• 作成日 : 2025年10月21日

コインランドリー開業の許認可は必要?手続きと届出を解説

コインランドリーの開業には、公衆衛生の観点から、保健所への届出が法律で義務付けられています。手続きを怠ると営業を開始できず、計画全体に影響が出るかもしれません。

この記事では、コインランドリー開業の許認可に関する基本的な考え方から、保健所や消防署への具体的な届出方法、土地や建物に関する法規制、開業後の注意点までをわかりやすく解説します。スムーズな開業準備のために、ぜひご活用ください。

コインランドリー開業に必要な許認可とは?

コインランドリーの開業に、特別な許可や資格は必要ないですが、クリーニング業法にもとづく保健所への届出がすべての事業者で必須となります。この届出を怠ると営業を開始できません。また、多くのコインランドリーでガス式乾燥機などの火気設備を設置するため、消防法にもとづく届出が必要になる場合があります。

なお、コインランドリーの法律上の正式名称は、「コインオペレーションクリーニング」です。「利用者が硬貨(コイン)を投入して自ら操作(オペレーション)するクリーニング施設」を意味し、行政への届出書類などではこの正式名称が使われます。クリーニング師が業務を行う一般的なクリーニング店と区別するための名称でもあります。

保健所への届け出

コインランドリーの開業には、クリーニング業法にもとづく、保健所への届け出が必要です。クリーニング業法は、洗濯施設の衛生基準や届出義務などを定めた法律です。無人のコインランドリーも、不特定多数の利用者が衣類などを洗濯する場所であるため、公衆衛生を守る観点からこの法律の規制対象となります。

参考:クリーニング業法概要|厚生労働省

消防署への届け出

多くのコインランドリーではガス式乾燥機などの火気設備を使用するため、消防法にもとづく届出や許可が必要になる場合があります。これらは火災予防の観点から定められた義務であり、店舗の安全運営に不可欠です。設備の設置や内装工事を始める前に、必ず所轄の消防署で事前相談を行いましょう。

参考:防火対象物点検報告制度|消防庁
参考:消防法|e-GOV

衛生管理責任者の設置が必要

コインランドリーの開業・運営にあたり、施設の衛生管理を担う「衛生管理責任者」を施設ごとに1名定めることが義務付けられています。これは資格ではなく役割であり、多くの場合オーナー自身がその任にあたります。

衛生管理責任者の具体的な役割は、洗濯槽の定期的な洗浄・消毒、乾燥機フィルターの清掃、洗剤や柔軟剤の管理、店内の清掃状況の確認、利用者への衛生的な利用方法の掲示など、多岐にわたります。

無人運営が基本のコインランドリーにおいて、利用者が常に清潔で安心な環境を利用できるよう維持管理する責任を明確にするために設置が求められており、開設届にも氏名を記載する必要があります。

「許認可」と「届出」の違い

「許認可」は広い意味で使われますが、行政手続きにおいて「許可」と「届出」は明確に異なります。

  • 許可:行政庁により、申請内容を審査した上で可否が判断される手続き(例:飲食店営業許可)。
  • 届出:法令で定められた必要書類を行政庁に提出する手続き。要件を満たしていれば不備がない限り受理され、営業が可能になります。

コインランドリーの開業は、この「届出」に該当します。したがって、定められた基準をきちんと満たしていれば、開業が認められないということはありません。

参考:クリーニング業法概要|厚生労働省
参考:クリーニング業法|e-Gov法令検索

コインランドリーの開業に伴う保健所への手続きの流れ

コインランドリーの開業手続きには、管轄の保健所への届出が必要です。開業前には必ず「コインオペレーションクリーニング営業施設開設届」を提出し、施設の構造や設備が基準を満たしているか、保健所の職員による現地調査を受ける必要があります。この検査に合格して初めて、営業を開始できます。この開設届は自治体の保健所ごとに専用のフォーマットが用意されていることが一般的です。

参考:コインオペレーションクリーニング|東京都多摩立川保健所

保健所への手続きの流れ

保健所への手続きは、一般的に以下の流れで進めます。開業予定日の1ヶ月~2週間前には届出を済ませられるよう、余裕をもったスケジュールを立てましょう。

  1. 事前相談
    店舗の工事図面が完成した段階で、管轄の保健所に持参し、施設の構造や設備が基準に合っているか相談します。
  2. 開設届の提出
    開業予定日の10日前ごろを目安に、必要書類を保健所に提出します。
  3. 施設検査
    保健所の担当者が店舗を訪れ、届出内容と実際の施設が一致しているか、衛生基準を満たしているかを確認します。
  4. 検査済証の交付
    問題がなければ、「検査済証」が交付されます。この済証は、店内の見やすい場所に掲示する義務があります。
  5. 営業開始
    検査済証の交付を受けて、正式に営業を開始できます。

コインオペレーションクリーニング営業施設開設届の書き方

届出の様式は自治体によって異なりますが、主に以下の内容を記載します。

  • 施設の名称、所在地
  • 開設者の氏名、住所(法人の場合は法人名、所在地、代表者氏名)
  • 施設の構造設備の概要(洗濯機・乾燥機の台数、床・壁の材質など)
  • 衛生管理責任者の氏名
  • 有機溶剤管理責任者の氏名(ドライクリーニング機を設置する場合のみ)

とくに構造設備の概要は、事前相談の際に保健所の担当者と確認した内容を正確に記入することが大切です。

衛生管理責任者の氏名の記入

衛生管理責任者は、クリーニング業法にもとづいて各施設に必ず置かなければならない衛生維持の責任者です。主な役割は、洗濯機や乾燥機の清掃・保守、店内の清掃状況の確認、利用者への衛生的な利用方法の掲示や指導などです。前述のとおり特別な資格は不要で、オーナー自身がなることが一般的です。開設届には、その氏名を記入する欄があります。

保健所の検査で確認される施設基準

施設検査では、国の指導要綱や自治体の条例にもとづき、主に以下の点が確認されます。施設の工事を始める前に、必ず管轄の保健所で詳しい基準を確認してください。

確認項目具体的な基準の例
床・壁床はコンクリートなど、清掃しやすい不浸透性の材質であること。
換気十分な換気能力を持つ換気扇などの設備があること。
採光・照明施設の照度が一定の基準(例:100ルクス以上)を満たしていること。
排水排水設備が適切に設置され、排水が逆流しない構造であること。
その他利用者への注意事項や、故障時の連絡先が明示されていること。

出典:クリーニング所の手続きについて|港区ホームページ

コインランドリー開業に伴う消防署への届出は?

多くのコインランドリーではガス式乾燥機などの火気を使用する設備を設置するため、消防法にもとづく届出が必要になる場合があります。火災予防の観点から定められた義務です。設備の設置前には、所轄の消防署に相談し、必要な手続きを確認しましょう。

火を使用する設備等の設置届出書

ガス式乾燥機やガス式給湯器など、火を使用する設備を設置する場合、「火を使用する設備等の設置届出書」の提出が必要です。これは、設置工事を始める前に、設備の仕様や設置場所を消防署に知らせるためのものです。どの設備が対象になるか、事前に消防署の予防課などに確認するとよいでしょう。

少量危険物貯蔵取扱所の設置届出

この届出は、ドライクリーニング機を設置し、引火性の高い石油系溶剤を使用する場合に関係します。消防法で定められた危険物を一定量以上(指定数量の5分の1以上、指定数量未満)貯蔵・取り扱う場合に必要となります。一般的な水洗い方式のコインランドリーでは該当しません。

消火器の設置義務について

消防法では、火を使用する設備を設置する施設には、原則として消火器の設置が義務付けられています。コインランドリーはこれに該当するため、店舗の規模に関わらず、適切な種類の消火器を設置しなければなりません。設置すべき消火器の種類や本数については、所轄の消防署の指示に従いましょう。

ドライ機設置に必要な「少量危険物」の届出

一般的なコインランドリーでは該当しませんが、もし石油系の溶剤を使用するドライクリーニング機を設置する場合は、追加の届出が必要になる可能性があります。貯蔵・取扱う溶剤の量が消防法で定める「指定数量の5分の1以上、指定数量未満」の場合、「少量危険物貯蔵取扱所設置届出書」の提出が義務付けられています。

コインランドリーの許認可で土地や建物の規制は?

見落としがちですが、どこにでもコインランドリーを開業できるわけではありません。都市計画法で定められた「用途地域」によっては、開業が制限されるエリアがあります。また、建物の構造や排水設備に関しても建築基準法などの規制をふまえる必要がありますので、物件契約前の確認が不可欠です。

用途地域の確認方法

都市計画法では、土地を住宅地、商業地、工業地など13種類の「用途地域」に分けて、建築できる建物の種類を定めています。コインランドリーは、このうち「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」などでは、原則として開業できません。物件を契約する前に、その土地の用途地域を必ず確認しましょう。用途地域は、市区町村のウェブサイトや、都市計画を担当する部署(都市計画課など)で確認できます。

建築基準法で注意すべき点

建物の安全性や衛生環境を確保する建築基準法も関係します。とくに、多数の洗濯機や乾燥機を設置する際は、その総重量が建物の床の耐荷重を超えないか必ず確認しましょう。2階以上のテナントでは、建築士などの専門家に相談することが大切です。また、大規模な内外装の変更を行う場合は、建築確認申請が必要になることもあります。

排水設備に関する規制と条例

コインランドリーからは大量の洗濯排水が出ます。下水道法や自治体の条例では、公共下水道に流せる水質基準が定められています。とくに、洗濯で出る糸くずなどが配管を詰まらせないよう、排水系統に「リントトラップ(糸くずなどを集める装置)」の設置を義務付けている自治体が多いのではないでしょうか。これも保健所の事前相談の際に確認すべき重要な項目です。

コインランドリー許認可の注意点と関連手続き

保健所や消防署への基本的な届出のほかに、実際の運営を想定した注意点や、提供するサービスに応じた追加手続きも把握しておきましょう。たとえば、衛生基準は自治体によって細かく異なる場合があり、飲料の自動販売機を置くだけでも追加の届出が求められることがあります。

自治体ごとの基準の違いを確認するには?

国の指導要綱はありますが、最終的な施設の衛生基準や届出の細かなルールは、各自治体の条例や要綱で定められています。そのため、必ず開業予定地の自治体(保健所)のウェブサイトを確認するか、直接窓口で相談することが不可欠です。「〇〇市 コインランドリー 手引き」などのキーワードで検索すると、詳しい情報が見つかることが多いでしょう。

騒音・振動トラブルと法規制

24時間営業も多いコインランドリーでは、洗濯機や乾燥機の稼働音・振動が近隣トラブルの原因になることがあります。騒音規制法や振動規制法では、地域や時間帯ごとに騒音・振動の上限値が定められています。とくに夜間は基準が厳しくなります。開業前に、防音・防振マットの設置や、夜間に稼働音が大きくなる機器の利用を制限するなどの対策を検討しましょう。

飲料自販機やカフェ併設に必要な追加の許認可

利便性向上のために飲料の自動販売機を設置する場合、それ自体が「清涼飲料水等自動販売機営業」と見なされ、別途保健所への届出が必要になる自治体があります。また、待ち時間を過ごせるカフェなどを併設する場合は、コインランドリーの届出とは別に、「飲食店営業許可」の取得が必須となりますので注意が必要です。

コインランドリーの許認可は事前の確認でスムーズに

コインランドリー開業の許認可は、主に保健所と消防署への「届出」が中心です。特別な資格は求められませんが、施設の衛生基準や消防法、建築基準法など、クリアすべき法的要件は多岐にわたります。これらの手続きには一定の期間がかかるため、事業計画の早い段階で管轄の行政機関に相談し、必要な手続きと基準を正確に把握することが、計画どおりの開業を実現するでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事