• 作成日 : 2025年3月27日

不動産業の創業融資の借入先はどこがおすすめ?資金の目安や創業計画書の書き方を解説

不動産業の創業融資は、起業・開業の際に事業者が受けられる融資です。不動産業の開業に利用できる創業融資はさまざまな種類がありますが、要件や申請期間等が異なります。

今回は、不動産業の創業融資でおすすめの借入先や開業資金の目安、創業計画書の書き方について解説します。

不動産業とは

不動産業には4つの事業形態があり、それぞれビジネス特性や参入障壁等が異なります。ここでは、不動産業の事業形態について詳しく解説します。

不動産仲介業(賃貸・売買)

不動産仲介業は、不動産の売買や賃貸を仲介する事業形態です。

不動産仲介業は、仲介対応で得た「仲介手数料」が主な収入源です。不動産仲介業は、業界未経験者が不動産会社を起業する場合におすすめの事業形態といわれています。

ただし、賃貸や売買の仲介業務はどちらも宅地建物取引業に該当するため、国家資格の宅地建物取引士と宅地建物取引業免許が必要です。

また、不動産仲介業は小資本で起業できますが、その分競合他社が多くなる傾向があります。不動産業の創業を成功させるには、他社との差別化や集客が重要です。

不動産賃貸業

不動産賃貸業は、自社で所有する物件や土地、駐車場を第三者に貸し出す事業形態です。

不動産賃貸業の主な収入源は、賃料です。不動産賃貸業の創業に必要な資格や届出はなく、不動産を購入する資金があればいつでも始められます。不動産管理業者に不動産管理業務を委託することで、運用の手間を必要最低限に抑えられるのも特徴です。

所有する物件数にもよりますが、副業や個人事業主として不動産賃貸業を始める方も多く存在します。

賃貸管理業

賃貸管理業は、アパートやマンション等の賃貸物件を所有者に代わって管理する事業形態です。

具体的には、賃貸物件の家賃回収や共用部分の管理、設備の点検・保守、修繕計画の立案、入居者からのクレーム対応等を請け負います。不動産管理業の主な収入源は管理手数料で、管理している室数が多いほど高い利益を得られるのが特徴です。

不動産の管理業務だけであれば、宅地建物取引士の資格取得は必要ありません。場合によって、賃貸不動産経営管理士や管理業務主任者など管理にかかわる資格取得が必要です。また、管理戸数が200戸以上の場合、賃貸住宅管理業登録が義務付けられています。

不動産開発業

不動産開発業は、地盤改良や造成工事をした土地を分譲地として売り出したり、戸建てやマンション等を建築して分譲販売したりする事業形態です。

土地を開発する事業者であるため「デベロッパー」とも呼ばれています。不動産開発業の主な収入源は、土地または建物の売却代金です。その売却代金から、土地取得費用や整地費用、建設費用を差し引いた金額が会社の利益となります。

業界未経験者が不動産会社を起業する場合、戸建てやマンションを取り扱う方が多い傾向です。

不動産業の開業資金の目安

ここからは、不動産仲介業の開業資金・運転資金の内訳と目安について詳しく解説します。

開業資金

不動産仲介業の開業にかかる費用は、400万〜1,000万円といわれています。不動産仲介業の開業資金の内訳と目安を確認していきましょう。

【法人設立費用

会社を設立する場合、法人設立費用がかかります。会社形態はさまざまな種類がありますが、株式会社の設立費用は24万2,000円が目安です。

法人設立費用の内訳は、以下のとおりです。

【株式会社の場合】

  • 登録免許税:15万円
  • 定款の認証手数料:5万円
  • 定款の謄本手数料:4万円
  • 収入印紙代:2,000円

【事務所開設費】

事務所開設費は、320万〜550万円が目安です。

事務所開設費の内訳は、以下のとおりです。

  • 初期費用: 200万円程度(敷金・礼金、仲介手数料、火災保険料等)
  • 内装工事費用: 100万円~300万円(10坪で試算。坪単価10万~30万円程度)
  • 備品購入費用: 20万円~50万円程度(デスク・書類棚・パソコン・事務用品等)

事務所の要件や備品が揃う自宅で開業する場合、事務所開設費はほとんどかかりません。

【宅建業者免許申請料】

宅地建物取引業を営む場合、宅地建物取引業法に基づいて国が定めた宅地建物取引業免許が必要です。

宅地建物取引業免許は以下の2種類がありますが、それぞれ申請料が異なります。

宅地建物取引業免許の種類申請料
都道府県知事免許(1つの都道府県で事務所を開設する場合)3万3,000円
国土交通大臣免許(2つ以上の都道府県で事務所を開設する場合)9万円

県をまたいで事務所を設置する場合は、国土交通大臣免許を取得する必要があります。

参考:国土交通省 宅地建物取引の免許について

【営業保証金】

営業保証金とは、宅地建物取引業の免許取得後に最寄りの供託所に預ける供託金です。

営業保証金を供託することで、宅建業者が消費者に損害を与えた場合に供託している金額の範囲内で、その損害を補償してくれます。営業保証金の供託は、すべての不動産会社に義務付けられています。

営業保証金の金額は、以下のとおりです。

  • 本店:1,000万円
  • 支店:500万円

なお、保証協会に加入すると、営業保証金が減免される弁済業務保証分担金制度があります。宅建業者が支払う分担金の金額は「本店60万円・1支店につき30万円」で、未加入の場合と比べて営業保証金が抑えられるのが特徴です。

【保証協会の費用】

保証協会への入会は任意です。ただし、保証協会に加入することで営業保証金が減免されるため、金銭的な負担を抑えられます。保証協会の入会費用は、120万〜180万円が目安です。

保証協会は大きく分けて以下の2つがあります。

  • 全国宅地建物取引業協会連合会:130万~180万円程度
  • 全日本不動産協会:120万~150万円程度

費用は、加入する協会や加入月、地域によって異なります。

参考:全国宅地建物取引業協会連合会
参考:公益社団法人 全日本不動産協会 

【宅地建物取引士の登録手数料】

宅建士試験の合格者が宅地建物取引士として業務に従事する場合は、受験した試験地の都道府県で資格登録を受ける必要があります。

宅地建物取引士の登録手数料は、3万7,000円です。なお、宅地建物取引士の更新時には、交付申請手数料4,500円がかかります。試験合格後1年経過している場合は法定講習の受講が必要なため、法定講習受講料として1万2,000円が別途必要です。

参考:全国宅地建物取引業協会連合会
参考:公益社団法人 全日本不動産協会 

運転資金

不動産業の開業に備えて、運転資金も準備する必要があります。ここからは、不動産業に必要な運転資金の目安を確認していきましょう。

運転資金とは、開業後にかかる費用です。

具体的には、賃料や水道光熱費通信費交通費、備品購入、広告宣伝費、人件費等が含まれます。開業当初は期待した集客が見込めず、売上が少ない時期が続くことが多いです。資金繰りが苦しくなる場合があるため、3ヶ月程度の運営資金を用意しておくと安心です。

【広告宣伝費】

新規顧客を獲得するために広告を出稿する場合は、広告宣伝費が発生します。

広告費は集客方法で異なりますが、有料の広告を出稿する場合は数百万円かかる場合も多いです。広告費を抑えるためには、有料の広告だけでなく、YouTubeやInstagramなど無料で使えるSNSをうまく活用して集客を図ることが重要です。

【人件費】

人件費は雇用する従業員数で変わりますが、開業にあたって営業担当者と事務員の確保は必須です。1人当たりの人件費の目安は、以下のとおりです。

  • 月給:20万円~
  • 賞与:40万円~
  • 交通費:1万円程度

また、不動産業を開業する場合、事業所ごとに従業員5人に1人の割合で宅地建物取引士を設置しなければいけません。宅地建物取引士の保有者を雇用する場合は、さらに人件費がかかります。

不動産業の創業融資を受けるための要件

創業融資とは、起業・開業の際に事業者が受けられる融資です。

創業融資制度は数多くありますが、新たに事業を始める方または事業開始後7年以内の方を対象にする制度が多い傾向にあります。一方で、融資限度額や金利等の融資要件は借入先によって大きく異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

また、創業融資の申請時は、事業概要や資金調達方法、事業の見通し等を記載した創業計画書の提出が求められます。融資審査に影響する重要な書類であるため、融資担当者を納得させる具体的かつ実現可能性のある創業計画書を作成することが必要です。

不動産業の開業に利用できる創業融資

ここからは、不動産業の開業に利用できる創業融資概要について確認していきましょう。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、中小企業者や小規模事業者等の資金調達を支援する政府系金融機関です。日本政策金融公庫が資金調達を支援することで、民間の金融機関の取り組みを補完する目的があります。

さまざまな支援制度がありますが、開業に利用できるのは「新規開業資金制度」です。

【新規開業資金制度の概要】

対象者新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金 20年以内

運転資金 7年以内

日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者の資金調達に力を入れているため、創業初期でも融資の審査が比較的通りやすい傾向にあります。

参考:日本政策金融公庫
参考:新規開業資金

自治体の制度融資

制度融資は、信用保証協会・民間の金融機関・自治体が連携して資金調達を支援する制度です。主な支援対象は創業して間もない中小企業や個人事業主で、地方自治体の協力で円滑な資金調達を目指しています。

【制度融資(東京都)の概要】

制度名都創業融資
対象者1ヶ月以内に新たに個人、または2ヶ月以内に会社を設立して都内で創業する具体的計画がある方

創業した日から5年未満の中小企業者

分社化の予定がある会社、または分社化の設立日から5年未満の会社

融資限度額3,500万円
返済期間運転資金 7年以内(据置期間1年以内を含む)

設備資金10年以内(据置期間1年以内を含む)

制度融資は、地方自治体・信用保証協会・金融機関の3者がそれぞれ審査します。地方自治体の協力や信用保証協会の保証を得られるため、創業初期でも比較的審査を通過しやすいのが特徴です。

参考:東京都信用保証協会 都創業融資

日本政策金融公庫の創業計画書の書き方

不動産の創業融資で日本政策金融公庫を利用する場合、創業計画書の提出が必要です。ここでは、創業計画書の記載内容と書き方について解説します。

記載内容

日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード

出典:日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード

創業計画書には、以下の項目を記載します。

  • 創業の動機
  • 経営者の略歴等
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係等
  • 従業員
  • お借入の状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

各項目の記載内容について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

書き方のポイント

創業計画書は、全体の整合性が重要です。経営方針や資金計画など創業計画の内容に矛盾がある場合、融資担当者に事業の実現性が低いと判断される可能性があります。

また融資担当者を納得させるには、具体的な数字を交えて根拠を示すことが必要です。売上高や利益額等の数字に無理があると説得力がなく、融資審査に影響が出る場合があります。

不動産業の開業資金として銀行から融資を受けられる?

開業資金の調達方法として銀行融資がありますが、審査が厳しいため、融資を受けられない可能性があります。

銀行融資が難しいのは、企業の経営実績やこれまでの銀行との付き合い等が考慮されるためです。実績のない新規企業に融資する事例は多くありません。創業初期でも融資の審査が通りやすい「新規開業資金制度」や「制度融資」を検討しましょう。

不動産業の開業資金の借入先にノンバンクの利用はおすすめ?

銀行融資が難しい場合は、ノンバンクを利用する方法もあります。

ノンバンクとは、預金業務は行わず融資業務に特化した銀行以外の金融機関です。具体的には、信販会社や消費者金融、クレジットカード会社などが挙げられます。銀行に比べて審査スピードが早く、即日融資の対応が可能です。また、借入審査に必要な提出書類が少ない傾向にあり、借入希望額によっては本人確認書類のみで利用できる場合もあります。

ただし、銀行に比べて金利が高いため、開業資金を集める手段として得策とはいえません。

不動産業の開業には創業融資の利用がおすすめ

不動産業の開業には多額の資金が必要なため、創業融資の利用を検討しましょう。

創業初期でも融資の審査が通りやすい制度が多く、業界未経験者が不動産会社を起業する場合でも利用しやすいです。ただし、融資を受けるには創業計画書の提出が必要になる場合があります。

融資審査に影響する重要な書類のため、創業計画書の書き方を事前に確認して融資担当者を納得させる内容にまとめましょう。


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