- 作成日 : 2025年7月18日
ひとり起業を目指す女性必見!おすすめ業種・始め方・支援制度を解説
近年、日本では「ひとり起業」を選ぶ女性が増えています。時間や場所にとらわれず、自分らしい働き方を実現できることから、育児や家庭と両立したい方にも支持されています。本記事では、ひとり起業を選ぶメリット、向いている業種、起業前に必要な準備や支援制度を解説します。
目次
女性のひとり起業は増加傾向
日本における女性の起業は近年増加傾向にあり、「ひとり起業」として始めるケースが目立っています。公的統計に基づき、女性の起業活動の割合や女性社長数の推移、ひとり起業の実態などをもとに、現状の特徴を明らかにします。
「ひとり起業」を選ぶ女性起業家が増えている
総務省統計によれば、従業員を雇わずに自ら事業を営む女性自営業者の数は、全国で約63万人にのぼると推計されています。
出典:総務省統計局:基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方~令和4年就業構造基本調査の結果から(2023年9月14日公表)
また、J-Net21や日本政策金融公庫の調査などの中小企業支援機関の報告でも、開業後も従業員を持たずにひとりで経営を継続する女性が多いことが示されており、こうした小規模・単独での起業形態が日本における女性起業の大きな特徴となっています。初期コストを抑え、柔軟な働き方を追求する動きが広がっています。
新規開業者に占める女性の割合
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」によると、新たに開業した人のうち女性が占める割合は25.5%に達しました。これは1991年度以降で過去最高の数値であり、女性による起業が確実に増加していることを示しています。
出典:~「2024 年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要~
また、開業形態としては個人事業主が約70%と多数を占めており、多くの女性が法人化する前に個人で事業を立ち上げている実態が明らかになっています。
出典:日本政策金融公庫:女性による新規開業の特徴(「2022年度新規開業実態調査」より)
女性社長数と女性社長率の推移
東京商工リサーチの調査によると、2024年時点での全国の女性社長数は約64.9万人、全体に占める割合(女性社長率)は15.24%となりました。この割合は2010年時点の女性社長数:約21万人から3倍以上に増加しており、14年連続で過去最高を更新しています。女性社長率の上昇は、創業支援や女性活躍推進政策の成果とみられており、着実な進展がうかがえます。
出典:2024年の全国の女性社長64万9,262人 「女性社長率」は15.24%、14年間で3倍増
女性がひとり起業するメリットは?その他の起業形態との比較
起業には法人設立や共同経営など多様な形がありますが、近年増えているのが「ひとり起業」です。ここでは従業員を雇わず、個人で始める起業形態について、その他の起業スタイルと比較しながら、選ばれる理由と利点を解説します。
初期投資が抑えられる
ひとり起業の最大のメリットの一つは、初期費用を抑えられる点です。法人設立には登録免許税や定款認証料などが必要ですが、個人事業主であれば「開業届」の提出のみでスタート可能です。また、従業員を雇用しないため、人件費・社会保険料などの固定費が発生せず、事務所も自宅で済ませれば、家賃や光熱費の追加も抑えられます。対照的に、複数人での起業や大規模な法人設立では、立ち上げ時に数百万円単位の資金が必要となるケースも多く、資金調達の難しさから起業を断念する例も見られます。ひとり起業は、少ない資金で着実に始めるには最適の選択肢といえるでしょう。
意思決定が迅速で柔軟
従業員や共同経営者がいると、意思決定に時間を要したり、意見の調整が必要になります。これに対し、ひとり起業では全てを自身で判断・実行できるため、意思決定のスピードが圧倒的に速いのが特長です。市場環境の変化に即応した方向転換も可能で、商品やサービスの改善、新しい取り組みへの挑戦も躊躇なく行えます。こうした柔軟さは、不確実性の高い時代において強みとなります。変化に強く、自分の直感や価値観を反映させやすい点は、ひとり起業ならではの魅力です。
ワークライフバランスを調整しやすい
ひとり起業は、働き方や時間の使い方を自由に設計できる点でもメリットがあります。従業員やパートナーに合わせる必要がないため、自身や家族のライフスタイルに合わせて柔軟に働けます。これは特に、育児や介護、地域活動との両立を目指す女性にとっては大きな利点です。また、事業の内容や稼働時間、成長スピードを自分のペースでコントロールできるため、無理のない持続的な働き方を実現しやすい傾向があります。仕事と生活を両立させながら、やりがいも得たいという方にとって、ひとり起業は適したスタイルと言えるでしょう。
人間関係のストレスが少ない
共同経営や従業員との関係では、人間関係の摩擦が起業のストレス要因となることがあります。一方、ひとり起業では対人関係のトラブルや組織内の調整といった精神的な負担が少なく、本業に集中しやすい環境を自ら作ることが可能です。人との協働が不要というわけではありませんが、関わる相手やパートナーを自分で選べる自由があるため、無理な付き合いに悩まされる場面は少なく済みます。精神的に安定した状態で、主体的にビジネスに向き合いたいと考える人にとっては、ひとり起業は非常に理にかなったスタイルです。
女性のひとり起業に適した業種とは?
女性が一人で起業するにあたり、スキルや経験を活かしやすく、初期投資を抑えながら着実に始められる業種を選ぶことは大切です。以下にひとり起業に最適の業種・ビジネスモデルを紹介します。
ネイル・エステなどの自宅サロン
自宅の一室や小さなスペースから始められるネイルやエステなどのサロン経営は、女性のひとり起業で人気の高い分野です。これらのサービスは基本的に国家資格が不要なものが多く、比較的低コストで開業できます。ただし、「マッサージ」など国家資格が必要な行為との混同には注意が必要です。顧客は近隣住民や友人・知人から広がることが多く、リピート率が高いため収益が安定しやすい傾向があります。予約制で運営すれば、子育てや家庭との両立もしやすく、平日午前のみ、週末のみといった柔軟な営業スタイルも可能です。顧客との信頼関係が売上に直結するため、コミュニケーション力や丁寧なサービスが大きな武器となります。
料理・語学・手芸などの自宅教室
自身のスキルや資格を活かして始められる自宅教室も、ひとり起業に適したモデルです。料理、パン・お菓子づくり、英会話、ピアノ、手芸など、得意な分野で講座を開くことで収益化できます。生徒数を制限すれば無理なく運営でき、少人数制や親子参加型のクラスなど、独自のスタイルで展開できる点が強みです。また、対面だけでなくZoomなどを活用したオンライン講座に切り替えることで、地域にとらわれず広範囲に集客することも可能です。教材や設備に大きなコストがかからない点も、スモールスタートに向いています。
ハンドメイド商品のネット販売
手芸・クラフト・アクセサリー制作などのスキルを活かして、ハンドメイド作品をネットで販売するモデルも有望です。minneやCreema、BASE、STORESなどのプラットフォームを活用すれば、自宅からでも全国へ販売可能です。在庫リスクを避けるために受注生産とする方法もあり、小ロットから気軽に始められるのが特徴です。また、SNSやブログと連動させて商品紹介を行えば、広告費をかけずに集客することもできます。クリエイティブな活動をビジネスにしたい方には相性がよく、ファンを獲得できれば安定収入につながります。
Webライター・編集者・翻訳業
ライティングや編集、語学力を活かして在宅で行えるWebライター・翻訳者の仕事も、時間や場所に縛られない理想的なひとり起業モデルです。クラウドソーシングサイト(例:クラウドワークス、ランサーズ)や企業との直接契約により、継続的な案件を得ることが可能です。特別な設備投資は不要で、PCとインターネット環境さえあればすぐに始められるため、初期費用を抑えたい人に向いています。また、ライティングスキルは多様な業種に応用が利き、コンテンツ制作、商品紹介、SEO記事など需要が拡大し続けている分野です。
SNS運用・Webマーケティング代行
InstagramやX、TikTokなどのSNS活用が得意な方は、企業や個人事業主向けにSNS運用やWebマーケティングの代行サービスを提供することで起業できます。近年は「デジタルネイティブ世代」の女性によるこの分野への参入が増えており、1人でも始められる上に高単価な案件も存在します。小規模店舗や個人事業主の中には、自らSNSを運用する時間がない事業者も多いため、写真撮影、投稿代行、広告運用などニーズは拡大しています。自身のSNS実績がそのまま営業ツールになるため、趣味をビジネス化したい人にもおすすめです。
キッチンカー・間借り営業などの軽飲食業
飲食業の中でも、初期投資を抑えてひとりで始めやすいのがキッチンカーや間借り営業による出店です。店舗を持たずにイベント出店や曜日限定営業を行うことで、賃料などの固定費を回避できます。人気の高いジャンルには、焼き菓子・スイーツ・コーヒー・ベーカリーなどがあります。メニューを絞り込むことでオペレーションも簡易にでき、1人で無理なく対応できる範囲に収められます。また、実績を積めばSNSでの話題性も高まり、次のステップとして常設店舗への展開を見据えることもできます。
女性のひとり起業に必要な準備
女性がひとりで起業するには、資金確保、法的手続き、事業計画、スキル習得などの事前準備が不可欠です。安定した経営を実現するために、起業前に押さえておきたい3つのポイントを解説します。
資金計画と調達
日本政策金融公庫の調査によると、女性の平均的な開業資金は約744万円です。(※男性の平均開業資金は約947万円)
出典:女性による新規開業の特徴~「2022年度新規開業実態調査(特別調査)」結果から~
自己資金だけでは不足するケースも多いため、日本政策金融公庫の女性向け融資制度などの活用を検討しましょう。民間の創業支援融資もあり、自治体の窓口を通じて情報を得られます。融資申請時は、一定の自己資金を示すことで返済能力と意欲を評価されやすくなります。加えて、社会性や地域貢献性のある事業ならクラウドファンディングを通じた資金調達も可能です。複数の資金調達手段を組み合わせ、無理のない計画を立てることが重要です。
届出・手続き
個人事業主として始める場合は、税務署への開業届提出が基本です。青色申告承認申請書も同時に提出すると青色申告ができ、節税につながります。青色申告をすることで、最大65万円の特別控除、赤字の繰り越し、家族への給与(青色事業専従者給与)の経費計上など、多くの税制上のメリットを享受できます。
事業内容によっては、飲食店営業許可や古物商許可、美容師免許などの取得が必要となるため、あらかじめ要件を確認しましょう。法人化を選ぶ場合は、公証人役場で定款認証後、法務局での登記が必要です。数十万円の費用がかかりますが、現在はオンライン手続きや自治体の「創業ワンストップ窓口」により手続きの簡略化も進んでいます。開業後も税・保険関係などの手続きが多いため、事前に一覧化しておくとスムーズです。
事業計画とスキルの整備
成功する起業のためには、事業計画書の作成が欠かせません。提供するサービスや対象顧客、収益構造、収支予測などを可視化することで、ビジネスの方向性が明確になります。併せて市場調査を行い、ニーズや競合環境を把握しておくとリスク回避につながります。また、公庫の調査では、多くの女性起業家が前職経験を通じてスキルを得たと回答していますが、経営経験のない場合は財務や法務の基礎を学ぶことが必要です。各地で開催されている創業セミナーや相談窓口を活用しましょう。
さらに、起業後の孤立を防ぐため、ネットワーク構築も重要です。女性起業家コミュニティやオンラインサロンに参加し、相談や情報共有ができる環境を整えることが、持続的な経営に役立ちます。家庭との両立を見据え、家族と事前に話し合い、理解と協力を得ておくことも忘れてはなりません。
女性の起業を支援する制度や補助金
女性のひとり起業を後押しする支援制度は、国・地方自治体・金融機関・民間団体などによって整備されつつあります。ここでは、活用できる代表的な制度を紹介します。
日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」
国の支援機関である日本政策金融公庫が提供する「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアを対象にした創業融資制度です。通常よりも低金利で融資を受けられることが特徴で、融資限度額は最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)と高額にも対応可能です。令和5年度には6,631先に対し計283.6億円の融資実績があり、資金需要の高いスタートアップにも有効な制度です。
創業初期に金融機関の信用を得ることが難しい女性にとって、安心して利用できる重要な公的支援となっています。
「わたしの起業応援団」ネットワーク
経済産業省は、女性起業家支援の機運を高めるため、「わたしの起業応援団」というコンセプトやロゴマークを2020年に打ち出しました。この取り組みを通じて、全国の支援機関や企業が連携し、女性起業家を支援するネットワークが広がっています。
起業に役立つ基礎知識の提供、セミナー・イベント情報、メンターの検索機能など、オンラインで幅広いサポートを受けられます。また、女性起業家を支援したい企業や団体とのマッチング支援も行われており、オールジャパンで女性の挑戦を支える基盤として機能しています。サイト内には体験談や動画教材などもあり、起業準備中の情報収集に適しています。
地方自治体による創業支援・融資・助成金
各地方自治体でも、女性や若者に特化した創業支援制度が整備されています。たとえば東京都では、「女性・若者・シニア創業サポート2.0」として、信用金庫と連携した低利融資を提供しており、事業計画書作成支援や起業後の経営相談などを含む一貫支援体制を構築しています。女性の場合、融資限度額2,000万円(うち運転資金1,000万円)に加え、最長3年以内の据置期間が選択可能です。
さらに、東京都では商店街に出店する女性に最大844万円を助成する「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」も実施されています。
茨城県では、女性・若者・障害者を対象に、年利1.3~1.6%という低利で最大3,500万円まで融資する制度が用意されており、地域ごとに特色ある支援が展開されています。
自治体の公式サイトや創業支援窓口で、対象地域・業種・要件を事前に確認することが重要です。
各種補助金・助成金の活用
女性限定ではないものの、新規創業者が活用できる代表的な補助金制度として、以下のようなものがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
個人事業主や小規模企業の販路開拓費用を補助。商工会議所経由で申請。通常枠の補助上限は50万円ですが、特定創業支援等事業の支援を受けた事業者を対象とする「創業型」などでは、補助上限が200万円となります。 - 事業再構築補助金
新分野への進出や業態転換などに対して最大数千万円の補助。 - ものづくり補助金
革新的な商品やサービスの開発に最大2,500万円。(製品・サービス高付加価値化枠) - IT導入補助金
業務効率化のためのITツール導入費用の一部を補助。
これらはすべて返済不要の資金であり、起業後の資金繰り支援として大きなメリットがあります。ただし、いずれも申請には事業計画書の提出や審査があるため、事前準備とスケジュール管理が求められます。
今こそ女性のひとり起業を始めてみよう
女性の起業は年々増加し、なかでも「ひとり起業」という形が注目を集めています。ひとり起業は、初期費用を抑えつつ自分のペースで進められる、柔軟で実現しやすい起業のかたちです。自宅サロンやハンドメイド販売、オンライン講座、Webライター、キッチンカーなど、女性に向いた業種も多くあります。公的融資や補助金、地域の支援制度を活用すれば、より安心してスタートできます。まずは情報を集め、自分に合ったスタイルで一歩を踏み出してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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