- 作成日 : 2025年3月21日
動物病院の事業計画書の書き方は?テンプレートをもとに記入例を解説
動物病院の事業計画書は、開業や資金調達を円滑に進めるために重要な書類です。動物病院の未来を左右する戦略の羅針盤として、全体像を明確にする役割を有します。本記事では、事業計画書の作成手順からポイントまでを詳しく解説します。
目次
動物病院の開業時に作る事業計画書とは
動物病院の事業計画書は、開業を円滑に進めるために作成する重要な書類です。融資申請時の提出資料や、病院の経営理念・売上目標・提供サービスなどを体系的にまとめ、運営方針を社内外に示す役割があります。
とりわけ、金融機関への融資の申込みや投資家へのアピールには事業計画書の完成度が鍵となります。また、経営を進めるうえでは自院の基本方針を整理する作業そのものが、今後の経営に大きな示唆をもたらすでしょう。
動物病院を経営するうえで押さえておきたい知識については、以下の記事もぜひ参照してください。
動物病院の事業計画書の書き方・記入例
動物病院の事業計画書を作成する際には、他業種の事業計画書とは異なり、獣医療に関わる専門性を踏まえた項目が必要となります。以下では、事業計画書のそれぞれの項目をどのように書けばよいかを解説します。
創業動機・目的
創業動機・目的は、動物病院を開業しようと考えた背景や熱意を表す項目です。地域の飼い主が求める医療を提供したいという思い、あるいは自らの獣医師経験を活かして、より多くの動物の命を救いたいという意志などを伝わりやすく、かつ簡潔に記述します。
「地域社会における予防医療の普及と、飼い主とペットが安心して暮らせる環境づくりを目指す」といったように、開業の目的や病院が果たす役割を明確化しましょう。創業動機を明文化することで、金融機関や関係者の共感や理解を得やすくなります。
職歴・事業実績
獣医師としての経験や過去の動物医療分野での実績は、動物病院にとって非常に大きな強みです。勤務していた病院や動物医療施設の名称だけでなく、そこではどのような診療や手術を担当していたのか、詳細に記載しましょう。
たとえば「小動物臨床で10年間勤務し、犬猫の一般診療のほか、整形外科の手術に携わった経験がある」など、役職や担当分野、身につけた専門技能を盛り込むことで、開業後の実務でどのような医療サービスを提供できるのかをイメージさせます。
取扱商品・サービス
取扱商品・サービスは、動物病院で提供する医療サービスを整理して記載します。一般診療から予防医療、専門的診療に至るまで、どの領域で強みを発揮するのかを示すとよいでしょう。
近年は高齢ペットの増加や高度な医療技術を求める飼い主のニーズが高まっているため、骨や関節の疾患、腫瘍科など専門性を打ち出すことも有効です。また、ワクチン接種やフィラリア予防など、定期的に来院の機会がある予防医療サービスについては、飼い主との信頼関係を築くためにも重要度が高いといえます。
取引先・取引関係
動物病院で使用する医薬品や医療材料、検査業務を委託する場合の取引先企業についても細かく記載します。
医薬品卸業者や医療機器メーカー、外注検査を行う検査会社のほか、トリミングやペットホテルといったサービスと連携するケースもあるでしょう。取引条件や支払条件を記載することで、資金繰りや経営リスクを把握するうえでも役立ちます。
従業員
開業時にどの程度の獣医師やスタッフを雇用する予定なのか、具体的な人数や役割分担を記載します。総合的な診療を提供するなら専門領域が異なる複数の獣医師が必要かもしれません。
医療だけではなくペット関連のトータルサービスを提供するのであれば、トリマーの存在も欠かせません。受付や経理を担当するスタッフを配置するのか、外注にするのかといった点も資金計画に影響を与えます。
開業後しばらくはオーナー獣医師が複数業務を兼任するケースもありますが、患者数(来院数)の増加に伴いスタッフ配置が追いつかなくなる場合もあるため、将来的な人員配置についても見通しを立てておくとよいでしょう。
借入の状況
借り入れがある場合は、その内容をすべて詳細に記載します。住宅ローンやマイカーローン、そのほかのショッピングローンなどもすべてが対象です。残債や返済見込みも重要です。
自宅や不動産などを担保として提供している場合は、その点も申告します。
必要な資金と調達方法
動物病院を開業するためには、レントゲンや超音波検査機器などの高額な医療機器、内装工事費用や看板費用といった設備投資が必要になります。これに加え、仕入れや人件費などの運転資金も見込まなければなりません。
こうした費用を数値で示し、どのように資金を調達するか計画を明記します。金融機関からの融資だけでなく、自己資金や助成金、自治体の制度融資なども合わせて検討し、多角的に資金調達ルートを確保するとリスク分散につながります。
事業の見通し
診療圏調査に基づいた来院数の見込みや売上予測、収支計画をできるだけ具体的に示します。たとえば地域のペット飼育頭数や競合病院の数、飼い主が望むサービスの需要などを踏まえ、開業後3年程度の売上計画を立案し、可能であれば月次ベースの損益まで計画しましょう。
ここで示す数値が融資の審査や投資家への説得材料にもなるため、過度に楽観的な見通しを避け、現実的な計画を立てることが大切です。
動物病院の事業計画書に使える無料テンプレート
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動物病院の事業計画書を作成するポイント
動物病院の事業計画書を、作成するうえで特に意識しておくべきポイントについてみていきましょう。一般的な事業計画書でも重要なテーマですが、動物病院の特殊性を踏まえたうえで検討することが大切です。
開業資金や運転資金の調達方法を検討する
動物病院の開業に必要な医療機器や内装工事、院内の消耗品などを一度に揃えようとすると、かなりの資金が必要になります。日本政策金融公庫の創業融資制度や自治体の制度融資、銀行融資など、複数の選択肢を組み合わせて調達を考えると資金不足のリスクが軽減されるでしょう。
また、担保の有無や保証人の要否によって金利が異なる場合もあるため、事前にしっかりとシミュレーションを行うことも大切です。自己資金をどの程度投入するか、あるいは外部投資家の協力を仰ぐかなど、開業後の返済負担を見据えたうえで検討しましょう。
資金繰り表や損益計算書をもとに収支計画を立てる
動物病院における収支の管理は、通常のサービス業以上に丁寧な計画が求められます。特に医療機器の導入は初期投資額が高いことが多く、また、材料費や薬剤費などの変動費も月ごとに大きく変わることがあります。
そのため、月次ベースの資金繰り表や損益計算書を作成し、収入と支出を常に把握しておくことが重要です。開業初期は患者数が想定より伸びず、売上が不安定になりがちです。そのため、最低でも6ヶ月分程度の運転資金を確保しておくと、予期せぬ赤字に対応しやすくなります。
診療内容ごとに原価率が適切かどうか確認する
動物病院は、診療サービスの内容によって材料費や薬剤費が大きく変わります。そのため、診療項目ごとの原価率を算出し、適正な利益率を確保できる価格設定になっているか確認が必要です。
たとえばワクチン接種は比較的原価率が低い一方、外科的処置や専門的検査は高価な医療材料が必要な場合があるため、どこで利益を出していくのかを明確化しておくと経営が安定しやすくなるでしょう。また、価格設定が飼い主の感覚とかけ離れていないかを定期的に見直すことも欠かせません。
平均単価を上げる方法を検討する
動物病院の売上を増やすうえで、単純に来院数を増やすだけでなく、平均単価の引き上げを検討することも重要です。たとえば、予防医療や歯科ケアなどの付加価値の高いサービスを提供したり、飼い主がペットの健康管理に積極的に参加できるようなカウンセリングを導入したりすることで、顧客満足度を高めつつ自然に平均単価を上げられる可能性があります。
高度医療を提供できる設備を整えることも一案ですが、その分投資額や維持費が大きくなる点は注意が必要です。飼い主のニーズを見極めながら、適切なサービスラインナップを検討しましょう。
事業計画書の重要性を理解しよう
動物病院の事業計画書は、融資を獲得するための資料であると同時に、自院の経営方針を明確化し、長期的な目標を見据えるための地図のような存在です。
計画段階で立てた経営戦略やサービス内容は、開業後に実践しながら軌道修正する可能性もありますが、最初にしっかりと作り込むことで迷いやブレを最小限に抑えられます。自院の理念や得意分野を反映させた事業計画書を作成し、継続的に見直しを図ることで、動物病院の安定経営と飼い主とのより良い関係構築につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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