- 更新日 : 2025年10月8日
資本金、資本準備金、資本剰余金をわかりやすく解説!
資本金、資本準備金、資本剰余金は純資産に関する勘定科目として使われますが、実は何がどのように異なるのか正確に認識できていなかったり、混同したりしていませんか?
この記事では、資本金、資本準備金、資本剰余金それぞれの内容について、会社法を織り交ぜながら解説するとともに、実際の仕訳を見ながら財務会計的な側面から理解できる内容となっています。
※条文の但し書きや除外規定の一部は便宜上割愛しています。
資本金とは
資本金とは、株主が株式会社に対して払い込んだ額そのもののことです。
会社法では以下のように定義されています。
会社法第445条第1項
株式会社の資本金の額は、設立又は株式の発行に際して株主となる者が、当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
参考:会社法 第四百四十五条 (資本金の額及び準備金の額)|e-GOV
つまり、資本金は会社財産を確保するための基準となります。
また、事業規模が拡大し会社が成長すると、財務諸表で資本金が勝手に大きくなるわけではありません。会社の事業活動によって得られる利益が、資本金に直接影響を与えるわけではないためです。資本金の額を自由に減少させてはならないと定めた原則を「資本不変の原則」といい、資本の減少は、債権者保護手続きなどの厳格な手続きを経ることで認められています。
そのため、資本金の額を変更しようとする場合には、以下のような株主総会の決議が必要となります。
- 資本金の額を増加する場合 → 株主総会の普通決議
- 資本金の額を減少する場合 → 株主総会の特別決議と会社債権者保護手続き
資本金の額を増加する場合は、会社が成長し配当金の増加が見込めることから、株主総会の普通決議で事足りますが、資本金を減少する場合は、株主へ影響を及ぼすため、原則として株主総会の特別決議が必要で、厳格な手続きが要求されます。
それでは実際に資本金を使用した仕訳を見ていきましょう。
会社が新株を発行し、1,000万円の払い込みを受けた場合の仕訳は以下の通りです。
資本金についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
資本準備金とは
資本準備金とは、会社の経営において新株を発行することにより調達した出資金のうち、資本金として計上しなかった残りの金額のことです。
多くの会社は設立時に株主から資金を調達しますが、出資金の一部を資本金に、残りは資本準備金とします。資本金と資本準備金の割合は会社ごとに決められますが、資本準備金にあてることができる金額の上限は、会社法で以下のように定められています。
会社法第445条第2項
資本金の払込み又は給付に係る額の1/2を超えない額は、資本金として計上しないことができる。会社法第445条第3項
資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
参考:会社法 第四百四十五条 (資本金の額及び準備金の額)|e-GOV
つまり、株主から調達した出資金のうち半分以上を資本金に、残りを資本準備金にする必要があるのです。
また、資本準備金は法律により積み立てることが決められています。例えば、会社が新株を発行して1,000万円の払込みを受け、会社法で規定する最低限度額を資本金として計上した場合の仕訳は、以下の通りです。
資本金を大きくすれば、会社の規模が大きい印象を与えることができ、取引先の信用を得やすくなるというメリットがあります。一方で、資本金が大きくなりすぎると税金が高くなるというデメリットもあるため、注意が必要です。
資本剰余金とは
資本剰余金とは、企業が資本取引を行った結果生じる剰余金の一種で、すべての剰余金から利益剰余金を除いた部分のことをいいます。
資本剰余金は、株主に分配する配当金の源資となる点で、資本金と資本準備金とは性質が異なります。資本剰余金を源資として配当する場合、資本金や資本準備金を取り崩して資本剰余金を増額させた後、株主に配当することができます。
資本準備金の取り崩しの際にも、債権者保護手続きなど、厳格な手続きが必要です。
会社法第453条(株主に対する剰余金の配当)
株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることができる。
この条文によれば、剰余金であれば配当原資となるため、資本剰余金だけでなく利益剰余金も該当することになります。
参考:会社法 第四百五十三条 ((株主に対する剰余金の配当))|e-GOV
資本剰余金を源資とする配当の基本的な仕訳は以下の通りです。
その後、実際に株主に配当を支払ったときの仕訳は以下の通りです。
なお、一定の条件を満たした場合は、準備金を計上する必要があるため、注意しましょう。
資本金、資本準備金、資本剰余金の違いを理解しましょう
資本金の金額そのものは財務諸表上勝手に大きくなるものではなく、株主総会や取締役会の決議を経なければならないことも、会社法上で明確に規定されています。
また、会社法上は資本金が5億円以上の会社は大会社と定義づけられていますが、法人税法上は資本金が1億円以下の会社を中小企業と定義づけ、中小企業の優遇措置を受けることができるとしています。ただし、大法人の100%子会社などの場合は、中小企業の優遇税制の適用はできないため注意が必要です。
よくある質問
資本金とは?
会社財産を確保するための基準となるものです。詳しくはこちらをご覧ください。
資本準備金とは?
資本金の1/2を超えない額を準備金として積み立てておくことができるものを資本準備金といいます。詳しくはこちらをご覧ください。
資本剰余金とは?
資本剰余金は資本金と資本準備金の資本取引から生じた余りの金額のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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