- 作成日 : 2025年4月25日
資金調達におけるリード投資家(リードインベスター)の役割やメリットは?
リード投資家(リードインベスター)とは、資金調達ラウンドにおいて、他の投資家をけん引し、企業の資金調達の支援を担う投資家です。特に、スタートアップ企業の資金調達では、リード投資家の支援が大きな意味を持ちます。
本記事では、リード投資家の役割やフォロー投資家との関係、選び方について詳しく解説します。
目次
リード投資家(リードインベスター)とは
ここでは、リード投資家(リードインベスター)の概要について説明をしていきましょう。
リード投資家は資金調達ラウンドを主導する投資家のこと
リード投資家は、スタートアップ企業の資金調達を主導し、支援する投資家です。基本的に最初の出資に参加し、他の出資者と比較して出資額が最も多い傾向にあります。リード投資家のみが企業に出資するケースもあります。
リード投資家の特徴は、資金面で大きな貢献をするだけでなく、会社の運営にも積極的に関与する点があることです。事業戦略の策定に関わったり、取締役のメンバーとして活動したりすることもあります。
リード投資家とフォロー投資家の違い
スタートアップ企業に出資する投資家の中には、フォロー投資家(フォローアップ投資家)もいます。企業が立ち上げたばかりの事業を円滑に回していくには、ある程度の出資が必要です。
しかし、企業が目標とする資金調達額は、リード投資家だけで埋められるとは限りません。フォロー投資家は、リード投資家の出資と企業の資金調達の未達分を補います。リード投資家と比べると出資額は少なく、企業に対する影響も弱い傾向があります。
フォロー投資家は、積極的な資金調達や戦略策定への関与はリード投資家より少ないものの、他の投資家の動き次第で将来的に追加の資金提供を実行する可能性もある投資家といえるでしょう。
資金調達にリード投資家が関与するメリット
資金調達ラウンドでリード投資家が関与することによる主なメリットを取り上げます。
資金調達がスムーズに進む
リード投資家は、スタートアップ企業の資金調達を主導する投資家です。さらなる資金調達が必要になる場合、リード投資家は、フォロー投資家に対して資金調達ラウンドに参加を促す役割があります。ここで重要になるのが、リード投資家の評判や実績です。フォロー投資家にとって信頼できるリード投資家であれば、フォロー投資家からの追加の資金調達がスムーズに進む可能性があります。
適切な企業評価を得られる
スタートアップ企業の資金調達ラウンドにリード投資家の存在があれば、適切な企業評価をしてもらえる可能性があります。
リード投資家は、企業に対して最初に出資を実行することが少なくありません。その過程でデューデリジェンス(DD)を行います。デューデリジェンスとは、投資先の経営状況や財務内容、将来性などを多角的に調査および分析した内容を、投資判断の材料とする手続きのことです。
デューデリジェンスを実施する主な目的は、投資を実行するために重大なリスクの有無の確認と、企業の将来性を予測することです。デューデリジェンスによるリスク評価後のリード投資家による出資が確認できることで、出資を受ける企業の評価が高まる可能性があります。
投資契約の交渉力が高まる
リード投資家は、資金調達ラウンドにおける最大の出資者となることも多いため、投資契約の条件などをとりまとめる役割を担っています。投資契約とは、株式の引き受けや発行条件、払込期日などについて定めた投資家との契約のことです。
スタートアップ企業の最初の投資契約は、リード投資家との間で行われることもよくあります。さらに、その後の資金調達では、リード投資家との投資契約がベースになることが一般的です。企業にとって納得のいく投資契約を締結することで、その後の資金調達における交渉に役立つ可能性があります。
事業成長の支援を受けられる
リード投資家は、さまざまな形でスタートアップ企業を支援する重要なパートナーになります。事業が成長することで、両者にとってメリットになるでしょう。
また、リード投資家はこれまでのビジネスや業界の知識を活かし、スタートアップ企業に実践的なアドバイスをすることもあります。
リード投資家の中には、積極的に会社の運営に参加して事業戦略を指揮したり、取締役会に参加したりと、企業の成長のためによりよい意思決定をサポートすることもあります。
次回の資金調達につながりやすい
リード投資家は投資家のネットワークがあるため、スタートアップ企業は新たな投資家を紹介してもらえる機会があります。
また、リード投資家が他の投資家と協業して、次の資金調達のラウンドをサポートする役割を果たすこともあります。これらのサポートによって、次回の資金調達や追加での資金調達につながりやすいのもリード投資家がいることのメリットです。
資金調達におけるリード投資家の選び方
ここでは、資金調達で重要なリード投資家を選ぶポイントを紹介します。
自社の業界や成長フェーズに合っているか
企業の成長フェーズによって、適したリード投資家は異なる場合があります。例えば、シードラウンドのような資金調達の初期段階では、シードを専門とする、または中心に資金提供を行うリード投資家との相性がよいでしょう。
一方で、多額の追加資金が必要とされる後期のラウンドでは、より大きな資金提供が見込まれるリード投資家を選ぶのが適しています。
リード投資家を選定する際は、資金調達の規模や事業の成長フェーズに合った投資家かどうかを見極めることが重要です。加えて、投資家がその業界に関する知見を持っていれば、より実践的で有効な支援が期待できます。
過去の投資実績や成功事例はあるか
リード投資家がどこになるかは、その後に出資するフォロー投資家の関心を集める重要な要素になります。リードとしての役割を十分に果たせるか、資金調達ラウンドをけん引できるか、リード投資家によって力量が異なるためです。
成果と実績を出せるリード投資家は、他の投資家を呼び込みやすい側面があるといわれています。リード投資家を選ぶ際は、過去の投資実績や成功事例を確認しておくことも重要です。
長期的な関係構築ができるか
未上場のスタートアップ企業では、リード投資家と長期的な付き合いに発展することがあります。長期的な関係が築けるかどうかもリード投資家選びのポイントです。投資後の報告や打ち合わせの頻度などの関わり方や、資金提供以外のサポート内容、信頼性などを確認します。
資金調達でフォロー投資家や投資会社を選ぶケース
全体の出資からして、出資割合が低い投資家が集まり、リード投資家が不在になるケースもあります。ここでは詳細について解説します。
企業側で投資条件を主導したい場合
投資契約は、投資によるリスクを管理するなどの目的で、スタートアップ企業と投資家との間で締結されます。リード投資家のいる資金調達では、リード投資家が主導して投資先の企業と交渉し、投資契約を結ぶのが一般的です。
リード投資家が不在だと、企業に大きな影響を及ぼすほどの投資家がいないことと同じため、企業側が投資条件を主導できる利点があります。
十分な投資家ネットワークがある場合
スタートアップ企業の投資をけん引する存在であるリード投資家は、投資家からの資金提供のうち高い割合を占めています。これは多額の資金提供を必要とする企業にとっては有効です。
しかし、すでに十分な投資家ネットワークがあり、投資家から資金提供を受けやすい環境が整っている場合は、あえてリード投資家を選ばないケースもあります。
戦略的投資を重視したい場合
リード投資家は、資金面での支援という側面では、企業にとって魅力的なパートナーといえるでしょう。
一方で、企業の事業戦略の策定や取締役会への参加など、企業の意思決定や方向性に深く関与します。それが企業が本来目指す方向と相反する場合は、かえって支障をきたすことも考えられるでしょう。
企業側が何らかの目的を持って戦略的な投資を重視したい場合、リード投資家を選択しないケースもあります。
資金調達を分散させたい場合
リード投資家は、事業を成長させたいスタートアップ企業にとって心強い存在です。しかし、出資比率の高さから企業に対する影響力が強まる懸念として挙げられます。そのため、資金調達先を分散させ、特定の投資家の影響力の偏りが生じないよう、あえてリード投資家を置かない場合もあります。
リード投資家は資金調達をけん引する投資家
スタートアップ企業が成長していくためには、効果的な資金調達方法を確保しておくことが不可欠です。
その選択肢の一つとして、リード投資家やフォロー投資家からの出資を受ける方法があります。リード投資家は、資金調達ラウンドをけん引し、企業の成長を多面的に支援してもらえる貴重な存在です。適切な投資家を見極め、長期的な視点で良好な関係を築くことが、将来の事業拡大につながるでしょう。
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