• 更新日 : 2025年12月23日

役員(取締役や監査役)の任期は10年?変更や登記についても解説!

株式会社において、取締役や監査役など役員の任期を正しく理解し管理することは、ガバナンス維持と法令遵守の観点から重要です。任期は「役員として在任できる期間」を指し、満了時には重任や新任の登記が必要です

この記事では、役員任期の基本から例外規定、任期変更の方法や注意点などを解説します。

役員(取締役や監査役)の任期とは?

取締役や監査役など、株式会社の役員の任期とは、“それらの役職に就いている期間”のことです。一般的に、取締役の任期は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」、監査役の任期は「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です。

役員は、それぞれ任期が満了したら退任し、重任するか、あるいは新たな役員を選任して登記する必要があります。つまり、2年ごとに取締役を、4年ごとに監査役をそれぞれ重任または選任し、2週間以内に変更登記を申請する必要があります。しかし、中小零細のオーナー企業などの場合、役員が重任しても登記をし忘れ、そのまま放置しているケースもあるようです。

取締役の任期は通常2年

取締役の任期については、会社法第332条1項で以下の通り定められています。

取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない

多くの上場企業が取締役の任期を2年に定めていますが、中には1年に定めている上場企業もあります。

また、会社法第332条2項では以下のように定めています。

前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

引用:会社法|e-Gov法令検索

つまり、非公開の株式会社の場合、取締役の任期を10年まで伸長することを可能としています。

なお、同項は非公開の株式会社のみを対象としている点に注意が必要です。つまり、定款に株式の譲渡制限がない株式会社は会社法上「公開会社」に区分され、同項の適用対象外になります。

役員(取締役や監査役)の任期は10年に変更できる?

上述の通り、会社法第332条2項により、非公開の株式会社は取締役の任期を最長10年まで伸長することが可能です。また、監査役の任期についても、同様に最長10年まで伸長することができます。

このように、会社法は非公開の株式会社の監査役の任期を最長10年まで伸長することを認めていますが、監査役の責務やタスクを鑑みるに、取締役の任期と同程度、もしくはより長くする方が望ましいと考えられます。監査役は株主総会で選任され、取締役の職務の執行を監査するのが主な役目であり、取締役よりも任期が短いとその役目を十分に果たせなくなる可能性があるからです。例えば、取締役の任期が10年で監査役の任期が4年では、取締役の職務の執行を監査することは難しいでしょう。

役員(取締役や監査役)の任期を10年に変更する方法とは?

取締役や監査役など、役員の任期を10年に変更する方法をお伝えします。ここでは、比較的小資本の少数株主で構成された、中小零細のオーナー企業が、取締役の任期を10年に伸長するという前提でご説明します。オーナー社長が率いる企業で、役員も株主も家族だけで構成されている株式会社というイメージです。

役員の任期を10年に伸長するには、以下のプロセスが必要です。

  1. 定款や登記事項証明書の確認
  2. 株主総会で定款変更の決議をとる
  3. 新しい定款の作成

1. 定款や登記事項証明書の確認

最初のステップでは、定款や登記事項証明書から自社が「公開会社でない株式会社」であることを確認します。会社法は、「当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」を「公開会社」と定めています。また、登記事項証明書に「株式の譲渡制限に関する規定」が記載されていれば非公開会社です。なお、日本の多くの中小企業では、定款に「株式の譲渡制限に関する規定」が記載されていますが、稀に例外があるようです。
同時に、定款から現在の役員の任期が10年より短いことを確認しましょう。

2. 株主総会で定款変更の決議をとる

次のステップは定款の変更です。定款を変更するには、株主総会を開催して特別決議で承認を得なければなりません。特別決議では、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権3分の2以上の賛成が必要です。なお、非公開会社の場合、開催の1週間前までに株主全員へ総会開催を通知する必要があります(書面や電磁的方法による議決権行使の定めがない会社の場合)。
株主総会で役員の任期を10年とする特別決議を発議し、出席株主の賛成をもって承認となります。株主総会の開催とともに、株主総会の議事録を作成しておきます。

3. 新しい定款の作成

株主総会で定款変更の決議がとれたら、新しい定款を作成します。一般的には、定款に以下のように記載します。

(取締役の任期)

第○○条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

改定した定款と、定款変更を決議した株主総会の議事録を一緒に保管します。

役員の任期変更の登記は不要

役員の任期は登記事項ではないため、変更しても登記は必要ありません。ただし、役員の任期を短縮するなどして在任役員の任期が終了した場合には、退任の登記が必要になります。

なお、役員の新任や重任などがあった場合、変更が生じた日から2週間以内に登記を申請する必要があります。2週間を過ぎてしまうと登記懈怠(とうきけたい)という状態となり、過料の対象になる可能性があります。

役員(取締役や監査役)の任期は何年がおすすめ?

取締役や監査役などの役員の任期は、非公開の株式会社の場合、最短1年から最長10年まで自由に設定できます(取締役の場合。監査役は最短4年から最長10年まで)。そこには10倍の開きがあるわけですが、役員の任期は何年が良いのでしょうか。

役員の任期をどう決めるかについては、経営チームの構成や資本構造、事業規模や組織の大きさ、あるいは業種や業態、市場規模や将来性、競合状況といった外部環境などによってケースバイケースの判断が必要です。ただし、ある程度大まかな組織形態に合わせた「ベター」な役員任期を検討することはできます。ここでは、任期の長さを3つに分けて、それぞれに「フィットする可能性がある」組織形態を考えてみましょう。

任期を1年にする

取締役の任期を1年にすることにフィットする可能性がある組織の筆頭は、スタートアップ企業です。特に、ある程度の規模の資金を集めたハイグロース系のスタートアップ企業や、複数の経営者が集まって立ち上げたスタートアップ企業などにおいては、取締役の任期を1年にする意味とメリットが大いにあります。経営のスピードと結果を求める株主が存在しており、株主が1年ごとに経営者のパフォーマンスをチェックし、必要ならば1年で取締役を更迭できるからです。

任期を2〜5年にする

取締役の任期を2~5年にすることにフィットする可能性がある組織の筆頭は、ある程度の成長軌道に乗った、一定以上の事業規模を持つ中小企業でしょう。特に外部資本が一定以上あり、株主のプレッシャーとチェックが適度にある企業にフィットする可能性があります。1年ではなく、2~5年というタイムスパンにおいてパフォーマンスを目指す経営者とそのチームメンバーである取締役を、外部資本がしっかりと見守りながら経営を託するといったイメージです。

任期を6〜10年にする

取締役の任期を6年以上にすることにフィットする可能性がある組織の筆頭は、株主と経営者が同一で固定化したオーナー企業か、個人事業主が経営コスト削減のために立ち上げたマイクロ法人でしょう。いずれも株主や経営者が変わる可能性がほぼなく、取締役などの変更登記の回数をできるだけ減らすことがメリットになります。例えば、役員変更登記を2年ごとに行うケースと10年に1回行うケースを比べると、コストは5分の1になります。また、経営者が世襲するファミリービジネスにおいても、役員の任期が長ければ長いほどコストをセーブできるでしょう。

取締役の任期と「みなし解散」の関係は?【12年ルール】

取締役の任期管理を怠ると、役員変更登記が長期間行われないまま放置され、会社が意図せず「みなし解散」と扱われるリスクがあります。以下では、12年ルールの概要と取締役任期との関係につい解説します。

任期満了後の重任・選任登記を怠ると、「みなし解散」とされる

会社法および商業登記法では、取締役の任期が満了した際には重任または新任の登記が必要とされています。しかし、この登記を放置した状態が続くと、法務局において「休眠状態」とみなされる対象となります。法務局は「最後の登記から12年間変更登記が申請されていない株式会社」に対して休眠会社整理の通知を発送し、一定期間内に登記が行われない場合は、会社を「みなし解散」として職権で解散登記を行います。

これは役員任期の管理と登記義務を長期間怠った結果として発生するもので、実質的に会社の存続が失われる重大な事態です。

みなし解散を避けるためには、任期管理と期限内の登記申請が不可欠

みなし解散を避けるには、まず取締役の任期を正確に把握し、任期満了ごとに必ず重任(または選任)登記を行うことが基本です。変更が生じた日から2週間以内に登記を申請する義務があるため、期限を守ることが重要です。また、非公開会社で任期を10年に伸長できる制度を利用する場合でも、10年間登記を行わないとみなし解散の対象となる点に注意が必要です。

もし法務局から「休眠会社の通知」が届いた場合は、速やかに役員変更登記を行うことで解散処理を防ぐことができます。みなし解散がされてしまった場合でも、一定期間内であれば「みなし解散の復活(継続の届出)」が可能ですが、費用や手続きが追加で発生します。

任期満了前の辞任・解任・追加選任が発生したときの登記は?

取締役の任期中であっても、辞任・解任・死亡・増員などにより役員構成が変わることは珍しくありません。こうした「任期途中の役員変更」が生じた場合には、会社法および商業登記法に基づき、所定の期限内に登記を行う必要があります。以下では、登記義務と注意点について解説します。

任期途中でも辞任・解任・死亡などがあれば、2週間以内に役員変更登記が必要

取締役は任期満了を待たずに辞任することができ、株主総会の決議により解任されることもあります。また、死亡により在任が終了した場合も、法的には「退任」として扱われます。これらの理由で役員の地位に変動が生じたときは、変更が生じた日から2週間以内に、変更登記を法務局に申請しなければなりません。

この期限は法律で定められており、遅れた場合には「登記懈怠」として過料の対象となる可能性があります。取締役が1名のみの会社では、辞任によって役員不在となるため、辞任と同時に新たな取締役を選任しなければならず、登記のタイミングを誤らないよう注意が必要です。

増員・補欠選任などで新たに取締役を選ぶ場合も登記が必要

任期中であっても、経営体制の強化、事業拡大、親族の参画などの理由により取締役を追加選任するケースがあります。その場合は、株主総会(または必要に応じて取締役会)で選任決議を行い、選任日から2週間以内に登記を申請します。また、補欠の取締役が就任する場合、補欠選任の時点では登記不要ですが、実際に就任した時点で登記が必要となります。選任時には就任承諾書を作成し、印鑑証明書を添付する場合もあるため、事前準備を整えておくことが重要です。

任期途中の変更登記では、任期の残存期間に注意する

任期途中で就任した取締役の任期は、会社法第332条3項により「前任者の残任期間」とされます。つまり、新たに選任された取締役の任期は、他の在任取締役の任期と同じタイミングで終了します。これを理解していないと、誤って「就任から2年」などと誤解してしまい、登記タイミングを誤る原因になります。

任期の管理は、その後の登記義務やみなし解散リスクにも影響するため、会社全体で正確に把握する必要があります。任期途中の変更は複雑に見えますが、法的な基準と期限に従って適切に処理すれば問題ありません。

委員会設置会社・監査等委員会設置会社の任期の例外規定は?

取締役の任期は原則2年ですが、会社の機関設計によって例外的に「1年任期」が義務づけられるケースがあります。それが「指名委員会等設置会社(旧・委員会設置会社)」および「監査等委員会設置会社」です。これらは上場企業に多いガバナンス体制であり、一般的な株式会社とは任期に関する扱いが異なります。

指名委員会等設置会社は、取締役の任期が必ず1年

会社法第332条1項但書により、指名委員会等設置会社(旧・委員会設置会社)では、取締役の任期を例外なく1年としなければならないと規定されています。これは、取締役会が業務執行から独立し、監督機能を強化する「指名・監査・報酬」の3委員会制度を採用していることが理由です。上場企業で採用される体制であり、株主が毎年、取締役の信任状況を判断できるよう、任期を短くして経営陣への監督を強める趣旨があります。

なお、定款で伸長することはできず、1年より長くすることは法律上不可能です。

監査等委員会設置会社も取締役の原則任期は1年

監査等委員会設置会社では、取締役の任期は原則1年です。こちらは監査機能を取締役会内部に持たせる構造であり、指名委員会等設置会社ほど厳格ではないものの、ガバナンス強化の観点から任期を短く運用することが求められています。会社法上、非公開会社であれば最長2年まで任期を伸ばすことが可能ですが、公開会社(上場会社または譲渡制限のない会社)では伸長が認められず、必ず1年任期となります。

特に上場企業では、株主による経営監督を毎年適切に行うため、短期任期が採用されています。

役員(取締役や監査役)を変更したら必ず登記申請しましょう!

以上、非公開の株式会社の役員任期について、10年に伸長する方法などを中心に解説しました。上述の通り、非公開の株式会社の役員任期は最長10年まで伸長できます。また、役員の任期を伸長するには、定款や登記事項証明書から自社が「公開会社でない株式会社」であることを確認し、株主総会を開催して特別決議で定款変更を承認し、変更後の役員任期を記した定款を作成します。役員の任期変更に登記は必要ありませんが、役員を変更した場合には変更登記が必要です。

繰り返しますが、役員の新任や重任などがあった場合、変更が生じた日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。また、最後の登記から12年が経過すると「みなし解散」とされる可能性もあります。最悪のケースでは登記官により解散登記がされますので、十分にご注意ください。

よくある質問

株式会社の役員の任期とは?

取締役や監査役などの株式会社の役員の任期とは、それらの役職に就いている期間のことです。一般的に、取締役の任期は2年、監査役は4年です。非公開の株式会社の場合、役員の任期を最長10年まで伸長できます。詳しくはこちらをご覧ください。

役員の任期を10年にする方法は?

役員の任期を伸長するには、定款や登記事項証明書から自社が「公開会社でない株式会社」であることを確認し、株主総会を開催して特別決議で定款変更を承認し、変更後の役員任期を記した定款を作成します。詳しくはこちらをご覧ください。

取締役の任期を1年にすべき会社は?

取締役の任期を1年にすべき会社は、ある程度の規模の資金を集めたハイグロース系のスタートアップ企業や、複数の経営者が集まって立ち上げたスタートアップ企業です。株主が1年ごとに経営者を更迭できるためです。詳しくはこちらをご覧ください。


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