- 作成日 : 2025年7月18日
主婦の起業に資格は必要?おすすめの資格・アイディア・支援制度を解説
近年、育児や家事と両立しながら自分らしい働き方を求めて起業を目指す主婦が増えています。その中で「資格を取ったほうが良いのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。資格がなくても起業は可能ですが、持っていることで信頼性や専門性が高まり、ビジネスの幅が広がるのも事実です。
本記事では、主婦の起業に活かせる資格の種類や選び方、資格を活かした起業アイデア、公的支援制度などを解説します。
目次
主婦が起業するのに資格は必要?
主婦として起業を検討する際、「資格は必要か?」という疑問を持つ方は少なくありません。すべての起業に資格が必須というわけではありませんが、資格があることで得られるメリットは数多く存在します。ここでは、起業時における資格の役割と価値について解説します。
資格は信頼性と専門性を伝えるための手段になる
起業直後は実績が少ないため、顧客からの信頼を得るのが難しいと感じることがあります。その際、資格を持っていることが「この人は専門的な知識や技術を持っている」という安心材料となり、サービスへの信頼感を高める効果があります。
たとえば「整理収納アドバイザー」「アロマセラピスト」などの資格を取得していれば、「〇〇資格保持者が主宰する教室」と紹介でき、宣伝時にも有利です。特に競合が多い分野では、資格の有無が選ばれるかどうかの分かれ道になることもあります。
また、資格の取得過程で得られる知識や技術そのものも、ビジネス運営に欠かせない武器になります。独学ではカバーしきれない分野についても、講座や試験対策を通じて体系的に学べる点は大きな利点です。
一部の業種では資格が事実上の条件になることも
業種によっては、開業に際して法律上の資格が必要となるケースもあります。たとえば、食品を扱う飲食業であれば食品衛生責任者が必要です。エステティックサロン業には国家資格は不要な場合が多いですが、あん摩、マッサージ、指圧を業として行うには、あん摩マッサージ指圧師の国家資格が必要です。また、医療行為や美容師法に定められた美容行為(例:まつげエクステンション)には、それぞれの国家資格が求められます。
また、保育や教育の分野では、保育所などで働くには保育士の国家資格が、学校で教えるには教員免許状が求められます。チャイルドマインダーは家庭的保育などの分野で役立つ民間資格であり、専門性や信頼性を高める上で役に立ちます。これらの業種で起業を検討している場合は、あらかじめ資格の有無と取得の条件を確認し、事業計画に反映させることが必要です。
一方で、法的義務がない分野でも、資格があることで集客や単価設定に有利に働くことがあります。たとえば同じハンドメイド教室を開く場合でも、講師資格を持っている方が「プロとして教えている」という印象を与えやすくなります。
資格はあくまでサポート、なくても起業はできる
ただし、資格がなければ起業できないというわけではありません。資格よりも大切なのは、起業への意欲やアイデア、そして顧客のニーズを理解して行動に移せる力です。実際、資格を持たずに成功している主婦起業家も多く存在します。
資格は「準備の一環」として考えるとよいでしょう。たとえば「自宅でサロンを開きたい」「子育て経験を活かして子ども向け教室を開きたい」など、将来のビジネスが明確な場合、その分野の資格を取得しておけば、準備や実務がスムーズに進みます。
資格取得の過程では業界知識が深まり、同じ志を持つ仲間と出会うこともあります。それがビジネスネットワークの構築や新しいアイデアの源になることも珍しくありません。
主婦の起業に活かせる資格の種類と選び方
主婦が起業を目指すとき、「どんな資格が役立つのか」「自分に合う分野は何か」と迷うこともあるかもしれません。起業に役立つ資格は国家資格から民間資格まで多岐にわたり、ビジネスの方向性やライフスタイルに応じた選び方が大切です。ここでは、資格を分野ごとに紹介し、それぞれの特徴や選び方のポイントを解説します。
ビジネス・財務スキル系資格
起業全般に活かしやすいのが、経理やお金に関する資格です。代表的なものに「日商簿記」や「ファイナンシャルプランナー(FP)」があります。簿記2級程度の知識があれば、個人事業の帳簿づけや財務管理に対応しやすくなり、税理士への依頼内容の理解も深まります。FP資格は保険、税金、資産運用など家計にも直結する内容で、個人顧客への相談業務にも活用できます。
また、「中小企業診断士」は経営戦略・マーケティング・組織管理などの分野を網羅して学ぶことができる国家資格です。難易度は高いですが、独立してコンサルタント業務を行う道も開けます。
起業を具体化する過程で数字や戦略に強くなりたい方には、こうしたビジネス系資格が力強い味方になります。
参考;簿記 | 商工会議所の検定試験
参考;日本FP協会
参考;中小企業診断士
美容・健康・生活サービス系資格
自宅での開業や施術サービスに直結しやすいのが、美容・健康系の民間資格です。たとえば「アロマセラピスト」「ネイリスト技能検定」「エステティシャン資格」などは、主婦層に人気の資格であり、これらを活かして自宅サロンや出張サービスを開業する主婦も多く見られます。
これらの分野は、必ずしも国家資格が必要というわけではありませんが、民間資格を取得しておくことで、一定の技術や知識があることの証明になります。お客様への信頼構築にもつながり、集客の際にもアピールしやすくなるでしょう。
また、「整理収納アドバイザー」や「フラワーアレジメントデザイナー」「チャイルドマインダー」といった生活サービス系資格も注目されています。片付け・収納のアドバイス業務や、子育て経験を活かした少人数保育、趣味を活かした教室運営など、自分らしい働き方が実現できます。
参考;(公社) 日本アロマ環境協会 | 検定・資格 | アロマセラピスト
参考;日本ネイリスト検定試験センター
参考;日本エステティック協会
参考;ハウスキーピング協会
参考;花資格のフラワーアレンジメントデザイナー認定試験 | 日本デザインプランナー協会【JDP】
参考;チャイルドマインダージャパン
IT・デジタル系資格
近年は在宅ワークやオンライン事業が広がり、ITスキルのニーズが高まっています。「ITパスポート」「ウェブデザイン技能検定」などの基礎資格や、プログラミング、動画編集などのスキル証明となる講座修了証は、自宅にいながら収入を得る手段として有効です。
たとえば、Webサイト制作やネットショップ運営、SNS運用支援などは、パソコン1台でスタートでき、子育て中の主婦でも取り組みやすい分野です。近年はデジタルマーケティングやEC運営に関する講座も増えており、自身の商品や教室の広報にも直接役立ちます。
資格がなくても仕事はできますが、一定の基準を満たしていることを示す資料があると、業務を受注するうえで安心材料になります。将来の仕事の幅を広げる意味でも、IT関連の基礎スキルを持っておくのは大きな強みです。
参考;【ITパスポート試験】情報処理推進機構
参考;ウェブデザイン技能検定
専門職として独立できるプロ資格
行政書士、宅地建物取引士(宅建)、社会保険労務士(社労士)などの国家資格は、独立開業が可能な「士業」に分類されます。これらは合格までに一定の学習時間が必要となりますが、取得できれば資格そのものをビジネスに転換できる強力な手段です。
たとえば行政書士は許認可申請や契約書作成など、企業や個人事業主に対する法務サポートで安定したニーズがあります。宅建士は不動産関連の起業や、資格者として企業と契約して働くことも可能です。
士業の資格はハードルが高い反面、社会的信用度も高く、クライアントからの信頼を得やすくなります。「時間をかけても専門性を身につけたい」という方には、長期的な視野で挑戦する価値がある選択肢です。
参考;一般財団法人 行政書士試験研究センター
参考;一般財団法人 不動産適正取引推進機構
参考;全国社会保険労務士会連合会
資格を活かした主婦の起業アイデア
資格はあくまでスタート地点であり、「資格+アイデア」で初めて事業としての価値が生まれます。ここでは主婦が資格を活かして始めやすい代表的な起業アイデアを紹介します。
在宅サロン・施術サービスの開業
美容や健康系の資格を取得した方にとって、自宅の一室を活用したサロン開業は人気のある選択肢です。たとえばアロマテラピーの資格を取得した場合、アロマトリートメントの施術サービスの提供や、アロマグッズ作りのワークショップを開催することができます。
ネイルサロンやエステサロンも、ネイリスト技能検定やエステティシャンの民間資格を持っていれば自宅で小規模にスタートすることが可能です。整体やリフレクソロジー、リンパケアの資格も、出張施術や自宅サロンという形で起業しやすく、育児中の主婦にも取り組みやすい働き方といえるでしょう。
これらのサロン業では、「資格を持っていること」がサービスへの安心感につながります。SNSやチラシ、ホームページで資格保持者であることを明示すれば、信頼度が高まり、集客の面でもプラスになります。
教室・講座ビジネスの開催
「教えること」に関心がある方には、教室運営や講座開催のスタイルが適しています。調理師免許や食品衛生責任者の資格を持っていれば、料理教室やパン・お菓子教室を自宅キッチンやレンタルスペースで開くことができます。オンライン講座にすれば、自宅から全国の生徒にアプローチできます。
また、英語教室やピアノ教室、ハンドメイド講座など、自身の趣味や特技に関連する講師資格を持っていれば、それを活かして子どもや大人向けの教室を展開することも可能です。近年では、ヨガインストラクターの資格を取得して地域の公民館やオンラインでレッスンを開催する主婦も多く見られます。
チャイルドマインダーの資格を取得すれば、自宅で少人数制の保育ルームを運営したり、子育て支援を目的とした親子教室を開くこともできます。こうした教室業は、口コミによる広がりが期待でき、地域密着型のビジネスとして安定しやすい点も魅力です。
オンライン活用のフリーランス業
資格を活かしつつ、自宅にいながら自由な働き方を実現したい場合には、インターネットを活用したオンラインビジネスが向いています。たとえば、Webデザインやプログラミングのスキルを証明する資格や講座修了証を持っていれば、在宅でフリーランスのWeb制作者として活動することができます。
クラウドソーシングサイトに登録すれば、全国のクライアントから案件を受注でき、自分のペースで仕事を進めることが可能です。さらに、自身でネットショップを立ち上げて商品の販売やサイト運営代行を請け負うなど、業務の幅も広げやすくなります。
ライティングや翻訳のスキルがある場合には、Webライティング技能検定やTOEICなどの資格を活かして、ライターや翻訳者として起業する道もあります。これらは資格が必須ではないものの、プロフィールに記載することで信頼感を高めることができます。
また、FP(ファイナンシャルプランナー)やキャリアコンサルタントといった資格を取得していれば、Zoomなどを使ってオンラインで相談サービスを展開することもできます。家計の見直しアドバイスや転職支援、キャリア相談など、主婦だからこそ共感できるテーマを扱うと、顧客の信頼を得やすくなります。
外出が難しい育児・介護中の主婦にとって、オンラインは時間と場所に縛られず働ける手段として有効です。ITを味方につけて、資格と組み合わせた自由な働き方を実現するチャンスが広がっています。
主婦の起業・資格取得を支援する制度
資格取得や起業準備にあたり、公的な制度を活用することで、経済的負担を減らしながら安心してスタートを切ることができます。ここでは執筆時点(2025年6月)の主な支援制度や資格講座情報を紹介します。制度内容は変更される可能性がありますので、最新情報は各省庁や自治体の公式ウェブサイトでご確認ください。
資格取得費用を支援する制度
厚生労働省が実施する「教育訓練給付制度」は、対象の講座を修了すると受講料の一部が返金される仕組みです。一般教育訓練では上限10万円、専門実践教育訓練では条件により最大で年間56万円(最初の受給にかかわる受講開始日が令和6年9月30日以前の場合は支給上限額168万円、以降の場合は192万円)まで支給される場合があります。対象となる講座は、TOEICや日商簿記、保育士など幅広く、通信講座や大学院も含めて指定されており、その数は多岐にわたります。
また、ハローワーク経由で受講できる「公共職業訓練」「求職者支援訓練」は、失業中や非正規雇用の方に向けた無料講座で、医療事務やウェブデザイン、簿記など実践的なスキルを学ぶことができます。条件を満たせば、月ごとの受講手当や交通費も支給されるため、再就職や起業準備にも活用されています。
参考;教育訓練給付制度|厚生労働省
参考;公共職業訓練のご案内
参考;ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練||厚生労働省
女性向け起業支援プログラム
自治体や商工会議所でも、女性や主婦を対象とした創業支援が強化されています。東京都の「TOKYO創業ステーション」では、女性起業家向けにビジネス講座や個別相談を提供し、プラン設計から開業まで一貫した支援が受けられます。ほかにも「ママ起業応援講座」「創業スクール」など、地域によっては独自の起業支援講座が開催されています。
加えて、日本政策金融公庫では、女性や若年層、シニア世代の創業者を対象とした「女性、若者/シニア起業家支援資金」など、低利融資の枠が設けられています。販路開拓(例:広報費)にかかる費用を支援する「小規模事業者持続化補助金」も活用価値のある制度です。ただし、設備投資は、販路開拓等の目的達成に必要な範囲内で対象となる場合があるため、詳細は公募要領をご確認ください。
参考;TOKYO創業ステーション|創業・起業に関する一般相談
参考;新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
参考;小規模事業者持続化補助金
リスキリングとデジタル講座
政府のリスキリング支援政策により、IT・デジタル分野での学び直しを促進する動きが加速しています。一部自治体では、デジタル人材育成講座の受講者に対して、受講料の一部を補助する制度も登場しています。オンラインで完結できる講座も増えており、在宅でスキルアップを目指す主婦にとって利用しやすい環境が整いつつあります。
資格を活用して主婦起業を始めよう
主婦が起業を目指す際、資格は必ずしも必要ではありませんが、信頼性や専門性を高める有力な後押しになります。資格取得によって得られる知識や人脈は、教室運営やサロン開業、オンライン相談業などさまざまな形で事業に活かせます。起業に役立つ資格には、ビジネススキル系から美容・教育・IT分野まで多彩な選択肢があり、自分のライフスタイルに合ったものを選ぶことがポイントです。また、公的な支援制度や講座を活用すれば、学び直しや資金準備の負担を軽減することもできます。自分の強みと資格をかけ合わせた起業スタイルを見つけて、無理なく一歩を踏み出してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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