- 作成日 : 2022年8月10日
会社設立時に法人口座は必要?銀行口座開設の方法や注意点を解説!
会社設立時には、法人口座を開設することが一般的です。個人とは別に法人として銀行口座を開設することで、信用度の向上や経営状況の把握、融資を受ける際などに役立ちます。開設には、定款や登記事項証明書、印鑑証明書など必要書類が多く、審査には時間がかかるため、余裕のあるスケジュールで手続きを行う必要があります。また、振込手数料が安いところやネットで振込や確認ができるところなど、金融機関によって特徴はさまざまです。
本記事では、法人口座開設のメリットや必要書類、注意点や金融機関の選び方などを解説します。起業を検討している方は必見です。
目次
会社設立時に準備すべき銀行口座とは?
会社設立時には、法人名義の銀行口座を準備することが一般的です。入金や振り込みなど、業務に関するお金の動きを全て法人口座で行うことで、個人の口座と分けて管理できます。法人口座の開設は任意ですが、メリットが大きく、融資を受ける際に必要になる場合もあります。そのため、多くの会社が設立時に法人口座を開設するのです。
会社設立時に法人口座を開設するメリットは?
法人口座の開設手続きには一定の期間がかかり、審査も必要です。個人の口座開設に比べるとハードルが高いですが、以下のようにさまざまなメリットがあります。
- 法人口座があることで社会的信用を得やすい
- 法人名義のクレジットカードを作成できる
- 個人の財産と分けて管理できる
- 融資を受ける際に役立つ
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
社会的信用を得やすい
個人名義の銀行口座を利用して業務を行うと、会社とプライベートの財産を混同しているのではないかと思われる可能性があります。一方、法人口座があれば、財産を分けて適切に管理していることをアピールできるのです。また、法人口座の開設審査に通ったということは、法人としての実態があり信用できる会社であることを意味します。そのため、法人口座があるという事実は、社会的信用の獲得につながります。
法人名義のクレジットカードを作成できる
法人口座を作ることで、法人名義のクレジットカードも作成できます。経費を個人のクレジットカードで支払うと、経費精算や管理が複雑になりやすいです。法人名義のクレジットカードを使えば、経費の支払いや管理を一元化できるというメリットがあります。また、会計ソフトと連携させれば経理業務を自動化し、最適化できます。
個人の財産と分けて管理できる
法人口座と個人口座を別で持つことで、会社の経営で得た財産とプライベートの財産を分けて管理できます。前述のとおり対外的な信用を得やすいだけでなく、資金繰りや経営状況の把握にも役立つというメリットがあります。法人口座の通帳を見るだけで、業務に関するお金の流れが簡単に理解できたり、支出を把握しやすいため削減すべき経費の検討がしやすくなったりするのです。
融資を受ける際は法人口座の開設が必要な場合が多い
法人口座の開設は任意ですが、金融機関から融資を受ける際に必要になることが多いです。
融資を受ける際は、借入金の振込先として法人口座を指定しなければならないケースがあります。個人口座だと認められない場合もあるので、注意が必要です。
また法人口座を開設しているということは、銀行の審査に通った信頼できる企業であることを意味するため、融資の審査の際にプラスになる可能性もあります。
会社設立時に法人口座を開設する方法・スケジュールは?
法人口座の開設には一定の期間がかかります。申し込み時に商業登記簿謄本の提出が必要になるため、会社を設立してから1週間以内に開設手続きを行うことが一般的です。
また都市銀行のように開設ハードルが高い金融機関の場合は、審査に1ヶ月ほど要することもあります。そのため、取引開始予定日から逆算して、余裕のあるスケジュールで手続きを行うことが重要です。
法人口座開設手続きは、以下のような流れで行います。
- 必要書類やそのほか金融機関が定める書類を用意
- 申し込み
- 2週間〜1ヶ月ほどかけて審査
- 開設手続き
法人カードを作成する場合は、開設手続き後に受け取ることができます。
会社設立時の法人口座開設に必要な書類は?
法人口座開設には、以下のような書類が必要です。
- 商業登記簿謄本(登記事項全部証明書)
- 定款
- 会社印・印鑑証明書
- 代表者の実印・印鑑証明書
- 代表者の身分証明書
- 会社の運営実態がわかる資料(HPや事業計画書など)
書類の中には、会社設立後でないと手に入らないものもあります。設立後にスムーズに手続きが行えるよう、前もって準備できるものは早めに揃えましょう。
ここでは、それぞれの必要書類について解説します。
定款
定款とは、商号や資本金、事業目的など、会社に関するあらゆる情報を記載したものです。会社設立時には必ず作成します。
口座開設時は、定款の中でも事業目的がチェックされます。事業内容が曖昧に記載されている場合、口座開設が認められない可能性もあるので注意が必要です。定款を作る際は、主たる事業内容をできるだけ具体的に記載することが大切です。
定款については、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
商業登記簿謄本(登記事項全部証明書)
商業登記簿謄本とは、登記事項を用紙に印刷して証明したものです。そして、登記事項全部証明書とは、その用紙を複写して証明したものになります。登記事項全部証明書は、法務局の窓口で直接受け取れるだけでなく、オンラインでも取得可能です。
会社設立後でないと取得できないため、設立が認められたらすぐに取得し解説手続きを行いましょう。
印鑑証明書
印鑑証明書とは、捺印した印鑑が正式なものであることを証明するものです。法人口座を開設するうえでは、代表者と法人の印鑑証明書が必要になります。
法人の印鑑証明書を取得する際は、まずは印鑑カード交付申請書を入手し、法務局に郵送しましょう。その後、法務局の窓口で印鑑証明書を入手できます。なお電子定款や登記事項証明書の取り寄せのため、ICカードリーダライタといった環境を整えた場合は、オンライン申請で印鑑証明書を入手できます。
会社の運営実態がわかる資料
法人口座を開設する際は、信用できる法人であるか審査が行われます。税金対策のために設立した法人のように、実際は運営されていない法人であると判断されると、口座開設を断られる可能性が高いです。そのため、ホームページや事業計画書、オフィスの賃貸借契約書など、会社の運営実態がわかるような資料の提出が必要になります。
会社設立時に法人口座を開設する金融機関の選び方は?
法人口座を開設できる銀行・金融機関には次のような種類があります。
- 都市銀行
- 地方銀行
- ゆうちょ銀行
- ネット銀行
- 信用金庫
金融機関ごとに特徴があるため、それぞれの特徴を理解し、自社にとって最もメリットが大きいところを選んで開設しましょう。ここでは、金融機関ごとの特徴やメリット・デメリットを解説します。
信用度のアピールにつながる都市銀行
都市銀行とは、大都市に本店があり、全国に展開している規模の大きい銀行のことです。都市銀行は、審査が厳しく法人口座開設のハードルが高い傾向があります。その分、全国的に知名度があるため信用度のアピールにもつながりやすいです。
大企業と取引する場合や、多くの取引先を抱える場合は都市銀行での開設が有効です。一方、口座維持手数料や振込手数料が高い場合が多いので、事前に手数料を確認しましょう。
オフィスのある地域に強い地方銀行
地方銀行は、都市銀行に比べて地域密着型の傾向が強く、融資の相談に親身に対応してくれることも多いです。ある地域に集中して事業展開している場合や取引先が集中している場合は、オフィスのある地域の地方銀行を利用することがおすすめです。一方、金利がやや高いというデメリットがあり、事業を全国展開する場合は都市銀行の方が適しています。
全国展開で振込手数料も安いゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は、全国展開されており、口座維持手数料が無料、振込手数料も安い傾向があるため使い勝手が良い銀行です。全国に支店があるため、顧客に振り込んでもらう際に指定しやすいのもメリットです。また、法人税の電子納税にも対応しています。
一方、預入額に1,300万円の上限があるため、大規模な取引には不向きというデメリットがあります。また、社会保険料の引き落としには使えない点に注意が必要です。
振込手数料が安いネット銀行
ネット銀行は、インターネット上で手軽に口座を開設できる銀行です。開設手続きが比較的簡単で、振込手数料が安い・預金の金利が高いなどのメリットがあります。また、24時間いつでもインターネット上で振込や決済ができ、店舗に行く手間が省けるため使い勝手が良いです。
一方で他の銀行に比べると信用度が高いとは言えず、公的機関や大手企業と取引する場合には不向きです。
開設ハードルが低い信用金庫
信用金庫は、地域の人々が会員となり、相互扶助を通して地域の繁栄を図ることを目的とした金融機関です。そのため、地方銀行のように地域密着型の傾向が強いという特徴があります。都市銀行に比べて口座開設にかかる期間が短く、開設ハードルが低い傾向があります。
一方、他の銀行と比べると金利が高く、従業員が300人以上、または資本金が9億を超えると脱退しなければならない決まりがある点に注意が必要です。
会社設立時の法人口座開設手続きにおける注意点は?
法人口座を開設するためには、審査に通る必要があります。審査に通るためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 具体的な事業内容を明記する
- 適切な資本金額を設定する
- 自己資金の要件に注意する
ここでは、法人口座開設手続きにおける注意点を解説します。
具体的な事業内容を明記する
定款に記載されている事業内容が幅広すぎたり曖昧だったりすると、審査に通らない可能性があります。「営利を目的とする一切の事業」のような曖昧な事業内容では、口座開設が認められない可能性もあるので注意が必要です。
定款には、事業内容をできるだけ具体的に記載し、「前各号に附帯または関連する一切の事項」と追記することで、対象とする事業内容の範囲を拡大しましょう。また、運営実態が分かるよう会社資料や事業計画、ホームページなどを用意して実態をアピールする必要があります。
適切な資本金額を設定する
資本金1円でも会社は設立できますが、資本金額が少ないということは事業資金が少ないことを意味します。そのため、資本金額があまりにも低いと信用力が低くなり、審査に通らない可能性があるのです。目安としては100万円以上の設定が必要と言われています。
金融機関によっては、開設にあたって必要な資本金の最低限度額が示されていることもあるので、資本金の要件は必ず確認しましょう。
一定額の自己資金が要件となる場合もある
資本金の中でも、自己資金額は重要な判断指標です。自己資金額は、創業当時のキャッシュや事業規模を表すため、自己資金が多ければ、それだけキャッシュが豊富であり、取引量が多いと考えられます。金融機関にとっては、口座維持のコストを考えるとある程度の取引量が必要です。そのため、自己資金額に要件を定めているところもあります。
法人口座の審査に落ちた場合、個人口座で代用できる?
法人口座の審査に落ちる可能性もあります。法人口座の開設は任意ではないため、個人口座で代用しても法的に問題があるわけではありません。
しかし、個人口座で業務を行うと、個人の財産と会社の財産の区別が曖昧になり、社会的信用度をアピールしにくくなったり会社の財務状況の把握が難しくなったりといったデメリットがあります。個人口座での代用より、開設ハードルが低い金融機関の利用を検討する方が賢明です。
会社設立時は銀行口座をはやめに準備しておきましょう!
本記事では、会社設立時に重要な法人口座について開設しました。法人口座の開設は任意ですが、対外的な信用の向上や財務状況の管理のしやすさなど多くのメリットがあり、開設が一般的です。
法人口座の開設には審査が必要で、開設にはある程度の期間がかかります。また、金融機関ごとに特徴が異なるため、どこで開設するかを入念に検討する必要があります。取引開始日に間に合うよう早めに準備を進め、会社を設立したらすぐに法人口座開設手続きを行えるようにしましょう。
よくある質問
法人口座を開設するメリットは?
社会的信用を得やすい、法人名義のクレジットカードを作成できる、個人の財産と分けて管理できるといったメリットがあります。また、融資を受ける際に法人口座の開設が必須となる場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください。
法人口座の開設に必要な書類は?
登記事項全部証明書、定款、会社印・印鑑証明書、代表者の実印・印鑑証明書、代表者の身分証明書などが必要です。また、HPや会社紹介資料のように、会社の運営実態がわかる資料も用意しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
法人口座の開設にはどのくらいかかる?
金融機関によって異なりますが、開設ハードルが高い都市銀行では1ヶ月、それ以外では2週間ほどかかることが多いです。取引開始予定日から逆算して、早めに手続きを行いましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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