- 作成日 : 2022年10月22日
会社設立の費用を仕訳する方法とは?必要な会計処理を解説
会社を設立する際には、設立登記のための登録免許税や定款作成のための手数料など、さまざまな費用が発生します。これらの費用はどのように仕訳するのが適切なのでしょうか。この記事では、株式会社を例に、会社設立時の費用や資本金の払込みに関する仕訳について解説していきます。
目次
会社設立費用の仕訳に必要な勘定科目
会社を設立するにあたり、開業に伴うさまざまな費用の発生と支出が想定されます。会社の取引内容を記録する簿記もスタートしなければなりません。
しかし、会社設立時の費用を事細かに勘定科目に振り分けて仕訳するとなると、大変な労力がかかってしまいます。また、経常的に発生する支出と異なり、会社設立時の支出は特殊です。そのため、会社設立前後の費用に関しては、「創立費」や「開業費」の勘定科目を使って仕訳をすることになっています。
創立費
創立費とは、会社設立のために、設立登記前や設立登記時に要した費用をいいます。創立費に含まれるのは、定款作成のための代行手数料、定款の認証手数料、設立登記のための印紙代や登録免許税などの費用です。
開業費
開業費とは、会社設立後から営業を始めるまでの開業準備にかかった費用を指します。開業費に含まれるのは、会社のホームページ作成費用、看板の作製費、開業までの関係先への接待交際費などです。
開業に伴うさまざまな費用を「開業費」にできますが、資産計上が必要な取得価額10万円以上の資産、将来的に返還される敷金や保証金、経常的な費用は開業費には含められません。経常的な費用とは、商品の仕入高、事務所の水道光熱費、通信費、土地や建物の賃借料など、開業後も継続的に発生するような費用を指します。
創立費や開業費についてはこちらの記事で詳細を解説していますので参照ください。
会社設立時の払込みに対応する勘定科目
会社設立の費用に関わる勘定科目について説明しましたが、費用を支払うためには会社で使える資金を用意しておく必要があります。会社設立時には発起人が出資金の払込みを行いますが、このとき、会社に出資金が払い込まれたという仕訳が必要です。出資に関しては、「資本金」や「資本準備金」といった勘定科目が使用されます。
資本金
資本金は、会社の所有者である株主(設立時は発起人)などが出資金として会社に払い込んだ額を指します。事業を始めるためにはさまざまな設備投資や開業準備が必要となることから、会社設立時、発起人は事業の元手として資本金を払い込まなくてはなりません。通常は、会社設立時に払い込まれた額の全額が「資本金」となります。
資本準備金
資本準備金とは、株主などから出資を受けた金額のうち、資本金に組み入れなかった残額などを指します。払込額の2分の1を超えない金額については、資本準備金とすることが可能です。
会社設立に必要な費用と対応する勘定科目
会社設立のためには、設立登記に伴いさまざまな費用を支払わなくてはなりません。ここでは、会社設立に必要な費用と仕訳で使用する勘定科目について説明します。
定款用の収入印紙代
電子定款ではなく紙の定款の認証を受ける場合は、収入印紙4万円分を貼付しなければなりません。会社設立前の費用であるため、「創立費」として計上します。
公証人手数料
株式会社を設立する場合、公証人役場で定款の認証を受ける必要があります。定款認証の手数料は、資本金100万円未満で3万円、資本金100万円以上300万円未満で4万円、それ以外は5万円です。定款認証に関わる手数料は会社設立前の費用となるため、「創立費」として処理します。
登録免許税
会社設立登記の際には、登録免許税を納めなくてはなりません。登録免許税は、株式会社の場合、原則として資本金の1,000分の7(15万円未満の場合は15万円)です。会社設立時の費用にあたるため、「創立費」として処理します。
定款謄本発行費
会社設立登記では、認証を受けた定款の謄本が必要となりますので、認証時に謄本を請求するのが一般的です。謄本1枚につき250円、枚数に応じて手数料が変わってきます。こちらの定款謄本発行のための費用についても、会社設立登記の一連の流れで発生するものとなりますので、「創立費」に含めます。
行政書士や司法書士への報酬
行政書士は定款の作成から認証まで、司法書士は会社設立登記を、業として代理で行うことができます。このような専門家の手を借りて会社設立を行うこともあるでしょう。会社設立登記に関わる行政書士や司法書士への報酬も「創立費」に含めて処理します。
会社設立時に必要な仕訳の方法
ここまで、会社設立にかかる費用や勘定科目について説明してきました。それでは、これらの勘定科目を用いてどのように仕訳をすれば良いのでしょうか。ここでは、発起人が払込みを行った場合の仕訳、法人成りで資産を出資した場合の仕訳、設立にかかる費用を支出した場合の仕訳など、具体例を用いながら勘定科目ごとに会社設立時の仕訳を解説していきます。
資本金の仕訳
会社設立時には、発起人の口座に会社への出資金を払い込む必要があります。会社設立に伴い出資金を払い込んだ場合は、次のように現金預金と資本金をそれぞれ増やす仕訳を行います。
(仕訳例)
会社設立にあたり、1株1,000円1,000株分(100万円)を出資金として払い込んだ。
上の仕訳ではすべて現金で払い込んだ場合について説明しましたが、法人成りで、これまで事業用に使用していた資産を法人に移すケースもあるでしょう。法人成りで現物出資を行う場合は、次のような仕訳を行います。
(仕訳例)法人成りにあたり、土地1,000万円、建物2,000万円を現物出資した。
土地や建物など、借方の勘定科目は現物出資の資産に合わせて振り分けます。会社設立に伴う出資ですので、貸方の勘定科目「資本金」に変わりはありません。
資本準備金の仕訳
先述したように、会社法により、出資額の2分の1を超えない額については資本準備金とすることができます。
(仕訳例)
会社設立にあたり、1株1,000円1,000株分(100万円)を出資金として払い込んだ。このうち、会社法で定められている限度額を資本準備金とする。
会社法で定められている資本準備金の限度額は、出資額の2分の1ですので、ここでは半分の50万円を資本準備金とします。
創立費の仕訳
ここまで説明してきたように、会社設立登記に関わる費用は、次のように創立費として処理します。
【支出時の仕訳】
(仕訳例)定款認証の費用など、会社設立登記に関して30万円を現金で支払った。
創立費は、原則的には営業外費用となりますので、基本的に支出時の仕訳で会計処理は完了します。
ただし、創立費は繰延資産として計上することも認められます。税法上の扱いでは、繰延資産として資産に計上した場合、任意償却もしくは60カ月(5年)以内に均等償却することとされています。最大5年をかけて費用計上していくことも可能です。繰延資産に計上する場合は償却が必要ですので、事業年度末に次のような仕訳を行います。
【初年度事業年度末の仕訳(繰延資産とした場合)】
(仕訳例)当期に支出した創立費30万円を繰延資産とし、60カ月(5年)にわたって償却することとした。当期事業年度の月数は6カ月である。
(計算)300,000×6/60=30,000円
開業費の仕訳
会社設立後、開業準備に関わる費用は、次にように開業費として処理します。
【支出時の仕訳】
(仕訳例)開店準備として、ホームページ制作費や看板製作費など50万円を現金で支払った。
開業費の税法上の取り扱いは創立費と同じです。原則は営業外費用ですが、繰延資産にもできます。繰延資産とする場合は、60カ月(5年)以内に均等償却するか任意償却を行います。次のような償却の仕訳が必要です。
【初年度事業年度末の仕訳(繰延資産とした場合)】
(仕訳例)当期に支出した開業費50万円を繰延資産とし、60カ月(5年)にわたって償却することとした。当期事業年度の月数は6カ月である。
(計算)500,000×6/60=50,000円
会社設立の際は必要な仕訳の理解を深め、正しく会計処理を行いましょう!
この記事で説明してきたように、会社設立時には資本金払込みの仕訳、会社設立登記などに関わる創立費の仕訳、開店準備のための開業費の仕訳が必要になります。それぞれの勘定科目について理解を深め、正しい会計処理ができるようにしましょう。
よくある質問
会社設立に必要な費用は何がありますか?
定款の手数料や収入印紙、公証人手数料、登録免許税など会社設立登記に関わる費用が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
会社設立の仕訳に必要な勘定科目は何ですか?
出資金払込みの際には資本金や資本準備金、設立に関わる費用については開業費や創立費といった勘定科目を使用します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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