- 作成日 : 2025年9月16日
理容室を開業するには?失敗しない資金調達の方法や保健所手続きまで徹底解説
理容室の開業は、多くの理容師が目指す大きな目標の一つです。しかし、理容室の経営は難しいといった声や、独立したものの失敗に終わるケースを見聞きすると、期待とともに不安も大きくなることでしょう。
この記事では、理容室の開業に必要な準備や手続き、資金調達の具体的な方法、そして避けては通れない保健所の検査について分かりやすく解説します。
目次
理容室の開業は難しい?
近年、低価格チェーンの台頭や美容室との競合激化、人口減少といった外部環境の変化が、経営の難易度が上がっています。従来通りのやり方だけでは、お客様に選ばれにくくなっているのが現状です。他店との差別化を図り、独自の強みを打ち出していく戦略的な視点が、現代の理容室経営者には求められています。
理容師が独立開業で失敗する原因
理容師が独立で失敗するケースの多くは、事業計画や集客設計などの準備不足が原因です。
最も多いのは、運転資金の不足です。開業資金の準備だけで手一杯になり、開業後の赤字期間を乗り越える体力がなければ、すぐに経営は立ち行かなくなります。
また、自身の技術力だけを過信し、集客やマーケティング、経理といった経営スキルを軽視することも、失敗につながる典型的なパターンです。
経営が上手くいく理容室の共通点
成功している理容室には、明確なコンセプトがあります。ターゲットとする顧客層を絞り、誰にどのような価値を提供したいのかが具体的です。そのため、内外装からメニュー構成、接客スタイルまで一貫性があります。
さらに、リピート顧客を大切にし、口コミや紹介が自然に生まれる仕組みづくりにも長けています。技術だけでなく、顧客との良好な関係構築が経営を安定させるのです。
理容室の開業に必要なもの
理容室の開業は、思いつきで始められるものではありません。開業に必要なものをリストアップし、計画的に準備を進めましょう。
開業前に必要な資格
理容室を開業するためには、まず理容師免許が不可欠です。
免許取得後、理容師が2名以上いる店舗では、衛生管理の責任者として管理理容師の資格を持つ人を置くことが義務付けられています。将来的にスタッフを雇用する可能性があり、所定の実務経験がある場合であれば、開業前に講習を受講し、資格を取得しておくとスムーズです。
また、数年間の実務経験を通じて、技術力だけでなく、接客や店舗運営の感覚を養っておくことも成功の鍵となります。
事業計画書の作成
事業計画書は、開業の設計図となる重要な書類です。お店のコンセプト、ターゲット顧客、提供するサービス、資金計画、収支予測などを具体的にまとめます。事業計画書は、融資を受ける際の審査でも重視されます。
どのようなお客様に、どのような空間で、どんなサービスを提供したいのかを明確にすることが、他店との差別化につながります。
物件選び・内装工事
物件選びは、集客を大きく左右するポイントです。ターゲット顧客がアクセスしやすい立地か、周辺の競合状況はどうかを慎重に調査しましょう。
また、理容室を開業するには、衛生管理上の施設基準を満たす必要があります。内装工事に着手する前に、必ず管轄の保健所に図面を持参して事前相談を行い、基準を満たしているか確認することが重要です。
理容室の開業における保健所の手続き
理容室の開業手続きにおいて、最も重要なのが保健所の手続きです。事前相談から検査までの流れを正確に把握しておきましょう。
保健所への事前相談
店舗の工事に着手する前に、必ず管轄の保健所へ事前相談に訪れてください。この段階で店舗の図面を持参し、施設が衛生管理上の基準を満たしているかを確認してもらいます。もし基準に合致しないまま工事を進めてしまうと、後から修正が必要になり、余計な費用と時間がかかってしまいます。
施設基準と構造設備の要件
理容所には、法律で定められた施設基準があります。例えば、作業場の面積、床や壁の材質、換気設備、消毒設備の設置、待合所と作業所の区別などが細かく規定されています。
- 作業室の床面積
多くの自治体では、理容作業室として13㎡以上を基準としていますが、一部の自治体では11.55㎡以上とされています。 - 床・壁の材質
床や壁には、コンクリート・タイル・リノリューム・板など、水を通さない材質を使用しなければなりません。 - 換気
十分な換気能力を持つ換気扇などの設置が必要です。 - 消毒設備
器具を消毒するための設備が必須です。 - その他
洗い場や給湯設備、待合スペースと作業スペースの区画なども定められています。
これらの基準は、お客様と従業員の衛生と安全を守るためのものです。自治体によって細部が異なる場合があるため、必ず管轄の保健所が発行する手引きなどで確認してください。
開設届の提出と保健所の検査
工事が完了し、必要な設備がすべて整ったら、保健所に届け出し、検査日を調整します。
検査当日は、保健所の担当者が店舗を訪れ、図面通りに施工されているか、また施設基準をすべて満たしているかを一つひとつ確認します。指摘事項がなければ確認済証が交付され、営業を開始できます。
理容室の開業に必要な資金の調達方法
理容室の開業資金は、大きく設備資金と運転資金に分かれます。
自己資金だけで理容室を開業できるケースは少なく、多くの場合は融資や助成金を活用することになります。ここでは、開業資金の目安と、代表的な資金調達方法を解説します。
日本政策金融公庫の融資
多くの開業者が利用するのが、政府系金融機関である日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。民間の金融機関に比べて金利が低く、実績のない創業者も申請しやすいという特徴があります。
理容室の開業で活用できる助成金
国や地方自治体は、創業を支援するための様々な助成金や補助金制度を用意しています。例えば、地域経済の活性化を目的とした補助金や、特定の条件を満たす従業員を雇用した場合に支給される助成金などがあります。
これらの多くは経費を使った後の後払いであり、申請期間も限られているため、常にアンテナを張り、最新の情報をチェックすることが必要です。
理容室は一人で経営できる?
近年、一人で理容室を経営する理容師が増えています。人件費を抑えられ、自分のこだわりを存分に発揮できる魅力がある一方で、全ての業務を一人でこなす大変さもあります。
理容室を一人で経営するメリット・デメリット
一人経営の最大のメリットは、自分の理想とするサービスを追求できる点と、人間関係のストレスがない点です。また、人件費がかからないため、利益率を高めやすい構造にあります。
一方で、自分が休むと売上がゼロになることや、急な病気や怪我に対応しにくいというデメリットも存在します。集客から施術、清掃、経理まで全てを一人でこなすため、高い自己管理能力が問われます。
理容室を一人で経営する場合の年収の目安
一人理容室経営の年収は、立地や客単価、稼働率によって大きく変動しますが、300万円から700万円程度が一つの目安とされています。売上を上げることも重要ですが、家賃や広告費などの経費をいかに抑えるかが、手元に残る金額を増やす上で大切になります。
理容室の開業を成功に導きましょう
理容室を開業するには、見た目以上に地道で継続的な準備が必要とされます。一人で理容室を経営する場合の年収の現実を見据えつつ、日本政策金融公庫の融資や利用可能な助成金を賢く活用し、安定した経営基盤を築きましょう。
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