• 作成日 : 2025年3月7日

有料老人ホームの設立時は届出・許認可が必要?提出までの流れも解説

有料老人ホームを設立する場合、許認可や届出が必要です。本記事では介護施設を設立する際に届出が必要となるケースと提出までの流れ、注意点について解説します。これから有料老人ホームの設立を考えられている福祉法人の方は、ポイントをぜひ押さえておきましょう。

有料老人ホームの設立時は届出が必要

結論からいうと有料老人ホームを設立する際は、届出の作成と提出が必要です。まずは有料老人ホームの定義や、他の介護施設との違い、届出が必要な理由について見ていきましょう。

有料老人ホームの定義

有料老人ホームとは、老人福祉法第29条第1項に基づき、高齢者の心身の健康保持や生活の安定のために設置される介護施設のことです。要件を満たした高齢者は有料老人ホームに入居することができ、食事や介護(入浴、排泄、食事)の提供、洗濯や掃除などの家事の供与、健康管理といった福祉サービスを受けられます。これは、介護保険制度の「特定施設入居者生活介護」に該当し、介護保険の給付対象です。

有料老人ホームとサ高住の違い

有料老人ホームと似たような施設としてサービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)というものがあります。高齢者が入居して介護サービスを受けられるのは両者とも共通していますが、サ高住はどちらかといえば要介護度が軽微な高齢者のための施設です。また、自立している高齢者も入居が可能であり、食事の提供や生活のサポートを受けることができます。

サ高住の住環境は介護保険制度の対象外であり、入居中に介護が必要になった場合、外部の訪問介護事業者と契約し、介護サービスを受けることが可能です。介護事業者で提供されているサービスについては介護保険が適用されます。介護施設というよりは生活支援といった身の回りの面倒を見てもらえるといった特性と言えるでしょう。

有料老人ホームと老人福祉施設の違い

老人福祉施設とは高齢者の生活を支えることを目的として、老人福祉法第5条の3に基づき設置される福祉施設の総称です。養護老人ホームや特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設などが該当します。なお、今回のテーマとなっている有料老人ホームは老人福祉施設には該当しません。

有料老人ホームの設立時は老人福祉法で届出が義務付けられている

前述の通り、有料老人ホームは老人福祉法に基づいて運営されています。老人福祉法第29条1項では有料老人ホームを設置する際には、あらかじめ、その施設を設置しようとする都道府県知事に届出をすることが必要です。

有料老人ホームの届出を提出するまでの流れ

有料老人ホームの届出を提出するまでには主に以下の4つの段階を経る必要があります。

都道府県に事前協議申出書を提出する

有料老人ホームを設置するためには、まず設置予定地の市区町村の担当部署(福祉課など)に相談し、その後、都道府県と事前協議を行わなければなりません。事前協議申請書を提出しましょう。フォーマットは都道府県のホームページからダウンロードできます。

都道府県が内容審査・事前指導を行う

事前協議申請書に基づき自治体が有料老人ホームの運営体制や施設の設備などに問題がないかを確認します。さらに、適正に運営されるよう指針に対する適合性を審査のうえ、指導が実施されます。なお、都道府県ごとに有料老人ホームの設置指導指針が定められているので、詳細内容を十分に把握して準備を進めましょう。設置指導指針も都道府県のホームページから閲覧可能です。

都道府県に届出を提出する

内容審査や事前指導が完了したら今度は都道府県の担当部署に有料老人ホームの設置届出を提出します。届出書の詳しい書き方は後ほどご紹介します。なお、届出は有料老人ホームの建築許可が下りたあと、もしくは建物を取得したあとに提出する必要があります。届出書の書式は各都道府県のホームページからダウンロード可能です。

設置届受理通知を受け取る

有料老人ホームの設置届が受理されたら、事業者に対して書面で受理通知書が送付され、晴れて有料老人ホームの開設ができるようになります。

有料老人ホームの届出の書き方・記載例

ここからは東京都福祉局が用意している届出書の書式をもとに、届出書の書き方や記載例をご紹介します。都道府県ごとに書式は異なりますが、おおむね記載すべき内容は共通しています。

引用:有料老人ホームの届出について|東京都福祉局

日付

有料老人ホーム設置届を提出する日付を記載します。

氏名・住所・押印

有料老人ホームの代表者の氏名、住所を記載し、押印します。

施設の名称及び設置予定地

有料老人ホームの名称と設置する住所を記載します。

事業開始の予定年月日

有料老人ホーム事業を開始する日を記載しましょう。事前協議申出書の提出から開設届出の受理まで期間がかかるため、余裕をもって準備をしておくことが大切です。

施設の類型

施設の類型について記載するか、選択式になっている場合は◯を付します。

施設の運営の方針

有料老人ホームで提供するサービスの内容や対象者を記載します。

施設の管理者の氏名及び住所

有料老人ホームの管理責任者の氏名と住所を記載します。

建物の規模及び構造

建物の用途と構造、耐火建築物・準耐火建築物のどちらに該当するか、規模(階数)を具体的に記載します。

入居定員および居室数

入居者の定員と居室の数を記載します。

有料老人ホームの届出を提出するときの注意点

有料老人ホームの届出書を作成する際には以下の点に注意しましょう。

厚生労働省の設置運営標準指導指針を事前に確認する

前述の通り、有料老人ホームは老人福祉法に基づいて設置される施設であり、介護保険制度の適用対象です。そのため、厚生労働省の設置運営標準指導指針に準拠して設置・運営する必要があります。事前に抜け漏れなく確認し、それに基づいて準備を進めましょう。

なお、有料老人ホームの設置運営標準指導指針については厚生労働省の以下のサイトでご確認ください。

参考:厚生労働省|有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

設備基準や人員基準を満たしているか確認する

有料老人ホームを設置する際には、老人福祉法に基づき都道府県が定めた設備基準や人員基準を満たしている必要があります。上記の有料老人ホーム設置運営標準指導指針のほか、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」「指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準」という基準を満たした設備や体制を整える必要があります。

未届施設は老人福祉法違反となる

届を提出せず有料老人ホームを開設・運営した場合、老人福祉法第29条の違反に該当し、30万円以下の罰金が科される可能性があります(老人福祉法第40条第1項)。また、改善命令に違反した場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金、事業停止命令に違反する場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることもあるでしょう。

有料老人ホームを開設する際にはしっかりと届出をしましょう

有料老人ホームは、老人福祉法に基づいて都道府県のルールに従って開設・運営する必要があります。入居者の安全や職員の働きやすい環境を確保するためにも、基準を満たした施設づくりを心がけ、自治体と抜け漏れがなく、すり合わせを行ったうえで届出をしましょう。これが有料老人ホームをオープンする第一歩となるでしょう。


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