金を受ける
- 親族や友人から資金を借りる
このうち、高額な資金を調達するときは、融資を受けるのが一般的です。事業の実績がない開業時は金融機関からの融資は難しく、日本政策金融公庫を利用するケースが多いでしょう。連帯保証人や担保が不要になる可能性があり、長期間かつ低金利で融資が受けられるため、多くの人が利用しています。
鍼灸院の事業計画書はお店の強みをアピールしよう
鍼灸院を開業する際に資金の融資を受ける際は、事業計画書の作成が必要です。事業計画書の作成は融資を受けるためだけでなく、治療理念やビジョンを明確にするためにも欠かせません。
記載項目は多岐にわたりますが、全体を通してお店の強みをアピールし、他店にはない特色や収益の見込みを具体的な数字で示すことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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