- 更新日 : 2026年1月14日
居抜き物件とは?メリット・デメリットや開業までの流れ、契約にかかる費用などを解説
これから店舗やオフィスの開業を検討している方にとって、初期費用を抑える選択肢として居抜き物件があります。居抜き物件とは、前のテナントの内装や設備が残された状態で借りられる物件を指し、ゼロから工事を行うスケルトン物件と比較してコストダウンが期待できます。
この記事では、居抜き物件の定義や造作譲渡の仕組み、契約前に知っておくべきメリット・デメリット、そして費用相場や開業するまでの流れについて、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
居抜き物件とは?
居抜き物件とは、前のテナントが使用していた内装・厨房機器・空調設備・家具などがそのまま残された状態で賃貸される物件のことです。
一般的に飲食店、美容室、クリニックなどで多く見られますが、オフィスでも居抜き物件があります。ゼロから工事を行うスケルトン物件と比較して、コストダウンと開業スピードの短縮が期待できるため、特に資金調達に限りがある個人開業や脱サラ起業において有力な選択肢となります。
居抜き物件とスケルトン物件の違いは?
スケルトン物件とは、内装設備が一切なく、建物の躯体(コンクリートの打ちっぱなしなどの構造体)がむき出しになっている状態の物件です。
居抜きとスケルトンの最大の違いは、設備・内装の有無とそれに伴う自由度とコストです。以下の比較表に整理しました。
| 項目 | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
|---|---|---|
| 内装・設備 | あり(前テナントのものを継承) | なし(コンクリート打ちっぱなし) |
| 初期費用 | 低い(工事費を抑えられる) | 高い(全設備の工事が必要) |
| 開業スピード | 早い | 遅い(設計・工事に数カ月) |
| レイアウト自由度 | 低い(既存設備に依存する) | 高い(ゼロから設計可能) |
| 解体費用 | 不要なものがある場合は費用がかかる | 不要(最初から何もないため) |
居抜き物件の造作譲渡契約とは?
居抜き物件を契約する際、賃貸借契約とは別に「造作譲渡契約」を結ぶのが一般的です。 これは、内装や厨房機器などの資産(造作)を、前のテナントから新しいテナントへ有償(または無償)で譲り渡す契約を指します。
- 造作譲渡料(譲渡金):設備を買い取るために支払う費用
- 無償譲渡:設備が古い場合や、前テナントが急いで退去したい場合など、0円で譲渡されるケース
造作譲渡において、ガス設備のように火災などで大きな責任問題に発展する恐れのある設備は、責任の所在を明確にするために契約不適合責任を契約上で明確にする必要があります。これにより、引き渡されたものが品質基準を満たしていない、故障や不具合があるなどの場合に、トラブルに備えます。
居抜き物件で開業するメリットは?
居抜き物件で開業するメリットは「金銭的コスト」と「時間的コスト」の削減にあります。
1. 開業資金(初期費用)を削減できる
大きなメリットは、居抜き物件をうまく活用すれば内装工事や設備導入コストを、スケルトン比で半額程度に圧縮できる点です。
飲食店の場合、例えば以下のような工事費用が削減対象となります。
- 厨房設備
- 厨房における防水工事、グリストラップ設置
- 吸排気ダクトの配管工事
- トイレやエアコンの空調設備
- カウンターや椅子・テーブル
2. 開業までの期間(工期)を短縮できる
居抜き物件によっては大掛かりな工事が不要なため、契約からオープンまでの期間を短縮できます。
スケルトンの場合、設計から施工完了まで3〜6カ月かかることも珍しくありませんが、状態の良い居抜き物件であれば、看板の架け替えやクリーニング程度で、1カ月以内に営業を開始できるケースもあります。
居抜き物件で開業するデメリットは?
一方で、居抜き物件で開業するデメリットも存在します。これらを理解せずに契約すると、後々トラブルの原因となります。
1. 内装やレイアウトの自由度が低い
既存の配管位置や厨房区画が決まっているため、動線や客席配置を自由に変更することは困難です。 無理に自分好みのデザインに変えようとすると、解体費用がかさみ、結果としてスケルトン物件より割高になるリスクがあります。「既存の形を活かせる業態かどうか」の見極めが必要です。
2. 設備の故障リスクとメンテナンス費用
譲り受ける設備はあくまで中古品です。開業直後にエアコンや冷蔵庫などの設備が故障し、予期せぬ出費が発生する可能性があります。
造作譲渡によっては、修理・交換費用はすべて自己負担となる可能性があるため、その費用を予算に組み込んでおく必要があります。
3. 前店舗のイメージが残る可能性がある
「前の店は美味しくなかった」「すぐ潰れた」といったネガティブなイメージが地域に残っている場合、新規客の獲得に苦戦する可能性があります。 外装や看板を刷新しても、地元住民には「前と同じ店」と認識される恐れがあるため、前店舗の撤退理由をリサーチすることが重要です。
居抜き物件の費用相場は?
居抜き物件の取得には、主に「物件取得費(敷金・礼金)」「造作譲渡料」「手直し工事費」の3つがかかります。造作譲渡料は、設備の年式や需給バランスにより幅があり、相場は100万円〜300万円くらいと言われています。
20坪の飲食店を開業する場合の概算シミュレーション
| 費目 | 居抜き物件(造作譲渡あり) | スケルトン物件 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 家賃の6~10カ月分 | 同左 |
| 外装・内装工事費 | 100万円〜(改装・看板等) | 500万円〜 |
| 厨房・設備費 | 100万円〜(造作譲渡料として) | 300万円前後(新品購入) |
※上記は一例であり、物件の状態やエリアによって変動しますが、外装・内装工事費や厨房・設備費を半額以下に抑えられるケースも珍しくありません。
居抜き物件で開業するまでの流れは?
居抜き物件での開業はスピード感が重要です。良い物件はすぐに埋まってしまうため、以下の手順を事前に理解しておきましょう。
1. 事業計画の策定と物件条件の整理
まずは「どんなお店をやりたいか」を明確にし、それに合う物件条件(エリア、広さ、予算)を書き出します。
居抜き物件は「既存の内装に自分たちの業態を合わせる」側面があるため、コンセプトがブレていると物件選びで迷走します。
- 予算計画:「物件取得費(敷金・礼金)」「造作譲渡料」「改装費」「運転資金」を算出します。
- 必須設備の洗い出し:重飲食(ラーメン・焼肉など)なら、防水床や強力な吸排気ダクトが必須条件となります。
参考:事業計画書の作成例 | 起業マニュアル | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
2. 物件情報の収集と現地調査
ネット上の情報だけでなく、実際に現地へ足を運び、設備の状態や周辺環境を自分の目で確かめましょう。可能であれば内装業者や厨房機器の専門家に相談しましょう。
- インフラ確認:電気(容量)、ガス(容量)、水道(排水管の太さ・グリストラップの有無や排水管の状態)などを確認。
- 設備チェック:厨房機器の型番、製造年、動作状況、故障の有無など。
- リース確認:店内にある機器にリース品が含まれていないか、管理会社に確認します。
飲食店の場合、契約前に管轄の保健所へ図面を持参し、「この内装レイアウトで営業許可が下りるか」を事前相談することをおすすめします。法改正などで、前の店はOKでも新規開業ではNGとなるケースがあるためです。
3. 入居申し込みと造作譲渡の交渉
気に入った物件があれば申込書を提出し、同時に前テナントと「造作譲渡」の条件交渉を行います。この段階で、家賃交渉だけでなく、設備をいくらで買い取るか(造作譲渡料)の交渉も行います。
- 造作リストの作成:何を譲り受け、何を撤去してもらうかを明確にした造作譲渡品のリストを作成します。不用品は処分してもらうよう交渉します。
- 価格交渉:設備の古さや修繕リスクを根拠に、譲渡料の減額を打診します。
4. 融資の申し込み
自己資金で足りない場合、日本政策金融公庫などの金融機関へ融資を申し込みます。
条件の良い居抜き物件は人気が高いため、審査に時間がかかると他者に取られてしまうリスクがあります。事業計画書を作り込んでおき、速やかに申請できるよう準備しておきましょう。
5. 契約締結
賃貸借契約と、造作譲渡契約の2つを締結します。ここでの注意点は、2つの契約の整合性です。
- 特約事項の確認:退去時はスケルトンに戻すのか、居抜きのままで良いのか、原状回復義務の範囲を最終確認します。
- 契約不適合責任:設備の故障などによる責任の所在を明確にしておく必要があります。内容をよく理解して署名しましょう。
6. 開業準備
鍵と設備の引き渡しを受けたら、直ちに開業準備に取り掛かります。
- 改装・清掃:看板の架け替え、クロスの張り替え、専門業者による厨房機器のメンテナンス・クリーニングなどを行います。
- 許認可申請:飲食店営業許可(保健所)、防火対象物使用開始届(消防署)、深夜酒類提供飲食店営業届(警察署 ※必要な場合)などを提出します。
- インフラ契約:電気・水道・ガスの名義変更と開通手続きを行います。
7. プレオープン・開業
オペレーションの確認を行い、いよいよグランドオープンです。
居抜きの場合、前の店のイメージが残っていることがあるため、近隣への挨拶回りやチラシ配りで「新しいお店になったこと」をしっかりアピールすることが重要です。
居抜き物件の開業で失敗しないためのポイントは?
契約後のトラブルを防ぐためには、内見時に設備の動作確認とリース契約の有無、そして退去時の原状回復義務や造作譲渡契約を入念に確認する必要があります。
ただ見るだけでなく、可能であれば専門業者や内装業者に同行してもらい、プロの視点でチェックすることをおすすめします。
1. 設備の動作確認と所有権
厨房機器や空調が正常に動作するか、実際に電源を入れて確認しましょう。また、それらの所有権が誰にあるのかを明確にします。
- 動作チェック:冷蔵庫の温度、シンクの水漏れ、換気扇の吸い込みなどを確認。
- 造作譲渡料:設備を買い取る費用が発生する場合、そのリストと現物が一致しているか確認します。
2. インフラ設備の容量(電気・ガス・水道)
新しい店舗の運営に必要な電気・ガス・水道の容量が十分に確保されているか、専門業者に見てもらうことが重要です。
- 電気:多くの厨房機器を使う場合、現在の容量で足りるか。
- ガス:飲食店の規模に対し容量が十分か。
- 水道:水圧や排水管の太さ、状態などは十分か。
容量が不足している場合、引き込み工事に追加で数十万〜数百万かかることがあるため、事前の確認が不可欠です。
3. リース契約の有無
残された設備の中にリース契約中のものが含まれていないか確認してください。
リース品(業務用冷蔵庫や食洗機など)は、所有権がリース会社にあります。勝手に譲渡を受けることはできず、「リース契約の引き継ぎ(残債の支払い)」が必要になるか、あるいは前テナントが解約して撤去してしまう可能性があります。リース品がある場合は必ずリース会社への確認が必要です。
4. 退去時の原状回復義務の範囲
将来お店を辞める際、「居抜きのままで良い」のか、「スケルトンに戻す必要がある」のかを賃貸借契約書で確認します。
居抜きで入居したとしても、退去時は「スケルトン返し」が条件となっている物件も多くあります。この場合、自分が設置していない設備も含めて解体処分する義務が生じ、多額の費用がかかるため注意が必要です。
参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国土交通省
居抜き物件の開業を成功させよう
居抜き物件とは、初期費用を抑えスピーディな開業を可能にする有効な手段ですが、設備リスクや契約内容の確認不足によるトラブルも潜んでいます。
成功のポイントは、以下の点をクリアにすることです。
- インフラ容量は足りているか(電気・ガス・水道)
- 設備は正常に動くか、リースではないか
- 居抜き料に見合う価値があるか
- 退去時の原状回復ルールはどうなっているか
一軒家カフェから本格的な飲食店まで、居抜き物件のメリットを最大限に活かすために、専門家を交えた入念な現地調査を行うことをおすすめします。まずは希望エリアの物件情報収集から始めてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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