• 更新日 : 2025年3月7日

組合の法人登記は必要?メリットデメリット、手続きを解説

労働組合や協同組合などの組合組織は、法人化することで有利に働くことはあるのでしょうか。そもそも組合とはどのような組織なのか、法人化することでどのような変化があるかを理解しておくことが大切です。

本記事では、組合が法人化するメリットと手続きの際に知っておきたいこと、法人化までの手続き、注意点についてご紹介します。

組合は法人ではない?

組合とは2人以上の人が、共同の目的を達成するために結成する組織のことを指します。例えば、労働者たちが雇用主と交渉して労働条件や就業環境の改善などを目指す労働組合、マンションの住民が自分たちの生活の維持や改善を目的にマンションの管理を共同で行う管理組合、複数の事業者が単独では行うことが難しい事業を共同で行う企業組合、商店街の事業者などが商店街の振興を目的としたイベントなどの事業を担う商店街振興組合など、さまざまな組合が存在します。

一方、法人とは法律によって個人(自然人)と同じ権利義務が与えられた組織のことです。株式会社や合同会社などと同じように、組合組織に関しても法人として活動することが可能です。

 組合の法人登記は必要?

法人登記が必要かどうかは組合の種類によって異なります。例えば、労働組合やマンション管理組合などは登記手続きを行う必要はありません。一方で、事業協同組合、漁業協同組合、農業協同組合、有限責任事業組合(正式名称:Limited Liability Partnership、略称:LLP)などの組合は登記手続きが義務付けられています。なお、労働組合や管理組合であっても法人格として活用することは可能です。

組合を法人登記するメリット

組合を法人化することで、以下のようなメリットを得られます。

組合名義で不動産を購入できる

法人化していない組合でも、理事長の個人名義で不動産を取得することは可能です。しかし、不動産の所有者が組合を脱退する場合、所有権の移転登記をするため、手間と費用がかかりますまた、理事長が死亡した場合、相続の問題が発生し、移転登記手続きが困難になるケースもあります。組合を法人化すれば組合の名義で土地を購入できるようになるため、移転登記や相続などの手間や費用がかからなくなります。

組合名義の銀行口座を開設できる

法人化すれば銀行口座に関しても組合名義で開設することが可能です。非法人の場合は理事長など個人の名義で開設しなければならないため、交代時に名義変更手続きを行わなければなりません。また、銀行口座に関しては名義人が死亡した場合は凍結されてしまい、遺産分割が決定するまで預金が引き出せない状態になりますが、組合名義であればそのリスクと手間を避けることができます。

社会的信用が高くなる

組合員が主体となる非法人の組合よりも、組織が主体となる法人の組合のほうが社会的信用力は高いとみなされます。例えば、銀行で融資を受ける際、企業と新しく取引をする際にも法人のほうが有利と言えるでしょう。

組合を法人登記する際に知っておきたい点

組合を法人化することで得られるメリットがあるとともに、手続きを進める際には以下の点を知っておきましょう。

登記手続きに手間と費用がかかる

法人化するためには定款をはじめとした必要書類を作成し、法務局で登記手続きを行わなければならないため、手間がかかります。定款の認証費用や登記手続きの際にかかる登録免許税、手続きを司法書士へ依頼する場合は報酬などのコストがかかるでしょう。依頼先によって金額は異なりますが、目安として20万~25万円程度が必要です。

変更手続きを行わなければならない

組合を法人化した場合、所在地や代表者などの登記事項に変更があった場合は変更登記手続きを行うことが必要です。そのため、手続きに手間と費用がかかります。また、任期が満了して理事長が再任されたという場合も変更登記手続きが必要です。その都度、司法書士に手続きを依頼すれば、費用がかさむでしょう。

組合を法人登記する手続き

組合を法人化するまでには主に以下のような準備や手続きを行う必要があります。

  • 発起人を集める
  • 法人の概要の決定
  • 法人の印鑑作成(※任意)
  • 定款の作成・認証
  • 創立総会を開く
  • 出資金の払い込み
  • 登記申請書類・必要書類を準備
  • 法人登記手続き

組合の種類や形態によって異なりますが、組合を法人として設立するまでの期間は、事業協同組合の場合は4カ月から6カ月程度、マンションの管理組合は1週間から10日程度と言われています。法人化の流れについては、厚生労働省でも掲載していますので、以下のリンクをご参考にしてください。

参考:厚生労働省|知りたい!労働者協同組合法

組合を法人登記する際の注意点

組合を法人化する際には以下の点に注意して準備を進めていきましょう。

 本当に法人化する必要があるかどうかを検討する

前述の通り、法人化するためには手続きが必要であり、コストもかかります。組合名義で不動産の売買や銀行口座の開設ができると、社会的な信用が向上し資金調達や取引が容易になるメリットがありますが、一部の組合組織を除いては必ずしも法人化しなければならないということはありません。組合で不動産を購入する、事業規模を拡大する、大きな取引をすることがなければ、あえて非法人の組合として存続するという方法も一つの手です。今一度手間やコストをかけてでも法人化すべきかどうか検討してみましょう。

発起人を集めて合意を形成する必要がある

株式会社や合同会社などの法人は一人でも設立できますが、例えば、労働組合は2人以上、労働者協同組合(組合員が出資し、地域における多様なニーズに応じた事業ができる組合)は3人以上の発起人が必要です。また、あらかじめ定款の記載事項や役員の役割分担、意思決定の方法などについて発起人の間で合意を得ます。

必要書類をもれなく準備する

法人登記手続きには登記申請書や定款、登録免許税の収入印紙を貼付した台紙、出資金の払込証明書など、複数の書類を準備しなければなりません。また、定款については発起人が公証人役場に出向き、公証人に認証してもらう必要があります。もし、書類手続きにおいて気がかりなことがあれば、司法書士などの専門家にサポートを依頼しましょう。

組合の法人登記に役立つひな形・テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、組合向けの法人登記に役立つひな形・テンプレートを提供しています。以下のリンクから無料でダウンロードできるため、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。

組合が事業を拡大する場合は法人化という選択肢もあり

本記事では、組合組織が法人化するメリットや知っておきたい点、手続き、注意点についてご紹介しました。これから組合として事業を拡大したい、不動産の購入や大きな取引を行う予定があるといったケースは、法人化することで有利に働く可能性もあります。

ただし、法人設立時や役員の変更時などに手続きの手間やコストがかかるため、その点を踏まえたうえで判断することが重要。本記事を参考に、ご自身が置かれている状況を鑑みて、法人化するかどうか検討しましょう。


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