- 更新日 : 2024年10月9日
事業的規模でない不動産所得がある場合も開業届の提出が必要?
不動産等の貸付けによる所得は、不動産所得となります。その貸付けが「事業」として行われているか否かによって所得の計算の仕方が異なるものの、いずれも開業届の提出が必要です。しかし、事業的規模でない不動産所得の場合、開業届の提出要否は迷いどころです。この記事では「事業的規模でない不動産所得」について、開業届との関係を考えていきます。
目次
事業的規模でない不動産所得がある場合も開業届は必要?
不動産所得には「事業的規模の不動産所得」と「事業的規模でない不動産所得」があります。結論として、どちらの不動産所得であっても「不動産所得」に変わりはないため、不動産所得を生ずる事業を開始した場合には開業届が必要です。
そもそも開業届とは?
開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業届出書」と言います。この届出書は、新たに事業所得、不動産所得、山林所得となる事業を開始した場合、開始日から1カ月以内に税務署に提出することとなっています。
所得税法において開業届は、「提出しなければならない」とされているため、不動産所得となる事業を開始した場合には忘れずに提出しましょう。
開業届の提出の際には、以下の2点が必要です。
- 個人番号(マイナンバー)の記載
- 本人確認書類の提示(または写しの添付)
税務署窓口に持参するほか、郵送やe-Taxでも提出できます。
なお、開業届は事業の事務所等を新設、増設、移転、廃止したとき、事業そのものを廃止したときにも提出すべきとなっています。開業のとき以外にも注意しましょう。
事業的規模でない不動産所得とは?
所得税法の考え方では、不動産貸付業においては事業所得でなく、不動産所得が生じるとされています。これは貸付けをする不動産の「資産性」に着目したものと考えられます。
一方で不動産の貸付けを大規模に行う場合には「事業性」を認めており、不動産所得を次のように区分しています。
不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10 室以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
引用:No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁
つまり、「事業的規模の不動産所得」と「事業的規模でない不動産所得」は社会通念上の実質で判断するのを原則とするも、建物の貸付けについて、事業的規模については「貸間やアパートは10室以上、戸建は5棟以上」という客観的な基準を設けているということです。
事業的規模でなくても開業届を提出すべき?
「事業的規模の不動産所得」と「事業的規模でない不動産所得」は、どちらも不動産所得のため、どちらの場合においても開業届は必要です。
所得税法第26条で「不動産所得」とは、以下の「貸付け」による所得で、事業所得または譲渡所得に該当するものを除くとされています。
- 不動産
- 不動産の上に存する権利
- 船舶または航空機
したがって、建物の貸付けに留まらず、個人が借地権、地上権などの土地に関する権利、船舶や航空機などを保有していて、それらを貸付けて事業としている場合には「不動産所得」となり、開業届が必要となります。
事業的規模でない不動産所得がある場合の開業届の書き方は?
事業的規模であろうがなかろうが、開業届の提出は必要です。開業届そのものには事業的規模かどうかを明記する欄はないため、書類上からは事業的規模については分かりません。ここでは、迷うことが多い職業欄と屋号について解説します。
職業欄の書き方
開業届の上部には「職業欄」、下部には「事業の概要欄」があります。事業的規模でない不動産所得であっても、上部の職業欄は「不動産賃貸業」「不動産貸付業」などと簡潔に記載すればよいでしょう。
下部の事業の概要欄には、具体的な業務内容を説明するようになっています。こちらに「事業的規模でない不動産貸付業」などとは書けるものの、特に推奨されている訳ではありません。事業的規模にこだわるよりも、具体的に「空き部屋5室と駐車場5区画を賃貸している」などのように実態を捉えやすく記載しましょう。
屋号の書き方
屋号は個人事業主の事業上の名称のことであり、開業届への記載は任意です。したがって、事業的規模でない不動産所得に該当する場合には、屋号は空欄でも問題ないと言えます。途中で屋号を付けることにした場合、開業届を出しなおすのではなく確定申告書の屋号欄に記載すればよいでしょう。
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