• 作成日 : 2025年5月15日

開業の創業融資にプロパー融資は難しい?メリット・デメリット、審査基準を解説

プロパー融資は、銀行が独自に審査し保証なしで貸し出す融資です。信用力が重視されるため創業期の活用は難しいものの、事業が安定すれば有力な選択肢となります。本記事では、プロパー融資の特徴や審査基準、他の融資制度との違いを解説し、創業者に適した資金調達方法を紹介します。

プロパー融資とは?創業融資で使える?

プロパー融資とは、金融機関が自己資金で独自の審査基準に基づいて行う融資制度です。信用保証協会の保証を利用せず、銀行が全額リスクを負うのが特徴で、貸し倒れリスクを考慮し、審査が厳しくなります。「プロパー」とは「本来の」という意味を持ち、金融機関が本来の融資業務として実施するものです。

創業融資としてプロパー融資を受けることは理論上、可能ですが、実績のない創業期ではハードルが高く、審査の通過は難しいのが現状です。ただし、起業家の過去の経営経験や信用力、事業計画の説得力によっては融資が実行されるケースもあり、特に地域密着型の金融機関では創業支援の一環としてプロパー融資を提供する場合があります。

参考:千葉銀行 ちばぎん地方創生融資制度
参考:京都信用金庫 「ここから、はじまる」シリーズ

創業時にプロパー融資を受けるのは難しい

創業時にプロパー融資を受けることは、現実的には非常に難しいケースがほとんどです。金融機関は融資審査の際に、事業実績・財務データ・安定したキャッシュフローを重視しますが、創業直後の企業はこれらを証明できません。そのため、金融機関にとってリスクが高く、融資判断が厳しくなりがちです。

また、多くの金融機関では「創業後3年以上の事業実績」を融資条件として設定しており、それ以前の審査はさらに厳しくなる傾向があります。そのため、創業時の資金調達としては、日本政策金融公庫の新規開業資金や信用保証協会の保証付き融資を活用し、事業実績を積んだ後にプロパー融資へと移行するのが一般的な流れです。

創業初期からプロパー融資を目指す場合、強固な事業計画と市場分析が不可欠です。特に、銀行との取引実績を積みながら信用力を高めることが、将来的にプロパー融資を受けるための重要なステップとなります。

プロパー融資とその他の融資との違い

企業が資金調達を検討する際には、プロパー融資だけでなく、新規開業資金や信用保証付き融資などの選択肢もあります。これらの融資方法は、審査基準や保証の有無、金利条件、創業期における利用のしやすさなどが異なるため、事業状況に合わせた適切な資金調達手段を選ぶことが重要です。

ここでは、プロパー融資とその他の融資の特性を比較し、創業者にとってどの融資が適しているのかを解説します。

プロパー融資とその他の融資の比較

プロパー融資は、銀行が独自に審査を行うため、安定した売上や取引実績がある企業に適しています。高額の資金調達が必要な場合や、信用保証協会を利用せずに融資を受けたい場合に利用されます。

日本政策金融公庫の新規開業資金は、創業1年以内で実績のない企業向けに設計されており、低金利かつ無担保・無保証で借りやすい点が特徴です。

一方、信用保証付き融資は、創業2〜3年の企業や、財務基盤がまだ安定していない場合に適しています。信用保証協会が保証することで銀行のリスクを軽減できるため、融資審査が通りやすくなるというメリットがあります。

このように、各融資の特徴を理解し、自社の状況に適した方法を選択することが重要です。

以下の表で、それぞれの融資の主な違いを比較します。

項目プロパー融資日本政策金融公庫の新規開業資金信用保証付き融資
審査基準厳しい(銀行独自審査)比較的緩やか(創業者向け)中程度(信用保証協会の審査あり)
保証人・担保必要な場合が多い原則不要(必要な場合もあり)信用保証協会の保証が必要
金利比較的高い低め(政策金利)中程度
保証料なしなし信用保証協会への保証料が必要
創業時の利用可能だがハードルが高い可能(新創業融資制度など)可能(保証協会の創業保証制度)

プロパー融資のメリット・デメリット

プロパー融資は、保証料が不要であり、金融機関と直接交渉できるメリットがあります。しかし、審査基準が厳しく、事業実績のない創業期には利用が難しいというデメリットも存在します。

プロパー融資を検討する際には、他の融資方法と比較検討し、自社の資金調達戦略に最適であるかを慎重に判断することが重要です。ここでは、プロパー融資の主なメリットとデメリットについて詳しく解説します。

プロパー融資のメリット

プロパー融資には、保証料が不要であり、融資条件に柔軟性があるという利点があります。特に、金融機関との信頼関係を築くことで、長期的な資金調達の選択肢が広がります。主なメリットは以下のとおりです。

  1. 保証料が不要:信用保証協会を利用しないため保証料は発生せず、一般的な信用保証付き融資で必要となる融資額の約0.5〜2.2%の保証料も不要です。
  2. 融資条件の柔軟性:返済期間や金利、融資額を金融機関と交渉でき、公的融資のような一律の条件ではなく、事業内容に応じて調整できます。
  3. 迅速な融資実行(取引状況による):公的機関を介さないため、取引実績のある銀行では審査がスピーディーです。ただし、新規取引の場合は時間がかかるため、事前相談が重要です。
  4. 金融機関との関係強化:プロパー融資を受けることで金融機関からの信用が向上し、継続的な融資や経営支援を受けやすくなります。

プロパー融資のデメリット

一方で、プロパー融資は審査基準が厳しく、特に創業期の企業にとってはハードルが高い面もあります。主なデメリットは以下のとおりです。

  1. 審査基準が厳しい:金融機関が全額リスクを負うため、審査は厳格に行われ、創業期や業績が安定しない企業が通過するのは難しくなります。
  2. 担保や保証人が必要なケースが多い:不動産担保や経営者の連帯保証を求められることが一般的です。
  3. 金利が比較的高い:日本政策金融公庫の新規開業資金創業融資(1.0%から3.0%台)と同様の範囲ですが、特定の条件や銀行によってはさらに高くなることがあります。また、政策金利の影響を受けて変動する可能性があります。
  4. 創業期には利用しづらい:事業実績を重視するため、創業直後の企業にとっては審査のハードルが高くなります。

創業後にプロパー融資を受けるタイミングや準備

プロパー融資では、金融機関が全額リスクを負担するため、創業間もない企業にとっては利用が困難な傾向にあります。しかし、事業の安定性が増し、一定の条件を満たすことで融資を受けられる可能性は高まります。

たとえば、継続的な黒字決算、安定した資金繰り、金融機関との取引実績などが重要な判断基準です。ここでは、プロパー融資の申請に適したタイミングと、審査通過のための効果的な準備について詳細に解説します。

プロパー融資を受けるのに適したタイミング

プロパー融資を受けるには、金融機関の審査基準を満たし、返済能力を証明できる状態であることが重要です。以下の条件を確認した上で、金融機関と相談しながら融資を検討しましょう。

  1. 創業後2〜3年以上経過:多くの金融機関では、2〜3年の事業実績を融資判断の基準としています。
  2. 継続的な黒字決算:直近2期以上の黒字決算が望ましく、安定した収益の確保が評価されます。
  3. 安定したキャッシュフロー:季節変動のある業種においては、計画的な資金繰り管理と対策が求められます。
  4. 明確な設備投資・事業拡大計画:投資計画の具体性と資金用途の合理性が高く評価されます。

また、金融機関との定期的なコミュニケーションを通じて事業状況や資金計画を共有しておくことで、審査時にスムーズな対応が期待できます。

プロパー融資の審査を通過するための準備

プロパー融資の審査を通過するには、事業の安定性と返済能力を証明する準備が重要です。以下のポイントを押さえることで、融資獲得の可能性を高められます。

  1. 自己資金の確保:必要資金の20〜30%程度の自己資金を用意しておきます。
  2. 事業計画書の作成:3〜5年の売上・利益計画と資金用途を明確に示し、説得力のある計画を立てます。
  3. 財務諸表の整備:過去2〜3年分の決算書貸借対照表損益計算書)、資金繰りや売上推移を示す補足資料を準備します。
  4. 資金繰り表の作成:直近1年分の月次資金繰り表で、将来の返済計画を明示します。
  5. 担保・保証人の準備:不動産担保や保証人が必要となるケースを想定し、事前に対応策を講じておきます。
  6. 取引実績の構築:口座開設や日常取引を通じて、金融機関との信頼関係を築きます。
  7. 経営者の信用情報管理:クレジット履歴や借入状況を確認し、個人の信用に問題がないか確認しておきます。

これらの準備を整えることで審査のハードルが下がり、融資担当者からの評価も高まります。また、必要書類を事前に揃えておけば、申請後の手続きもスムーズに進み、融資実行までの時間短縮につながります。

融資の審査をスムーズにする事業計画書のポイント

創業融資を成功させるためには、金融機関が求める内容を網羅した事業計画書が不可欠です。プロパー融資を申請する際には特に、事業の具体的な目的や将来の収益見込み、資金調達の具体的計画が要求されます。このタイプの融資では、事業計画書を通じて資金提供者に事業の将来展望を納得させることが重要です。

事業計画書の作成には、決まったフォーマットはありませんが、基本的な記載項目を押さえることが重要です。創業の動機、提供する商品やサービス、資金調達の方法、事業の将来展望などを具体的に記述することが必要です。

詳細な書き方や業界別のテンプレートは、以下のサイトで確認できます。

事業計画書・創業計画書のテンプレート一覧

以下のリンク先では、70以上の業界別テンプレートが提供されています。各テンプレートは具体例を交えながら、異なる業界に特化した事業計画書の作成方法を詳しく解説しています。自分のビジネスに最適なテンプレートを選んで、事業計画書の作成にご活用ください。

創業融資以外で検討したい助成金・補助金

創業時には、助成金や補助金を上手に活用することで、事業の安定化や成長を実現できます。ただし、これらは後払いが一般的であり、事業開始時には自己資金で進める必要がある点に注意が必要です。

また、助成金や補助金は、国や地方自治体が提供する返済不要の支援制度ですが、各制度には特定の要件があります。これらの要件を満たすことが受給の条件となるため、事前の確認が重要です。

以下では、創業時に利用可能な助成金・補助金を紹介します。各制度の詳細は変更される可能性もあるため、最新情報を確認し、自社の事業に合った支援を選んで検討しましょう。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や個人事業主を対象に、販路開拓や業務効率化を支援する補助金です。2025年度は「一般型」「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」の4つの類型に整理されています。

販路開拓の取り組みなどの経費が対象となるもので、一般型(通常枠)の場合、補助上限は50万円(インボイス特例適用で最大100万円)、補助率は2/3です。「創業型」枠では、創業後3年以内の事業者に最大200万円の補助が可能です。

申請には商工会議所や商工会の支援を受けながら経営計画を作成し、電子申請または郵送で提出します。電子申請が推奨されています。2025年度は経営計画の策定が重視されており、持続可能な成長戦略の立案が欠かせません。

参考:商工会地区小規模事業者持続化補助金事務局 小規模事業者持続化補助金【一般型・通常枠】

IT導入補助金

顧客管理システム(CRM)や予約管理システム、会計ソフトなどの導入が対象となります。通常枠では補助率1/2、補助額5万円〜450万円ですが、インボイス枠では小規模事業者に対し最大4/5の補助が出ます。

申請にはgBizIDプライムアカウントの取得やSECURITY ACTIONの実施が必要です。IT導入支援事業者と連携し、自社の課題に合ったITツールを選定・導入することで、業務効率化や生産性向上、セキュリティ強化に繋げられます。

参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 IT導入補助金2025

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、従業員の職務関連スキル向上を目的とした職業訓練を実施する事業主を支援する制度です。訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成され、2025年度は「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」など6つのコースが設けられています。

対象となる訓練には、OFF-JTやOJT、e-ラーニングなどがあり、デジタル人材育成やリスキリング支援など時代に即したコースも用意されています。助成率は最大75%で、申請には職業能力開発推進者の選任や訓練計画の作成・届出が必要です。この制度を活用することで、企業は人材育成コストを抑えつつ、生産性向上や競争力強化を図れます。

参考:厚生労働省 人材開発支援助成金

中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金は、中小企業が人手不足を解消し、生産性を向上させるために、IoTやロボットなどの省力化製品を導入する際に支援する制度です。作業の自動化や業務効率化を目的とした設備投資に活用でき、特に労働集約型の業種に適しています。

補助率は1/2以下で、従業員数に応じて補助上限額が異なり、最大で1,500万円まで支給されます。この補助金は、企業の付加価値向上や賃上げを促進することが目的です。

参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業省力化投資補助金

新事業進出補助金

新事業進出補助金は、中小企業の新分野展開や事業転換を支援する制度です。2025年の補助率は2分の1、補助上限額は従業員数に応じて2,500万円から9,000万円となっています。補助対象経費には建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、広告宣伝費などが含まれます。

参考:中小企業庁 中小企業新事業進出補助金

プロパー融資の活用には準備がポイント

プロパー融資は、信用保証協会を利用せず、金融機関が独自に審査を行う融資制度です。創業直後の利用は難しいものの、事業の安定化や金融機関との取引実績を積むことで、活用の可能性が高まります。

融資の成功には、事前準備と金融機関との関係構築が不可欠です。適切な資金調達戦略を立て、事業成長に活かしましょう。


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