• 作成日 : 2025年7月3日

リラクゼーションサロンを開業するには?必要な資格や費用などを解説

この記事では、リラクゼーションサロンの開業に必要な資格や許認可や具体的な開業ステップなどを分かりやすく解説します。

リラクゼーションサロンを開業するには?

リラクゼーションサロンの開業を成功させるためには、まず事業の核となるコンセプトとターゲット顧客を明確に定めることが不可欠です。これらが定まれば、提供するサービスや店舗の雰囲気、価格設定といった具体的な要素が自ずと見えてきます。

サロンのコンセプトとターゲット

どのような悩みを持つお客様に、どのような価値を提供したいのかを深く掘り下げることが、サロン経営の第一歩です。サロンのコンセプトを明確にし、ターゲットとする顧客層を具体的に設定しましょう。

たとえば、「仕事帰りの30代女性に特化した、都会の喧騒を忘れさせる隠れ家的アロマトリートメントサロン」や「週末にアクティブに活動する40代男性向けのスポーツコンディショニングサロン」といった具合です。年齢、性別、職業、ライフスタイル、抱える悩みなどを詳細に設定することで、内装デザイン、メニュー構成、価格帯、さらには集客方法に至るまで、全ての意思決定におけるブレない軸となります。

提供するサービス内容

明確になったコンセプトとターゲット顧客に基づき、提供するサービスメニューを具体的に決定します。リラクゼーションサロンで提供される施術は、フェイシャルエステ、アロママッサージ、オイルマッサージ、リフレクソロジー、ヘッドスパなど多岐にわたります 。自身の得意とする技術や、ターゲット顧客のニーズが高い施術を組み合わせることが基本ですが、ここで重要になるのが「独自性」です。

近隣の競合サロンが提供していないユニークなメニューを導入したり、特定の技術を深く追求して専門性を高めたりすることで、他店との明確な差別化を図ることが求められます。

リラクゼーションサロン開業に必要な資格

リラクゼーションサロンを開業するにあたって必要な資格は、提供するサービス内容によって法的な扱いや必要な資格が大きく異なります。

「リラクゼーション」と「マッサージ」の違い

まず理解すべき最も重要な点は、「リラクゼーション」と「マッサージ」は法律上明確に区別されるということです。一般的に「リラクゼーション」を目的としたサービス(もみほぐし、アロマトリートメント、リフレクソロジー、エステサロンなど)を提供するサロンを開業するだけであれば、特定の国家資格は必須ではありません 。

しかし、「マッサージ」という言葉を店名やサービス名に用いて、治療行為に類する施術を行う場合には、「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格が必須となります 。無資格者が「マッサージ」を標榜して業を行うことは法律で禁じられており、違反した場合は罰則の対象となります。そのため、多くのリラクゼーションサロンでは、「〇〇ボディケア」「〇〇トリートメント」「〇〇セラピー」といった表現を用いてリラクゼーションサービスを提供しています 。また、「リラクゼーション」などの名称を使用しても、実際の施術行為がマッサージと同じものであれば「マッサージ行為」とみなされ、処罰の対象となります。

リラクゼーションは心身の緊張を緩和し、健康維持や生活の質の向上を目的とするのに対し、あん摩マッサージ指圧師が行う「マッサージ」は、体の痛みや不調の緩和を目的とした医療類似行為とされています 。

国家資格「あん摩マッサージ指圧師」とは?

あん摩マッサージ指圧師は、手技を用いて筋肉や神経に刺激を与え、血行やリンパの流れを改善することで、肩こりや腰痛といった慢性的な症状の緩和を目指す専門職です。この資格は国家資格であり、取得するためには厚生労働大臣または文部科学大臣が認定する養成施設で3年以上専門知識と技術を学び、年に一度実施される国家試験に合格する必要があります。

民間資格の種類と取得のメリット

リラクゼーションサロンの開業に国家資格は必須ではないものの、多くのセラピストは何らかの民間資格を取得しています。これは、民間資格であっても取得することに多くのメリットがあるためです。

主要な民間資格と認定団体一覧

資格名認定団体名概要
リラクゼーションセラピスト1級・2級一般社団法人 日本リラクゼーション業協会リラクゼーション業全般に関する知識・技術を認定する資格。業界標準の知識習得を目指す。
AEAJ認定アロマセラピスト公益社団法人 日本アロマ環境協会 (AEAJ)アロマテラピーの専門知識とトリートメント技術を認定。国内最大手のアロマ関連団体。
JAA認定アロマコーディネーターライセンス特定非営利活動法人 日本アロマコーディネーター協会 (JAA)アロマテラピーの基礎知識から応用までを学び、安全な実践とアドバイス能力を認定。
JREC認定リフレクソロジスト(レギュラー/マスター等)JREC日本リフレクソロジスト認定機構 (JREC)足裏などの反射区を刺激するリフレクソロジーの専門技術と知識を認定。
リンパケアセラピスト各認定スクール・団体(日本リンパ協会など)リンパの流れを促進するトリートメント技術に関する資格。
JADP認定リフレクソロジスト®日本能力開発推進協会 (JADP)フット・ハンドリフレクソロジーの反射区や人体の仕組みに関する知識・技術を認定。

これらの資格は、それぞれ専門のスクールや協会が認定しており、講座の受講や試験の合格によって取得できます。他にも多くの民間資格があります。

リラクゼーションサロン開業に必要な許認可

リラクゼーションサロンを開業する際には、いくつかの法的な手続きが必要となります。特に税務署への開業届の提出は全ての事業者に共通して必須であり、提供するサービス内容によっては保健所への届出や検査も求められます。

保健所への届出が必要なケースとは?

一般的なリラクゼーションサービス(身体の構造や機能に影響を与えない範囲の施術)のみを提供する場合は、原則として保健所への特別な届出や営業許可は不要です。これは、エステサロンやリラクゼーションサロンの多くが、美容師法やあん摩マッサージ指圧師法などの法律の適用外とされているためです。

しかし、提供する施術内容によっては、保健所への届出や施設の検査、さらには施術者の資格が必須となるケースがあります。具体的には以下のような場合が該当します。

  1. あん摩、マッサージ、指圧を業として行う場合
    施術者が「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を保有している必要があり、かつ施術所として保健所に「施術所開設届」を提出し、構造設備基準に関する検査を受ける必要があります。
  2. 鍼(はり)または灸(きゅう)を業として行う場合
    施術者が「はり師」「きゅう師」の国家資格を保有し、同様に「施術所開設届」の提出と構造設備基準に関する検査が必要です。
  3. 美容行為(まつ毛エクステンション、まつ毛パーマ、眉カットなど首から上の施術)を行う場合
    これらの行為は美容師法に基づく美容行為と見なされるため、施術者は美容師免許を保有し、サロンは「美容所」としての登録(美容所開設届の提出と構造設備基準に関する検査)が必要となります。
  4. 刃物(カミソリなど)を用いた顔そりやムダ毛処理を行う場合
    理容師免許が必要となり、「理容所」としての登録が求められる場合があります。

届出に必要な書類と手続きの流れ

保健所への届出が必要と判断された場合、一般的に以下のような書類の提出と手続きが求められます。

主な提出書類の例

  • 開設届(施術所開設届または美容所開設届など)
  • 店舗の平面図(施術室、待合室、消毒設備、換気設備などの配置が分かるもの)
  • 従業員名簿(施術を行うスタッフ全員分)
  • 資格免許証の写し(あん摩マッサージ指圧師、美容師など、有資格者全員分)
  • 医師による診断書(結核、伝染性皮膚疾患でないことを証明するもの。従業員全員分が必要な場合あり)
  • 検査手数料(地域によって異なり2万円程度:理容所または美容所の場合に必要)

手続きの一般的な流れ

  1. 事前相談
    管轄の保健所に、開業予定のサロンの概要や提供サービスについて相談し、必要な手続きや書類、施設の基準などを確認します。
  2. 書類作成・提出
    指示された書類を準備し、保健所に提出します。
  3. 施設検査
    保健所の担当者が実際に店舗を訪れ、提出された図面通りに設備が配置されているか、衛生基準や構造設備基準(換気、採光、消毒設備など)を満たしているかなどを検査します。
  4. 確認証の交付
    検査に合格すると、「検査確認証」などの書類が交付されます。(検査確認証は店舗に掲示します。)
  5. 開業可能
    確認証の交付をもって、正式に営業を開始できます。

保健所への手続きは、書類準備から検査まで一定の時間を要することがあります。開業スケジュールに影響が出ないよう、早めに準備を進めることが大切です。

リラクゼーションサロン開業に必要な資金

リラクゼーションサロンの開業に必要な資金は、サロンの規模や形態、立地、提供するサービス内容によって大きく変動しますが、大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2種類を準備する必要があります。

初期費用

初期費用とは、サロンを開業するまでに必要となる一時的な費用の総称です。一般的に、リラクゼーションサロンの開業資金の相場は300万円から1,000万円程度とされていますが、これはあくまで目安であり、選択する物件が居抜きかスケルトンか、都心部か郊外かなどによって大きく変わります。

主な初期費用の内訳と目安は以下の通りです。

  • 物件取得費
    サロンを開業する店舗を借りるための費用です。敷金、礼金、仲介手数料、前家賃などが含まれ、一般的には月額家賃の4ヶ月分から6ヶ月分程度が目安とされています。
  • 内装工事費
    物件の状態やサロンのコンセプトによって費用が大きく変動します。壁紙や床材の変更、間仕切りの設置、照明工事、水回りの工事などが含まれます。自宅サロンであれば20万円程度からでも始められるケースがあります。
  • 設備・機器・什器費
    施術に必要な設備や備品を購入する費用です。施術用ベッド、タオルウォーマー、リネン類、お客様用の椅子やテーブル、カウンセリング用のデスク、パーテーション、レジ・パソコン類、BGM用音響設備、観葉植物などのインテリア、看板などが該当します。提供するサービスによっては、専用の美容機器が必要になることもあります。これらの費用も規模によりますが、90万円から300万円程度を見込んでおくと良いでしょう。
  • 広告宣伝費
    開業を告知し、集客を行うための費用です。サロンのホームページ制作、ロゴデザイン、パンフレットやチラシの作成・印刷、ポータルサイトへの掲載料、開業前のリスティング広告費用などが含まれます。30万円から100万円程度が目安とされています。
  • 諸経費
    上記以外にかかる費用として、資格取得費用(民間資格など)、各種届出(開業届、保健所への届出など)にかかる手数料、開業準備期間中の交通費通信費などがあります。これも30万円から100万円程度を見込んでおくと安心です。

これらの費用項目を具体的にリストアップし、自身の計画に合わせて見積もることで、必要な初期費用の総額が見えてきます。

開業形態別 初期費用目安比較

開業形態物件取得費目安内装工事費目安設備・備品費目安広告宣伝費目安合計目安
自宅サロン0円20万円~20万円~30万円~20万~70万円程度
マンションサロン60万円~30万円~20万~60万円30万円~150万~200万円程度
テナントサロン120万円~200万円~50万~120万円30万円~300万~600万円程度

運転資金

初期費用に加えて、サロンの経営を軌道に乗せるまでの期間を支える「運転資金」の準備も極めて重要です。運転資金とは、サロンを運営していく上で毎月継続的に発生する費用のことで、売上が安定しない開業初期には特にこの運転資金が経営の生命線となります。一般的には、最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金を初期費用とは別に確保しておくことが推奨されています。

主な運転資金の内訳は以下の通りです。

  • 家賃
    店舗を借りている場合、毎月発生する重要な固定費の一つです。立地や広さによって大きく変動します。小規模なサロンでも月額10万円から30万円程度かかることがあります。
  • 人件費
    スタッフを雇用する場合、給与や社会保険料などがかかります。スタッフ1人あたり月額20万円から40万円程度が目安です。オーナー自身が施術を行う個人サロンの場合は、当面この費用は発生しません。
  • 消耗品費
    施術に使用するオイル、化粧品、タオル、ペーパー類、消毒液、洗濯洗剤など、定期的に補充が必要な物品の費用です。月額5万円から20万円程度を見込みます。
  • 水道光熱費
    電気代、水道代、ガス代などです。施術内容や営業時間、季節によって変動しますが、月額2万円から5万円程度が目安です。
  • 広告宣伝費
    継続的な集客活動のための費用です。ホームページの維持管理費、SNS広告費、ポータルサイトの月額掲載料、チラシの定期的な配布費用などが該当します。月額5万円以上を計画しておくと良いでしょう。
  • その他諸経費
    通信費(電話、インターネット)、保険料、リース料(美容機器など)、税理士等への顧問料、交通費、雑費などが含まれます。

リラクゼーションサロン開業に必要な書類

リラクゼーションサロンを開業し、運営していくためには、いくつかの公的な書類の提出や準備が必要です。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)

個人事業としてリラクゼーションサロンを開業する場合、最も基本的な届出が「個人事業の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」です。これは、事業を開始したことを管轄の税務署に正式に届け出るための書類です。提出期限は、原則として事業開始の事実があった日から1ヶ月以内とされています。

青色申告承認申請書(任意)

開業届と併せて、またはその年の3月15日(その年の1月16日以後に新規開業した場合は、事業開始日から2ヶ月以内)までに、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出することで、確定申告の際に青色申告を選択できるようになります。

青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除、純損失の繰越控除(赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越せる)、家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)など、税制上の大きなメリットがあります。

保健所への提出書類(該当する場合)

前述の通り、提供するサービス内容によっては、保健所への届出や検査が必要になります。具体的には、あん摩マッサージ指圧、鍼灸、美容行為、刃物を用いた施術などを行う場合です。(「保健所への届出が必要なケースとは?」の「届出に必要な書類と手続きの流れ」を参照ください。)

これらの書類は自治体や提供サービスによって細かく異なるため、必ず事前に管轄の保健所に確認し、指示に従って準備してください。

リラクゼーションサロンを開業するメリット・デメリット

リラクゼーションサロンの開業は、多くの魅力がある一方で、乗り越えるべき課題も存在します。ここでは、開業の主なメリットとデメリットを整理し、より現実的な視点から開業準備を進めるための一助とします。

メリット

  • 比較的少ない初期投資で開始できる可能性(特に自宅)
  • 固定費を抑えやすく利益率を高めやすい構造
  • 顧客満足を提供できるやりがい
  • 事業主自身の意思決定による自律性
  • 柔軟な働き方(特に自宅)  などが挙げられます。

デメリット

  • 競争の激しさ(高い廃業率)
  • 新規顧客獲得とリピーター育成の難しさ
  • 労働集約型ビジネス(売上拡大の限界)
  • オーナー自身の負担(長時間労働、収入途絶リスク)
  • 売上増加の難しさ(個人サロンの場合)
  • 仕事とプライベートの境界線の曖昧さ(自宅の場合) などがあります。

競争環境下では、独自の価値提案が不可欠です。

独自のコンセプトやサービスでリラクゼーションサロンを開業しよう

リラクゼーションサロンの開業は、多くの準備と知識、他サロンとの差別化をはかる独自のプラン形成が必要です。この記事では、サロンのコンセプト作りから資格の有無、必要な許認可や資金計画、そして開業後の注意点などを解説しました。

開業準備や経営に関して不安な点や専門的な知識が必要な場合は、税理士、行政書士、経営コンサルタントといった専門家の助言を求めることもおすすめです。


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